軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謝罪の押し付け

シャオリンさんはそう言ったあと、黙り込んだ。

そのシャオリンさんを見て、オーグがポツリと呟いた。

「なるほどな」

そして、オーグが自分の理解した内容を喋り出した。

「つまり、もし強力な魔道具を作れるような古語を記した書籍があると、古語を理解できる人間が増えるのではないか……それによって過去の悲劇が繰り返されるのではないか、それを懸念したのか」

「……仰る通りです」

シャオリンさんは絞り出すようにそう言った。

「どうなんでしょうか? そう言った書籍は本当になかったのですか?」

「それについては断言します。ありません」

「そうですか……」

シャオリンさんは、心底ホッとしたように溜め息を吐いた。

俺を必死に問い詰めようとしたのはそれが原因か。

もしかしたら、世界を危機に陥れるような書籍が存在しているかもしれないと疑念を持ったんだ。

だから、こんなに必死だったんだな。

けど……。

「それにしても、やり方が随分と強引だったのではないか? もしこれでシンの機嫌を損ねたらどうするつもりだったのだ?」

「え? あ……」

おい。

考えてなかったのかよ。

まあ、俺も後ろ暗いところがあるから怒ったりはしないけど、それにしても後先考えなさすぎじゃね?

「あ、あの……申し訳ございませんでした!!」

「うえっ!?」

シャオリンさんは、オーグの言葉に小刻みに震えたあと、突然ガバッと土下座をした。

この世界に来て、初めて土下座を見た!

っていうか、リーファンさんまで!

「ちょ、ちょっと! 止めてください!」

「いいえ! 図々しくも姉を助けてもらえるように頼んでおきながら、このような嫌疑をかけてしまったこと! お許しいただけるまでこの頭は上げません!」

「申し訳ございません!」

シャオリンさんもリーファンさんも、俺がいくら言っても土下座をやめてくれない。

ああもう!

「分かりました! 別に気にしてませんから、頭を上げて下さい!」

「本当ですか!? 本当にこのまま姉の治療を続けて頂けますか!?」

「しますします! 間違いなく治療はしますから!」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

はあ……ようやく二人が土下座をやめてくれたよ。

土下座ってあれだね、やる方は屈辱的な謝罪方法とかいうけど、やられる方もたまったもんじゃないね。

これじゃあまるで、謝罪の押し売りだ。

人前であんな格好をさせているということ自体が心にくるし、こんな屈辱的な恰好をして謝罪しているのに許さないとなると心が狭い奴に見えてしまう。

ようやくシャオリンさんとリーファンさんが立ち上がると、オーグが軽い調子で言った。

「さて、お二人の用件はこれで終わりかな?」

「あ、はい……申し訳ありませんでした……」

「それではもう休むとしよう。明日もずっと移動だ、座っているだけとはいえ疲労は溜まるからな」

オーグはそう言うと、さっさとテントの方へと歩いて行った。

「……そうだな。お二人も休んでください。それでは」

俺も、オーグのあとを追うようにテントへと入った。

そして、俺がテントに入ってすぐ、オーグが話しかけてきた。

「あの二人、気に入らんな」

「え?」

「今までは人助けと思って協力していたが……どうも奴ら、なにか隠してるようだ」

「……それは、俺もなんとなく感じた」

「前文明に古語、それに遺跡から出土した魔道具か……古語を記した書籍がないと分かったときの安堵の仕方が気になる」

「ひょっとして、なんか面倒臭いことになりそうかな?」

「こればっかりは分からんな。奴らがなにも言ってこない以上、これ以上は推論にすぎん」

「まあな」

「とりあえず、奴らを全面的に信用するのは危険だ。常になにがあってもいいように備えろ」

「ああ」

俺たちが会話を終えると、他の皆も戻ってきた。

とにかく、リーファンさんが戻る前にオーグと話したかったからこの話を皆に伝えるのはあとだ。

女性陣にも話さないといけないしな。

まあ、とにかく用心だけはしておこう。

その後、シルバーは女性陣のテントで寝かせるというので、女性陣のテントにベッドを設置しなおして寝かしつけた。

その際、シャオリンさんとリーファンさんがなにか話している姿が見えた。

俺が二人を見ていることに気が付くと、シャオリンさんは気まずそうに視線を逸らした。

ああ、これは確定かな。

二人はなにかを隠してる。

それにしても、今まではシャオリンさんの境遇に同情とかしてたんだけど、こうなるとちょっと信用しきれなくなるなあ。

本当に、なにがあってもいいように備えだけはしておこう。

そう心に決めて眠りについた。

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シンたちがテントへと戻って行くのを見送ったシャオリンとリーファンは、二人残って話をしていた。

用件は、先走ってしまったリーファンの謝罪である。

『シャオリンお嬢様、申し訳ありません』

『はあ……正直、タイミングを間違えたわね』

『……どんな罰も受け入れます』

『いいわよ。感情的になってしまったのは私が悪いもの』

『ですが……』

『それに、まさかあのシン殿が古語を使えるとは夢にも思わないじゃない。アクシデントよ、仕方がないわ』

『……分かりました』

『それにしても……』

『なにか?』

『色々バレちゃったわね……』

『……』

『まあいいわ。別に騙している訳じゃない、竜の革を売りたいというのとお姉様の治療をして頂きたいという依頼は嘘ではないもの』

『そこに奴らが絡んでいるとしても……ですか?』

『あ……』

『え?』

会話の途中、シャオリンとシルバーのベッドを女性用テントに運んだ帰りのシンと目が合った。

暗くて表情までは分からないが、確実にこちらを見ていた。

シャオリンは、後ろめたい気持ちから、会釈もせずつい視線を外してしまった。

そして、唇を噛み締めたあと、絞り出すように言った。

『……全ては推測の域を出ない。だから私たちは何も知らなかった。そうよね?』

『……左様でございます、お嬢様』

そして二人は、それぞれのテントへと入って行った。