軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルティメット・マジシャンズ新規入団試験

アルティメット・マジシャンズ新規入団試験。

いよいよその最終試験が開始される。

試験会場は、アールスハイド魔法師団の演習場を借りることになった。

これから新規団員の訓練を行うことを考えると、自分たちの演習場を確保した方がいいかもしれない。

俺たちの練習場として例の荒野があるけど、あれはゲートがないと行けないしな。

新団員が自主練習をするためにも、徒歩で行ける演習場はあった方がいい。

ちょっとオーグと相談してみよう。

そんなことを考えていると、オーグが最終試験受験者の前で演説を始めた。

「皆、よく集まってくれた。私はアルティメット・マジシャンズ副長のアウグストだ。これから新規入団最終試験を行う。試験内容は実技、それと面接となる。まずは実技からだ。皆の実力を如何なく発揮してほしい」

簡潔にそれだけ言うと、さっさと下がってしまった。

受験者を見ると……ああ、いきなり出てきたのがアールスハイドの王太子だから、ガチガチに緊張してるわ。

ここに集まっている面子は、徹底した素性調査を経て集められた人材なので、人格的に問題のない人が多く、変に騒いだりする人はいない。

自信なさげに俯いちゃってる人もいるけど、キリッとした顔で真剣に試験に臨もうとしている人の方が多い。

そんな真面目な人ばかりな受験者を集めて実技試験を行う。

高等魔法学院の入学試験のように、自分の得意な魔法を全力で行うのではなく、色々な魔法を使ってもらう。

ただし、一つ条件がある。

受験者を実技試験場所まで案内してくれたカタリナさんが、受験者に向けて説明し始めた。

「これから実技試験を行います。今回の試験では自分の使える限りの魔法を色々と使って頂きます。攻撃魔法でも補助魔法でも治癒魔法でも構いません。使える限りの魔法を使って下さい」

その説明で、受験者の顔に肩透かしを食らったような戸惑いが生まれた。

「ただし」

そんな受験者に向けて、カタリナさんが言葉を続けたのだが、その言葉を聞いて受験者の顔が戸惑いから驚愕に変わった。

「詠唱は一切なし。無詠唱で行って頂きます」

その言葉を聞いた瞬間、受験者の間にざわめきが起こった。

「む、無詠唱ですか? それになんの意味が……」

「お答えすることはできません」

受験者の質問を、一刀両断でぶった切るカタリナさん。

カタリナさんは見た目が仕事の出来る秘書さんなので、その容貌でキッパリ言われると妙な迫力がある。

今質問した受験者も、それ以上追及することもできず言葉を詰まらせた。

「他に質問はありますか? なければ呼び出された方から順番に魔法を披露してください。それでは……」

こうして、実技試験が始まった。

「お疲れ様でした。それでは、このあと一時間休憩してから面接を始めます。軽食を用意してありますので、よろしければ召し上がってください」

実技試験が終わり、次の面接まで休憩だと告げたカタリナさんは、それまでの冷静な秘書の顔から一転して柔らかい笑みを浮かべて受験者を労った。

そのギャップに、男性受験者の何人かがポウッと顔を赤く染める。

これは、カタリナさんのギャップにやられたな。

カタリナさんに見惚れて動けない男性受験者と違い、女性受験者はカタリナさんに話しかけていた。

「あの、失礼ですが貴女もアルティメット・マジシャンズのメンバーなのでしょうか?」

「私ですか? まあ、アルティメット・マジシャンズに所属しているといえばそうですが、私は事務員ですよ。魔法使いではありません」

「え、そうなんですか? じゃあ、もし試験に落ちても事務員で採用されたり……」

「さあ、それは分かりません。私たちは厳密に言えば国から派遣されているのです。もし新規で事務員も募集するとなるとどんな条件になるのか……」

「ご存じないんです?」

「ええ、すみません」

「あ、いえ! ち、ちなみにご出身は?」

「私はスイードです」

「あ、私もです! スイードでどんな仕事をしていたんですか?」

「私は総務省の官僚でした。そこでの仕事が認められて事務員に抜擢されたのです」

「省庁の官僚……超エリートじゃないですか!! そっか、そんな人じゃないと事務員にはなれないんだ……」

「それは分かりませんが、まずは目の前の試験に集中してください。受かればそんな心配は杞憂になるのですから」

「そうですね、ありがとうございました!」

そういえば、オーグが事務員も新規で募集するって言ってたな。

それはまだ公表されてないし、条件も決めてない。

事務員に関してはカタリナさんたち事務員さんに決めてもらう方がいいのだろうか?

まだやることが山積みだな。

実技試験の評価が書かれた書類を見ながらそんなことを考えているとあっという間に休憩時間が終わり面接が始まった。

面接官は、俺、オーグ、カタリナさんにアンリさんだ。

アンリさんはアルティメット・マジシャンズの営業として色んな人と会っているから人を見る目が高い。

そういう理由で面接に参加してもらっている。

カタリナさんは、もう事務方トップな感じなのでいるのが当たり前になってるな。

こうして始まった面接だが、受験者たちは皆緊張でガチガチになっていた。

まあ、就職の面接みたいなもんだもんな。

しかも最終試験。

これの出来如何で採用されるかどうかが決まるのだから緊張するなという方が無理だ。

なので、俺はなるべく圧迫面接っぽくならないように気を遣っていたのだが、隣に座ってる奴がな……。

「うちに入団したいと思った動機は何だ?」

「得意な魔法は?」

「学院生時代、どのような活動をしていた?」

「今の所属先ではどのような仕事をしているのだ?」

オーグは王族だから仕方ないのかもしれないけど、質問の仕方に一切気を遣う様子がない。

質問の内容自体は問題ないので言い方なんだろうけど……。

受験者たちはオーグから質問をされるたびにビクッとしたり、涙目になったりしていた。

お陰で、面接を終えて部屋を出て行く受験者たちは、皆グッタリして出て行くのだった。

「はぁ……お前、もうちょっと言い方に気を付けろよ。受験者圧迫してどうすんだよ」

俺は、最後の受験者が出て行ってからオーグにそう文句をつけた。

「む? ならそういえばよかったではないか。全て終わってから言われてもな」

「途中で言ったら、先に面接受けた人と不公平になるから黙ってたんだよ」

俺がそう言うと、オーグはなにやら不満そうな顔になったが、アンリさんがフォローするように口を開いた。

「まあまあ。殿下は王族の、しかも王太子ですから。敬語や丁寧語で話す相手など、他国の王くらいでしょう。仕方がありませんよ」

「そうです。むしろ、最初に上下関係を教え込んでいた方が後々やりやすくなります」

アンリさんの言葉に続いてカタリナさんもオーグをフォローした。

いや、っていうか上下関係って……。

でも、まあ、新規団員にとってはそうなるのか。

舐められるより畏怖されていたほうがやりやすいのは確かだしな。

するとオーグは、不満そうな顔から得意げな顔に変わっていた。

「ふ、さすがによく分かっているじゃないか。私は王族以前に、アルティメット・マジシャンズの副長だ。部下に舐められるわけにはいかん。むしろ恐れられていた方が都合がいいのだ」

いや、それ絶対アンリさんとカタリナさんの言葉を聞いて今考えただろ。

俺がジト目でオーグを見ると、あえて気付かないように受験者の書類に目を通していた。

「さて、これで全ての試験は終了だ。誰か気になった奴はいたか?」

オーグはそう言って俺たちの方を見た。

さっきの話はもう終わりらしい。

「そうですね。事前に素性調査をしていましたから人間性に特に問題はなかったです」

「問答中の態度にも不審な点は見られませんでしたし、大丈夫かと」

カタリナさんとアンリさんが受験者の書類を見ながらそう答える。

「そうか。となるとあとはどういう基準で合格者を決めるかなのだが」

オーグはそう言いながら俺を見た。

「実技試験を見て、大丈夫そうだと思ったのは……これくらいかな?」

俺は、実技試験をみたうえで入団しても問題なさそうな人を数人ピックアップした。

「ふむ。ではこいつらでいいか?」

「いや、この中から面接した中で特に向上心の高かったひとにするべきだと思う」

俺はそう言ってアンリさんを見た。

するとアンリさんは、面接中に取っていたメモと書類を見ながら真剣な顔で考え込んでいる。

そして……。

「面接をした中で、向上心が高かったのはこの二人ですね」

そう言って二人分の書類を差し出した。

俺とオーグはその書類を見たあと、お互いの顔を見合わせて頷き合った。

「よし。それでは、今年のアルティメット・マジシャンズ新規入団者はこの二人だ」

こうして、初めてのアルティメット・マジシャンズ新規入団試験は終わり、新たに二人の団員を迎えることになった。