軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オスカルのお誘い

「やあ、ルドルフ」

「「っ!?」」

次の日の朝。

僕とリズが学舎に入ろうとしたところで、オスカルに捕まってしまった。

それにしても、いつもいつも背後から気配を消して声をかけてくるの、やめてほしい。

おかげで、こっちは毎回ビクッとしてしまうんだけど。

「オスカル兄上、おはようございます」

「オスカル殿下、おはようございます」

「アハハ。二人共、そんなにかしこまらなくていい。僕とルドルフの仲じゃないか」

深々とお辞儀をする僕とリズに、オスカルは苦笑しながらそんなことを言った。

いや、少なくとも僕は、オスカルに対して兄弟だという感情すら持ち合わせていないし、むしろどんな仲なのか教えてほしい。

「それで……声をかけられたということは、何か用があってのことでよろしいのですよね?」

「用というほどではないのだが、実はルドルフに引き合わせたい者達がいる」

「僕に……ですか?」

「そうだ」

ふむ……つまり、自身の派閥に属する貴族達と顔合わせをしたい、ということなのだろうか。

「オスカル兄上、何度も申し上げますが、僕はフレドリク兄上に 与(くみ) しております。ですので……」

「まあまあ、僕につくか、フレドリク兄上につくかはともかく、まずは会ってみてくれ。そういうことだから、今日の昼休み、学園内のサロンで待っているよ」

「あ! ちょっ!?」

勝手にそんなことを言い残し、オスカルは行ってしまった。

「ルディ様、いかがなさいますか?」

「ハア……さすがに無視するわけにもいかないので、仕方ないですね……」

おずおずと尋ねるリズを見つめ、僕は肩を落とす。

これでもし行かなかったら、それはそれで面倒なことになりそうだしなあ……。

「では、お昼休みは私もご一緒いたします」

「いや、できればリズにはシーラ嬢と一緒にいてもらえませんか」

「……それは、どうしてでしょうか?」

昼休みだけとはいえ、僕と離れ離れになるのが不満なのか、リズは氷の視線を僕に向けてくる。

でも。

「リズ、どうかお願いします。今回の件、君が 傍(そば) にいないほうがいいと思うんです」

「何故ですか?」

「その……これは僕の 勘(・) なのですが、どうにも嫌な予感がするんです」

「嫌な予感……でしたら、それこそ私を 傍(そば) にいさせてください」

リズはずい、と身を乗り出して訴えた。

僕を守ると誓ってくれたリズだから、なおさらその想いが強いんだろう。

「大丈夫。リズの強さが必要になる場面はないと思います。むしろ、オスカル兄上はどんな 搦(から) め手で来るか分かりませんので、僕としてはそのようなことから、君を守りたいんです」

「…………………………」

納得できないリズは、僕をジッと睨む。

やれやれ、困ったなあ……。

「リズ、どうか聞き入れてはくれませんか? そのお詫びに、リズのお願いを何でも一つお聞きしますから」

「っ!?」

そんな交換条件を提示すると、リズは一転、アクアマリンの瞳を輝かせた

どうしよう、 飴(・) につられるリズ、すごく可愛いんだけど。

「……仕方ありません。ただし、今回だけですよ?」

「! ありがとうございます!」

口を尖らせるリズの手を取り、僕はお礼を告げた。

「くれぐれも、ヴィルヘルムには気をつけてくださいね?」

昼休みになり、僕はリズに念を押す。

あの男、僕がいなくなれば絶対にリズにちょっかいをかけてくると思うから。

「ご安心ください! リズベット様は、この私が絶対にお守りしますから! というか、リズベット様との二人きりの時間を邪魔させてなるものですか!」

「そ、そう……」

豊満な胸を拳で叩き、シーラはフンス、と意気込む。

あれ? 逆に心配になってきたんだけど……。

「ルディ様……どうか、お気をつけて」

「あはは、行ってきます」

僕はリズと別れ、指定された場所であるサロンへと向かう。

――コン、コン。

「失礼します」

扉を開いて中に入ると、既にオスカルをはじめ数人の子息令嬢が控えていた。

というか、僕はてっきりオスカル派閥の貴族が来ていると思っていたけど、まさか子息だなんてね……。

こんな権限の一切を持たない連中が集まったところで、なんの意味もないのに。

「ルドルフ、よく来てくれた」

オスカルが椅子から立ち上がり、僕を出迎える。

その姿は、見る者によっては仲の良い兄弟同士に見えるだろう。

「オスカル兄上……これはどういうこと?」

「ん? 何がだ?」

僕が問いかけると、オスカルはキョトン、とした。

「いえ、僕を今日呼んだのは、兄上の派閥をご紹介する……そういうことではないのですか?」

「プ……アハハ! 考えすぎだ! 今日ルドルフを呼んだのは他でもない、帝立学園の生徒会への勧誘さ!」

「あ……」

吹き出すオスカルに、僕は呆けた声を漏らした。

な、なんだ……僕はてっきり、数でオスカル陣営への引き抜きにかかるのかと、そう思っていたのに。

「ルドルフは知らないかもしれないが、帝立学園では代々皇族が生徒会長を務めている。昨年はフレドリク兄上が、そして今年はこの僕が」

「そ、そうなんですね……」

「だから、ルドルフにも一年の時から入ってもらい、生徒会の仕事に慣れてもらおうというわけさ」

オスカルは僕の肩に手を置き、ニコリ、と微笑んだ。

だけど、生徒会かあ……日々の訓練だったりリズとの時間もあるから、できればお断りしたいなあ……。

などと考えていると。

――コン、コン。

「失礼します」

「っ!?」

ノックとともに、左足を引きずりながら入ってきた一人の男。

それは……あのヴィルヘルムだった。