軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第85話 早すぎます

私は色々と説明して、兄妹に納得してもらえるところまでたどり着きました。

とても面倒くさいです。

「理解はいたしましたが、レクスイヴェール様に正直におっしゃったほうが、丸く収まるのではないのでしょうか?」

「え? それだと結婚してほしいと言われてしまうじゃないですか」

言われましたけど。

アルバートであるので、無理だと断りましたけど、姉のシエラメリーナとわかれば、今すぐにでも父から婚姻の許可をもぎ取ってきそうではないですか。

昔もそうでしたけど、どうして私と結婚したいなどと言っているのか理解不能ですわ。

「そうなると、女主人が私になってしまうのですよ。それは駄目でしょう?」

「その判断を我々がすべきことではありません。我々はレクスイヴェール様に仕える者ですから」

そうでした。使用人が主の妻に口出しをすることはできません。

レクスに仕えている者であれば、レクスの意が最優先事項になり、個人の意見など必要ないのです。

ですが、そう簡単に割り切れるかといえば、そうではありません。

なのに、エリアーナさんもそうですが、その主を足蹴にする私を立てようなど、普通はしないと思います。

「はぁ、ここの優秀な使用人の方々をみていると、ファングラン公爵様のもとにいる使用人の方々はどんなに恐ろしいのか、パーティーに参加するのが嫌になってきました」

国の闇を担うファングラン公爵家の本家の使用人など、どれほど恐ろしい方々がいらっしゃるのでしょうか。

「マルトレディル様。ファングラン公爵夫人が、我々のような者を外にだしましたので、あそこは無能の塊でございます」

昼食の用意をしてくれているアリアからの言葉です。

何か、凄くけなしたような言葉が聞こえてきましたが、気の所為ですよね。

「そのようなことはないでしょう?」

「アリアの言う通りです。我々のような存在が疎ましいと屋敷より外に出しましたので、未熟な者ばかりとなっております」

「ハイヴェーラさん。それは公爵様がお許しにならないのでは?」

いくら夫人が言ったからといって優秀な人材を屋敷の外に出すなど、当主としては許さないでしょう。

「アレはファングラン家の役目を勘違いしているのです。我々はレクスイヴェール様こそ、ご当主にふさわしいと常々思っております。思っているだけで、口には出しませんが」

思いっきり出していますよ。

もしかして、レクスが未だにファングランを名乗っているのは、今のファングラン公爵のあり方を良くないと思っている御方の所為でしょうか?

誰かとは言及しませんが、そう予想してしまいました。

しかし、ファングラン公爵をアレ呼ばわりしているハイヴェーラはいいのでしょうか?

これはかなり問題発言ですよね?

レクスが公爵の地位につかなかった歪がでているということでしょう。

「はぁ、ファングラン公爵家の内情は聞かなかったことにします。取り敢えず、怪しい噂を消すことに協力をお願いします」

「かしこまりました」

「おまかせくださいませ、マルトレディル様」

はぁ、レクスが戻ってくる前に協力を求めることができてよかったです。

私がパーティーに参加する目的は、従騎士と団長の噂を払拭することです。

そうでなければ、パーティーへの参加は却下していました。パーティーは好きではありませんからね。

「隊長! 何があったのですか!」

私がホッと安堵のため息を出していると、突然部屋の扉が開け放たれました。そこには、三時間前に蹴って屋敷から追い出したレクスがいるではないですか。

戻ってくるのが早すぎます。

「何もありませんよ。それから、戻ってくるのが早すぎませんか?」

「しかし、ハイヴェーラを謝罪させることがあったのですよね?」

……はっ! 今の状況は、偉そうに長椅子に座っている私が、この屋敷を取り仕切っている執事と侍女長に頭を下げさせています。

これはそういうことではないのです!

「お願いをしていたところです。お時間をいただいてありがとうございました。お仕事に戻ってください」

「しかし、つけていた侍女が……」

「それは勘違いです。それからノックぐらいしてから入ってきてください」

「勘違いですか?」

レクスは今騎士団から戻ってきたという格好で私の部屋に入ってきます。

もしかして、客人以下の分際で侍女にケチをつけて執事と侍女長を呼出したとか、屋敷内で噂になっていたりしているのですか?

「隊長から何を頼まれた」

え? 未だに頭を下げている二人に尋ねるのですか?

それこそ、私に聞いてください。

「旦那様好みの令嬢に仕上げてくださいとご命令をいただきました」

「アリアさん。それは意訳過ぎます。姉に見えるようにお願いしますと言っただけです」

私はそのように言ってはいません。

本人が言うのも何ですが、シエラメリーナに見えるようにして欲しいと言っただけです。

それから、貴方達の主に親しくしていても、後ろから刺さないでくださいと遠回しにお願いしただけです。

「隊長。とても嬉しいです」

……レクス。それはアリアさんの言葉しか聞いていませんよね。