軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やっと魔法の練習を始めました

シュトロームの目的は帝国だった。

その為に王国で実験をしていたらしい。オーグに聞いた所、魔人騒ぎが起きる前から魔物の増加は問題になっていたとの事。

それもシュトロームの実験の被害の一つだそうだ。

シュトロームが王国からいなくなったので魔物の増加は治まるかと思いきや今も増え続けているらしい。

以前は、一年気付かない程巧妙に増え続けていたらしいのだが、ここ最近は目に見えて増えているのだとか。どうも帝国で魔物が増加し、それが流れて来ているのではないか。というのが王国の予想だ。

その帝国……いや旧帝国と呼ぶべきか。そこからは何の声明も出ていない。

何も動きが無いなら、下手に刺激をしなければ何も起こらないのでは? という楽観論を語る者も少なくない。

しかし、シュトロームは人間の事をどうでもいい存在と言い切った。いつ、どんな行動に出るか想像も付かない。

それこそ、人間を虫けらのように殺して回るかもしれない。

全て予想で『かもしれない』ばかりだが、可能性は高いと言わざるを得ない。

そこで、他の国と連携しひとまず旧帝国を監視するという事で話を進めるらしい。

俺達はと言えば、今の内に出来るだけ戦力を上げておこうという事で、研究会での魔法の練習は更に熱を帯びて行く事になった。

「ようし、それじゃあ現状でどれくらい魔力制御が出来るようになったか確認するよ。自分の出来る限界まで魔力を集めて」

そうして皆は魔力を集めだす。魔力は目に見えないが、魔力感知をすると集めている魔法使いに向かって大気中の魔力が集まっていくのを感じる事が出来る。集まる魔力が多いと、魔力感知が出来ない一般人でもその圧力を感じ取れる。

これまでは集まる魔力の量が少なかったが、戦争が始まる前から始めた魔力制御の練習のお陰で、皆これまでより確実に魔力量が増えている。

この世界での魔力量とは『制御出来る魔力の量』だ。人間に魔力を溜めておく器官など無い。その為、大きな魔法を使う為には周りにある魔力を集めてそれを制御する必要がある。

その制御出来る魔力が魔力量だ。

「うん、いいね。じゃあそのまま魔力障壁を展開して」

俺の言葉で魔力障壁を展開する皆。うん、これまでの魔力障壁より厚くなってる。これなら十分かな?

「よし、皆障壁を解いて。いいね、これなら十分イメージ通りの魔法を使えそうだ」

「じゃあ、やっとゲートを教えて貰える?」

「まあ、それも含めてね。ゲートばっかりに拘ってると攻撃魔法も防御魔法も中途半端になっちゃうから」

「それでいい。全部覚える」

リンは相変わらず魔法の事になると積極的だな。

「どうする? 各々のやりたい事をして貰う予定だったけど……こういう事態になると攻撃、防御、身体強化と全体的に底上げしといた方がいいと思うんだけど?」

「そうだな……以前は、まさかこんな事態になるとは思ってもみなかったからな」

「いいんじゃない? 私も防御だけ強化するのは不安に思ってたし」

「私も、やっぱり治癒魔法をもう少し鍛えたいです。もちろん攻撃魔法も鍛えたいです」

「拙者は身体強化と防御で良いで御座る。どうにも攻撃魔法は苦手で……」

「じゃあ、個別でやるんじゃなく、皆で同じ事やろう。それと、ユリウスは攻撃魔法も覚えようか。苦手とか言ってないで」

「う……が、頑張ってみるで御座る……」

本当にユリウスは肉体派だな。魔法学院の生徒のくせに。

じゃあ、どうしようかな?攻撃魔法の練習は練習場を使わないといけないけど……あ! 良い事思い付いた。

「じゃあ、まずは攻撃魔法の練習から始めようか?」

「それは構わないが……練習場はどうする? 使用予約は取ってないぞ?」

「良いところがあるんだ。俺が練習してた所なんだけど、そこならどんなに魔法をブッ放しても構わないから好きなだけ練習出来るよ」

「へえ、シンの練習してた場所ね。確かにシンが好きなだけ魔法を使って良いって言うなら……」

「ですね。シン殿のあの魔法に耐えられる場所なら……」

「何しても大丈夫だよね!」

……ん? 評価の内容がおかしくない?

「……とりあえず行くよ。そこで説明しながら実践していこう」

そう言ってゲートを懐かしい荒野に繋げた。

「ここがシン君が練習してた場所ですか……」

「ねぇ何かぁ……異常にボコボコになってない?」

「確かに。ボコボコ」

「……クレーターとか何かが溶けた跡とかあるのですが……」

「別の世界に紛れ込んだ感覚に陥るで御座るな」

連れてこられた皆はアチコチ見回ってる。ここなら、態々練習場の申請をしなくても攻撃魔法の練習が出来る。我ながらナイスアイデアだな。

「さて、攻撃魔法を練習する前に、皆は魔法を使う時どんな事をイメージしてる?」

「どんなって、普通は魔法を指導してくれる先生に魔法を使って貰って、それをイメージするものだが……」

「そういえば、賢者様がウォルフォード君のイメージは特殊だって言ってた」

「確かに言ってたわね。シンは『結果』じゃなく『過程』をイメージしてるって」

「そう、『結果』だけイメージするとそれしか使えなくなるよね? だから皆には『過程』からイメージ出来るようになって欲しいんだ。そうすれば、魔法の幅が増えるからね」

「でも、過程って言っても自分には皆目見当も付かないのですが……」

「それをね、練習する前に教えようと思うんだ」

そう言って異空間収納から机とロウソク、それにビーカーを取り出す。まずは火からかな。

「まず、このロウソクに火を付ける」

種火の魔法で火を付ける。

「まあ、当然火が付いて燃えるよね」

皆が頷く。

「じゃあ、これを消すにはどうする?」

「え? 息を吹き掛ければ消えるんじゃないんですか?」

「まあ、それでも消えるけどね。でもこのビーカーを被せると……」

「……あ! 消えた!」

「何で消えたと思う?」

「何でって……そんなの分かんないよ!」

「火ってさ、燃えるのに燃料がいるのは分かるよね?」

「まあ、燃料がないと燃えないよねえ」

「その燃料って、例えばこのロウソクならロウだよね。でもそれだけじゃないんだ」

「えっとぉ……ダメ分かんない、どういう事ぉ?」

「例えば……炉を燃やす時、火力を上げるのに石炭や木炭に火を付けてから何かするよね?」

「あ! フイゴで空気を送るッス!」

「そう、その空気の中に火を燃やす為の燃料がある」

「へえ、でも息を吹き掛ければ消えるよね?」

「それはロウソクとか種火なんかの小さい火だけな。火事とか焚き火なんかの大きい火が息で消えるか?」

「確かに、消えない」

「まあ、気になるならまた後で教えるけど今はこっちな。この空気の中に『酸素』という火を燃やすのに必要な気体が混じってる。その酸素を使って燃焼をすると不燃性の『二酸化炭素』というものを生み出す。このビーカーの中でロウソクを燃やすと、中の酸素を使って燃焼する。そうすると二酸化炭素が発生する。徐々に酸素が減って二酸化炭素が増えると……」

もう一度ロウソクに火を付けてビーカーを被せる。

「……そうか、その二酸化炭素とやらは不燃性だ、それが増えれば……」

「……消えました」

「これが、簡単な燃焼の仕組みな。んで話を魔法に戻すと、まず火を出す。これは皆出来るよね?」

指の先に火を出しながら聞く。皆が頷いてる。

「そこにさっきの酸素を供給されるようにイメージしていくと……」

「……火が……青白くなっていってます……」

「この火を撃ち出すと……」

近くの地面に向けて撃つ。

ドウッ!

地面が融解した。

「と、こういう魔法が使えるようになる。んで、俺が試験の時とかに使ってたのは、この火に回転を加えて高速で撃ち出したものだ」

そう言いながら炎の弾丸を撃つ。

ドグワッ!

大量の土砂を撒き散らしながら着弾した。

「こういうのを教えようと思うんだけど、どうかな?」

皆真剣な顔で炎の弾丸が着弾した所を見ている。

「凄い。やっぱりウォルフォード君に研究会を作って貰って良かった」

「凄いけど……凄すぎて覚えるのが恐いわね……」

「シン君、治癒魔法にもこういう原理ってあるんですか? 確かこの制服に凄い付与をしてましたけど、それってその魔法が使えないと付与って出来ないんですよね?」

「あるよ。それはまた追い追いな。今日はこの火の魔法の練習だね」

こうして、練習の前に講義をしてから練習するというスタンスが出来た。これで皆のレベルアップが出来るように頑張って教えて行こう。

するとアリスからこんな事を言われた。

「ねえシン君、態々ここで講義をしなくても、研究室で黒板使って講義してからここに来て練習した方がわかりやすいよ」

「……」

それもそうだな……