軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131話 姉&姉&姉&姉

結婚をする。

人生の中で、これほど重大な決意もそうそうない。一生を共に過ごす伴侶。出来れば、素敵な相手と結婚したいと願うのは誰でも同じだろう。

しかし、神王国において貴族の結婚とは家と家の繋がりである。

結婚する当人の意思を尊重するケースは稀で、良くて親の決めた複数の選択肢から選べるという程度。

こうなる理由は幾つかの要因による。

例えば、他貴族との出会いが極めて限られる点。

領地貴族などは特に顕著だが、他の貴族子弟と出会って恋愛する機会自体がそもそもない。領地の貴族とは領主家を指すわけで、他家の貴族子弟と出会うには客としてやってくるか、或いは自分から他所に出向かねばならない。

しかし、他領に行くのに近場でも馬車で何日もかかるのだから、出向く機会なんて滅多に無い。故に、舞踏会などで会った相手なども、また同じように別の舞踏会で会えるとは限らないのだ。よほど頻繁に舞踏会に出ているような相手でもない限り。

そして、いつ行っても顔を合わせるほど頻繁に舞踏会に出て異性を漁っている人間が、碌な人間でないのは言うまでもない。

まともな人間とは、顔を合わせる機会が少ない。一度や二度あっただけで恋愛できるなら、世の中は一目惚れだらけになることだろう。碌にデートも出来ない世界で、恋愛などは難しい。

ならば領内の領民と恋愛するかというと、それも難しい。身分差が金銭感覚の差になるからだ。

この世界、金持ちとはほぼイコールで貴族。例外に大商会の商人なども居るが、数は本当に少ない。同じ意味で、貧乏人はイコールで平民だ。

極端な貧乏人と、極端な富豪が恋愛し、結婚できるかといえば、かなり難しい。金銭感覚や常識が相当に乖離しているからだ。

現代に置き換えるとすれば、ティッシュを捨てるのが勿体ないと使用済みを乾かしてもう一度使おうとしたり、道端で食べられそうな草が生えてたら摘んで食べようとしたり、子犬を見たら美味そうと言い出したりする相手と結婚したら。ケチ臭さすぎて円満な結婚生活よりもストレス生活になるだろう。百年の恋も冷める。

或いは、風呂のボディーソープを一回使うだけで毎回捨てたり、イチゴを食べる時に先っちょだけ齧って大半を捨てたり、家を毎年建て替えたり、学校に子供を通わせるのに学校の方を持ってきたりすればどうだろう。

やはり、金持ちすぎればそれに合わせるのにも気苦労が絶えない。旦那が婿入りでもしていれば、半年で禿げるに違いない。

勿論、程度の差はあり、モルテールン領のように上下の貧富差が少ないところもあれば、平民が奴隷のように貧しい暮らしをする領地もある。

だが、総じて平民と貴族の恋愛は、仮に発生しても長続きはしない。貴族の生活と平民の生活は、ある意味では外国の暮らしよりも異文化であり、どちらがどちらに合わせるにしても、無理が出る。

それを経験則として分かっているからこそ、大人たちは皆子供には同じ階級同士で結婚させようとする。余計な苦労をさせたくないと願う。

他にも、出産に関わる事情もある。

神王国では医者や産婆というのは特権階級だ。特殊な知識と経験を持っている専門家。彼ら彼女らの技術伝承や知識伝達は、弟子をとっての口伝や実地経験が全てになる。何せ、識字率も極めて低く、本は全て手書きで一冊に家が建つほどの値段が付くのだから、現代のように気軽に本を読んで学ぶことも、職人が本を書き記すことも無いのだ。知識を欲すれば、先人に頭を垂れて教えてもらうしかない。

つまりは、出産を専門にする職人の絶対数が少ない。

結婚をする以上は子供を産み育てるのは大事なことだが、それを安心して行おうと思うなら、数少ない産婆や医師を雇えるだけの権力と金が必要。順番待ちの人間を差し置いて割り込める権力か、或いは金貨の山で殴りつけられる財力か。

どちらにせよ、貴族でない人間が持つのは難しいわけで、心安らかに出産に専念しようと思えば、貴族女性は貴族男性に嫁ぐのがベスト、ということになる。

現代でもアメリカは金持ちが優先して高度医療を受けられるわけだが、この世界も良く似ている。国民皆保険など無いわけで、医療を受けるにも金と権力が必要な世知辛い社会。結婚相手に要求する甲斐性もとんでもないものになりがちで、平民が貴族女性にそれを用意するのは難しいだろう。

他にも多々要因はあれ、違った階級に“娘を嫁がせる”のは極めて問題が多いと言わざるを得ない。

さて、現代でも、出会いが乏しい上に結婚への問題点の多い人間が、変な虫に騙される心配も無い結婚を真剣に考える時。お見合いという手段を取るケースは多い。

価値観のすり合わせや諸条件を事前にフィルタリングしておけるからだ。

この世界でもそれは変わらない。

金持ちで稼ぎがあって地位があって性格が良くて誠実で心身壮健で適齢期で賢い上に見た目が恋愛対象になる人間を、家に引きこもりながら捕まえられるなら別だが。大抵は、妥協の範囲内の相手を親がコネを使って探すもの。

つまり、色々と社会の事情や文化的な要素を孕むものの、神王国では貴族子女の結婚とは、最終的には親同士が決めるものである。

「だから、ペイスにもあの万年新婚夫婦の説得をして欲しいの」

「ジョゼ姉さまのお見合いを、ですか」

「そう。でないとうちの負担が凄いのよ」

シルヴィエーラの旦那はかなり顔の広い人物。結婚当時は長男という立場だったが、今は家を継いでいる。

それだけに、モルテールン家とつながりを持ちたいという人間から、あの手この手でちょっかいを掛けられているらしく、夫婦そろって 辟易(へきえき) としているそうだ。

「シビ姉様も大変ですね」

「しかも、しかもよ? 実家(モルテールン) が男爵に陞爵してからは伯爵位持ってるような人までうちに押しかけて来るようになったの。正直、うちの旦那も限界なのよ。この間も胃痛で医者に診てもらったぐらい」

「だから、ジョゼ姉さまのお見合いをセッティングするという、うるさい犬を 宥(なだ) める餌が欲しい、ということですか」

「モルテールン家の厄介ごとのツケがうちに回って来てるんだから、実家も何か協力してほしいってお願いなのよ」

モルテールン家は魔法使いを三人抱え、農業生産力は年々増加し、軍事面でも毎年倍増する勢いで増員を重ね、年に一回ペースで昇進する、いま最も勢いのある家。

お近づきになりたいという人間はゴロゴロ居るわけで、特に最近の陞爵以降はそれが顕著になってきたという。

他家に嫁いだモルテールン姉妹も他人事ではなく、何とか実家へ便宜を図って欲しいと押しかける人間は多い。

ハースキヴィ家の場合は、その手の不埒者を“物理的”に排除する脳筋家系なのでまだマシとはいえ、それでも少なくない影響があった。

故にビビとしても心情的に同情したくなる話であり、それとなく理解を示す。同感だと言わんばかり。

ペイスとしても、シビが困っていることの原因の一割ぐらいは自分のせいかも、と思うだけに見捨ててはおけない。

「ふむ、ならば父様に直接会って話をしますか?」

「う~ん、そうしたいけど、余り家を空けるのも拙いし。ここからなら 一月(ひとつき) ぐらい掛かるじゃない」

「いえいえ。父様の魔法は、血縁の魔法使いには貸せるというのが判明したのです。さほど往復に時間は掛からないですよ」

シレっと言ったペイスの言葉に、その場の全員が驚いた。

特にハースキヴィ家の二人などは、重要情報に戸惑いを隠せない。モルテールン家の利便性が二段階ぐらい上昇するネタであり、上手く使えば相当な利益となる情報。

どう反応していいか狼狽する面々の中で一番最初に再起動したのは、やはりペイスの姉達であった。

「つまり、ペイスも父様の【転移】が使えるってこと?」

「はい。今回の件で借りてきてますから、姉様を運ぶぐらいなら簡単なことです」

「素敵よペイス!!」

「だから!! 何かにつけて抱き着くのは止めてください!!」

シビがハースキヴィ家を訪れていた理由は、実家のことで周りがとても煩くなった対策を姉に相談しに来たというもの。半分以上は愚痴の言い合いだったが。

偶然ペイスが来たということで、これ幸いと相談したのが、自分たちの妹のお見合いセッティング。これが叶うなら、自分たちの家に押しかけてきている連中を、紹介という形で全て 元凶(モルテールン) に押し付けることが出来る。

そのチャンスとして、 父親(カセロール) を説得する場を用意してくれるというのだ。口添えもしてくれるという。出来た弟が居て嬉しいと、姉“達”はペイスを改めて抱き人形にした。

だが、ペイスの受難はこれで終わらない。

「……そうだわ、いっそソイレとリリアナも一緒に連れていきましょう」

「そうね、あの子達も同じことで困ってるでしょうからね」

「ペイスがお父様と同じ魔法が使えるなんて、どうしてもっと早く教えてくれなかったのよ」

「知ってたら、もっとうちも色々と実家に協力出来たのよ?」

姉の二人が勢いづけば、弟一人で敵うわけが無い。

いつの間にか、モルテールン家から嫁いだペイスの姉四人が、揃って実家に里帰りするという話になる。

話が予想外の方向に転がったことで、モルテールン家次期領主の背中には冷や汗が流れていた。

「あの? 姉様?」

「ペイス、今更二人も三人も四人も同じよね。運べないなんて言わないでしょ?」

「そうよね、実家に帰省したら母様や父様も喜んでくれるわ。あ、ビビ姉様のところは孫の顔も見せてあげると良いんじゃない?」

「良いアイデアだわシビ。そうね、そうしましょう」

「えと……僕の意思は?」

「何? 駄目なの?」

姉二人の強い視線。

少年は即座に全面降伏をする。

「いえ、まさか。姉様方が当家と強く結び付いていることを示すのに、否はありません」

貴族の結婚は殆どが政略結婚。

実家との結びつきをアピール出来るからこそ、嫁ぎ先は実家を 慮(おもんばか) って妻を大事にするし、大事にされる妻であってこそ実家としても利用価値があるのだ。

持ちつ持たれつ。

実家と仲良しアピールをしたいというなら、ペイスには止めることは出来なかった。貴族的な責任を背負うものとして、明確に利があるのに嫌とは言えない。

「決まりね。じゃあ早速準備をしてくるわ。その間にペイスは皆を一旦ここに連れて来るといいわよ。お父様に連絡するとか、やることはあるでしょう?」

「……そうですね」

即断即決、迅速行動はモルテールン家の家風である。嫁いで別家の人間になったはずのビビからも、モルテールン家の家風の残り香が薫る。

ペイスが姉たちに抱き着かれたままモルテールン領に帰って来るまで、さほどの時間は要らなかった。

こういう時は便利な魔法を持っていることを心から恨めしく思うペイスである。

ヴィルヴェ、シルヴィエーラ、ソイレ、リリアナの四人。これに、今は嫁入り修行中のジョゼフィーネを加えた五人が、モルテールン姉妹ということになる。

長女として頼れる姉さんのヴィルヴェ。行動力溢れる次女のシルヴィエーラ。大人しいながらも毒舌なソイレ。おっとりとしている割に鋭いところのあるリリアナ。男勝りなところのあるジョゼフィーネ。誰にしたところで、一癖も二癖もある。

どうして自分の姉達はこうもアクが強いのかと溜息をつくペイス。

一番癖の強い姉弟が誰であるかを、彼だけは気付かない。

領地に着くやいなや、女性陣のテンションは急上昇を見せる。

「うわあ、凄いじゃない」

「うん、何だかとても大きな村になってる」

「遠くの山の景色とかは懐かしい。変わってないわ~」

「ビビ姉、見て見て、あの大岩のところが何か畑になってる!!」

「ホントだ。え? お店まであるって凄い都会っぽくなってる。ペイス、あれ何よ!?」

「きゃああ!! 凄い、水路よ、水路。水が流れてる!! リリ、見てよほら」

女三人寄れば 姦(かしま) しいとはよく言われるが、それにもまして四人+αだ。姦しいどころか騒音公害ではないかとペイスがため息をつくほどに騒がしい。皆が揃って慣れ親しんだ故郷への里帰りだけに、懐かしさを話題にしてはきゃーきゃー騒ぎ、目新しさを見つけてはやいのやいの盛り上がる。

“あの”ペイスが一番無口で大人しく見える集団なのだ。目立って当然。

女性比率が極めて高い集団がモルテールン家の屋敷に着くころには、村中に事情が伝わっていた。それに、事前に連絡だけは入れておいたため、モルテールン家の玄関口には、モルテールン家の一同が勢ぞろいしている。

カセロールとアニエスのモルテールン夫妻、一番下の“妹”ジョゼ。ペイスの嫁リコリス、従士一同、下働きの下男下女も懐かしい顔を見に勢ぞろい。

出迎えの代表は、勿論モルテールン夫妻。

「おかえりなさい、みんな元気だった?」

「母様、久しぶり~!!」

やはり伝統の 抱き着き(ハグ) で娘たちの帰省を歓迎する母親。

一人一人の名前を呼びながら娘たちを抱きしめていき、何人かの孫も同じ被害、もとい歓迎にあう。

とりあえず難しい話は明日にするということになり、実家に里帰りした女性陣はジョゼの案内で客間に通される。

今日の晩餐は、貴族たるモルテールン家としての正式な晩餐会。嫁いだ娘たちの帰省を歓迎するということで、デザートについてはペイスが腕を振るうことになっていた。

従士達の中で、晩餐のおこぼれがある警護役の争奪戦がかなり激しく行われたのは余談である。ちなみに勝者はシイツとコアントローだ。

夕飯までにはまだ時間があると、カセロールはシイツとペイスを執務室に呼んだ。

中に入ると、シイツは開口一番愚痴をこぼす。

「やっぱり、坊が他所に出向くと碌なことにならねえ。いっぺん教会で悪魔祓いでもしてもらった方が良いんじゃねえですかい?」

「僕のせいではありません。偶然シビ姉様がハースキヴィ家に居たのが発端ですし、元々の原因は父様が陞爵したことでしょう。僕は熊の去就を決めてきただけです」

「原因云々はどうでも良いし、ペイスが厄介事と友人なのは今更だ。それよりも問題は、私の娘たちの請願についてだ」

カセロールは複雑な気分だった。

娘たちが久しぶりに帰って来てくれたのはとても嬉しい。しかし、持ち込まれた問題には頭が痛くなる。

「モルテールン家と縁を持ちたい家からすれば、ジョゼ姉様は唯一フリーな身の上。僕が片付き、最後の一人となれば、もうチャンスは逃せないと焦るところもあるのでしょう。なりふり構わないとなれば、ビビ姉様達のところにも人が押し寄せるのは必然。姉様達にも姉様達なりの人付き合いが有るでしょうから、全てを門前払いにするのが難しい、という理屈は分かります」

「うむ」

「せめて会うだけでも会って欲しいと言われた時、断るのも理由が難しくないですか?」

「そうだな」

まさか、お前の息子は顔が悪いとか、頭が悪いとか言って断るわけにもいかない。本音はそうでも、言えるわけが無い。

今までは誤魔化しつつお茶を濁してなんとかしてきたらしいのだが、男爵への陞爵以降は断り切れなくなってきていたという。

「しかし、会うだけ会わせてみるにしても、その基準をどうするかだ。下手な基準を設ければ、ジョゼの見合いだけで行列が出来るぞ?」

「ジョゼ姉様もモテ期ですね」

「冗談を言っている場合か。ジョゼの負担もあるだろうし、第一そればかりに構っているほど当家は暇ではない」

「しかし、会見を一律断るわけにもいかない。受け入れる線引きが難しい、と」

「そうなる」

「いっそジョゼ姉さまの結婚を決めますか?」

「馬鹿な。今更になって寄ってきた連中など信用ならん。まだ二年はうちに置いておくつもりだ」

「でたね、大将の親馬鹿が」

「何とでも言え。娘の幸せは何としてでも守る」

娘たちの縁故でジョゼを含める会見をさせる。いわゆるお見合いをさせるのは構わないだろう。問題は、どういう基準で会見可否を決めるかだ。

例えば、爵位を伯爵以上と線引きするなら。男爵如きが何様のつもりだ、と反感を買うだろう。

年齢で線引きをするにしても、適齢期というだけでは数が減るはずも無い。精々が未成年や年寄りを省ける程度。

モルテールン家との親疎を基準にするとすれば、曖昧な基準になってしまう。

何を基準にしようと、他家の不満を煽るのは間違いない。その不満がモルテールン家に向くならばまだましだが、嫁いだ娘たちの婚家に向かうと、婚家がモルテールン家に悪い感情を抱きかねない。それで婚家からモルテールン家が疎まれれば、嫁いだ娘たちが冷遇されるかもしれない。

娘を心から愛するカセロールとしては、そんなことは断じて許容できないのだ。

会見に関わる過剰な負担は避けたい。だが、負担を減らす線引きは難しい。

どうしたものかとモルテールン男爵は悩む。どこぞの伯爵家では相手が居なくて悩んでいたことを思えば、贅沢な悩みである。

「ならば、僕に一つのアイデアがあります。一切の基準を設けず、それでいて当家の負担が極めて短い期間かつ少なく済む手です」

「ほう?」

困った時にはペイスの知恵。

そんな都合の良い方法があるのかと、カセロールもシイツも興味を持つ。

何故かじっとシイツを見ながらのペイスの説明。

内容を聞いたカセロールは喜び、シイツは頭を抱えたアイデア。

即座にカセロールによって採用となり、晩餐の時に発表することとなった。

◇◇◇◇◇

晩餐会は、賑やかに行われた。

急に決まったことからコースの中身については今回ペイスはノータッチ。関わっていない。

神王国の極標準的なメニューではあるが、特筆すべきは元レーテシュ家お抱えの料理人がその腕を振るったことだろう。

前菜、スープ、肉料理、サラダ。どれも文字通り一級品。高位貴族の持て成しにもそのまま使えると料理人が豪語するほどのものであり、貧しいモルテールン家しか知らない姉妹たちは、口々に賞賛と苦情をセットにする。苦情の内容は皆同じで、自分が嫁いでから美味しいものを食べるようになったのはずるい、というものだ。

食事もあらかた終わり、ペイスがデザートとして振る舞ったクレープを、姉妹五人が一人の例外も無くお代わりして平らげたところで、カセロールがペイスを呼んだ。

「姉様方、デザートは如何でした?」

「最高だったわよペイス。明日はお土産に持って帰らせてね」

「あ、ビビ姉ずるい。あたしもよろしくペイス」

がやがやと騒がしくなりそうなところで、カセロールがゴホンと咳払いをして鎮めた。

それを受け、ペイスが今回の訪問の目的について話をしだす。

「姉様方には、モルテールン家のこと、とりわけジョゼ姉さまのことでご迷惑をお掛けしていると伺っています。今回の帰省もそれについてのご相談だったとか」

「そうね」

「父様と僕もその件で検討しまして、姉様達の提案について、一部修正のうえで認めようという結論に達しました」

「修正?」

「はい。何十人もの相手をひっきりなしにこなすのは、当家としても難しい。ジョゼ姉さまも大変でしょう。かといって、数人程度では状況は大して変わらない。そこで、一度で全てを解決しようと考えたのです」

「え? そんなこと出来るの?」

ペイスの非常識はいつものことと、姉達も続きを促す。

じっと姉達の顔を見まわす弟。

最後のジョゼまで見終えると、彼は素敵な笑顔で高らかに声をあげた。

「モルテールン家の独身の家人を全て参加させる、大お見合いパーティーの開催を、ここに宣言します」