軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アールスハイドの歴史

ミン家から乗ってきた馬車に再び乗り込んだところでふうっと息を吐いた。

「なんか国家の一大事に巻き込まれた感じだな」

「それにしても、あのハオって奴、やっぱりとんでもない悪党だったわね」

一緒に乗り込んだマリアが、腕を組んでちょっと憤りながらそう言った。

まあ、確かに。

あれほど権力を振りかざす人間ってのは、俺の周りでは見たことないかな?

旧帝国の貴族とかそうだったっていうけど……実際に見たことないしな。

「あそこまで傲慢な人って、アールスハイドにはあんまりいないから珍しいよな?」

「そうでもないわよ?」

「そうなの?」

マリアの意外な言葉に、俺は思わず聞き返した。

「貴族の中にはあまりいないけど、平民から官僚になった人にいるって聞くわね」

「普通逆じゃないの?」

「アールスハイドにおいてはそれが普通なんです」

俺の疑問にシシリーが答えた。

「以前にも言ったことがあると思いますけど、貴族には非常に大きな責任が伴います。もし平民を虐げたりしたら改易されることだって珍しくありませんし」

「そういや、アールスハイドって貴族に厳しい国だっけ」

「王族はもっとだな。そもそも、独裁的な思想の持ち主は国王を継げない決まりだ」

王族であるオーグが、しみじみとそう呟いた。

大変そうだな、王族って……。

「でも、それなのに平民に傲慢になる人がいるんだ」

「お父様が言っていましたけど、今まで持っていなかった権力を手に入れた人間は、その権力に酔いやすいんだそうです」

「ああ、貴族は元々その権力を使うように教育されてるから?」

「はい。権力に伴う責任も同時に教え込まれるので、あまりそうなる人はいないんですけど、そうでない人は……」

「今まで使われる立場だった人間が権力を持つと、それに酔ってしまうか」

「はい、そう言ってました」

なるほどなあ。

それで平民出身の官僚にそういう人間が出てくるのか。

「まあ、表面上は大人しくしている貴族たちも、裏ではどう考えているかは分からんがな」

「おい、それ王族が言っていい台詞なのか?」

「当たり前だ。貴族とは特権階級だぞ? 生まれながらにして権力を持っているのだ、だからそれを抑えるための法が存在するんじゃないか」

あ、なるほど。

アールスハイドの貴族が大人しいんじゃなくて、そうしないと罰せられるのか。

「貴族にだけそのような法を押し付けておいて王族が傲慢に振る舞っていると、反感を持たれていつ反旗を翻されるか分からんからな。だからこそ王族が率先して国のために奉仕するのだ」

「へえ、すげえなアールスハイド王族」

普通、国家最高権力者なら権力を振りかざしてそうなもんだけど。

「何代か前の王がそういう思想の持ち主でな、人は生まれながらに平等であり王族も貴族も平民も等しく人間であると、そう宣言したんだ」

「え、それって、王家の威厳的にまずくね?」

王家は神聖不可侵なもの。

だからこそ国民は王家を敬うものだと思ってたけど……。

そう思って聞いてみると、オーグは苦笑を零した。

「当時は相当貴族たちの反感を買ったらしいが……」

そう言ったところでなぜか俺を見た。

「その王は、途轍もない魔法の使い手だったらしくてな。反感は持っても誰も逆らえなかったらしい」

「それほどの力を持っていたにも拘らず、自分の権力のためじゃなく民衆のために力を使ったって有名な王様よ?」

オーグの言葉をマリアが引き継いだ。

「マリアも知ってるのか」

「当たり前よ」

「そういえば、これって初等学院の歴史の授業で習う内容でしたね。高等学院ではやりませんからシン君が知らなくても無理ありませんよ」

なんで知らないのかという目を向けてくるマリアに、シシリーがフォローをしてくれた。

「ってことは、アールスハイド国民なら誰でも知ってるの?」

「はい。あと、その王様の有名なお話としては学院生時代に、傲慢な振る舞いをしている貴族の子息に『お前は生まれがいいという以外に何かを成したのか? 言ってみろ』とその貴族の子息を窘めたという話がありますね」

「へえ、いいこと言うね」

「それ以降、アールスハイドでは親の権力を振りかざすのは恥ずかしいことだと認識されるようになったといいます」

「それじゃあ、カートが親の権力を振り翳してたのがすぐ自宅謹慎になったのは……」

「まあ、あのときはシュトロームの洗脳を受けていたそうだが、リッツバーグ伯爵がカートを厳しく諫めたそうだ」

「そうだったのか」

それにしても……。

なんか聞いたことがある台詞だな、その『生まれがいいというだけで……』ってやつ。

その王様ってもしかして……。

「他にはなにか逸話はないのか?」

「そういえば、この国に来て思い出したのだが……」

「なに?」

「この国の主食があるだろう?」

「ああ、お米ですか? あの炒めたお米は美味しかったです」

チャーハンな。

そういえば、この世界に来て初めて米食べたな。

俺はそこまで米を求める気持ちは湧かなかったけど、ラノベなんかじゃ異世界に行ったら異常なほど米と醤油と味噌を求めるんだよな。

俺は、この世界の食事に十分満足していたから、そんなことはなかった。

「その王は、異常なほどその米を探していたらしい」

……。

やっぱそういうことか。

意外と多いな転生者!