軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい魔法の実験をしました

温泉から上がった研究会の面々は妙にほっこりした顔をしていた。

爺さんの話しに感銘を受けたみたいだ。

内容がボッチだった俺の友達になってくれてありがとうって内容だったのはちょっと微妙だけど……。

そして、女性陣も同じタイミングで温泉から上がってきた。

こっちは妙にスッキリした顔をしてた。そして、俺の顔を見て優しげな表情をしてた。

え? 何?

そして風呂あがりに用意されていた食事を頂いてる時にばあちゃんから今回の合宿についての話があった。

「ああそうだ、さっき風呂の中で決めた事があってね、今回の合宿でアタシ達は保護者に徹するつもりだったけど、アタシ達もアンタ達を鍛えてあげるよ」

「え? 本当ですか?」

「マーリン様とメリダ様が教えて下さるのですか?」

女性陣は既に知っていたのか落ち着いた様子だが、初めて聞かされた男性陣は盛り上がっていた。

「え? いいのじいちゃん」

「ほっほ……初めて聞いたのう……」

爺さんには話が通ってなかったみたいだ。

「まあ、シンには魔法のイメージを教えて貰いな。爺さんは魔力制御を、アタシは付与魔法を教えてあげるよ」

「うわぁ! 夢みたいですぅ!」

付与魔法を鍛えたいって言ってたユーリのテンションが再び上がる。

この子のテンションが上がってる所も珍しいな。普段はおっとりしてるからなあ。

「という事は、俺はフリーになる時間があるから……新しい魔法の実験かな」

と、俺が発言した所で皆の動きが止まった。

「……ちょいとお待ち、シン」

「何? ばあちゃん?」

「何じゃない! 今聞き捨てならない事を言ったねえ……」

「新しい魔法とか……」

「実験って……」

「あの! その時は言って下さいね! 私達避難しますから!」

オリビアが珍しく前に出てきた。若干怯えながら……

「え……何この反応……」

「お前……新しい魔法って、一体何をするつもりだ?」

オーグから追求される。

「いや……シュトロームを倒すのに、新しい魔法が必要かなって……」

「え? 確かこの前シュトロームと対峙した時、全力出してなかったって言ってませんでしたか?」

トールが警備隊の詰所での事を覚えていた。

「いやまあ、確かにそうなんだけどさあ、ちょっと思い付いた事があって、ちょっと試してみたかったんだけど……」

「……なんだ、話を聞いただけでヤバイ気がするのは私だけか?」

「いえ殿下、自分もです」

「私もです」

「私も! ヤバイ匂いがプンプンするよ!」

……詳しい話をしてないのに、新しい魔法のアイデアと言っただけでこの反応……そろそろ泣いていいでしょうか?

「ちょいと聞くけど、それは危ない事ではないのかい?」

「危なくはないよ……自分には……」

「つまり……周りには危険があるって事かい?」

「いや……まあ……一応攻撃魔法だから相手には……」

「……まあそりゃそうか、で? どれくらいの威力なんだい?」

「さあ? それを実験してみたいんだけど……」

何とか魔法の実験をさせてもらえないかと懇願してみる。

「はあ……いいかい、実験をする時はあの荒野で、周りにも声を掛けるんだよ」

「当たり前じゃん、じゃあ実験していいの?」

「本当に大丈夫なんだろうねえ? アンタが魔法を使ったら世界が終わるとか無いだろうねえ?」

「いや……さすがにそんな魔法は使わないよ……」

ばあちゃんは俺を何だと思ってるのか? 破壊神じゃねえよ!

こうしてばあちゃんにしつこい位釘を刺されたけど、何とか新しい魔法の実験をして良いという許可を貰った。

皆が爺さんとばあちゃんの指導を受けてる間、俺は新しい魔法の実験をする。

皆や爺さんの魔法を見ていて思った事があるんだよな。

俺の想像通りならちょっと面白い事になるかもしれない。早く試してみたいな。

「シン君……あの、やっぱりちょっと自重した方がいいと思うんですけど……」

「シシリー? どうした?」

「あの……凄く嬉しそうな顔をしてたっていうか……なんというか……」

「やっぱり心配になってきたな」

「はあ……大丈夫かねえ……」

え、そんな顔をしてた? やっと試す事が出来て嬉しかったのかも……

とりあえず、明日からの訓練の予定を決めた。

午前中は爺さん監修の魔力制御の練習をして、午後から俺と魔法の練習、夕方から夕食まではばあちゃん監修の付与魔法講座や俺の魔法実験を行う事になった。

ただし、俺が魔法の実験をする際は、爺さんばあちゃんの監視のもとでないとやるなと言われた。

理由はいざという時に対処出来ないから。

まあ初めて使う魔法だし心配なのは分かるけど、心配し過ぎなような気がする……。

「アンタの今までの所業を考えるんだね」

……何も言い返せないな……。

その夜は長旅の後に温泉に入ってノンビリしたせいか、グッスリと眠れた。

翌朝、朝食の席に現れた皆はスッキリした顔をしていた。やっぱり温泉が効いたみたいだ。合宿の宿泊先としては最高だな。

その事を皆がシシリーや使用人の人達に言うと、とても嬉しそうな顔をした。やっぱり自分の領地の事を誉められると悪い気はしないもんな。

そして昨日決めた予定通りに午前中は皆で魔力制御の練習だ。

やはり爺さんの魔力制御の指導は的確だな。

「ほれトール君、制御が少し乱れとるよ」

「はい!」

「シシリーさん、今ので十分制御出来とるからもう少し魔力を高めてみようか」

「はい!」

「リンさん! それは集めすぎじゃ! 暴走するぞい!」

「あれ? 間違えた」

相変わらず暴走ギリギリのリンも寸前に爺さんに止められていた。今でもしょっちゅう暴走させるからな……よく見とかないと、障壁を張るのが遅れたら周りが酷い事になるからな。

皆この日の午前中だけで少し制御出来る魔力の量が増えていた。

そして昼食後は俺が監修する魔法の実践練習だ。

ここに俺が試してみたくなった魔法の理由があったりする。

皆は俺がイメージしてる過程を何となく理解してイメージすると魔法が使えたと言っていた。

そう、『何となく』だ。

厳密にこういう『物質』がこういう『反応』を起こすからこういう『結果』が得られるとイメージしてる訳ではないのだ。

という事は、もっと曖昧なイメージでも、物理的に無茶な事でも、イメージ次第で実現可能なのではないか? そう考えた。

例えば『可燃性のガス』という、あまりにも曖昧なイメージ。それでも魔法は起動するのではないか?

そもそも、俺は学生の時にそんなに科学が得意だった訳ではない。でも、今までイメージ通りに魔法は起動してきた。

という事は今までも『自分がこうだと思い込んだ事』はそのまま『イメージ通りに』具現化してきたのではないか?

皆の練習を見ながらその考えはさらに確信を増す。

マリアは燃え盛る炎の魔法を放つ。しかし、燃焼の原理を完全に理解している訳ではない。

シシリーは水を凍らせた氷の刃を放つ。シシリーも水の分子構造だの、凍る時の分子配列だの、詳しい事までは理解してない。

リンも風の刃を無数に出すが、そこまで厳密に理解はしてない。

皆が曖昧な理解のまま今までよりも強力な魔法を使えるようになっている。

やはり俺の仮説は間違ってないように思える。

そんな皆の練習の様子をばあちゃんだけ呆れた表情で見ている。

「よくもまあ、これだけの魔法を無詠唱でポンポン撃つもんだねえ……魔法師団の立つ瀬が無いじゃないか……」

「でも、量産型とはいえ、これでも魔人相手には厳しいと思うんだけど」

「まったく……本当に世界の危機じゃないか」

俺は学院の学生しか魔法のレベルが分からない。これでも魔人には厳しいと思うけど、周りがこのレベルに達してないとなると、相当厳しい感じがする。

旧帝国領で魔人が暴れ回ってるのを指をくわえて見てるしか出来ないのも納得だ。

魔人一人ですら相手にならないかもしれない。

魔物が 跋扈(ばっこ) している旧帝国領で、まだ無事な町や村に避難指示を出す事も出来ない。辿り着く事すら出来ない。

そんな考え出したら絶望的な事しか出てこない状況だ。戦える戦力アップの為にも、何よりこれから最前線に出る事になってしまった皆の為にもこの合宿で強くなって貰わないとな。

そうして実践練習が終わった後は、一時休憩を挟んでから、いよいよ俺の魔法の実験だ。

皆が緊張して俺の方を見てるけど、実験なんだしいきなり大きい魔法は撃たないって。

まずは、よく燃える可燃性のガスをイメージしてみる。それに火種の魔法で火を付けると……。

ボワッ!

マジシャンが火を出すみたいに一気に燃えて消えた。

これはいけるぞ!

「それが新しい魔法かい?」

「いや、それの確認をしただけ」

さあ、ここから本番だ。といっても段階を踏んで少しずつ試してみる。

試すのは爆発の魔法。

まず空気による玉を作りさっきイメージしたガスを閉じ込める。

ガスが爆発するのは、密閉空間に充満したガスに引火し、ガスが一気に膨張、密閉されている為に膨張したガスの逃げ場が無くなり、密閉空間が破綻すると……。

ポンッ!

今までもこの原理で爆発の魔法を使っていた。そして今までよりも大分小さくガスの玉を作ったのだが、それでも今までより強い爆発が起きた。

周りを見ると、皆何やら怪訝な顔をしていた。まだこれも実験の前準備だけどね。

さて次だ。次はいよいよ物理法則を無視したイメージによる魔法の発現だ。

イメージするのは『指向性』

同心円状に拡がる爆発の衝撃波を前方にのみ向かうようにイメージする。

さっきと同じガスの玉を作りそれに指向性の衝撃波が生まれるようにイメージする。

そして……。

ポンッ!

やった!成功だ!

爆発した衝撃波は俺の方には来ず前方にのみ爆発のエネルギーを放出した。

よし! これで準備は終わりだ。

「皆、多分大丈夫だとは思うんだけど、一応魔力障壁を展開しといて。万が一があるかもしれないから」

その言葉に慌てて魔力障壁を全力で展開する面々。

多分だけど大丈夫って言ったのに……。

俺への信用があまりにも低い事に、若干の寂しさを感じながら魔法の準備を進める。

まずは……さっきのガスを集めて圧縮。もっと圧縮圧縮圧縮圧縮。

周りを覆う空気の壁も若干厚くし、より大きな爆発エネルギーを発生させる為の準備は整った。

そして最後に爆発の衝撃波の指向性をイメージして魔法を発動。

着弾と共に火種が起き、ガスに引火するようにしている。

そして……。

ドグワアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!

とてつもない大爆発を起こし魔法は発動した。

指向性を持たせた事で、爆心地から俺寄りに衝撃波は一切来ていない。

そして、爆心地から先は……。

「シン……アンタ……なんて魔法を創ったんだい……」

「これは……地形が……」

「ア……アハハハ……夢でも見てるのかしら?」

「夢じゃない、現実」

「嘘でしょう!? さっきとまるで風景が違うじゃないですか!」

「信じられないッス……」

先程まであった荒野の風景が一変し、吹き飛ばされ綺麗に均された大地の風景が、延々と拡がっていた。

うん。

やり過ぎた!