軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

状況を確認してみました

目が覚めると、そこは木造家屋の屋内だった。

濃い木の匂いと、パチッという薪が爆ぜる音が聞こえてきた。どうやら助かったらしい。

体の痛みも息苦しさも無くなり、恐らく泥が入って開けられなかった目も開ける事が出来た。

周囲を見回して見ると白い豊かな髭をたくわえ、同じく白く長い髪をした老人がいた。

どこかの校長先生か。

そんなツッコミはともかく恐らく、いや間違いなく自分を助けてくれた人物だ。これはお礼を言わなければと声を掛けようとした。

「あいあうおー」

やはり舌が上手く回らなかった。

痛みは無くなったが何か障害を負ってしまったのだろうかと愕然としていると、その声に気付いた老人がこちらへやって来た。

「☆◎○▽◇□※▽△」

やはり聞き覚えが無い言葉を喋った。

その事に目をパチクリさせていると、その老人は柔和に微笑みスープの入った皿を持って来て俺に食べさせようとしてきた。

さすがにそれは恥ずかしいので自分で食べようと手を動かした所、その手を見て目を見開いた。

そこには、子供特有のプクッとした手があった。ワキワキと動かしてみるが自分の手で間違いない。

そして改めて老人を見て首を傾げた。

(この爺さん、でかすぎじゃね?)

そうして呆けていると老人が心配そうな顔でこちらを見ているので、目の前に差し出されたスプーンに掬われたスープを飲んだ。

すると優しげに相貌を崩した老人は皿に入ったスープを全て飲ませてくれ、飲み終わったら頭を撫でられた。

お腹が一杯になると途端に眠くなりそのまま寝かし付けられた。

薄れて行く意識の中で思った事は。

(やっぱ爺さんでかすぎ)

だった。

翌日、再び目が覚めて改めて自分と周囲を確認してみた。

俺はどうやら子供になっているらしい。

いやいや! 子供になっているらしいってなんだよ! と思ったがどうにもこれが現実らしい。

既に二度、眠りと覚醒を繰り返しているのでこれが夢だという事は無さそうだ。ならばこれが現実だとして子供になっているというのはどういう事だ?と考えてみたがその答えには意外と早く辿り着いた。

自分を助けてくれたであろう老人が暖炉に火を着ける際、手から火を出したのだ。

魔法。

その言葉が頭をよぎる。よく家の中を見渡してみると、文明の利器が一つも無い事に気付く。

どんな原始的な生活を送っているんだと思ったが生活水準自体が低いとは思えない。

そんな現代人からするとチグハグな状況に一つの可能性が思い当たる。

(ここは地球ではないのでは)

地球では魔法は見た事が無い。

ひょっとしたら自分が知らないだけで有るのかもしれない。しかし、“魔法が有ることが前提“のこの家の有り様はここが地球ではないと思わせるのに十分な状況だった。

となると、何故自分はここにいるのか?

魔法が有る地球ではない世界。

子供になっている自分。

聞いた事が無い言語。

この状況から導き出した答え。

転生。

こんなファンタジーな状況なので、この結論はすんなり受け入れられた。

前世の最期は記憶が曖昧なので恐らく事故にでも遭ったのだろう。知らない間に死んでしまったみたいだ。

その事に思うところが無いではないが、両親は既に他界しているし、恋人がいた訳でもない。会社と家の往復で趣味はマンガとラノベを読む事とアニメを観る事。そしてたまにバイクでツーリングに行くことだけ。将来について常に不安を抱いていたし、死んでしまった事がそんなに悲しい訳ではなかった。

……そう思えてしまう人生だった事が少し悲しくなったが……。

それよりも魔法が有る世界に転生し、誰しも一度は思ったであろう、『今の記憶を持ったまま子供の頃に戻れたら』を現実に体験しているのだ。

その事に興奮していると、俺を助けてくれた老人がまたスープを持って来てくれた。

そして、お腹が一杯になった所でまたしても意識が遠くなっていく。

どんなに興奮していても、この一歳になるかならないかの体では睡魔に対抗する事は出来なかった。