軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰りの予定

「あ、帰ってきました」

オリビアの言葉でリビングの扉を見ると、マリアとアリスが並んで入ってくるのが見えた。

「……おかえり」

「「ただいま……」」

どう声をかけていいのか分からず、とりあえずおかえりと言ってみたが、返ってきた声はメッチャ沈んでいた。

それでも帰ってきたということは、なにかしら折り合いを付けたんだろうか?

隣でシシリーが声をかけたそうにしているけど、さっきユーリとオリビアに言われたばっかりなので声はかけていない。

凄く心配そうな顔でマリアのことみてるけどね。

「ようやく帰ってきたか。皆揃ったところで説明するぞ。本日、合意文書の書類ができた。どちらの翻訳も齟齬がないことをリーファン殿に確認してもらっている。明日もう一度シャオリン殿にも確認していただいて、問題なければ明後日調印となる」

マリアとアリスを一切気遣わないオーグの物言いだが、この場合はこの方がいいと思う。

その証拠に、マリアとアリスも真剣な顔してオーグの話を聞いている。

「いよいよ終わりですか。長かったですね」

「まあ、来ようと思えばいつでも来れるけどね」

さっきまでの落ち込みぶりが嘘のように普通に対応してる。

……さっきのアレ、わざとだったの?

「来るのは構わんが、ちゃんと国境の検問を受けろよ? ゲートで勝手にミン家に来たら密入国になるから気を付けろ」

「でも、アルティメット・マジシャンズの活動で何回か他国に行きましたけど、国境なんて通らなかったですよ?」

「それは周辺国が我々に与えてくれた特権だ。クワンロンからその特権は与えられていない」

そういえばアリスの言うように、ここ最近アールスハイドの周辺国に行く際にゲートを使ってばっかりなので国境の検問を受けてない。

俺らに来る依頼って、緊急性が高いものが多いからそこまで気にしてなかった。

それに、シュトロームたちとの決戦の前に団結していたから、あまり他国という感覚もなかったなあ。

「それに、そもそもクワンロンに来ても言葉が通じんだろう」

「そういえば、その辺はどうするんだ?」

国交が開かれても、言葉が通じないんじゃなにもできないぞ?

「その辺はミン家にお願いすることになっている。この国にいる亡命者を教師として西方諸国の言葉を教えてもらう予定だ」

「いつの間に」

「リーファン殿も残って講師になってもらう予定だ。シャオリン殿はアルティメット・マジシャンズの駐在員になるしな」

リーファンさんはずっとシャオリンさんに付き従っていた。

寂しくないのだろうか?

「リーファンさんはそれでいいんですか?」

「なにがですか?」

「いや、シャオリンさんと離れ離れになるのが……」

「? アールスハイドまでは皆さんと一緒に行かれるのですよね? であれば、私が一緒にいなくても問題ないかと。前回は砂漠越えでしたからご一緒しましたけど」

「あ、そっすか」

「リーファン、頑張るのですよ。これが上手くいけば、ミン家が外国語学校の先駆けとなれるのです」

「かしこまりました。身命に変えても成し遂げます」

……この二人、本当にただの主従なんだなあ。

実はお互い恋焦がれて……とか一切ない。

シャオリンさんはリーファンさんのことをただの従者としか見てないし、リーファンさんはミン家に仕えることを至上の喜びとしている。

シャオリンさんに付き従っていたのは、本当にミン家のお嬢さんだからなんだ。

「まあ、後腐れなくていいのかな?」

「むぅ、つまらないです」

恋愛事大好きなシシリーは、主従の身分を越えた恋愛を期待していたんだろうな。

本当になんの脈もなさそうな二人をみて口を尖らせている。

「ところで帰りなのだが、今後飛行艇の運用もあるから、操縦者の訓練も兼ねて再度飛行艇を飛ばすことになっている。私は責任者として同乗するが、他にも同乗したい者はいるか?」

オーグがそう言うと、男性陣は皆飛行艇で帰ると手をあげた。

空を飛びたいんだねえ。

「シン、お前はどうする?」

「俺? 俺は一旦ゲートで家に帰って、シルバーを連れてから飛行艇に乗って帰るよ」

俺がそう言うと、オーグは呆れた顔をした。

「子煩悩、ここに極まれりだな」

「うっせ。お前も子供ができたら分かるよ」

「ウォルフォード夫人はどうする?」

「私もシン君に付き添います」

「本音は?」

「シルバーと一緒に旅行がしたいです」

「こっちもか……」

シルバーは野営地に連れてきただけで空の旅はしていない。

是非体験させてやりたいと、シシリーと二人で話し合っていたのだ。

「私は面倒くさいからパス。ゲートでさっさと家に帰りたいわ」

「あたしも」

マリアとアリスは、いかにも面倒くさそうにそう言った。

むう、ロマンのないやつらめ。

「シャオリンさんはどうするんですか? 私はお店の手伝いがあるのでゲートで帰りますけど」

そう言うのはオリビアだ。

まだ店に出てるのか。

「私は飛行艇で帰ります。道中で業務について殿下にお伺いしたいことがいくつかあるので」

シャオリンさんは本当に真面目だな。

まだ本格的に始動していないから業務なんてなんにもしてないのに。

「私はぁ、早く彼に会いたいのでゲートで帰りますぅ」

「私も早く帰る。移動は時間の無駄」

「時間の無駄って……」

ユーリの理由はまあ分からなくもない。

リンの理由は合理的と言えば合理的だけど、情緒のかけらもないな。

旅は移動も醍醐味なのに。

「もう行きで乗った」

それはそうだけどさ。

「連絡事項は以上だ。明後日調印が終わったら帰るから、各自部屋の片づけをしておけよ」

オーグがそう言うと、シャオリンさんが待ったをかけた。

「すみません。明後日の夜は送別会を開きたいと思いますので、出発は次の日にして戴けませんか?」

送別会か。

いよいよ、クワンロンともお別れだな。