軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フレドリクからのお誘い!?

「ルドルフ」

アリシア皇妃の部屋を出たところで、後ろから声をかけられた。

僕を呼び捨てにする者は、皇宮とはいえ限られてくる。

僕は、ゆっくり振り返ると。

「フレドリク兄上……」

「少々構わないか?」

あの合理主義……いや、利己主義のフレドリクが、この僕に何の用だ?

新年パーティーでの顔合わせの時ですら、僕と言葉を交わすことなく退席したというのに。

一体、何の目的で……。

「時間が惜しい。それで、どうなんだ?」

「……分かりました」

「うむ」

ということで、僕は先に進むフレドリクの後に続く。

だけど、自分から誘っておいて『時間が惜しい』はさすがにどうかと思う。こういう態度だから、フレドリク派の貴族がオスカルの陣営の引き抜きに遭っていることを理解したほうがいい。

などと考えている間に、僕はフレドリクが管轄する人馬宮へと連れてこられた。

「まあ、座れ」

「失礼します」

フレドリクの合図で、使用人がお茶を用意する。

僕はそれに手をつけずに、フレドリクを見据えると。

「それで、僕をここに連れてきた目的は何ですか?」

単刀直入に、そう尋ねた。

「なに、大した話じゃない……いや、そうでもないな。私も、ルドルフと話をする必要があったから、こうして来てもらったのだからな」

「…………………………」

フレドリクが、お茶を口に含む。

それにしても……この男が何を考えているのか、全然分からないな。

「なあ、ルドルフ」

「……はい」

「率直に聞くが、私は皇帝の器だと思うか?」

「はい?」

思いもよらない質問に、僕は思わず声を上ずらせた。

いきなり何を聞いているんだ?

「ルドルフ、私に遠慮する必要はない。そのようなものは無駄だ」

「は、はあ……」

ええー……これ、どう答えたらいいんだよ。

正直に言うと、いくら優秀であったとしても、合理性や自分を優先するあまり他の者達を置いてけぼりにするフレドリクは、皇帝の器ではないと思う。

そういう意味では、兄弟の中ではオスカルが最も皇帝に向いているとも考えられるけど、彼も彼で闇を抱えているし、何よりヴィルヘルムなんかと手を結んだから、絶対に賛同するつもりはない。

……とりあえず、本音で話してみるか。

「申し上げにくいですが、フレドリク兄上は皇帝に向いているとは思えません」

「そうか……」

フレドリクは、窓の外を見やると。

「私も、自分が皇帝の器であると、露程も思っていない」

「え……?」

ど、どういうこと?

フレドリクは次の皇帝になりたくて、アリシア皇妃の力を借りつつ派閥を拡大し、オスカルと争っているんじゃないのか?

「意外だったか?」

「そ、それはもちろん……」

僕の答えに、フレドリクはしてやったりといった様子で、口の端を持ち上げた。

いやいや、リズに負けず劣らず鉄面皮だと思っていただけに、こんな表情も見せるのか。

「私とて、好きで皇帝になろうなどと考えているわけではない」

「では、何故……」

「 皆が(・・) 、 それを(・・・) 求める(・・・) からだ(・・・) 」

「あ……」

フレドリクの予想外の心境の吐露に、僕はどうしていいか分からず戸惑ってしまう。

だけど……フレドリクの立場を考えれば、そういうことなのかもしれない。

第一皇妃であり、国母であるアリシア皇妃からその立場を求められ、帝国内で自家を有利な立場にするためにすり寄る貴族達。

フレドリクは、そんな期待や思惑を全て背負っているんだ。

自分の思いに、蓋をして。

「フレドリク兄上……どうして、その話を僕に?」

おそらく、フレドリクがこんな話をするのは、僕が初めてだろう。

僕には、何故それが僕なのか、分からなかった。

「ルドルフ……お前はあの毒殺未遂事件以降、別人のように変わった。今までのお前は、まるで誰かに見せつけるかのように使用人達に当たり散らし、ロビンのいじめを黙って受け入れ、卑屈な視線を向けるのみ」

それを言われると、僕も恥ずかしさで穴があったら入りたくなる。

前世の記憶を取り戻す前の、自暴自棄になっていたあの頃は、とにかく誰かに見てほしかったから。

だけど……今の口振りだと、フレドリクは以前から僕を見てくれていたことになるんだけど。

「それからお前は、 天蝎(てんかつ) 宮に 蔓延(はびこ) る不正を 糺(ただ) し、リズベット嬢と婚約したことで、あの誰にも 与(くみ) することがなかった、ファールクランツ卿の後ろ盾を得た」

「…………………………」

「今はまだ、その出自や以前のお前の姿、それに実の母親であるベアトリスの所業によって、帝国内のお前の評価は低いままだ。だが」

フレドリクが、 琥珀(こはく) 色の瞳で僕を見つめる。

そして。

「ルドルフ……私は、お前こそが次の皇帝に最も相応しいと、そう考えている」