軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04

「この世界、デザインは最の高よねぇ……作画設定画の先生、お見事です……」

スピカは目の前の景色にうっとりとして――スケッチブックに猛然とペンを走らせていた。

スピカの趣味。

死因に、すらなったもの。

それは「絵」だ。

前世では。

ひっそりと、イラスト描きとして活動していたのだ。

といっても本業ではなく同人であったが。

就職して初めての給料……では足りなくて、三ヶ月ほど貯めて買ったのが液タブでした。

初めての給料では有名な、裸で馬に乗った女性がシンボルのチョコレートを買って、姉と食べたのです。姉には感謝の気持ちばかり。

好き作品の推しを描く楽しい日々。

漫画も少々描いていたが、どちらかというとイラストの方が主だった活動だっただろうか。

SNSや投稿サイトでファンもついてきたところ。

本当に楽しい日々だった。

――そして。

あれも、夏のあの祭典に向けて徹夜で作品を仕上げていて――それが悪かった。死因の過労、本当に、それ。

SNSでできた同好の士の友人にも「売り子」を頼んで有休を取ってもらっていたというのに。

「睡眠大事!」

今でこそ、本当に、姉と職場に脳内でスライディングで土下座するほどに、思う。

なので今世では、ほどほど。

ほどほど、に。

趣味を満喫していた。

スピカが描いているのは、少し離れたところにいる、同級生のお嬢様たち――ではなく。

その服、だ。

参考にさせてもらいつつ、ざっかざっかと脳内に浮かぶデザインをスケッチブックに描き殴る。

スケッチブックにはもちろん、野に咲く小花などもある、そうした地道なスケッチも大切だ。

スピカは漫画やゲームの、特にファンタジーものや歴史物が好きだった。

さらに付け加えるならドレスが。そのきらびやかな衣装が。

今生もウェディングドレスが見たいがために、たまに教会に奉仕活動に行っているのは、家族には目的は内緒。信心深いのは良いと思われている誤解は解いてない。

前世、もしも生活にゆとりがあったらデザイン方面に進みたかったが……さすがに就職した。姉は専門学校に行っても良いと言ってくれたが。

けれども、趣味は趣味、そうして良かったのだと、就職しても思ったり。

好きな作品の、キャラやその衣装を描くことのなんと楽しいことか。しがらみも何もなく、ただ好きなキャラだけを、描ける。

そのキャラに自分がデザインしたオリジナル衣装を着せたりするのが楽しかった。同人ならそうしたことも許された。ファンアートととして。

それもすべて本職のイラストレーターさんやデザイナーの方々への尊敬あればこそ。自分がなれなかった道をしっかと通られた方々のご苦労を理解し。

本棚には衣装デザインや、世界各国の民族衣装の本が詰まっていたりした。始めは図書館で借りていたが、給料でまた少しずつ。

デザインを仕事にしてしまったら、楽しむ前に苦しんだ――かもしれないのだから。

ちなみにこのゲームも推しデザイナーさんがキャラデザをしていたからプレイした、程度なスピカであった。

内容はテンプレで、スピカが高位貴族な方々と――だったけれども。

だから内容はあまり覚えて……だから、現実見て良かったとも、改めて。

プロローグからぶっちしているスピカだ。

確かに出会いはあったが――あれはノーカンで良いだろう。

「王太子と連れションイベントではなかったのだし」

いや、連れションて乙女ゲームでどうなんだろと、やはりここは現実と、改めてスピカは現状をしっかり見ることにもなった。

引っ越しが多かったせいで中々友達が出来ず、漫画やアニメが時間つぶしになった始まりはあるが、それでもその世界が好きになったのだ。

「ヲタになったのは後悔はないんだなぁ」

そのおかげで世界は広がったし、SNSのおかげで同好の士というつながりで友人もできた。

そして今日も授業が終わった昼休み。

お気に入りの木陰で持参したスケッチブックにひたすらデッサンを。

スケッチブックは祖父母が買ってくれた。祖父母もスピカの趣味が絵であることは別に駄目とも言わない。普段の良い子の姿勢が功を奏すというべきか。

この世界、紙は作られる技術がある世界で良かったとしみじみに。スケッチブック、そこまで高価でなくて良かった良かった。

人間、趣味の一つくらいないと。

スピカは女の子らしくちゃんと詩作や刺繍もしているし、むしろ刺繍の図案を自分で描いているのは良いと祖母からも褒められた。スケッチブックにはそうしたことも。

「ってもこの世界、展覧会とかしかないのよね……」

液タブが欲しいと思うが。

そしてSNSがない。

描いてすぐ載せれる場所もなく。

「いやいや承認欲求、駄目よね」

まぁ、見てくれる相手がいないのがさみしいのだ。

「同好の士が欲しい~……友達欲しい~……」

と、スピカが悩む日が入学して数日。

何故か今世でも同好の士が……できた。

「君、すごいね?」

そう、話しかけられて。

そしてスピカの日々は平穏……とは、ちょっと言い辛くなった。