軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遺跡調査のお願い

それからさらに数日が経過したとき、悠皇殿から使いがあった。

準備が調ったので、交渉を再開したいという連絡だった。

「ようやくですか。待ちくたびれましたわ」

ナバルさんはそう言うと、ホッとした顔をした。

「待ちくたびれたと言うが、ナバル外交官は待機中色々と活動していたではないか。そちらはもういいのか?」

「色々いうても、要は市場調査ですからねえ。なにを売ってるのか、どういったものに需要があるのか散策のついでに調べとっただけで、大した労力でもありませんわ」

「ふむ、まあ、そういうことにしておこう」

「いや、そんな含みを持たせる言い方されてもホンマになんもあらしませんわな」

オーグは、ナバルさんがいかにも何かを企んでいるという風に言っているけど、言われたナバルさんは呆れ顔だ。

そもそも外国だしな、ここ。

通訳を介さないと会話もできないんだから、何かを企むことなんてできはしないと思うよ。

そうして連絡を受けた翌日、俺たちは改めて悠皇殿へと赴いた。

以前と同じ会議室に通されたそこには、今まで見たことのない官僚の人たちが複数人座っていた。

ここにいるのは、恐らく色んな部署の偉い人だと思う。

話し合う内容は、交易だけでなく為替とか、大使館や領事館の設置とか、お互いの国への不可侵条約とか色々ある。

そのためには各部署の人がいる方が話は通じやすい。

前回、官僚はハオ一人で他はすべて補佐だった。

よっぽど功績を独り占めしたかったんだな。

官僚たちに嫌われて当然だわ。

こうして始まった交渉は、実にスムーズに進んだ。

前回問題になったのは竜の革の取引に関することだけであって、他のことは概ね合意を得られていたし、そのときの議事録も残っていたから、各部署の官僚に確認をとるだけで終わってしまった。

竜の革の取引も、例の法案が撤廃されたことでなんの問題もなくなった。

ただし、竜の討伐に関しては免許が必要なので、勝手にクワンロンに来て竜を狩ると密猟になるので注意してほしいと言われた。

俺たち、免許を持たずに竜を討伐したけど大丈夫なのかと思ったが、今回は緊急措置ということでその件については不問に付してくれるそうだ。

こうして、クワンロンと、アールスハイド、エルスとの国交が樹立した。

西方世界の残りの国に関しては、後日また改めて会合をするとのこと。

これにて、俺たちアルティメット・マジシャンズの初めての組織としての仕事は完了した。

……と思っていたんだけど。

「そしたら、あとは正式な書類を作成して、調印するだけですな」

『書類の作成には数日を要します。お互いの国の言葉で書かないといけませんから、齟齬が無いよう慎重に作成しないと』

「そうですな。そしたら、その間また待機ですかな?」

『そうなります。なので、もうしばらく滞在して頂きたいのですがよろしいですか?』

「構へんよ。そしたら、またミン家に連絡してきてください」

『承知しました』

そっか……俺たちの仕事って、スイランさんの治療もだけど、ナバルさんたちの護衛も含まれていたんだった。

ということは、もうしばらくクワンロンに滞在か。

終わったと思ったのに……。

「さて、そしたらミン家に戻って、こっちの交渉も始めましょか」

「そうだな。交易に関する取り決めが成される前に交渉してしまうと軋轢を生むかもしれんから控えていたが、我々にとってはこちらこそが重要だな」

ああ、そうだった。

スイランさんと魔石の交易について独占契約を結ぶ約束をしていたんだった。

それにしても、情報を手に入れているかどうかで交渉ってこうも変わるんだな。

二人とも、交易に関する取り決めの際に、魔石に関する情報は一切話さなかった。

その結果、西方世界にとって最重要と思われる魔石の交易について、関税などは一切かからないことになってしまった。

まあ、今後どうなるかは分からないけどね。

とりあえず、魔石に関しては西方世界有利で始まったわけだ。

こうして、また数日クワンロンに滞在することになったのだが、今度こそ俺たちはやることがなくなってしまった。

恐らくシャオリンさんは書類作成のために悠皇殿に呼ばれるだろうし、そうなるとスイランさんとの魔石の交渉の際の通訳はリーファンさんになる。

逆かもしれないけど。

どっちにしても、通訳が二人とも側にいないとなると、迂闊に街を散策することもできない。

お金もない。

「明日からどうしよう……」

どうやって時間を潰そうかと考えていると、意外なところから提案があった。

「ちょっといいですか? 殿下」

「なんだフレイド」

「殿下やナバルさんたちがスイランさんと交渉している間、僕たちは遺跡に行ってみてもいいですか?」

お?

「遺跡?」

「はい。ここに来るときに、飛行艇で話しましたけど、前文明とかの不思議な話が結構好きなんですよ」

「そういえば、そんなことを言っていたな」

「それでですね、今まではゴシップの類だと思われていた前文明が本当にあったとなると、調べてみたくてしょうがないんですよ」

「そういうことか……」

それって、俺がシャオリンさんに頼んでみようと思ってたやつだ。

でも、俺が遺跡を調べたいっていうと、変な目で見られそうだから、どう切り出していいか分からなかったんだよな。

トニーからの提案なら、シャオリンさんも不審な目では見ないだろう。

ナイスだ、トニー!

「シャオリン殿、遺跡に入るのに何か許可など必要なのか?」

「いえ、入ること自体に許可は必要ありません。ですが、ハオの件で話したと思いますが、もし武器が出てきた場合は国に申告する義務があります。なので、調査員の同行が必ず必要になります」

「ハオのときは?」

「あいつは、ああ見えてこの国の官僚のトップでしたから……その辺りを無視したり握りつぶしたりすることが日常茶飯事だったというか……」

死んだあとまで出てくる、ハオのクズッぷり。

逆に感心するわ。

「その調査員はどこで依頼するんだ?」

「遺跡の入り口に遺跡調査団の詰め所があって、そこに依頼します」

「そういうことか、分かった。ありがとう」

「いえ」

「というわけだ。本来なら私も行きたいところだが、こっちも大事な交渉だからな。迷惑をかけないようにしろよ?」

オーグがそう言うと、アリスとリンが嬉しそうに答えた。

「分かってますって!」

「問題ない」

「お前らが一番心配なんだが……」

「「非道い!!」」

そんなやり取りをして笑っていると、シャオリンさんが話に入ってきた。

「すみません、私も同行していいですか?」

「シャオリン殿も? しかし、悠皇殿での書類作成はどうする?」

「各部署との連携や確認もあるでしょうし、すぐには完成しないと思います。この国の言葉で書かれた書類が完成しない限り、私に仕事はありません。なので、それまでの間連れて行ってもらえませんか?」

シャオリンさんがそう言うので、俺は咄嗟にトニーの顔を見た。

「別に構いませんよ。むしろシャオリンさんが来てくれるんなら、通訳も頼めますしねえ」

「私も大丈夫!」

「問題ない」

トニーに続いてアリスとリンも同意した。

言い出しっぺであるトニーが了承した以上、シャオリンさんの同行を拒否する理由はなくなった。

他の皆の顔も見てみるが、誰も特に異を唱えたりしない。

結構長い時間一緒にいるしな。

皆シャオリンさんのことを信用しているみたいだ。

俺としては、危ない武器を見つけたときはコッソリ付与を削除したかったから、着いてこられるのはどうかと思ったんだけど、他の全員が了承しているのに俺だけ反対したら目立ってしまう。

仕方なく、俺もシャオリンさんの同行を了承した。

「シャオリンさん、明日からまたよろしくお願いします」

俺がそう言うと、シャオリンさんはにこやかな表情で言った。

「はい、よろしくお願いします」

それにしても……。

本当にヤバイものがあったらどうしよう?

俺は、オーグとはまた別の問題で頭を悩ませることになったのだった。