軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

説得しました

ミリアや、他の魔人たちを荼毘に付したあと、俺たちは連合軍が災害級の魔物たちと戦っている戦場へと戻って来た。

そこで見た光景は……高笑いをしながら災害級の魔物を魔法で屠っていく爺さんと、嬉々として魔物を斬り伏せていくミッシェルさんの姿だった。

他の皆も魔物を討伐しているけど、二人だけ異彩を放っている。

……改めて、俺、とんでもない人たちから指導を受けてたんだなぁとしみじみ思った。

もう、ほとんと魔物なんて残ってないじゃないか。

そうこうしているうちに、一体、また一体と討伐されていき、そして……。

「討伐を確認しました! これで……魔物はもう残っておりません!!」

最後の一体の討伐を確認した兵士さんが大声をあげると、周囲は一瞬静寂に包まれた。

だが、やがて……。

『うおおおおおおおおっっっっ!!!!』

まるで地鳴りのような大歓声が巻き起こった。

「やった!! 勝った! 勝ったぞ!!」

「ああ! やったんだ、俺たちは!!」

「うおおおっ! やったぞおっ!!」

口々に勝鬨をあげる兵士たち。

その勝鬨は、戦場中に広がっていた。

「ふう……こちらもなんとか勝利を収めたか」

「ああ。良かったよ、本当に……」

そう言いながら、戦場を見渡す。

連合軍によって屠られた魔物たちの死骸の中に、兵士さんたちの遺体も見える。

……やっぱり、無傷でとはいかなかったか……。

そんな多くの犠牲を出しながらも、兵士さんたちは自力で災害級の魔物の群れを殲滅してみせた。

相当な死闘だったんだろうな。

だからこそ、喜びを爆発させるのも無理はない。

けど……。

「あぁああん! あぁぁあああん!!」

そんな大歓声が突如巻き起こったら、シルバーがビックリするに決まってる。

急に大きな声が響いたもんだから、驚いて泣き出してしまった。

すると、その鳴き声を聞いた兵士さんたちは、驚いて周囲を見渡した。

「え? 赤ん坊の泣き声?」

「なんで戦場に?」

「あ! アウグスト殿下!? 魔王様!?」

周囲を見回していた兵士さんたちは、オーグの存在に気付いて一斉に膝をついた。

最初はオーグの存在に気付いていなかった兵士さんたちも、膝をつく兵士さんを見て、その先を見て、オーグの存在に気付いて膝をつく。

その動きが連鎖して、まるでウェーブのように兵士さんたちが膝をついていった。

おお……スゲエ光景だな、これ。

「おお! 殿下! ご無事でしたか!!」

その光景に気付いたガストール局長が、こちらに向かってきた。

その脇には、魔法師団長のオルグランさんや、爺さんに婆ちゃん、それにミッシェルの姿もある。

ガストール局長はオーグの前で膝をつくと、こちらの状況について訊ねてきた。

「して、殿下がご無事に戻られたということは……」

「ああ。魔人の首魁、シュトロームを始めとする魔人たちは、全て我々が討ち取った」

そのオーグの声は、膝をついて静かになった兵士さんたちにもよく聞こえたらしい。

『うおおおっっ!! 完全勝利だあっ!!!!』

膝をついていた兵士さんたちが立ち上がり、またしても大歓声が巻き起こった。

少し落ち着いていたシルバーも、また大きな声で泣き叫んだ。

すると当然、そのシルバーにガストール局長が気付いた。

「で、殿下? その赤子は……?」

周囲の兵士さんたちも気になっていたのだろう、俺たちの近くにいた人たちは歓声をあげるのを止め、俺

たちの会話に耳を傾けている。

やべ、どうしよう。

言い訳を考えてなかった。

そう俺が困っていると、オーグが話しだした。

「ああ、帝都に生き残っていた者がいたらしくてな。両親はすでに死亡していたが、この子だけは奇跡的に生き延びていたのだ。それを保護した」

うおお、つらつらと息を吐くように嘘をついたぞコイツ。

それに、帝都が襲撃されたのは一年以上前だ、正直、その言い訳は苦しいんじゃないかと思ったんだけど……。

「なんと! このような状況で生き延びていたとは! 奇跡だ! 奇跡の子だ!!」

「うおお! 奇跡の子バンザイ!!」

「バンザーイ!!」

嘘!? 信じた!?

口々にシルバーを称える兵士さんたちを、信じられない気持ちで見ていると、オーグが耳元で囁いた。

「皆、この危機を乗り越えたことで気分が高揚しているからな。本来なら信じられないようなことも奇跡として信じたいんだ」

……そういうものか?

つまり、冷静だったら色々と疑問を持つんだろうけど、興奮状態にあるからあまり深く物事を考えられないと。

ってことは、冷静に考えられる人がいたら、それって通用しないんじゃ……。

「で? 本当のところはどうなんだい?」

ほら! やっぱりいたよ、冷静な人!

っていうかばあちゃんだよ!

こんな言い訳で誤魔化せるわけないと思ったんだよ……。

「詳しい話はここでは……場所を変えましょう」

「それじゃあ、大本営に行こうかい」

こうして俺たちは、魔都を覆う壁の向こう側に設置されている大本営へとゲートで向かった。

ゲートを潜った先にいたのは、各国首脳。

ディスおじさんにエカテリーナさん、アーロンさんに他の王様たちだ。

「おお!! 戻ったかアウグスト! よくやった! よくやったぞ!!」

通信機で戦況を聞いたのだろう、ゲートから出るなり歓声をもって迎えられた。

ディスおじさんはオーグのことが心配だったんだろう。

その姿を見るなり一番に駆け寄ってきて抱きしめた。

「……父上、恥ずかしいのですが?」

「なにを言う! 息子を死地へと送り出した父の気持ちが分からんか!?」

「はあ……分かりました。今は甘んじて受け入れます」

「……息子と距離を感じるのだが?」

「気のせいです」

ディスおじさんとオーグがそんなやり取りをしている横で、俺のところにはエカテリーナさんがやってきた。

「本当に……本当によく頑張りましたねシン君。お疲れ様でした」

そう言ってエカテリーナさんは、俺のことを抱きしめた。

「ちょっ! エカテリーナさん!」

「本当に良かった……まるで息子を戦場に送りだした気分でした……」

「その言い方は誤解を生むから! あの、違いますよ!? 俺がエカテリーナさんの隠し子とか違いますからね!? 弟弟子を心配する姉弟子な感じですからね!?」

事情を知らない人が見たら誤解しそうなことを言うので、俺は必死に周囲へと弁解した。

そのとき。

「まったく、なにやってんだい!」

「あいたっ!!」

エカテリーナさんの頭に拳骨が落ちた。

創神教教皇であるエカテリーナさんにこんなことができるのは、世界で唯一だ。

「アンタはまた、余計な誤解を与えるようなことを!」

「ひっ! ご、ごめんなさい師匠!!」

ばあちゃんがそう言うと、エカテリーナさんは涙目になって謝罪した。

……この姿を見てると、教皇さんっていうありがたみが薄れるなあ……。

そんな混沌とした大本営だったが、ある一言で皆我に返った。

「あぁー」

「え? 赤ちゃん?」

シルバーの発した声に皆が静かになり、エカテリーナさんがシシリーが抱きかかえるシルバーを見つけて目を丸くした。

「ああ、なんでも帝都に生き残りがいたらしい。その生き残りが子供を産んだらしいんだけど……両親は死んだらしくてね。この子たちが保護してきたのさ」

この場で一番発言力のあるばあちゃんが説明したことで、各国首脳は誰も異を唱えなかった。

……やっぱスゲエな、ばあちゃん。

「そうですか……この子の両親が、神の御許に導かれますように……」

エカテリーナさんはそう言って祈った。

……なんとも複雑な心境だったが、口を挟むわけにはいかない。

やがてエカテリーナさんの祈りが終わったのを見計らって、オーグがディスおじさんに話しかけた。

「父上、少し内輪だけで話しがあるのですが」

「む? そうか。なら、外にある我が国の天幕に移動するか」

「はい」

「すまんが少し席を外す」

ディスおじさんは残る首脳たちに声を掛けると大本営を出ていった。

それに俺たちが続き、なぜかエカテリーナさんとアーロンさんも付いてきた。

「あの……内輪だけの話なのですが……」

オーグが困惑気味にエカテリーナさんに話しかけるが、エカテリーナさんはどこ吹く風だ。

「あら。私はあなたの御父上の妹弟子よ? 内輪でしょう?」

「俺も弟弟子やから内輪やな」

「いや……」

さすがのオーグも、創神教教皇であるエカテリーナさんには強く出れないらしい。

そんなオーグに、俺は耳打ちした。

「いいじゃん。どうせなら巻き込んじまおうぜ」

「……はあ、分かりました。お二方もいらしてください」

オーグがそう言うと、二人は嬉しそうに歩き出した。

自分から首を突っ込んだんだからね?

後での文句は受け付けませんよ?

そしてアールスハイド用に用意された天幕の中で、シルバーの素性を明かした。

その際の皆の反応は、まさに絶句といったところだった。

「魔人同士の……シュトロームの子供……」

「マジかよ……そんなことがあり得るのか?」

ガストール局長とオルグランさんの軍人コンビは、信じられないといった表情だ。

元軍人のミッシェルさんは、黙ったままシルバーを見ている。

「まあ、なにか裏があるとは思ってたけど、まさかこんな大ごととはねえ」

「むう……にわかには信じられんのう」

呆れるように呟くばあちゃんと、信じられないといった風の爺さん。

そして……。

「「聞くんじゃなかった……」」

この話を聞いたことを後悔しているエカテリーナさんとアーロンさん。

首突っ込んできたのはそっちですからね?

付いてきたことを後悔している様子の二人とは違って、当事者であるディスおじさんはしばらく難しい顔をしたあと口を開いた。

「それで、この子はどうするつもりなんだ?」

「それは……」

オーグがそう言いながらこちらを見たので、その続きは俺が引き継いだ。

「俺とシシリーが育てる」

シシリーもシルバーを抱いたまま俺の横にきて頷いた。

「なんと……」

その俺とシシリーの決意に、ディスおじさんは言葉を失っている。

そこで俺は、さっきオーグに説明したことをもう一度伝えた。

「むう……それは確かにそうだが……」

そう言って悩むディスおじさんの横から、口を出す人がいた。

「アンタたちは、本当にそれでいいのかい?」

ばあちゃんは、怒っている訳ではなく、非常に真剣な顔をして俺とシシリーを見て言った。

「こんな複雑な素性の子供、ちゃんと育てられるのかい? その女の魔人に対して同情してるだけなら、止めておいた方がいい。苦労するよ?」

「そうじゃのう……」

俺は、ばあちゃんと爺さんの言葉を聞いて、つい笑ってしまった。

「なにが可笑しいんだい」

「いや……じいちゃんとばあちゃんから、そんなこと言われるとは思わなかったからさ」

「どういう意味じゃ?」

「じいちゃんさ、俺って、どこの誰の子?」

「む……」

「それは……」

「複雑な素性って、俺なんて素性すら分かんないよ。誰が本当の両親かも」

「「……」」

「そんな俺をさ、じいちゃんは拾ってくれた。ばあちゃんと一緒に育ててくれた。確かに、二人の子供を護ってやれなかった贖罪だって聞いたこともあるけど……俺は、じいちゃんとばあちゃんから、そんな義務感は感じなかったよ」

これは本音だ。

「俺は胸を張って言える。俺は、賢者の孫だ。導師の孫だ。二人から確かな愛情を持って育てられた、二人の孫だよ」

「シン……」

「アンタ……」

「だからさ、俺は引き継ぎたいんだ、その愛情を、この子に」

俺はそう言って、シルバーの頭を撫でた。

シルバーは、嬉しそうにきゃっきゃと笑った。

「それに……あの人に……ミリアさんに託されましたから。ですから、私が責任を持って育てます。ですから、認めて下さい」

シルバーを抱いているシシリーがそう言って頭を下げた。

「お願いします」

俺も、その横で頭を下げた。

そうしてしばらくしていると、ばあちゃんの長い溜め息が聞こえた。

「はぁ……分かった、分かったから頭をお上げ」

「ばあちゃん!」

「お婆様!」

「まったく、そんなこと言われたら、何も言えなくなるじゃないか」

「そうじゃの。もしここで断れば、ワシらがシンに注いだ愛情も嘘になってしまう」

「じいちゃん……」

「シンよ。お前は間違いなく、ワシの孫じゃ。どこの誰の子かなど関係ない。じゃから、お前もその子に惜しみなく愛情を注いでやるんじゃぞ」

「ああ、もちろん!」

「ありがとうございます、お爺様!」

一番の難関だと思われていたばあちゃんの了解を得られたことで、この問題は解決だ。

ばあちゃんが了解したら、たとえディスおじさんだろうと、エカテリーナさんだろうとアーロンさんだろうと文句は言えないだろうからね。

「それにしても、こんなに早く曾孫を見ることになるとはねえ」

「ほっほ。頑張ったかいがあるというものじゃ」

ばあちゃんは、シシリーからシルバーを受け取ると腕の中であやしだした。

「おー、よしよし。ところで、この子に名前はあるのかい?」

「はい。この子を産んだミリアさんが、シルベスタと名付けていたので、そのままシルベスタにしようと思います」

「シルベスタ、じゃあシルバーだね。よしよしシルバー、ひいおばあちゃんだよ」

「ずるいぞメリダ、ワシにも抱っこさせい」

「アンタは、スレインを抱っこして泣かせたじゃないか。駄目だよ」

「な……」

「し、師匠! 私にも、私にも抱かせてください!」

なぜかエカテリーナさんが必死にアピールして、シルバーを抱っこする。

「ふわあ……可愛い……シン君の養子ということは……私にとっても孫……」

「うおいっ!! だから変なこと口走んないでくださいよ!!」

「いいじゃない! シン君は息子みたいなもんでしょう!?」

「ちげえよ!!」

本当に何言ってんだこの人は!

創神教教皇の孫だなんて言いいだしたら、また婆ちゃんに怒られるぞ!?

「ぶぅ……本気なのに……まあ、それはそれとして、この子は先に皆さんに説明した通り、奇跡的に生き延びていた帝国民の子ということで私が公表します。まあ……広い意味では間違えていませんしね。あ、言っときますけど政治利用ではありませんよ? 私が公表することで多少の無理も通るでしょう」

おっと、意外と言うなこの人。

自分が宣言すれば、多少無理な言い訳でも皆信じてくれると。

それを計算して自分が公表するなんて。

「まあ……今回はしょうがないかねえ」

「そうじゃの」

これにはさすがのばあちゃんも納得せざるを得なかったみたいだ。

これで、ようやく全ての問題が解決した。

あとは……。

「私が事態の終息宣言をして、そのあとは……皆さんの結婚式ですね」

エカテリーナさんがそう言って俺とシシリーに向かってウインクをした。

「あ、そうか……」

「ふふ、結婚式の前に、子供ができちゃいましたね」

そう言って、二人で微笑み合うのだった。

そんな俺たちの後ろで……。

「なあ、アーロン」

「なんでっか? 兄さん」

「なんか……私以外でみな決まってしまったな……」

「そうでんなあ……そしたら、お師匠さんに文句でも言うたらどないです?」

「アーロンお前……私に死ねと?」

「冗談ですがな」

ディスおじさんとアーロンさんが、そんな話をしてた。

……ばあちゃんが絡むと、男性陣が空気になっていく気がする……。

結局、ディスおじさんもばあちゃんが納得したことを覆すことはなく、シルバーを俺とシシリーの養子と

して迎え入れることと、シルバーの素性は、奇跡的に生き延びていた帝国民の子として公表することで了承した。