軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07

さて、そんな兄と婚約者さん。

前世チートがあるスピカや、優秀で後見人が強い義弟のことが気に入るはずがない。

自分たちより出来が良い弟妹に。

ファビアンはスピカとその母が。自分の母が出ていった原因の一つであると思っていた。

悪だ。

跡取りが自分一人なままであれば、スピカなどというスペアがなければ、母は未だ、このマーロウ家にいてくれたはずだ……と。

きちんと説明されていたはずだが、当時八歳だった彼の中で実に都合良く記憶は改ざんされた。

そしてレティシアは義弟のセオドアによって子爵家を乗っ取られたと鬱々としていたし。

自分のせいとは思わない。甘やかしてきた父や祖父母が悪い、と。

本来はセオドアが「婿」になる道もあったのだが、彼女がこうでは無理というもの。

頭を抱えているのは本家の皆様か。

そしてそんなスピカやセオドアと仲の良いリーシャ――伯爵令嬢まで憎いとなっていた。

ファビアンはレティシアから話を聞くたび。年上のレティシアを敬うこともなく身分をひけらかすリーシャが、また気に入らない妹の友人と話に聞いて――レティシアの言い分をすっかり信じてしまった。

まぁ、似た者同士だから。

そしてふたりはスピカがデザインを描いていることに気がついてしまった。

リーシャの母の店に時折出される話題の品の、そのカラクリが。

皆が注目し、褒め称える――その出どころ。

スピカの部屋にあるスケッチブックの中に、そのデザイン画があることに――至ってしまった。

だから、それはちょっとだけ。

いけ好かない弟妹と従姉妹を懲らしめるだけ。

むしろ妹なら兄姉に賞賛を譲るのが当たり前。秘密にしていることこそ気にいらない。

まだ誰も、知らないというのなら――貰ってしまってもいいだろう。

彼らは、何故にスピカがそのことを黙っているのかまで、至らなかった。それが彼らの……――。

これらもこの家で暮らしたいならそれが当然の権利――と。そんなつもりだったのが。後に話を聞いたスピカに「それなんてジャイア…」と危うくつぶやかれた。本当にいるんだ、そういうひと……。

それは、学園である舞踏会で。

この学園は貴族たちが通うものであり。当然ダンスも必須科目。

ならば子供たちだけの舞踏会も。

学園の生徒会主催で、将来に王城などで恥をかかないようにと……――。

「最近、レティシアもスケッチブックになんか描いてるね」

セオドアは「姉」とは呼ばない。呼びたくないらしい。

血筋的には彼の方が上だし、実のところたった二ヶ月差の姉弟だ。

侯爵家の思惑としては、彼にレティシアの「弟」から「婿」になって欲しくはあったのだろうが、レティシアの性格を知ったセオドアは、頑として拒否をした。バーディ家を受け継ぐのは血筋とかしがらみからも仕方がないが、レティシアまで面倒みるのは御免である。

婿入ならばバーディ家も継がない、 留学する(国からも逃亡する) とセオドアに言われ、優秀な彼を逃す方が、侯爵家も損と計算された。ちなみにセオドアは学年首席だ。

その相性の悪さに侯爵家も頷くしかない。何より大切は領地の民だ。レティシアでは領地を治めることは無理だろう。それは主家として事前に手を打たねばならない。

それが貴族である。

「レティシアは、何をしようとしているのだろう……」

何か嫌な予感がすると、御縁ができてしまったスピカとリーシャに相談と忠告を。レティシアはまだバーディ家のものだ。何かすれば問題が家にかかる。

リーシャとは亡くなった父親が彼女の母と従兄妹でもともと顔見知りであったし、スピカとは レティシア(義姉) の嫁入りで縁ができたセオドアだ。

そしてスピカも最近ちょっと気になることがあった。

「スケッチブックが足りないんです……」

「え?」

スピカはデザインを描きためたスケッチブックが足りないことに、つい最近気がついた。

数週間前に描き上げたばかりのデザイン画ばかりの。

つまり、最新のデザインの。

「それちょっと不味くない?」

リーシャの慌てように、スピカもセオドアもうなずく。

とてつもなく、大変だ。

何故ならば……――。

「うん、だからすぐに報告をして――……」

「皆さん聞いてください。我が妹は罪を犯しました!」

「はぁい!?」

その声は我が兄。スピカは「我が妹」が自分であると、思わず悲鳴をあげた。

何してますのん、お兄さん!?

そしてなにより――何を着ているのだ!?

「妹はかねてより、リーシャ嬢と共謀し、このレティシア嬢のデザインを盗んでいたのです!」

兄の傍らにはレティシア嬢。仲良いことは良いのだけれども。

「いいえ、悪いのはスピカさんではないの! 彼女はリーシャに利用されているのです! デザインを盗んでいたのはフランター伯爵令嬢リーシャです! 用心深いリーシャは隠れ蓑にスピカさんを選んで……」

ここで涙。

「レティシア嬢は、リーシャ嬢に昔から身分差でいじめられていました……」

レティシアにしてみたら、裕福差はいじめらしい。

何言ってますのや、と――あわわするリーシャとスピカをみて、周りの皆さまがそっと距離をとった。

ふたりに親しい一年生のクラスメイトならともかく、科目がかぶってないひとや、他学年生の皆さまには、どちらの方が正しいのかわからないところで。

内心、スピカとリーシャも、兄と従姉妹から遠ざかりたい。

何せふたりはスピカとリーシャに盗まれたという、本来は自分たちがしたというデザインの揃いの衣装を着ていて。

これが証拠だと、スケッチブックも二つ。

スピカ画と、レティシア画、らしい。

「あわわわ……やばいですワァ……」

「スピカ、やばいわ、やばいわ……」

リーシャはスピカのせいで、ここすっかり口調が、やばい。しかし今それをスピカも突っ込む余裕がない。

かわりにセオドアが周りから彼女らをかばうように立ってくれた。壁になってくれた。良い人だぁと、スピカとリーシャは半泣きで手を握り合う。

セオドアについて何も言わないのは、彼の後ろには侯爵家がついていると理解はしていたからだろう。藪蛇である。

しかし――藪蛇

ふたりは藪蛇をつついた。

いや、巨大な虎の尾を踏んだ。

「……へぇ? 泥棒?」