軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴィルヘルムの真意を探ろう

「え、ええと……ルドルフ殿下、何があったんですか……?」

教室にやって来たシーラが、今のこの状況を見ておずおずと尋ねる。

彼女からしたら、いきなりこんな場面に出くわして困惑するのも仕方ないよね。

「実は……」

僕はヴィルヘルムを指差しつつ、リズとクリステルや他の令嬢達とのやり取りについてかいつまんで説明すると。

「うわあ……見逃してしまいました。残念」

シーラは悔しそうに、唇を尖らせた。

彼女については、推しであるリズの雄姿を見たかったと思うのも当然か。

「いずれにしても話は終わりましたので、気を取り直しましょう。あとは、ご自身で考えることですので」

そう言うと、立ちすくむクリステルやヴィルヘルム、他の令嬢達を気にも留めていないとばかりに、リズは自分の席に座って授業の準備を始めてしまった。

「クリステル嬢……俺のために、ありがとう。そしてリズベット、君の忠告は確かに受け取ったよ。 今度は(・・・) 、そういったことも含めて戦い、勝利してみせる」

「ヴィ、ヴィルヘルム様……」

ええー……対戦相手、僕なんだけど。

なのに、どうしてこの男はリズに勝利宣言をしているのかな。

だけど、リズの忠告があったからか、さっきまでとは違い、クリステルにどこか戸惑いのようなものが見受けられた。

こうやって少しずつでもいいから、令嬢達がヴィルヘルムの毒牙にかからないようになってくれればいいなと思う。

リズみたいに騙されることになったら、不幸しか生まないから……って。

「ルドルフ殿下、後で令嬢方と遠巻きに見ていらっしゃいます殿方に、探りを入れてみます。ヴィルヘルム子息が、怪我を押してまで学園に来ている理由も含めて」

「いいんですか?」

ヴィルヘルムを汚物を見るような視線を向けていたシーラの耳打ちに、僕は思わず聞き返した。

「もちろんです。殿下とリズベット様には大変お世話になりましたし、私にできることでしたら、お力になりたいですので」

「シーラ嬢……ありがとうございます」

ニコリ、と微笑むシーラに、僕は感謝を伝える。

だけど。

「むうううう……」

「リ、リズ!?」

僕の婚約者は、そんなシーラとのやり取りがお気に召さなかったようで、思いきり頬を膨らませていた。

あ、あははー……どうやらシーラの耳打ちが、ちょっと近すぎたみたいだ。

その証拠に、僕とシーラの間に無理やり入ってきたから。

「他の子息や令嬢方に聞いてみましたところ、ヴィルヘルム子息は『ここで俺が治療のために学園を休むことは、負けを認めたことになるから』と言っていたそうです」

昼休みの食堂のテラス席で、僕とリズはシーラからの報告を受けた。

だけど、ええー……何その言い草。

「……自分の敗北を素直に認められないとは、情けない男ですね」

そう言って、リズは眉根を寄せる。

武に関して一切妥協しないリズからすれば、ヴィルヘルムの言葉は到底許しがたいのだろう。

「それに対する令嬢方の反応はヴィルヘルム子息を擁護するものばかりではあったものの、一部の令嬢からは、そこまでルドルフ殿下に執着するヴィルヘルム子息に、困惑しているみたいでした」

「そうですか……」

うんうん、良い傾向だ。

こうしてヴィルヘルムも孤立して、信用を失っていけばいいのに。

……まあ、アイツは人を騙すことだけは上手いから、なかなか難しいけど。

「それで……ルディ様はあの男のこと、どう思われますか?」

「んー……」

僕は腕組みをして思案する。

ヴィルヘルムの言葉を額面どおりに受け止めてなんかはいないけど、どうして学園に顔を出したのか、本格的に調べたほうがよさそうだな。

絶対に、ヴィルヘルムには何か目的があると思うから。

そうじゃなかったら、少しは回復したとはいえ、歩くのにも支障が出る状態で来るなんて考えられないし。

「……いずれにせよ、ヴィルヘルム担当のアンネに聞くしかないですね」

そう……アンネには、詳しく聞かないといけない。

ヴィルヘルムが今日から学園に復帰するという情報について、僕は彼女から報告を受けていないのだから。

「私も、ちょうどお母様が帝都に滞在していることですし、アンデション家でも調査してみます」

「ありがとうございます。是非お願いします」

「はい!」

最初はファールクランツ侯爵が後ろ盾としているから、シーラ……つまりアンデション家とは距離を取ろうと考えていたけど、ロビンの件が片づいて以降も、こうして一緒に行動しているのも、何だかおかしな話だなあ。

でも、シーラの本性、って言い方をするとあれだけど、それを知っても、リズに対して危害を加えるようなことはなさそうだし、だったらこのままリズの友人として力を借りてもいいかな……。

あ、もちろん、あくまでも 友人(・・) でしか認めないから。

それ以上の関係は、僕一人で充分なのだ。

「いずれにせよ、互いに情報を収集して、三日後の夕食会の時にでも共有することにしましょう」

「分かりました。えへへ…… 私の(・・) リズベット様に危害を加えるような輩は、このシーラ=アンデションが全て排除してみせます」

「待って。リズは 僕だけ(・・・) なんだからね」

ニタア、と 嗤(わら) うシーラに、僕はすかさず指摘した。

本当に、油断も隙もないよ……。