軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第63話 どういう関係なのですか?

「使用人ですよね?」

「違います。使い魔です」

私は指をさしたまま答えます。

これは人の姿をとった魔導師団長の使い魔です。

「基本的に侵入者の排除のためにいます。こちらの目的を伝えたので、通行可能です」

実験の邪魔をされたくないということで、置いただけの門番のようなものです。

「……グレンバーレル魔導師団長は、無口なかただとしか認識していませんでしたが……」

「え? 無口? 団長、その認識は捨てたほうがいいですよ」

私はそう言って、レクスの手を払って、建物の奥に進んで行きます。

隣接しているとはいえ、騎士団と魔導師団の交流があまりないのが原因でしょうね。

同じ目的を持って共闘作戦を行って、上手くいったことがないのも原因でしょうが、基本的に人との対話が成り立たないのが根本的な原因だと思います。

そして、人の気配がある一室の扉の前に立ち、思いっきり扉を開け放ちました。

「くっさ!」

様々な匂いが混じって激臭が部屋の中から漂ってきました。思わず鼻をつまみながら、部屋の奥まで突っ走り、全ての窓を開けていきます。

「『 清風(セロアスト) !!』」

外からの風を室内に入れて、悪臭を追い出します。

本や草や空き瓶などゴミかなにかが散乱した床を見渡しました。

そして、散乱している床にボロ布のような物体を発見し、掘り起こします。

「臭いのはコレだ!」

そのボロ布を掴み引きずって隣の部屋にツッコミ、壁から生えた突起を思いっきり回します。

すると上から雨のようなお湯が降ってきました。

シャワーですね。

「熱っ! あつっ! 水温調節を忘れている」

「煮沸消毒だ」

目が覚めたボロ布は、慌てて壁から生えたハンドルを回して水温を下げています。

「そんな横暴なことを言うのはフェリランか! ……子供?」

「ああ? ……はぁ、取り敢えず、くっさいので、煮沸消毒して出てきてください」

そう言って私はそこから出て扉を閉めたのでした。

子供と言われてカチンと来てしまいましたが、ここには喧嘩をしにきたのではなく、話し合いにきたのです。

あまりにも変わっていないので、イラッとしてしまいました。

「隊長はグレンバーレル魔導師団長と親しいのですか?」

私が風魔法で強引に床の散乱物を部屋の端に押しやっていると、レクスが落ち込んだような感じで声をかけてきました。

「え? 初対面ですよ。あと、マルトレディルです」

隊長呼びが直らないレクスを注意します。

私は魔導師団長とは今回が初対面ですので、親しいということは絶対にありません。

「ではフェリラン中隊長とは親しかったのですか?」

「ええ、元婚約者でしたから」

「は?」

「まぁ、折り合いが悪く、婚約は解消しましたけどね。クソジジイの采配でしたので、かなり解消に手間取りましたけど」

あれは本当に大変でした。かなり周りを巻き込んで婚約解消にもっていきましたからね。

「隊長に婚約者が……」

何故にそこまで落ち込む必要があるのです?

考えればわかるではないですか。

一応、フェリラン子爵令嬢でハイラディ団長の外孫となれば、ハイラディ団長と縁を繋ごうと私に婚約話が舞い込んでくるぐらいありますよね。

それに先手を打つために組まれた縁談でした。

まぁ、いろいろ互いに思うことがありましたので、その一点で協力して婚約解消まで持っていきました。

ゴミなのか何なのかは不明なものは一箇所にまとめて、それ以外はそれぞれの棚に戻しておきます。

これぐらい使い魔にさせればよろしいのに。

そして、部屋がだいたい片付いたぐらいに部屋の主が戻ってきました。

ルクスファラン・グレンバーレル。

今は伯爵位を持っているのでしたか?

外からの光を反射する金髪に光を帯びた金色の瞳。そして貴族らしい整った容姿。

あれから二十年経ちましたので、四十五歳ぐらいでしょうか?

が……先程の人の姿をした使い魔と同じなのです。そう、面倒で使い魔を自分の姿に似せるように命じて、あのようになってしまっているのです。

しかし普通にしていれば、さぞやご夫人方におもてになることでしょう。

「はぁ、いきなり来てなんの用なのですか?」

この研究以外に興味が持てないという面倒な感じがなければということですね。

ヤル気がないという感じで、綺麗になった長椅子に腰を下ろしています。

これ、絶対に綺麗になっていることをわかっていませんよね。

「補佐官に今朝ご連絡をさせていただきました件です」

床のボロ布状態の物体は恐らく聞いていないことは考慮済ですが、体裁というものは整えたと言っておきます。

そう言ったところで、腐海のキッチンを漁って発掘したティーカップに、何年ものだという紅茶の缶の茶葉から抽出した液体を注いだものをローテーブルに置きました。

「ファングラン騎士団長。なぜ、子供がここにいるのです」

「子供ではなく、私の従騎士だ」

金色と赤色の瞳が私に突き刺さります。

え? 何故にレクスも機嫌が悪そうなのですか?

「そこの従騎士とやら、私は熱いものは好きではありません」

そして湯気が立ち上る茶葉の抽出液を見下ろす魔導師団長。

ええ、知っていますよ。

「そうですか」

私はそう言って、ティーカップの上に手をかざします。

そして一気に凍らせました。

「どうぞ、アイスティーです」

「だから! それは紅茶の氷だと何回言えば……あ?」