軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

完成、魔道玩具

マジコンカーの開発に着手して数日。

元々魔道車も作っているビーン工房にとって、それのミニチュア版を作ることなど造作もないことだった。

魔道車も、駆動方式はモーターだしね。

それの操作をする操縦機とその機構は前世のラジコンとほぼ同じ形式をとった。

サーボを作り、ハンドリングとアクセルに使ったのだ。

これによって機構も簡単になり、お値段も相当抑えられるようになった。

早速試作品を作り、実際のターゲットである子供、シルバーとアレン君にモニターになってもらった。

家の庭に簡易のコースを作り試してもらったのだけど……。

マックスやレインが自分も遊びたいと大騒ぎになり、二台しかなかった試作品の取り合いが起こった。

結局交代で遊んでもらったのだが、まだか? 早く! と順番の催促でうるさかった。

で、これは魔道具の起動ができないと使えないので、ウチの次男であるショーン(三歳)が遊べなくて泣いてしまった。

『まどうぐのれんしゅう、いっぱいしゅる!』

と泣きながら宣言するほど遊びたかったらしい。

これなら、継続的に魔道具を使って遊ぶという目標も達成できそうだ。

ただ、デザインが実際の魔道車と同じではダサいと言われてしまったので、むしろその外観の製造に一番時間を食った。

子供たちに色々と意見を聞きながら子供ウケのいい外観が出来上がり、マジコンカーは完成した。

子供用ドライヤーに至ってはもっと簡単で、なにを作るか決める会議があったその日のうちに試作品が出来上がった。

あとは、実際に使用する立場からの意見としてシャルとヴィアちゃんとクレスタさん、あと新しくシャルの友達になってくれたアリーシャちゃんにモニターとして使って貰い、問題点を洗い出した。

ヴィアちゃんは王女様だから普段は自分で髪をセットすることはない。

けど、今回の魔道具の目的は子供のころから魔道具を使ってもらって基礎魔力量が増えるかどうかを調べるものなので、ヴィアちゃんにも積極的に使ってもらうことになっている。

なので、ヴィアちゃんにも参加してもらったのだ。

四人からの評価は、機能と使い勝手については文句なし、すぐにでも毎日使いたいとクレスタさんとアリーシャちゃんは試作品の購入の意思まで示した。

問題点としては、女の子たちにも外観が可愛くないと口々に言われた。

まあ、試作品の魔道車もドライヤーも大人向けの商品をそのまま小さくしただけだからね、子供にとっては味気ないのだろう。

四人でああでもないこうでもないと相談した結果、女子たちの満足いく外観が仕上がり、子供用ドライヤーも完成した。

と、完成品が出来上がったので見せるため、オーグに連絡を入れた。

「で、これが完成した玩具か」

「そう。これはもう知ってると思うけど、子供向けドライヤーな」

「わたくしも開発に参加しましたの! このデザインは、わたくしの案が採用されましたのよお父様!」

「ねえさまがつくったの?」

オーグの横で、ヴィアちゃんが誇らしげにオーグに話しかけている。

ヴィアちゃんとオーグを挟んで反対側にはヴィアちゃんより小さい、オーグそっくりな男の子が座っていて、ヴィアちゃんの発言に目を丸くさせている。

オーグとエリーの第二子、第一王子ノヴァク君だ。

普段は皆からノヴァ君と呼ばれている。

そのノヴァ君から羨望の眼差しで見られ自尊心が満たされたのか、ヴィアちゃんは得意気な顔をしている。

そんなヴィアちゃんを見て、オーグが目を細めて笑い、その頭を撫でた。

「確かに、女児向けの可愛らしいデザインだな」

「ええ、本当に、よく頑張りましたねヴィア」

「ねえさま、すごい!」

「ふふ」

オーグがヴィアちゃんの頭を撫でながらそう言い、エリーもヴィアちゃんを褒め、ノヴァ君が感嘆の声をあげると、ヴィアちゃんは照れ臭そうにしながらも誇らしげに胸を張った。

「で、問題はこれだ」

「問題?」

シルバーにもアレン君にも、マックスやレインにも好評で、ショーンがこれで遊びたいがために魔道具の練習をするとまで言ったマジコンカーが問題?

どういうことだ? とオーグを見ると、オーグは溜め息を吐いた。

「お前、これ。魔石使ってるだろ」

「うん」

マジコンカー用モーターとステアリングサーボを動かすのに小さい魔石を使っている。

そうしないと動かないから。

「お前……子供向けの玩具に魔石を使うとか……」

そう言って頭を抱えるオーグだったが、知らないのか?

「クワンロンから大量の魔石が輸入され始めて、問題が出てるの知らなかったか?」

「魔石輸入の問題? どれだ? 色々あってすぐには分からん」

「輸送の方」

「……ああ、魔石の破損のことか」

「そう、それ」

俺が受けていた相談というのがそれだ。

クワンロンとの交易で最大の目玉となる魔石輸入。

それを一手に引き受けているシャオリンさんから、輸送の際に魔石同士がぶつかって破損し、売り物にならない小さい魔石ができてしまうと相談を受けていた。

それなら、魔石と魔石の間に緩衝材を入れればいいんじゃないか? とアドバイスしたのだが、魔石はクワンロンでは捨て値で売られているほどありふれたもの。

そんなもののために使い捨ての緩衝材を使うなど勿体ない。

破損しても、人が吸い込むほどの小ささにはならないので特に危険はない。

なら、多少破損してもいいように大量に詰め込んでしまえと、クワンロン本国の商会から俺の案は却下されてしまった。

結果、破損してできた小さい魔石……『クズ魔石』が大量に出てしまった。

クズ魔石は小さくて魔道具に使うには出力が足りないということで、利用価値のない魔石が大量にできたのだった。

しかし、その利用価値のない小さい魔石こそ、この魔道玩具、マジコンカーに必要なものだった。

「魔石の輸送の際に出るクズ魔石で出力は十分賄えるから、本来なら使い道がない、廃棄するにもできないクズ魔石を利用することにしたんだ」

ということで、魔石は使っているけどタダで大量に手に入るものなので、その分の値段の上乗せはしないし、できない。

結果、安価で提供できるという訳だ。

これが、あっちの問題を解決してこっちの問題も解決できると親父さんと話した内容だ。

俺が説明を終えると、オーグはようやく納得した顔になり、操縦機を手に取った。

「なるほどな。それで、これはどうやって遊ぶのだ?」

「えーっと、まずこのマジコンカーを広い場所に置いて、と。魔力を込めながら左の親指のレバーを前に倒してみ」

「こうか」

俺の説明通りにオーグが魔力を込めると、マジコンカーが動き出した。

「む、お、動き出したぞ!?」

「右の親指のレバーを魔力を込めながら左右に倒すと、その方向に曲がるぞ」

「こ、こうか!」

俺の説明通りにオーグが操縦機を操作すると、マジコンカーは部屋の中を縦横無尽に走り出した。

「左のレバーを手前に倒すとバックもするぞ」

「む、なるほど。これはぶつかった時などに便利だな」

マジコンカーの操作方法はこれだけだ。

すぐに操作のコツを掴んだオーグは、しばらく部屋の中でマジコンカーを走らせ続けた。

部屋中を走り回るマジコンカーを無言で見つめる俺たち。

「ふおわぁ……」

あ、ただ一人ノヴァ君だけは感嘆の声を漏らしてるわ。

家でもノヴァ君と同い年のショーンを魅了したマジコンカーは、ノヴァ君も虜にしてしまったらしい。

しばらくノヴァ君の「うわあっ!」「すごい!」という声だけが部屋に響く時間が過ぎる。

その時間に痺れを切らしたのはヴィアちゃんだった。

「お父様も、マックスやレインと同じですわね。ずっと操縦機を離さないのですもの」

友人である男の子たちと同じ状態になったオーグを見て、ヴィアちゃんは「大人なのに」と呆れたように溜め息を吐いた。

その言葉が地味にショックだったのだろう、オーグはマジコンカーを足元まで操作して戻すと、操縦機を俺に返してきた。

その操縦機を「ぼくも! ぼくもやりたい!」とノヴァ君が強請ってきたけど、これは魔道具。

起動できないと遊べないとオーグが説明すると、ノヴァ君はショックを受けた顔をしたあと、涙を堪えた真剣な顔で「なら、まどうぐのれんしゅうします!」と宣言した。

まさか三歳の幼児が、自分から魔道具起動の練習をすると言うとは思いもしなかったのだろう、オーグは少し目を見開いた。

「そうか。なら、魔道具をちゃんと起動できるようになったらノヴァの分も買ってやろう」

その言葉に、ノヴァ君は目を輝かせた。

「わかりました! やくそくですよちちうえ!」

「ああ」

オーグは微笑みながらノヴァ君の頭を撫でると、操縦機を俺に手渡した。

「うむ、中々楽しい玩具ではないか。これなら初等学院の上級生たちにも使って貰えるだろう」

「大人でも楽しそうですものね」

マジコンカーの感想を述べるオーグに対して、ヴィアちゃんが冷たい。

「いやいや、ヴィアよ。これは実際大したものだぞ? 子供だけでなく、大人も夢中になるに違いない代物だ」

「確かに、シンさんと戯れているとき以外で珍しくオーグが楽しそうにしていましたね」

「それだけこの魔道玩具が素晴らしいということだ」

「私も、少し遊んでみてよろしいですか?」

「ああ、エリーも試してみるといい」

オーグがそう言うので、エリーに操縦機を渡す。

さっきした説明を聞いていたので、エリーはすぐにマジコンカーを走らせることができた。

エリーは魔法が使えないけど、魔道具の起動はできるからな。

というわけで、マジコンカーは問題なく起動できたのだけど……。

「あら? あらあら?」

魔道具を起動できるのと、それを上手に使いこなせるかというのはまた別問題で……。

エリーは自分の意思通りにマジコンカーをコントロールできていない。

その結果……。

「うわっ!」

「きゃあっ!」

部屋に控えていた侍従や護衛、メイドさんたちを巻き込みながらマジコンカーを暴走させていた。

逃げ惑う侍従さんやメイドさんたち。

さすがに護衛たちは逃げはしなかったものの、エリーが操縦するマジコンカーを無理矢理止めるのは憚られる様子。

思わぬマジコンカーの暴走に、ノヴァ君は大はしゃぎ。

結果、部屋中が大混乱に陥った。

「あら? あら? あら?」

「エ、エリー! もう十分だろう!? 操縦機を離せ!」

「え? あ、はい」

エリーはプチパニックに陥っていたのだろう、オーグに操縦機を離せと言われて、パッと両手を広げて操縦機を離した。

「うおい!」

流石にその高さから落としたら壊れるかもしれなかったので慌ててキャッチした。

「あら、ごめんなさいシンさん。壊してしまうところでしたわ」

「あ、ああ。大丈夫、問題ない」

「それにしても……これは楽しいですわね」

「「え?」」

あれだけ操縦不能になっていて……楽しかった?

「なんといいますか、あのように縦横無尽に走り回らせるのは爽快感がありますわ。シンさん、私もお一つ購入してもよろしくて?」

「あ、ああ。それはもちろんいいんだけど……」

まさか購入の意思まで向けてくるとは思っていなかったので、オーグを見ると引きつった顔をしていた。

「……それは良いが、走らせるのは専用の走行場を作ってからだ。城の中で走らせたら怪我人が出るかもしれんからな」

「まあ! 専用の走行場を作ってくださいますの? それは今から楽しみですわ」

エリーが珍しく楽しそうだ。

そんなにマジコンカーが気に入ったのか……。

オーグはともかく、エリーは本当に以外だったな。

王太子妃も好んで遊んでいると触れ回れば女子にも人気が出るんじゃなかろうか?

……まあ、あの腕前では皆に披露するのはやめておいた方がいいかな。

「ははうえ! ははうえかっこいい!」

そんなマジコンカーを暴走させたエリーを見て、興奮冷めやらぬ様子なノヴァ君。

なにがそんなに彼の琴線に触れたのだろうか?

おじさんにはサッパリ分からないよ。

「ノヴァ……あなたねえ……」

姉であるヴィアちゃんもさっぱり分からない様子だ。

「ん、んん! ともかく、これは私の想像を遥かに超えるものだ。早速これを売り出し、子供たちに魔法使いの適正が現れるかどうか様子を見てみよう」

「そうだな。魔法使いの適正再検査もするか?」

「しないと検証のしようがないからな。一年間様子を見て、再検査してみるとするか」

こうして、マジコンカーと子供用ドライヤーは王家お墨付きという触れ込みで売り出すことを承認された。

その結果、アールスハイドだけでなく、周辺国全てにまであっという間にマジコンカーと子供用ドライヤーは普及していった。

さて、どういう結果が出るのか、今から楽しみだ。