軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

入学試験を受けました

シシリーとマリアと別れ、家に帰ってきた。

「お帰りなさいませシン様」

門番のアレックスさんが出迎えてくれた。他にも何人かいて交代制を敷いているけどアレックスさんが先の使用人決定戦・門番の部の優勝者なので、彼が警備主任者だ。

だから、使用人決定戦って!

「ただいま、アレックスさん」

「シン様、やはり徒歩での外出は控えられませんか?シン様に何かあったらと思うと私は……」

「大丈夫だって、さっきも街でゴロツキを相手にしたけど何も問題無かったよ」

「ゴロツキ! そんな危険な真似をなさっていたのですか!?」

「だから大丈夫だってば。ミッシェルさんより強い相手じゃなきゃ問題無いって」

「ミッシェル様……前騎士団総長の……」

「そうそう、だからそんなに心配しないで。お勤めご苦労様」

「はぁ……」

ふう、全く使用人の人達は過保護で困るよ。こっちはこの間まで森の中で野生動物を相手にしてたのに。まぁ心配してくれる気持ちは嬉しいんだけどね。

屋敷に入ると、今度は執事のスティーブさんが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませシン様」

「ただいま、スティーブさん」

「先程、高等魔法学院よりこれが届きました」

「何? これ?」

「高等魔法学院の入学試験受験票です」

お、そういえば、ディスおじさんが、『私から言っておく』って言ったきり音沙汰無いからどうしたのかと思ってたよ。ちゃんと仕事してたんだねおじさん。

「そっかぁ、何かいよいよって感じがするな」

「そう気負わずともシン様ならば大丈夫でしょう。むしろ首席合格も狙えるかと」

うーん、今日のマリアの話からすると今の時点で既に目立ってる気がするし、これ以上目立つのもなぁ……かといってギリギリの点数だと爺さんの孫なのにとか言われそうだし、ディスおじさんの顔に泥を塗るのもなぁ……。

よし! 決めた! 試験は全力でやろう。

「分かった。ありがとうスティーブさん」

「いえ、頑張って下さいませ。使用人一同で応援しております」

そして年が明けて、内輪だけの新年パーティーが開かれた。

ホントに内輪だけ。

爺さん達が王都に来てから何とか繋ぎを得ようと有象無象が押し寄せてるが、そもそも爺さんが王都に来たのは俺の社会勉強の為だ。なので訪れる人には全員お帰り願っている。

結局、先日の誕生日パーティーに来てくれた面子だけで行われた。

自国の国王が来ちゃったので、使用人さん達は超緊張してた。警備部門も全員駆り出して警戒に当たってたからね。後で労っとこう。

それより、王宮のパーティーはいいのか? ディスおじさん。

そして年が明けて数日後、アールスハイド高等魔法学院の入学試験日当日を迎えた。

学院までは歩いて通う予定なので、今日も馬車は無し。ここ数日王都を色々散策したので学院の場所は分かってる。貴族街と平民街の境目位にあり、貴族、平民、どちらも通いやすい場所にある。そしてウチも貴族街と平民街の間にある。徒歩十五分位かな?

今日持って行く物は、受験票と筆記用具、それと……フフフついに手に入れたぜ、市民証! 王都に入る時には持って無かった身分証を手に入れたぞ!

実はこの市民証、凄いハイテク……じゃないハイマジカルな一品です。個人の魔力パターンを認識し本人以外に起動出来ないので本人確認でこれ以上の物は無い。

そして、このアールスハイド王国には王立の銀行があり、そのキャッシュカードとしても利用される。口座はカードに直接記録される。本人以外に起動出来ない上、口座の内容を変更するのは銀行でしか出来ない為、銀行があればどこでも引出しと預入が出来る。不正操作は出来ない程強固なセキュリティになってる。もし不正な金額の増加があった場合。死刑に処される。セキュリティと信用の為、絶対触れてはいけない領域って事らしい。

ちなみにクレジットカード機能は無い。

そして、魔物が出す特定の魔力パターンを一ヶ月だけ記憶する事も出来る。魔物ハンター達は、討伐に出る前に魔物ハンター組合に行き、現在の討伐情報を記録させる。そして討伐から帰ってきた時に出る前との差額を計算して報酬を受けとるのだ。

ホントにすげぇな市民証。

そんなハイテ……ハイマジカルな一品を持って浮かれ気分で歩いてると学園に着いた。

到着した学院は、大きさで言えばちょっと大きい私立の高校位かな?一学年百人の三年制で三百人しかいないのでそれくらいの大きさだ。それにしてもこの王都の大きさでこの人数。ここしか高等魔法学院が無いって事は、相当狭き門だな。

さて、そんなに大きくないって言ってもそこは学校ですから、初めて来た人間にはそれなりの大きさの建物である訳で、何処に何が有るのか分からないので案内板で試験会場を検索中です。

「おい貴様、そこをどけ」

それにしても凄い人数だな。これ、教室全部使っても足りるのか?

「おい! 貴様! 聞こえないのか!」

うーん、会場はっと……あ、あったあった。

「この無礼者が!」

何か後ろから肩を掴まれた。ので肩を掴んでる腕を逆に掴み返し、相手の後ろ手になるように捻りあげた。さっきから五月蝿いし、何なのコイツ?

「ぐあっ! 貴様ぁ! 何をするっ離せ!」

「さっきから何なのアンタ? いきなり人の肩掴んどいて何をするは無いんじゃない?」

腕を解放しながらそう問いかけると、金髪碧眼の生意気そうなガキがこっちを睨んでる。

「貴様! 俺はカート=フォン=リッツバーグだぞ!」

「? はい。俺はシンです」

唐突に自己紹介されたな。

周りからクスクス笑われてる。何故だ?

「き、貴様ぁ、俺はリッツバーグ伯爵家の嫡男だぞ!」

「?? へぇ、そうですか」

「おのれぇ! 俺に逆らって只で済むと思ってるのか!?」

ここまで言われて気が付いた。これ貴族の坊っちゃんが権力を振りかざして俺に絡んでるのか。魔法学院内だからまさかと思っちゃったよ。それにしても……。

「あのさ、えぇとカート君? もうその辺にしといた方が良いんじゃない? 貴族が権力を振りかざす事は厳禁なんでしょ? 厳罰もあるって聞いたよ?」

「たかだか魔法学院の教師なんぞに、この俺を裁ける訳が無いだろうが!」

おおう、過激発言。国家反逆罪に問われる事もあるってディスおじさん言って無かったっけ?

これはちょっと不味くないか? と思っていると横合いから声が掛かった。

「そこまでだ」

「っ! あ、あなたは……」

どちら様?

「高等魔法学院において権力を振りかざし、他の魔法使いを害する事は、優秀な魔法使いの芽を刈り取る行為であり、これを破った者は厳罰に処する。高等魔法学院の校則では無く、王家の定めた法であったはずだ」

「う、そ……それは」

おや? カート君が急に大人しくなった。ひょっとして彼より上位の貴族様なのかな?

「それとも、先程の発言は王家に対する叛意なのか?」

「ま! まさかそんな事は!」

「ならばこれ以上騒ぐな。ここは入学試験会場だ。皆の心を乱す様な事をするな」

「は……はっ、かしこまりました」

そして、俺に怨みが篭った様な視線を向けてから立ち去って行った。

なんで?

「大変だったな。大丈夫か?」

「ん? ああ、全然大丈夫だよ。というか魔法学院であんな行動を取る奴が居るとは思わなかったからさ、最初気付かなかったよ」

「ふっくっく、あの自己紹介を返したのは傑作だったな」

高位貴族っぽい少年が楽しそうに笑っている。身長は俺と同じ位かな? あ、今一七五センチまで伸びました。黄土色っぽい金髪と蒼い目をしており、白磁の肌っていうの? 透き通る様な肌をしたすっげえ美少年だ。

「それにしても、いくら高等魔法学院が貴族の専横を許さないとはいえ、実際に相対すると萎縮してしまう者の方が多いんだがな」

「ああ、俺権威とかあんまり関係ない立場だし、あれを恫喝って呼ぶのもどうかと思うよ。あんまり迫力無いもの」

「フム、聞いた通り大分浮世離れしているみたいだな」

「聞いた通り?」

誰に?

「ああ、自己紹介が遅れたな。私の名はアウグスト。アウグスト=フォン=アールスハイドだ。近しい者はオーグと呼ぶ。シン、君の事は父上から色々と聞いてるよ」

「え!? って事はディスおじさんの息子?」

お?周りがシーンとした。

「くっくっく、ディスおじさんの息子……そんな風に言われたのは初めてだな。俺が王子だと知った奴は途端に媚びてくる奴等ばかりなのだがな」

「だって、ディスおじさんの事ずっと親戚の叔父さんだと思ってたからさぁ、おじさんの息子って言っても従兄弟?って感じがするんだよね」

「くっくっく、あははははは!」

何か大爆笑されましたけど。

「そうかそうか従兄弟か。父から君の事を色々聞いた時に不思議な感覚に陥ったのを思い出したよ。従兄弟とそう言われても違和感が無い。いや、むしろこの感覚に納得したよ。そうか、従兄弟か」

「何か喜んで貰えた様で何よりだよ」

「ふふ、こうしてようやく会えたんだもう少し話をしたい……所だが、そろそろ試験会場に行かないとまずいかな?」

「え、あ! ホントだ。もう行かないと」

「それじゃあ、お互い頑張ろう。次に会うのは入学式かな?」

「はは、そうなる様に頑張るよ。ていうか家に遊びに来てもいいよ?」

「もうすぐ立太子の儀を控えてる王子としては、そう軽々しく出歩け無いんでね」

「そうなの? ディスおじさん、しょっちゅう遊びに来てるけど」

「父上……」

そうしてグッタリしてるオーグと別れ、試験会場へ向かった。

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シン、カート、アウグストを囲む様に野次馬が集まっていたが、その中にマリアとシシリーの姿があった。

「ちょっと、折角シンを見つけたと思ったのに、何でよりにもよってアイツに絡まれてんのよ!」

ちょうどカートに絡まれたところらしい。

「あぁ……シン君大丈夫かな……」

「アイツは選民意識の塊みたいな馬鹿野郎だからね……面倒な事にならなきゃいいけど」

この二人はカートの事を知っている様だ。

「え? ちょっと!! あれって!」

「まさか、アウグスト殿下!?」

そしてアウグストによって事態は終息し野次馬の面々も試験会場へ散って行った。

マリアとシシリーもその波に乗りながら話を続ける。

「シン君って何者なんだろう?」

「本当にねぇ、アウグスト殿下があんなに楽しそうに話してるのなんか初めて見たよ」

「うん」

「それより……問題はアイツだね。まさかこの学院に来てるとは」

「そうだね……」

「いいシシリー。もしアイツに何かされたらすぐに言うんだよ?いや、されなくれも言うんだよ?」

「何もされてなくてもって……」

「ふーむ、あ! そうだ! シンにさ一緒に居て貰えばいいじゃん!」

「え、えええ!? シン君に!?」

「そう! 嫌な奴に付き纏われてるって言えばきっと助けてくれるよ! 強いし、貴族にも王族にすら物怖じしないんだから!」

「でも……絶対迷惑だよ」

「大丈夫だって。多分シンは困ってる女の子を見捨てる様な奴じゃない。この前の一件でそういう奴だって確信した。寧ろ進んで守ってくれるんじゃない?」

「でも何か……シン君の優しさに突け込んでるみたい……」

「そうね、突け込むのよ。いいシシリー、確かにシンは良い奴だと思う。でも私はアンタの事の方が大事なの」

「マリア……」

「それに一緒に居れば仲が進展するかもしれないじゃーん」

「え、あ! もう!!」

シンの知らない所で女の子達の計画が進行していた。

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あれから試験会場にて筆記試験を受けた。やっぱり人で一杯だった。

終わり。

筆記試験にこれ以上何を言えと?

そして実技試験が始まった。

試験は室内練習場で行われ、設置された的を破壊できれば良し。破壊できなくても魔法の錬度を見るらしい。受験番号順に五人づつ室内練習場に入り、一人づつ魔法を披露していく形式だ。

俺は五人の内の最後の順番だった。

最初の奴が受験票と市民証を試験官の先生に渡してる。

試験官の先生は、黒いローブに肩に届く位の黒い髪をした眼鏡をかけた女の先生だ。何か黒いスーツ着てたら、秘書って感じの人だな。

「それでは、自分の一番得意な魔法を力の限り放ちなさい」

「ハイ! よろしくお願いします!!」

おお、初めての同年代の魔法だ。どんな魔法を使うんだろう?

『全てを焼き尽くす炎よ! この手に集いて敵を撃て!』

……。

『ファイヤーボール!!』

……。

ボンっ!

……。

「ふう」(ドヤ顔)

……恥ずかしい! 恥ずかしいよ! 何だよあれ? 詠唱ってあんななの? それにファイヤーボールってベタにも程があるよ! 撃つまでが派手だった割に効果がショボいよ! それなのに何でドヤ顔してんの?

これはマズイ。皆の期待に応えようと全力でやろうと思ってたけど、全力でやったら確実に変な目で見られる。全力出すのは止めとこう。

そして試験はどんどん進んでいく。

『荒れ狂う水流よ! 集い踊りて押し流せ!』

『ウォーターシュート!』

……。

『風よ踊れ! 風よ舞え! 全てを凪ぎ払う一陣の風を起こせ!』

『ウィンドストーム!』

……。

『母なる大地よ力を貸して! 敵を撃ち払う礫となれ!』

『アースブラスト!』

……うおぉ……しんどい……何だこの厨二病発表会は!?

聞いてるだけで大昔の黒歴史が甦って来るようだぜ……。

人知れず精神にダメージを受けていると前の4人が全て終わったので、次は俺の番だ。さて、どんな魔法を使うか?

「さて次は……」

俺の受験票と市民証を見て試験官の先生が一瞬目を見開いた。

「君が……ふむ。それでは、自分の一番得意な魔法を力の限り……と言いたい所だが、君の場合は注意しておこう」

注意? なんで?

「君はあの的を破壊する程度の威力の魔法でいい。くれぐれもこの練習場を破壊するような魔法は使わない様に」

……ディスおじさん……一体どんな話の仕方をしたんだ……。

その逆特別扱いにちょっとションボリしながら定位置に着いた。

さて、的は両手両足の無いマネキンみたいな形をしてる。今までの魔法に耐えているので強度はそこそこありそうだ。ちなみに不公平が出ない様に毎回新品を用意してる事から、強度があると言ってもそこまで高価な物は使ってないだろう。となると……あれでいいか。

そして俺は、例の青白い炎を一つだけ、大分小さめに作り出した。無詠唱でその現象を起こした事に周りがザワつく。それを細長く成型し弾丸として打ち出した。

超スピードで打ち出された炎の弾丸は青白い線を空中に描きながら的に吸い込まれた。

ドンッッッ!!!!

大音量を撒き散らして的が爆散する。そして的を打ち砕いた炎の弾丸は勢い衰えず後ろの壁に着弾した。あ、やっべ。

ドガアァァァン!!!!!

壁に施されていた魔力障壁にぶち当たり、練習場全体を激しく揺らした。そして全てが収まった時、周りの面々の反応は、唖然、としか言い様の無いものだった。これ先生に怒られないか?

「……一つ聞きます……今の魔法は、全力を出したのですか?」

「いえ? 先生が練習場を破壊するなって言うから、相当抑えて撃ちましたけど」

「あ……あれで相当抑えた?」

「ええ」

「……そうですか。分かりました。試験はこれで終了です。皆さんお疲れ様でした」

良かった。怒られずに済んだ。

その事にホッとしてしまいマリアやシシリーを探すのを忘れて家に帰った。

うおぉぉ! 何やってんだ俺ぇぇ!

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全ての試験が終わった魔法学院に教師達が集まっていた。

「そんなに凄かったのか? 『賢者の孫』は」

「凄いなんてモノではありませんでした。相当抑えて、本人は軽く撃ったつもりの魔法で練習場が壊れるかと思いました」

「そ、そんなに?」

「ええ、しかも無詠唱で、撃ち出すまでも一瞬でしたね」

「なぁ、それ、ワシらが教える事あるのか? 寧ろワシらが教わりたいんだが」

「それは私も同じです。元々人間付き合いを覚える為に入学させると陛下も仰ってましたし、授業の時は皆のお手本となって貰って、後は研究室でも作ってそこに人を集めて人付き合いを教えれば良いんじゃないでしょうか?」

「おお! そりゃ良いな。研究室なら俺らが出入りしてても不自然じゃないしな」

「そうですね。その方向で行きましょうか」

「はい。所で入試順位はどうなったんですか?」

「筆記も見ました。まだ採点中ですが、ほぼ満点だった様ですね」

「となるとこれは……」

「ええ、今年の『入試首席』は決まりですね」