軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前時代の遺跡

トニーが遺跡調査をしたいと言った翌日に、俺たちは早速遺跡に向かってみることにした。

こういうところが異空間収納の恩恵だよな。

異空間収納の中には着替えや食糧など、探索に必要なものはほぼ入っている。

なのでこういう時に素早く動ける。

それに、早く動いたのには訳もある。

今は合意文書を作成しているところなのだが、それが出来上がってしまうとシャオリンさんとリーファンさんはその翻訳作業に駆り出されてしまう。

その前に行くしかなかったのだ。

クワンロンの首都イーロンの城壁を出た俺たちは、飛行挺に乗り込み遺跡を目指した。

「ところでシャオリンさん、遺跡の場所って砂漠地帯でいいんですか?」

操縦士さんたちはミン家に置いてきたので、俺が操縦することになる。

なので行きに見た遺跡で良いのか聞いてみると、シャオリンさんは首を横に振った。

「いえ、今回は近場に行きましょう。首都からそう離れていない場所にも遺跡はあるんですよ」

「へえ、そうなんですか」

「はい。この森のこの辺りですね」

シャオリンさんは俺に地図を見せ、ある地点を指差した。

「本当に近いんですね」

シャオリンさんの示した地点は、飛行艇ならすぐに到着する場所だった。

しかし、先日の話ならハオがレールガンを発掘したのは砂漠地帯の遺跡だったはず。

さすがにそこには行かせたくないのだろうか?

そう思ったのだが、シャオリンさんは予想とは違うことを言った。

「ええ、ここなら管理も行き届いていますし、魔物が入り込んだりもしていませんから」

ああ、なるほど。

放置されている遺跡には魔物が巣くっている可能性があるのか。

その点、首都に近い遺跡はその辺の管理が十分にされていると。

「観光地にもなっていますから、魔物が入り込む余地はありませんのでご安心ください」

シャオリンさんがにこやかにそう言うと、アリスが不満の声をあげた。

「ええ? あたしたちなら魔物なんて全然問題ないのに」

そう言うアリスに、シャオリンさんはちょっと困ったような顔をした。

やっぱり、俺たちを未踏破の遺跡には入れたくないのだろうか?

「それは知っていますけど、今回は遺跡を見てみたいのですよね? 魔物が巣くってしまっている遺跡だとゆっくり見ている時間がないのではと思ったのですが……」

「あー、それもそうかあ」

今回の遺跡を選んだのはシャオリンさんの気遣いのようだ。

確かに、魔物を討伐しながらだとゆっくり観光できないしな。

「そうだねえ。僕も興味があるのは前文明の遺跡であって魔物じゃないからねえ。ゆっくり見られる方が嬉しいかな」

言い出しっぺのトニーもそれでいいようだ。

俺としては、前文明の魔道具とか見てみたかったんだけど……。

今回はシャオリンさんが同行しているし、それは避けた方がいいかな。

なんと言うか、シャオリンさんって真面目なんだよな。

真面目すぎて融通が利かない感じ。

俺が前文明の魔道具に使われている文字と同じ文字を使っているから、メッチャ警戒してるのが伝わってくる。

普段はそういう警戒心を表に出さず普通に接してくれているけど、時折そういう態度が表れる。

レールガンを見たときがそうだ。

一応、そういうつもりはありませんよとアピールしてきたつもりだし、シャオリンさんもそれを受け入れてくれていると思っているけど、根っ子の部分ではまだ信用しきれていないんだろうな。

まあ、それもしょうがないか。

なんせ、まだ知り合って数ヶ月。

全幅の信用を置く関係になるには期間が短すぎる。

そんな短期間で相手の事を絶対に信用しますなんて俺だって言えない。

そんなことを言うのは詐欺師くらいのもんだろう。

なので、俺たちとシャオリンさんの仲は表面的な信頼関係で成り立っている。

まあ、世の中そんなもんだろうとも思う。

なので、わざわざ波風立てる必要もないし、俺はシャオリンさんの案内する遺跡を目指して飛行艇を飛ばした。

「うまいこと躱されたな」

シャオリンさんが下がり、皆と話をし始めると今度はオーグが操縦席にやってきた。

「まあ、まだ信用しきれてないんだろ。この短期間じゃしょうがねえよ」

「それはそうなのだろうが、こういう態度を取られるのはあまりいい気はしないな」

オーグは不機嫌そうにそう言った。

「なんだよ。オーグが態度に出すなんて珍しいな」

俺が茶化すようにそう言うと、オーグは少し険しい顔をした。

「まあ状況を考えれば、あまり詳しい内容を見せたくないというシャオリン殿の態度は当然なのだが……どうにも不愉快でな」

「ふーん」

俺はそう返事すると操縦に集中した。

そろそろシャオリンさんが示した場所に近いから見落とさないようによく見ないとな。

そうして外の景色に集中していると、一緒にいたトールがなにかを呟いた。

「……素直に……」

「トール、なにか言ったか?」

「いえ? 別に」

「?」

俺から遠いし、声も小さかったし、操縦に集中していたので聞き取れなかった。

なにを言ったんだろ。

トールとユリウスはニヤニヤしてるし、オーグは二人を睨んでる。

ああ、なんかトールがオーグを揶揄うようなことを言ったんだな。

まあ、仲がいいようでなによりだ。

それよりも、なんか見えてきた。

「シャオリンさん、あれですか?」

俺がシャオリンさんを呼ぶと、シャオリンさんは操縦席に来て外を確認した。

「あ、そうです。あそこです」

見えてきたのは、四角い穴が沢山開いた巨大な四角い石が斜めに地面から突き出している光景。

その近くに、クワンロン様式というべき建物が建っている。

「あれが首都から一番近くにある遺跡です。手前にあるのが管理事務所なので、その前に着陸しましょう」

シャオリンさんの誘導で飛行艇を着陸させる。

飛行艇から降りた俺たちは、上空から見た四角い石を見上げた。

「上空からでも大きいと思ったけど、間近で見るとすごいねえ……」

一番興味がありそうなトニーがそう呟くと、皆も同意するように頷いた。

そして、まじまじと観察していたオーグは、呆然とした顔をして再度石を見上げた。

「信じられんが……確かにこれは……人工物だ」

砂漠地帯で見たときに確信していたけど、実際に見るとその大きさに圧倒されるな。

そう、俺たちが見たのは……。

倒壊した高層ビルの一部だった。