軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの戦い 1

数千もの災害級の魔物の群れの中に、ポッカリとできた一本道。

その非常識な光景を生み出した張本人は、さっさとその一本道を突き進んでいってしまった。

「まったく! ジジイがジジイなら孫も孫だよ!」

その光景を生み出した張本人であるシンが進んでいった先を見ながら、メリダは声を荒らげる。

「こんな大勢がいる目の前であんな魔法を放っちまったら、自分が警戒されるかもしれないってなんで分かんないのかね!」

「は、はは。メリダ様、どうかお鎮まりを。今回に限ってはそんな心配は無用かと思いますので」

シンが規格外の魔法を放つたびに口うるさく注意しているのは、魔人という脅威がなくなった後に今度はシンが危険視されないようにという心遣いのためだ。

だが、祖母の心孫知らずというのか、一向に自重する気配を見せない。

そのことを嘆くメリダだったが、今回の作戦の総指揮官であるドミニクは、その心配はいらないという。

なぜなら。

「先ほどのウォルフォード君の一撃で兵士たちの士気が最高潮に高まっています。頼りになると思われこそすれ、恐れられることはないでしょう」

ドミニクの言葉通り、今のシンの一撃について憤っているのはメリダ以外にはいない。

通常、軍の精鋭を集めて死ぬ気で戦わなければ勝てない災害級の魔物。

その多くが、シンの放った一撃で斃れたのだ。

死を覚悟していた兵士たちが歓喜するのも無理はない。

そして、ドミニクの言葉通り士気の上がった兵士たちもシンの支給したバイブレーションソードを手に持ち魔物との戦闘を開始していた。

「……今は人類の存亡っていう極限状態だから気にもしないだろうけど、この戦いが終わってもそうとは限らないだろう?」

「はっはっは。相変わらず、メリダ殿はシンのことが可愛いのですな」

ドミニクは問題ないと言うが、メリダは祖母という立場上どうしても心配してしまう。

その心情を見透かしたように、ミッシェルがメリダを茶化した。

「な、なに言ってるんだい! 別にあの子のことが可愛いとかじゃなくて、単に人様に迷惑をかけないか心配しているだけさね!」

「ふむ。ではそういうことにしておきましょう。ところでメリダ殿」

「なんだい!?」

「我々もそろそろ戦いに参加しましょうか」

祖母の孫に対するツンデレという、一体誰に得があるのかわからない反応をするメリダ。

その反応を見ておかしそうにするミッシェル。

その態度にイラっとするが、確かにここで話をしているだけなら、わざわざ戦場に出張ってきた意味がない。

「はあ……まったく、あの泣き虫坊やが立派になったもんだね。分かったよ、キッチリ魔物を討伐してやろうじゃないか」

「メ、メリダ殿。その話はここでは……」

出会った頃はひ弱でよく泣いていたミッシェルが、今やメリダに意見をするようになった。

メリダはそのことを懐かしく思うのだが、ミッシェルの方は黒歴史に類する話だったらしい。

「な、泣き虫坊や?」

「ドミニク」

「は!」

「……その話は忘れろ。いいな?」

「は、はは!」

ミッシェルの過去に興味をそそられるが、よほど知られたくないのだろう、若干殺気を飛ばしながら命令してきた。

世界連合軍の精鋭を指揮するドミニクだが、殺気を飛ばす元上司には逆らえず、震えながら命令を承諾した。

「おぬしら、そろそろええかの?」

三人のやり取りをそばで見ていたマーリンが、ようやく終わったかと声をかけた。

「珍しいですな。マーリン殿が先制攻撃をしないとは」

「おぬし、儂をなんじゃと思うとるんじゃ?」

昔のマーリンを知っているミッシェルは、自分たちのやり取りが終わるまで待っていたマーリンを珍しいものを見る目で見た。

その言葉が不本意だったマーリンは、一体自分をどんな目で見ているのかと問うたのだが……。

「え? 人の形をした鬼では?」

「よし。ミッシェル、おぬしこの討伐が終わったら覚えておれよ?」

「はっは。これは当分ウォルフォード家には近付かない方がよいかな?」

「まったく……始めるぞい」

数十年来の知り合いということもあるのだろう。

多数の災害級との戦闘前とは思えない気軽なやり取り。

正直、ドミニクはもう目の前まで魔物が迫っているので気が気ではない。

だが、そんなドミニクの心配は杞憂に終わる。

「っ!! こ、これは魔法障壁!?」

「ふん。高々災害級の魔物がアタシの障壁を破れるかね?」

近づいてきた災害級の魔物が、メリダの魔道具により発生した障壁に足止めされた。

魔物の体そのものを止めていることから、魔法障壁だけではなく物理障壁も展開されている。

ドミニクはその障壁の強度に驚愕していたのだが、それを当たり前のように受け止めた人物がいる。

「そんなに近づいては、もう避けられぬぞ!!」

メリダが障壁をもって魔物を足止めすると信じていたマーリンは、シンに劣らぬほどの魔力を集めていた。

そして、魔物が障壁にぶつかった瞬間、その魔力を一気に開放した。

「ほれ! 吹っ飛べ!!」

マーリンが魔法を放つ瞬間、展開していた障壁をキャンセルするメリダ。

一瞬の狂いもない、完璧な連携である。

そして、マーリンの放った魔法が魔物の群れの真ん中に着弾すると、途轍もない轟音を撒き散らしながら爆発した。

それは味方をも巻き込むほどの大爆発だったのだが、メリダは、一旦解除した障壁を魔法の着弾に合わせて再度展開している。

おかげでフレンドリーファイアという状況は免れた。

「相変わらず滅茶苦茶だねえ、アンタは」

「相手は災害級なんじゃ。遠慮などしておれんじゃろ?」

呆れるメリダと久々に全力で魔法を放つことができ上機嫌なマーリン。

「以前と変わらず、見事な連携ですな」

ミッシェルは、過去に見たときと寸分違わぬ二人の連携を見て感心している。

そして、マーリンとメリダの二人の戦闘を初めてみたドミニクは。

「これが……これが英雄の力……」

他のアールスハイド国民と同じように二人に憧れていたドミニクは、伝説の英雄の力を間近に見て内心の興奮を抑えられずにいた。