軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第91話 まさか気づいていないのか?

「それだ! それ! なんていう噂を広めたのだ! お陰で俺がどれほど苦労したか」

「は? 何を言っているのです? 私の殺人的噂を流したのはそちらですよね?」

互いが互いに噂を流したと言い合いました。

本当に何を言っているのですか。

私は領地に引きこもっていたので、殺人的な噂を流すことはできません。

「嘘をつくな! 俺はあれから父上から情けないと言われて辺境に引きこもっていたのだ。噂を流したのはお前だろう。シエラメリーナ」

「もう子供ではないので、名前で呼ぶのは止めていただけませんか? 言っておきますが、私はデビューを領地で行ったのですよ。王都で噂を流すことなんてできません。あと、声を抑えていただけませんか?」

やはり、互いに噂は流しておらず、自分は被害者だという言い分に変化はありません。

何ですか? このおかしな状態は?

あと注目を集めてしまっているので、スススっとラドベルトを盾にするように移動します。

「これはどういう行動か聞いていいか? シエラメリーナの嬢ちゃん」

「クソジジイの視線から逃れるためです」

そう、なにか騒ぎが起きていると視線を巡らせているジジイの姿が目に入ってしまったので、隠れるものを探しただけです。

「別にどうもならないだろう?」

「近づけば殴ります。理性などクソぐらいだと言う感じで殴ります」

「殴るのはやめような。あと、アレクカゼエルの坊っちゃん」

「ラドベルト子爵。俺は坊っちゃんという歳じゃない。それに半年後には伯爵の爵位を承る予定だからな! 俺のほうが上になる」

なにかおかしなことを言い出していますが、今はただの侯爵子息なので、爵位持ちのラドベルトのほうが上です。

……ということは結婚するということですか。

「ご結婚されるのですか。おめでとうございます」

「それだ! それ! 婚約者が全く決まらなかったんだぞ!」

「うるさいです。決まったのだからよかったではないですか」

「何を言っている。辺境部隊の一部隊を任せられるまで、という条件がつけられたんだからな」

国の端に領地があるジュアシルト侯爵領は、領地内で戦力を保持することが認められています。

国の防衛としてです。フェリランの時は、先代のジュアシルト侯爵には大変お世話になりました。

その条件にかかる言葉がわからないのですが、婚約者が与えられるまでということでしょうか?

それとも結婚の許可の条件でしょうか?

しかしたった一部隊の隊長ごときで偉そうに……はっ、今の辺境は平和そのもの、ここは凄いですねと褒めるところですね。

「一部隊を任せられるなんて凄いではないですか」

「そうだろう! そうだろう!」

なんですか? ラドベルト。そのため息は?

「それで、何の武功を挙げられたのでしょう」

「え?」

「一部隊を任されたのですよね? その取り立てられた理由は何なのでしょう?」

「……」

返答がありません。

これは侯爵の采配ですか。子供には甘いですわね。だから、私の拳で軽く吹っ飛んでいくのですよ。

「無能の上官は、部下を死なせると言いいましたのに」

ラドベルトの背後でボソリと呟きました。すると前方の肩がビクリと揺れます。

別にラドベルトのことを言ってはいませんよ。

「お前はいつもそうやって、俺を馬鹿にしているだろう!」

私はジュアシルト侯爵に文句を言っているのです。息子だからと甘いと痛い目に遭いますよ。

そして私に向って伸ばされる手。

その手をラドベルトが止めました。

「ここで騒ぎを起こすのはよくない。アレクカゼエルの坊っちゃん」

そうです。先ほどから一人うるさいのです。

「噂の件だが、マルトレディル伯爵夫人が原因じゃないのかと俺は思っている」

「お母様が?」

「いや、正確には例の会員だろうな。あれだろう? マルトレディル(フェリラン) 伯爵夫人(崇拝者筆頭) が育てた令嬢と ジュアシルト(フェリラン) 侯爵(崇拝者) の子息の婚約だ。どちらの味方をするかは決まっているようなものだ」

ラドベルト。噂のせいで思いっきり私の評価が底辺になっていますが?

あと副音声が酷いです。

「何故、父が悪いということになる」

「条件をつけられた理由だ。俺が聞いているのは国の守護者の息子が、ただの令嬢の拳に倒れたという話だ。ジュアシルト侯爵家の者がそれでいいのかということだな」

その言葉にジュアシルト侯爵子息は苦虫を噛みしめたような表情を浮かべます。

痛いところを突かれたということでしょうか?

「あと俺が止めなければ、足の骨を潰されていたのは坊っちゃんのほうだからな」

「子爵。どういう意味です」

「なんだ? 気づかなかったのか? シエラメリーナの嬢ちゃんの足音がおかしいってことにだ。それは金属でも仕込んでいるのか?」

さすが、ラドベルトです。なるべく足音を立てないようにしていましたのに、聞き取ってしまいましたか。

「厚底ヒールが金属です。殿方の足をぶち抜けると言われましたが、簡単に扉が破壊されましたね」

「誰だよ。そんな恐ろしい武器を与えたのは」

……ラドベルト。先ほどからこっちをガン見してくる騎士団団長様ですよ。