軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ムカムカしました

「は?最初は騎士学院の生徒だけで魔物を討伐するって?」

「ああ、騎士学院生の希望でな。どうも言葉だけではこの訓練の意義が理解できないらしい」

オーグがジークにーちゃん達にこれまでの経緯を説明してる。

ジークにーちゃんもクリスねーちゃんも呆れ顔だ。

「はぁ……戦場を知らない学生の小さいプライドかよ」

「何を考えているのですか? あなた達は」

「わ、私達は騎士学院のトップです! 魔法使いの支援など無くても魔物を討伐してみせます!」

二人に苦言を言われた騎士学院の生徒達は、既に引っ込みが付かないのか、強硬に自分達で魔物を討伐すると言い張った。

「そういう訓練じゃねえって言ってんだろうが!」

「ジーク、もういいです。殿下の仰る通り、言っても駄目なら体験してみれば良いのです」

「しかしよ!」

「今回の訓練は初めての試みです。それに、騎士や剣士が魔法使いの支援を必要としたくない、魔法使いが騎士や剣士の支援を必要としたくないのは軍に入ったばかりの新人にはよくある事です」

「確かによくあるけどよ……」

「それが少し早まっただけだと思えば良いです。そういった場合この措置はよく取られます」

「……学生の内に経験しとけば軍に入ってからの面倒が無くて良いって事か」

「そういう事です、それに今回の訓練にはシンもいます。万が一も無いでしょう」

「それもそうか」

おお、ジークにーちゃんがクリスねーちゃんに同意したぞ。

俺の事で……。

何か釈然としないけど、とりあえず騎士学院の生徒にまず魔物を討伐させる事に決まった。

「魔法学院の生徒はそういう事無いんだな」

「一人納得して無さそうなのがいるけどな」

そう言ってオーグはマリアを見る。

「な、何ですか?」

「いや、メッシーナはこの訓練の意義を良く理解しているのかと思ってな」

「理解してますよ。あんなの二回も見せられたら……私の力だけでは何も出来ない、騎士や剣士の支援が無いと……癪ですけど」

「ああ、そうか。ええとマリアちゃんだっけ? 君は魔人とシンが戦ってるのを見たんだな?」

「は、はい!そうです!」

「では釈然としなくとも理解はしてる訳ですね。シンの戦闘を見たから」

「はい。あんな事、魔法も剣も使えるシンにしか出来ませんよ」

「何? ウォルフォードは剣も使えるのか?」

「どうせ大した事無いんでしょ」

「所詮は魔法使いだからな」

……何で俺が標的になってるんだよ。

「クック、まあそういう評価だよな、普通は」

「それもすぐ分かるでしょう。さて、いつまでもここにいてもしょうがありません。そろそろ行きますよ」

クリスねーちゃんの号令で訓練予定場所までやっと行く事になった。

出発するだけでこんなに時間を食うとは……先が思いやられる……。

そして森に到着し、更に奥へと入って行く。

森の奥へ行くほど人の手が入りにくいので、強力な魔物が残りやすいのだ。なので今日の俺達の標的は中型から大型の魔物という事になる

索敵魔法を使いながら歩いているが、森に入ってから皆の口数が少なくなった。

「どうしたんだ、急に黙り込んで」

「それはそうだろう。初めて魔物と戦うんだ、緊張しない方がおかしい」

「シンだって初めて魔物と戦った時は緊張したでしょ?」

「……どうだっけ?」

「ああ、俺……マーリン様に聞いた事あるわ、その話」

「私もです」

「え?どんな話なんですか?」

「……聞かない方が良いと思うぞ?」

「確実に自信を喪失しますからね」

「そこまで言われるとむしろ気になります!」

「私達も聞きたいです。クリスティーナ様、聞かせて頂けませんか?」

「俺は!?」

「そうですね」

「無視かい!」

「はあ、うるさいですね。それならアナタが話して下さい」

「元々そのつもりだったんだけどな……まあいいや。シンがつい最近までここより深い森の奥で生活してたってのは知ってるか?」

「はい。行った事あります」

「私達も話だけなら……」

「そんな森の奥で生活するにはある程度狩りも出来なきゃいけないらしいんだが、シンが狩りも十分出来るようになったから魔物の討伐も教えようとしたんだとさ。それで、索敵魔法を教えてすぐに魔物を見つけたらしい」

「それで、シンはどうしたんですか?」

「魔物を見つけたシンは……何の迷いも見せずに魔物の元にダッシュで向かったんだとさ」

「躊躇なしですか?」

あの時は、早く倒しに行かないとって、それしか考えてなかったらな。

「シン君のあの話の前にはそんな事があったんですね」

「あの話ってなんだ? 私達は知らないぞ」

「じゃあ続きを話してやろう。魔物の元に向かったシンが見たのは……シン、何の魔物だった?」

「三メートル位ある赤毛の熊の魔物だったよ」

「それって!」

「まさか……レッドグリズリー……」

「マーリン様に聞いたから間違いない。まさかの事態にマーリン様も戸惑ったらしい。初めての魔物討伐にしては相手が悪すぎるとな……ところがコイツは……」

そう言ってジークにーちゃんが俺を見る。そしてクリスねーちゃんが後を引き継いで話し出した。

「シンは、またしても何の躊躇いもなくレッドグリズリーの魔物に飛び掛かり、両腕と首を切り飛ばして瞬殺したそうです」

「レッドグリズリーなんて、軍でも何人かでようやく倒せるってのにな……」

「な! 切り飛ばした!?」

「それって……魔法じゃなく剣で討伐したって事よね……」

「魔法学院の首席なのに剣も使いこなせるのか?」

「しかも……」

「まだ何かあるんですか?」

「シンはその時、十歳だったそうです」

「じゅっ!?」

オーグ達には一度話した事があるからあんまり驚いてないけど、騎士学院の生徒達は絶句してる。

やっぱ十歳で熊はやり過ぎたか?

「そういう訳だからさ、事魔物討伐に関しては緊張なんてした事無いんじゃねえか?」

「まあ、確かに……!」

そんな話をしてる時に、索敵魔法に魔物の反応が掛かった。しかも真っ直ぐにこちらに向かっている。

「ジークにーちゃん」

「おう、分かってるよ。よし! 騎士学院の諸君、出番だよ!」

そのジークにーちゃんの声に皆に緊張が走る。

とりあえずクライス達に対処してもらおう。勿論、危険が無いように俺も準備はしておく。

「もうすぐその藪の向こうに魔物が現れる。戦闘体制を取れ」

ジークにーちゃんの言葉にクライス達は剣を抜いて構える。そして……。

『ブモオオオオオオオオオ!!!』

現れたのは二メートル位の猪だった。

魔物化してなきゃ結構旨そうなのに、勿体無い。魔物化すると魔力が変質するのか食べられなくなってしまうのだ。

「シンお前……何か変な事を考えていないか?」

何故バレた!? 最近オーグの勘が鋭くて恐い。

そして、クライス達騎士学院の生徒達は恐怖に身体を震わせながらも気合いを入れた。

「ビビるな! 俺達騎士学院トップの実力を見せ付けるんだ! 行くぞ!!」

『おお!!』

そして、突進してくる猪にこれまた突撃して行くクライス達。

すり抜けざまに一撃を入れようとするが、猪の方が早い。

『ブモオオオオオオオオオ!!!』

『うわああ!!』

全員避けきれなくて、吹き飛ばされた。車に跳ねられたみたいになってるけど、正面衝突じゃないだけマシか。

そしてクライス達を跳ね飛ばした猪が振り返り、再度自分に剣を向けたクライス達を視界に捉える。

クライス達は跳ねられた衝撃からまだ立ち直れずにいる。

再び突進して来た猪を絶望の表情で見るしか出来ないクライス達。

これでちょっとは思い知ったかな?

俺は突進して来る猪の前に立ち、バイブレーションソードを取り出す。そして突進を避け、すれ違い様に下から上に首を狙ってバイブレーションソードを振り抜く。

スッパリ首チョンパされた猪はその勢いのまま地面を滑り、クライス達の目の前で止まった。

「ヒイッ!」

「い……一撃……!」

あ、クライス達動けないから、目の前に猪の魔物の死体が飛んできて超ビビってる。

「いつの間に……」

「さすがですね」

「そ、それより、騎士学院の皆さんを回復しないと!」

「待って下さいシシリーさん。今、痛みのある内に彼等を説得しますので」

そう言ってクリスねーちゃんがクライス達の元へ行く。

「不様ですね。あの魔物は中型でも弱めの魔物ですよ? それなのに大言壮語を吐きながらこの有り様です」

クライス達は痛みと、自信を砕かれたのだろう悲痛な表情をしていた。

「分かりましたか? 騎士学院のトップと驕っていたようですが、所詮戦場を知らない学生の中の話なんです。軍に入ってご覧なさい、アナタ達は一番弱い。それこそ去年入った新兵にすら敵わないでしょう」

クライス達はますます落ち込んでいく。

「そんなアナタ達でも、あの程度の魔物なら魔法使いの支援があれば討伐出来るんです。アナタ達は弱い。その事を身に刻みながら残りの訓練に参加しなさい」

「……はい」

クライス達はもう泣きそうだ。ちょっとやりすぎじゃね?

そんな落ち込んでいるクライス達にシシリーが駆け寄った。

「あ、あの、今から回復魔法を掛けるのでじっとしてて下さいね」

そう言って回復魔法を掛ける。

「……俺達はお前達を見下してたのに……」

「そんなの気にしてないですよ。今は同じパーティなんですから、これくらい当たり前です」

「アンタ……」

回復魔法を掛けながらニッコリ笑うシシリー。

……なんだろうな? シシリーを見るクライス達の目がおかしい気がする。そして、凄いムカムカする。

そして回復魔法を掛けられ立ち上がったクライス達はまず俺の方を見た。

「……助かったウォルフォード……礼を言う」

「……良いよ、気にするな。シシリーも言ったろ、パーティなんだから」

「フ、そうだったな。それにしても、あれを一撃とはな……ウォルフォードに嫉妬していた自分が恥ずかしくなる」

「……凄かったわ」

「次はちゃんと連携して、魔物を討伐してみせる」

「ああ、そうだな」

嫉妬って。やっぱりあれか、今回も魔法使いが魔人を討伐したから騎士の卵としては面白くなかったのか。

そして今度はシシリーの方を向いた。

「アンタは……まるで聖女様みたいだな」

「俺……女の子にこんなに優しくしてもらった事無い……」

「俺等の周りにいる女子といったら……」

「何よ? 何が言いたいのよ!」

「いや……別に……」

「私は目が覚めた、これからはアンタを護る為に戦おう」

「アンタには傷一つ負わせないぜ!」

「そういえば名前は……」

「シシリー=フォン=クロードですけど……」

「シシリー、私が君を護る!」

「何を言ってる!俺が護るんだよ!」

「いや、俺だ!」

……優しい女の子に免疫の無いアイツ等は、シシリーに優しくされて気に入ってしまったみたいだな……。

何だろうな……アイツ等がやっと連携を取るつもりになったのに、ムカムカが治まんねえよ。