軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ルドルフ派閥

「ふふ……なら、ルディ様の派閥はいかがですか?」

「リズ!?」

リズの突然の提案に、僕は思わず声を上げた。

いやいや、僕は別に皇帝になるつもりはないし、そのことはリズが誰よりも理解してくれているはず。

それに、シーラの実家であるアンデション辺境伯家の支援の申し出も、余計なしがらみを持たないようにするために断っているほどなんだ。

なら、リズはどうしてそんな提案を……。

「ご存知のように、ルディ様には私の実家、ファールクランツ家が後ろ盾となっており、有象無象の貴族家が寄ってたかったところで、びくともしないほどの力を持っております」

「は、はい……」

「加えて、帝国一の富豪であるアンデション辺境伯も、ルディ様に対して非常に好意的です。なら、ルディ様の派閥に入ることは、その地位が安泰されるというもの」

「あ……」

一瞬、クリステルは色めき立つが、すぐに目を伏せた。

おそらく、これまでの僕に対する暴言……とまではいかないけど、無礼な態度を気にしてのものだろう。一応、僕も第四皇子だからね。

すると。

「これまでのことを、気にする必要はありません。あなたはあの男の本性に気づき、自らの意思で離れたのです。私は、そのことを嬉しく思います」

リズはクリステルの手を取り、ニコリ、と微笑んだ。

“氷の令嬢”と呼ばれているリズの、僕以外に見せた笑顔に、クリステルは戸惑っている。

「その……よろしいのですか……?」

「もちろんです。これを機に、私とも友達になっていただけると嬉しいです」

「は……はい! ありがとう……ございます……っ」

感極まり、涙を見せるクリステル。

シーラもリズの尊さに、もらい泣きをしてしまった。

それで……僕としては、これをどう収拾してよいものかと、頭を抱える。

いや、だって、僕自身は派閥作るなんてこれっぽっちも考えていないんだよ? 本当にどうしよう。

まあ、でも。

「ルディ様……」

アクアマリンの瞳を潤ませ、懇願するリズ。

ああもう……そんな目で見られたら、僕は首を縦に振るしかないじゃないか。

結局、僕はリズ達三人の令嬢を見つめながら、苦笑いを浮かべるしかなかった。

「……ということでして」

僕は学園が終わり次第、アリシア皇妃の元を訪れて自分の派閥を作ることを報告した。

フレドリク派閥を実質取り仕切っているアリシア皇妃からすれば、僕のしたことは裏切り行為と取ってもおかしくないからね。

「なるほど……だけど、これも私とロビンのせい、なのよね……」

「いえ、さすがにそのようなことは……」

「いいえ、ロビンがもっとしっかりしていたら、あの子に付き従っていた貴族達が困ることはなかったのよ。なら、ロビンの派閥になるように働きかけた私も、その罪は重いわ」

アリシア皇妃……なんだか小さく見える。

ロビンを幽閉し、気を落としていたからな……。

なら。

「でしたら、僕が派閥を作ることを、どうかお許しください。ひょっとしたら今後、スヴェンソン家のように路頭に迷う貴族家が出てくるかもしれません。なら、その受け皿に僕がなります」

「ルドルフ殿下……」

少しでも彼女の心が少しでも軽くなるようにと、僕はそんな提案をした。

アリシア皇妃の今の姿を、見ていられなくなってしまったから。

「もちろん、僕がフレドリク兄上を裏切るようなことは絶対にいたしません。それに、オスカル兄上とは明確に 袂(たもと) を分かちましたので」

「……それは、どういうこと?」

「はい」

僕は、先日のサロンでの一件を説明した。

何より、あのヴィルヘルムとは絶対に相容れないということを。

「そう……あなた達にも、色々あるのね」

アリシア皇妃は、僕を見て苦笑する。

でも、結果的にアリシア皇妃の気を紛らわせることができたみたいで、何よりだ。

「引き続きフレドリクを盛り立ててくれるということだし、私が反対するようなことは何もないわ」

「ありがとうございます」

僕は、アリシア皇妃に深々と頭を下げた。

「それなら、ロビンの派閥に属していた貴族を、あなたにつくように手配しようかしら」

「いえ、それには及びません。余力がある貴族は、フレドリク兄上の派閥に吸収したほうがよろしいかと」

「それもそうね」

アリシア皇妃は、クスリ、と笑った。

「では、アリシア妃殿下のお許しもいただけましたので、これで失礼いたします」

「そう……」

僕が席を立つと、アリシア皇妃が目を伏せる。

フレドリクは合理主義……いや、自分主義なところがあるし、ロビンは北の大地に幽閉されている。ひょっとしたら、アリシア皇妃も寂しい思いをしているのかもしれない。

「その……用事がなくても、またお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「っ! ……あなたは優しいのね。もちろん、いつでも歓迎するわ」

笑顔を見せるアリシア皇妃に見送られ、僕は 巨蟹(きょかい) 宮を後にした。