軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話 え? もしかして背後霊?

「はーい」

女性の声が聞こえてきて、中から扉が開きました。

「あら? 貴方は新人のマルトレディル君ね」

一週間前に入ったばかりだというのに、誰かと認識しているのは、宿舎の管理人のディロべメラ夫人です。

二十年前の戦いで夫を亡くして、ここで管理人として働いています。

「何かありましたか?」

一応、女性騎士も同じ建物内で生活しているので、困ったことがあれば、相談してくれればいいと最初に言われました。

それがどのような意図なのかは、知らないフリをしておきましたけど。

「明日、お休みをもらったので、マルトレディル伯爵家に戻ります」

王都内に持ち家があっても、一人前とみとめられるまでは、宿舎暮らしです。なぜなら、いつ上官に呼び出しをされるかわからないからです。

しかし翌日が休みであれば、外泊していいという暗黙のルールがありました。

ええ、基本的に宿舎で待機ですからね。

「そうなの? 案外ファングラン団長が最近おかしいという噂は本当なのかもしれないわね」

「……」

それは基本的に休みがないということでしょうか?

しかし、おかしいというのは同意します。

従騎士に敬語を使う団長は誰から見てもおかしいでしょう。

「私では何も力になれないかもしれないけれど、困ったことがあるのならいうのよ。上層部に知り合いがいるから、掛け合うこともできるからね」

夫人はいつも会うたびに、このように声をかけてくれるのです。

それもとても心配そうに。

「ありがとうございます」

それだけを言って、私は夫人に背を向けました。

貴女の夫に死ねと命じた私に、いったい何が言えるのでしょう。最後まで私に付き従ってくれたディロべメラ副部隊長。

王都は前世で関わった人が多すぎて、心が痛みます。

早くマルトレディル伯爵領に帰りたいですわ。

翌朝、私は久々にゆっくりと朝を迎えて、王都の中心街に向かいました。

やはり、宿舎だと朝食の時間が決まっているので色々時間制限があるのです。

ええ、朝の訓練を満足するほどできないという欠点が。

「お嬢様、本当にここでよろしいのでしょうか?」

王都の屋敷から下町まで送ってくれた御者がおどおどしながら、馬車の扉を開けてくれました。

「ええ、そのために少し金回りがいい商人の娘風にしてと言ったのよ」

普通貴族は下街になど足を運びませんから、本当にいいのか確認をしてきたのでしょう。

「夕刻の4つの鐘がなる頃に、ここに迎えに来てくれればいいわ」

「しかし、やはり、護衛を付けたほうが」

「え? 私より弱い護衛っているの?」

「……体裁として一人でもいいので……」

「だ・か・ら・商人の娘風なのよ」

ここに来たのには、もちろん目的があります。

色々行きたいところがあるのに、護衛に引き止められてしまっては意味がありません。

それに貴族の娘なら護衛は必要でしょうが、今は庶民に毛が生えたぐらいの身なりがいいエプロンドレスを着ているのです。

使用人にも見えなくもないですが、お使いに出ている感じでと、侍女に頼んだのでした。

これはもう、どう見ても貴族の娘ではありません。

膝下ぐらいの淡い青色のエプロンドレスをまとい、大きめのヘットドレスからこぼれるようにゆるく巻いた金髪がふわふわしているのです。

ゴテゴテした装飾品をつけていないし、足元も歩きやすいショートブーツ。

どこをどうみても十六歳ぐらいの……二十歳ですけどね。大人っぽい格好が全く似合わないので、仕方がないのですけどね。

十六歳のアルバートに背の高さを追い越されてしまいましたけどね。

くっ。父のマルトレディルの血が憎らしいです。

御者を無理やり納得させ、私は下街の店が立ち並ぶ商業地区に足を伸ばします。

やはり、素敵なものがたくさんあります。

あの剣とても良さそうですわ。

もしかしてこれは、魔力伝導率がいいといわれるヒヒイロカネの鎧。流石に高いですわ。

このガンレット。可動部位に油差しが不要ですって! 気になります。

最新の ドレス(鎧) や 小物(剣) を購入する軍資金は父からぶんどってきましたから予算はあります。

しかし今購入するとずっと持ち歩かなければなりません。

ここはグッと我慢してまずは、ウィンドウショッピングを楽しむことにしましょう。

そして今日、下町に来た目的はここ。

昔ながらの古びたカフェです。

まだお店があって嬉しいです。

昔はよく休日にここに通ったのでした。私の目的はケーキ!甘くてふわふわのケーキ。

種類も豊富で何を食べようか迷うほどなのです。とは言っても、今も同じかどうかは知りませんが。

店の木の扉を開けると、香ばしい匂いが漂ってきました。

豆を焙煎したもので淹れるという珈琲の匂いですわ。領地には入ってこない品物ですので、懐かしい匂いです。

「いらっしゃいませー」

店内を行き来していたウエイトレスが声をかけてくれました。

「二名様ですね。空いている席にどうぞ~」

……二名? 私は一人で来たのですけど?