軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

事務員が濃い

アールスハイドに戻ってきてから、婆ちゃんたちに事情説明をした数日後、俺たちはウォルフォード商会の上にある事務所に来ていた。

この建物は、丸ごとウォルフォード商会の持ち物であり、一階と二階が店舗。

三階が事務所になっている。

そして、四階と五階は空いており、ここがアルティメット・マジシャンズの事務所になる予定である。

そこに、アルティメット・マジシャンズとシャオリンさんで訪れた。

シャオリンさんは、アールスハイドでの住まいが見つかるまでウォルフォード家に居候することになっている。

結構条件のいい物件が見つかったそうだけど、手続き等の問題からまだウォルフォード家にいる状態。

なので一緒に行動している。

さて、俺たちがなぜここにいるのかというと、ここで顔合わせが行われるからだ。

目の前には六人の男女が並んでいる。

皆一様に緊張している様子が見て取れる。

ここにいるのは、各国から派遣されてきた事務員たちだ。

スイード、ダーム、カーナン、クルト、エルス、イースの六か国で六人だ。

これにクワンロンのシャオリンさんを加えた七人が、各国から派遣される事務員兼、監視員となる。

もちろん、七人で業務を回すのは難しいので、それ以外の人員も雇う予定ではなるけど、それは国の方で手配してくれるらしい。

素性も全部調べるとのことで、採用に関して物凄い厳戒態勢である。

まあ、下手な人間を雇い入れることはできないからしょうがないことである。

それはそれとして、まずは目の前にいる六人とシャオリンさんは採用することが決定している人員である。

まだ実務は開始していないが、とりあえず顔合わせだけでもということである。

「皆、よく集まってくれた。私がアルティメット・マジシャンズの副長、アウグスト=フォン=アールスハイドだ」

副長?

いつの間にそんな役職ができたんだ?

「そして、こいつがアルティメット・マジシャンズの代表である、シン=ウォルフォードだ」

「シンです。初めまして」

俺がそう挨拶をすると、皆が揃って頭を下げた。

「は、初めまして! 私はスイードから派遣されてきました、カタリナ=アレナスです! アルティメット・マジシャンズの皆さんとお会いできて光栄です!」

そう言って挨拶をしたのは、ピッチリとスーツを身にまとい、茶色い髪を結いあげたいかにも仕事ができそうなお姉さんだった。

秘書って言うのがピッタリな感じだ。

「よろしくねカタリナさん」

「はい! その節は、スイードを救って頂いて、ありがとうございました!!」

そう言って俺たちを見るその目は、キラキラと輝いている。

スイードが魔人に襲われたとき、直接助けたのが俺たちだったからなあ。

今だにスイードの人たちは感謝してくれているんだな。

そのことを嬉しく思っていると、隣にいる女性が挨拶をした。

「えと、あの、ダームから来ました、アルマ=ビエッティです……」

アルマさんという女性は、肩口くらいまでのショートボブの髪型をした、非常に若く見える小柄な女性だった。

最初に受けた印象は「小動物」って感じ。

これが、要注意って言われてたダームの派遣員か……。

なんかおどおどしているし、無害そうだけどな。

「よろしくね、アルマさん」

「は、はい……よろしくお願いします……」

本当に無害そうだけどなあ。

とはいえ、情勢不安定なダームから来ている彼女は、一応警戒はしておくか。

あんまり疑いの目で見るのは申し訳ないけど。

それにしても、監視員のはずの彼女を監視しないといけないとか、よく分からん状況だな。

「初めまして! 自分はカーナンから来ました、イアン=コリーです! シン様のことをよくサポートするようにとガランさんから言いつかっております!」

カーナンから来たのはイアンさんという、黒髪短髪で結構ガタイのいい男性だ。

俺より年上っぽいけど、様って……。

それになんだろう、カーナンの男は、皆マッチョなんだろうか?

「そ、そう。ガランさんから。えっと、イアンさんは羊飼いなんですか?」

「いえ、羊飼いは選ばれた男にしかなれませんから……俺は羊飼いたちのサポートをしたり、魔物化した羊の羊毛の管理なんかをしてました」

これで駄目なのか。

そして、事務員もマッチョ。

もう俺の中では、カーナンはマッチョの国だ。

「私はクルトから来ました、アンリ=モントレーと言います。よろしくお願いします」

おお、クルトの人は落ち着いてるな。

細長い眼鏡をかけていて、いかにも仕事のできそうな雰囲気の男性だ。

「よろしくお願いしますアンリさん」

「ふふ、シン様。あなたは世界の英雄です、私などアンリと呼び捨てにしてください」

「え? い、いや、年上そうだし、皆さん派遣ということですから本来の所属は各国でしょう? 呼び捨てなんてとても……」

「いえ! あなたは私を呼び捨てにするべきです! なんなら犬と呼んでいただいて構いません!!」

「……」

おう……。

仕事できそうだと思ったのに、とんでもなくヤベー奴が混じってんぞ。

「……よろしくお願いします、アンリさん」

「……ちっ」

舌打ちした!

呼び捨てにしなかったら舌打ちしたよこの人!!

一番まともそうだと思ったのに、一番おかしい人だったよ。

「コホン、よろしいでしょうか?」

「え? あ、ああ。すみません、どうぞ」

「私はイース神聖国から参りました、ナターシャ=フォン=フェルマーと申します。御使い様、聖女様、お会いできましたこと、心より嬉しく思います」

ナターシャさんは、神子服をきた神子さんだ。

やっぱり、イースには神子さんしかいないんだろうか?

それよりも……。

「えっと……ナターシャさんって、貴族なの?」

宗教国家なのに、貴族なんてあるんだろうか?

「一応、実家は領地を持っておりますが、イースでは貴族という地位は御座いません。私の家は枢機卿の家系でございます」

「あ、そうなんだ」

あ、ってことは……。

「じゃあ、エカテリーナさんの実家も枢機卿なの?」

あの人の名前、エカテリーナ=フォン=プロイセンだし。

おれがそう言うと、ナターシャさんが真っ青な顔になった。

「き、き、教皇猊下をさん付けで呼ばれるなんて……」

あ、やべ!

神子さんの前でエカテリーナさんって呼んじゃった!

「いや! あの、婆ちゃんの弟子だっていうし、よく家に遊びに来るし、つい……」

俺が色々と言い訳を並べ立てるが、ナターシャさんは俯いてプルプル震えていらっしゃる。

ヤバイ、完全に怒らせ……。

「教皇猊下とそのような関係にあられるなんて! やはり御使い様は凄い方です! ますます尊敬してしまいます!」

あれ!?

この人もちょっと変!?

今のところまともな人が、最初のスイードのカタリナさんしかいないんだけど!?

「あ、あはは。よろしくお願いしますねえ」

「はい! 御使い様と聖女様のためなら、この命いつでも差し出す所存です!」

「事務仕事に命張る要素一個もないから!」

「ぶふっ!」

トンチンカンなことを言うナターシャさんに、思わずツッコミを入れてしまった。

すると、最後に残った人が、堪え切れずに噴き出してしまった。

「ああ、すみません! ええっと……」

最後はエルスの人だよな。

黒髪で、ちょっとワイルドな感じの男性。

カーナンのイアンさんほどマッチョではないけど、十分鍛えられている体格。

これくらいの細マッチョの方が恰好いいよね。

でも、なんか見たことある感じなんだよな、この人。

誰だっけ? なんか最近見たような。

「ぐふっ、あふっ! はああ……すみません。シンさんのツッコミがツボに入ってしもて……」

エルスの男性は、ようやく笑いの発作が治まったのか、ようやく自己紹介をしてくれた。

「僕は、カルタス=ゼニスです。よろしゅう」

「そうですか、よろしく……」

ん? ゼニス?

俺は言葉を途中で止めてカルタスさんをマジマジと見てしまった。

「あ!」

そうだよ、最近見たはずだ、この人……。

「父がいつもお世話になってます。アーロン=ゼニスの息子です」

アーロン大統領に似てるんだ!

「え!? アーロン大統領の息子!? ってことは王子様!?」

カルタスさんの自己紹介に驚いたのか、マリアが声をあげた。

「その認識はちょっとちゃいますね。エルスの大統領は世襲制やないので、僕は次期大統領ではないんです」

「あ、知事の中から選挙で選ばれるんでしたっけ?」

「その通りです。なので、僕はアーロン大統領の息子ですけど、一般人です」

「そうですか」

そういや、エルスは半民主制みたいな国だったな。

国家元首を選挙で選ぶから、その子供はあくまで一般人だ。

「そういや、そうだったわね。なんていうか、紛らわしいわね」

いや、マリアの方がこの世界の世情には詳しいだろうに、なに言ってんだ。

「まあ、そんなもんやと思といてください。僕はここに来るまでは商会で経理やってましたんで、お金の計算は任せといてくださいね。戦乙女様」

「な!? ちょっ! その名前で呼ぶな!!」

「あれ? ひょっとして、この名前好きやないんですか?」

「好きなわけないでしょ! 恥ずかしいだけよ!」

「そらすんませんなあ。結構浸透しとるから認めてんのやと思てましたわ」

「……なんてこと。そんなに浸透してるなんて……」

まあ、魔王やら神の御使いやらよりはマシだと思うよ。

「まあ、そんなわけで、これからよろしゅうお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

さて、これで全員かな?

「シン殿、私も皆さんに自己紹介したいのですが……」

「あ、ごめんなさい。シャオリンさんのことは知ってるから必要ないと思ってました」

「シン殿たちには必要ないでしょうが、皆さんには必要かと」

シャオリンさんはそう言うと、六人に向かって頭を下げた。

「エルスの東、大砂漠地帯を越えた国クワンロンから来ました、ミン=シャオリンと申します。実家は商会で、そこで営業から仕入れまで色々と行ってました。皆さん、よろしくお願いします」

シャオリンさんがそう言って自己紹介をすると、カタリナさん、アルマさん、イアンさん、カルタスさんはパチパチと拍手をしてくれた。

だが、アンリさんとナターシャさんは厳しい顔をしている。

どうした?

「シャオリンさん、と仰いましたか」

アンリさんが、静かな口調でシャオリンさんに訊ねた。

「はい」

シャオリンさんが返事をすると、続けてナターシャさんも訊ねかけた。

「シン様たちと仲がいいご様子ですが……どのような関係なのでしょうか?」

え? なんでそんなこと聞くの?

「シン殿は我がミン家の大恩人です。クワンロンに訪れて頂いた際、ミン家にお泊りをしていただき、歓待させていただきました」

シャオリンさんのその言葉に、アンリさんとナターシャさんは物凄いショックを受けた顔をしていた。

「家に招いて歓待……」

「なんてこと……」

二人そろって両手と両膝を付いている。

なんか、絶望のポーズだ。

ひとしきりショックを受けた二人は、ガバッと立ち上がり、シャオリンさんに向かって指さした。

人を指さしちゃいけません。

「「これで勝ったと思うなよ!」」

「なにをですか!?」

シャオリンさんが、なんか宣戦布告されてた。

なんか、違う意味で目を付けられちゃった感じだなあ。

「おい、これ、本当に優秀なのか?」

「あ、ああ、プロフィールを見る限りはそうなのだが……」

今まで書類上でしか知らなかったオーグも困惑している。

はあ、本当にこれで運営が回るの?