軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

友人たちとの再会

ミリアと俺の両親のお墓参りに行ってから数日後、俺たちは例年の慣習通り、リッテンハイムリゾートを訪れていた。

このリッテンハイムリゾートはリッテンハイム侯爵家が運営しており、富裕層に大変人気のリゾート地なのだが、ユリウスがこの領地の次期領主なので色々と便宜を図ってもらっている。

まさにコネである。

中々予約の取れない人気リゾート地なので周りの人からやっかまれていないか心配した時期もあったけど、ユリウスがアルティメット・マジシャンズの一員であることは広く知られているので、自分の領地に友人を招待しているだけという認識を持たれている……ということを知ってから気兼ねなく招待に応じている。

今回も俺たちは招待され、まずはここの領主であるユリウスの父親、リッテンハイム侯爵に挨拶に来た。

「お久しぶりですリッテンハイム侯爵。今年もお世話になります」

「久しいなシン殿。今年もウチに来てくれて感謝する」

「いえ、毎年招待して下さってありがとうございます。この子たちも、毎年ここで夏を過ごすのを楽しみにしていますので」

俺はそう言って、子供たちに視線を向けた。

「お招きいただき、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「ありがとーごじゃいましゅ!」

シルバーが礼儀正しくお礼をし、シャルとショーンは元気いっぱいに挨拶した。

それを見て、リッテンハイム侯爵は「うんうん」と目を細めている。

「元気で素直そうな、いい子に育っているではないか。シン殿たちにそう言ってもらえて良かった。シン殿たちが毎年我が領地を訪れてくれることで、我が領地の格は上がりっ放しでな。報いることができているならそれ以上に嬉しいことはないよ」

「そんな、こちらこそ毎年お世話になってばかりで……」

「なので、滞在費は私が……」

「いえ、それは結構ですので」

「むう、そうか」

危ない。

リッテンハイム侯爵は、毎年俺たちの滞在費を自分たちで持つと言うのだ。

俺たちが毎年夏の休暇をここで過ごすことで、リゾート地としての格が上がるからと。

それを断るのが、毎年の恒例行事みたいになってる。

とりあえず今年もその儀式をしたあと、俺は侯爵の隣に立っているユリウスに視線を移した。

「ユリウス、久しぶり」

「お久しぶりで御座る、シン殿。会えて嬉しいで御座るよ」

「俺もだ。領地経営の勉強は順調か?」

ユリウスは侯爵家の嫡男。

将来はこのリッテンハイム侯爵領を継ぐ。

二十歳を超えた辺りから領地を継ぐための勉強を始め、後進が育ってきた今では、ほとんどの時間を領地で過ごしている。

なので、アルティメット・マジシャンズは半ば引退という形式になっており、こうして顔を合わせるのも久しぶりだ。

「いやはや、今まで鍛錬ばかりしていたので中々大変で御座る」

「そうなのか? なんか、オーグと一緒に行動してたから、色んな事情に精通していると思ってたけど」

「事情を知っているのと実際に領地を運営するのはまた別の話で御座る。色んなことを即座に判断して即決していた殿下のことを、改めて尊敬しているところで御座るよ」

「アイツはなあ……学生のころから領地運営じゃなくて国政に参加してたしな」

「あれこそ本物の天才で御座る」

「ということは、トールも苦労してるのかな?」

「トールは学生のころから自領の産業について気を配っていたで御座るからなあ。シン殿も何度か苦言を呈されていたで御座ろう?」

「そういやそうだったわ」

俺が新しい魔道具を作るたびに、市場とか既存の業者への影響を気にしていたからな。

アルティメット・マジシャンズとして活動していても、常に自分の領地のことは気にかけていたんだろう。

トールはユリウスよりも領地を引き継ぐのに苦労はしなさそうだ。

「なので拙者より大丈夫かと思うで御座る。ああ、そういえば、トールたちもさっき着いて挨拶に来たで御座るよ」

「お、そうか」

「今頃、サラやジョアンたちとお茶でもしているのでは御座らんか?」

サラさんというのはユリウスの奥さんで、ジョアンというのはユリウスとサラさんとの間に生まれた息子だ。

「じゃあ、俺たちもそっちに行こうかな。それでは侯爵、失礼します」

「うむ。シン殿はお忙しい身であろうからな。ゆっくり英気を養ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

侯爵に挨拶をすると、俺たちは侯爵とユリウスの二人を残して部屋を出た。

このあとも到着する予定の人間がいるし、その中にはオーグたちもいる。

当主と次期当主として王太子を出迎えないわけにはいかないからな。

なので、俺たち家族だけで部屋を出たあと侯爵家のメイドさんに案内されてトールたちのところへと案内された。

メイドさんが扉をノックし俺たちが訪問したことを告げると中から返事があり、部屋の中へと案内された。

「シン殿!」

中には当然トールがいて、俺たちが部屋に入ると立ち上がって俺を出迎えてくれた。

ユリウスと同じく、アルティメット・マジシャンズを半ば引退しているトールと会うのも久しぶりだ。

この毎年のリッテンハイムリゾートへの訪問は、こうして中々会うことがなくなってしまった仲間たちと久しぶりに会うことも目的の一つになっている。

俺は、久しぶりに会ったトールと握手をしながら挨拶した。

「久しぶりトール。元気そうでなによりだ」

「お陰様で。シン殿もお変わりないようで、本当に」

挨拶を交わし合っていると、トールからジト目を向けられてしまった。

「な、なに?」

「相変わらず止まることを知りませんねシン殿は。なんですか? あのマジコンカーは」

「お、ということは送ったやつで遊んでくれたんだな」

「ええ、遊びましたよ。お陰でアナベルが自分もやりたいと駄々をこねましてね。まだ三歳では魔道具の起動もできないので、挑戦しては失敗して、その都度泣くのですよ」

アナベルとは、トールの奥さんであるカリンさんとの間に生まれた女の子だ。

ユリウスの息子ジョアン君と同い年の三歳で、父親同士が幼馴染みで親友で、ゲートもあるので二人は頻繁に会っているそうだ。

「ああ、どこの家も一緒か」

「まあ、正直自分も楽しいと思ってしまったので、子供だけでなく大人にも人気が出るでしょうけど、よくあんなもの作ろうと思いましたね」

「ああ、それはさ……」

どうしてマジコンカーを作ろうとしたのか? という話題になったので、先日オーグと交わした会話をトールに言って聞かせた。

すると、話を聞き終えたトールが額に手を当てて「はぁ」と溜め息を吐いた。

「ちょっと目を離した隙にもうこれですか? 仕方がないことですが、殿下の側を離れたことを後悔しそうです」

「それはしょうがないだろ。次期領主がいつまでもオーグの側近やってるわけにはいかないだろうし」

「それはそうなんですけどね……」

トールはそう言うと、俺に少し寂しそうな視線を向けてきた。

「いつまたシン殿が騒動の中心になるか分からないのに、自分が蚊帳の外にいるのが、なんとなく寂しく感じてしまうのですよ」

「……そっか」

高等魔法学院時代の友人たちとは今でも頻繁に会っているけど、トールとユリウスの二人だけはその立場から会う頻度が激減してしまった。

今までなら、俺やオーグが起こす騒動を間近に見て一緒に騒いでいたのに、今はそれが出来ない。

仕方がないとはいえ、今の俺たちの関係性を改めて実感してしまい、俺たちの間にしんみりした空気が流れてしまった。

「まあ、そんなこと言ってもしょうがないんですけどね。さあシン殿、久しぶりに会ったのですから再会を喜び合いましょう」

「そうだな……っていうか! トールが変な話を始めたんじゃないか!」

「おや? そうでしたか?」

「お前……オーグの側に居過ぎてアイツに似てきたんじゃないか?」

「失敬な。殿下ではなく、むしろシン殿でしょう」

「なんで!?」

「自覚がないところがシン殿らしいですよ」

トールはそう言って笑うと、子供たちが再開を喜び合っているところへと歩いて行った。

「じょあん! あな!」

「「しょーん」」

「「「きゃはは!」」」

同い年の幼児三人が、お互いの名前を呼び合って抱き合い、笑い転げている。

会って名前を呼び合っただけなのに、なにがそんなに楽しいのやら。

「まったく、ショーンってばお子ちゃまなんだか……きょわ!」

幼児たちは幼児だからしょうがないな、と言わんばかりのシャルに、ジョアン君とアナベルちゃんが飛び掛かった。

二人にとってシャルは、割と身近にいて遊んでくれるお姉さんなのだ。

「「しゃるちゃん!」」

「ちょ! なんで二人同時に飛び掛かってくんの!?」

「「「あしょぼ!」」」

ジョアン君とアナベルちゃんに加えてショーンまでシャルに群がりながら、遊んで欲しいと懇願する。

そんな幼児三人に見つめられたシャルは、側で笑っているシルバーに視線を向けた。

「ほら! おにーちゃんもいるよ! 三人とも! おにーちゃんに飛び掛かれ!」

「「「わあっ!!」」」

幼児たちの相手などできないと言わんばかりのシャルは、シルバーを生贄に捧げた。

突然幼児三人の襲撃を受けたシルバーだったが、そこで驚くべき光景が繰り広げられた。

「おっと。三人とも元気だね」

「わあ!」

「しるにーしゅごい!」

「しゅごーい!」

飛び掛かってきた幼児三人を、シルバーは事も無げに受け止め、あまつさえ右手にショーン、左手にジョアン、アナベルちゃんを肩にと三人まとめて抱えてしまったのだ。

三人はまだ三歳とはいえ、三人同時の抱っこは大人でも大変だ。

それが、もうすぐ十歳になる少年となれば相当重いはず。

それなのに、三人を抱き抱えている様子に無理をしているところはない。

「……凄いですねシルバー君」

ちょっと唖然としながらそう言ったのは、トールの奥さんのカレンさん。

「見た目は華奢な少年に見えるのですが……もしかして大分鍛えられているのでしょうか?」

そう言うのはユリウスの奥さんであるサラさんだ。

二人とも、幼児たちと楽し気に戯れるシルバーから目が離せないでいる。

シルバーに幼児を押し付けたシャルは、こういう光景に慣れているのか驚いている素振りはない。

ただ、自分を置き去りにして戯れているので、羨ましがっている素振りは見せている。

いや、それはシャルの自業自得だろうよ。

そんな中、一人冷静だったトールがポツリと呟いた。

「……身体強化魔法」

「お、さすがトール。分かったか」

「分かりますよ。まだ十歳前の少年が幼児三人を抱き抱える。そんなの身体強化魔法を使っていないと無理な話です。というか、もうそこまで教えたのですか?」

「まあね。シルバーって才能があるのか、教えた側から覚えていくからさ。教えるのが楽しくなっちゃてさ」

俺がそう言うと、トールとシシリーが揃って溜め息を吐いた。

「シン殿……もしかしてシン殿は、第二のシン殿を作り出そうとしてますか?」

「え? なんで?」

「シン君、気付いてないんですか?」

トールの話が理解できないでいると、シシリーがちょっと呆れた顔をしながら話しかけてきた。

「なにを?」

「その台詞、マーリンお爺様がシン君に魔法を教えたあとの台詞と全く同じですよ?」

「え? あ……」

そういえば……高等魔法学院入学前に魔法を披露したときに、婆ちゃんに詰め寄られた爺さんがそんなことを言っていた気がする。

トールとシシリーは、誰かからそのときのことを聞いたのだろう。

だから、俺の言葉に溜め息を吐いたんだ。

「本当に血が繋がっていないんですか? 言動がマーリン殿にソックリなんですけど」

「こういうのを見ると、子供は血筋ではなく親の背中を見て育っているのだと実感しますね」

「自分たちは気を付けましょう、シシリー殿」

「そうですねトールさん」

そう言って頷き合ったトールとシシリーは、同時に俺を見た。

わ、分かってるよ。

「お、俺も自重します……」

「そうしてください」

「もう、本当に気を付けてくださいね? 頑張っているのはいいことですけど、シルバーは特にシン君のことを尊敬しているんですから。シン君の言うことなら無条件で信用しますよ?」

「わ、分かりました」

子供たちが楽しそうに戯れている横で、俺はトールとシシリーからお説教を受けていた。

そんな姿を見て、カレンさんとサラさんは笑っている。

「本当に、皆さんはお変わりないですね。トールちゃんが今日のことを楽しみにしていたのがよく理解できます」

「ちょ! カレン!? なんで言うんですか!?」

「あれ? 内緒だった? ゴメンねトールちゃん」

「いや……別にそういうわけではないですけど……」

「そう? 良かった」

「……」

奥さんからの思わぬ暴露にトールは最初抗議していたけど、特に否定するような内容の話ではないので、割とすぐに引き下がった。

っていうか、カレンさんまだトールのことちゃん付けしてたんだな……。

自分の夫でアナベルちゃんの父親なのに……。

色んな意味で辱めを受けたトールは、赤い顔をして俯いてしまった。

「シン殿のせいですよ!」

「なんでだよ!?」

トールから向けられた理不尽な責任転嫁に抗議すると、奥さんたち三人はコロコロと笑い、子供たちはなにがあったのか理解できずにキョトンとしていた。

しばらく会っていなかったトールが、今までと変わらないのは分かったけど……。

子供たちの前で、そういうのはやめろよ、本当に……。