軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第61話 姉は表には出せません!

「あ、別にマルトレディルくんのお姉さんの悪口を言ったわけじゃないのよ? そのような噂があるというだけなのよ」

私の苦悩する声にメリッサさんが、慌ててフォローする言葉を言ってくれます。

しかし、思っていましたよね。半殺しにする令嬢と団長が一緒にいるのかと。

「マルトレディルも、姉君の噂のことを口にしていたが、何が問題なのだ?」

半殺しの噂を聞いてもレクスは動じないようです。

「姉君の言い分もあるだろう」

全く持ってそのとおりです。あの胸しか見ていないクソ野郎。

「マルトレディル。姉君の側としてはどうなのです?」

……何故にここで話し方を変えるのです。偉そうな感じで聞いて来てくださいよ。

「まぁ、私を見ておわかりのように姉も小柄でして、そのことを言われてブチ切れて殴ったのは事実です。……が、普通に殴ったつもりが軽く吹き飛んでしまったので、色々尾ひれがつく原因になっていると思います」

私もそれぐらいでブチ切れた非は認めます。しかし、殴ったぐらいで、空中三回転を決めて顔からダイブすることはなかったと思うのです。

「マルトレディル伯爵様って、あの英雄フェリラン様の部下でしたものね」

サマ! 何故にフェリランに様付けされているのですか!

「ご令嬢にも、騎士の道を勧めたかったのかしら?」

いいえ、そのようなことは全くありませんでしたわよ。

「マルトレディル君がこれほど強いということは、姉君もそうとうお強いのでは!」

「力で押し負けることが多いから、そのあたりご享受願いたいわね」

「殴っただけで、そんな噂が立つほどって凄いよ」

なんだか、思っていない方向に話が進んでいます。

「団長。そのマルトレディル伯爵令嬢様に騎士団に来ていただくことは可能ですか? 一度だけでもいいのです」

次々と女性騎士たちから話が上っていると思っていましたら、一人の女性騎士からとんでもないことを言われました。

それ絶対に無理です。

私とアルバートが同一人物だとバレてしまうじゃないですか!

というか、強くなることにとても意欲的なのですね。

姉を表に出すわけにはいきませんから、私から提案させていただきましょう。

「私でよろしければ、訓練をご一緒させていただけませんか?」

「確かに、マルトレディルくんの訓練をものにすれば、いいということになるわね」

メリッサさんが私の身体を舐めるように見てきました。

くっ。メリッサさんより小さいですわよ。

「団長。如何でしょうか?」

私は斜め上を見ながら尋ねます。

「う……」

「う?」

「うらやま……」

いらないことを言いそうになるレクスの横腹を肘で突きます。

羨ましいとか言わないでくださいね。

「わかった。時間調整はこちらでしよう。ただ、訓練場の許可を大将校閣下から取ってくるように」

「え? どういうことですか?」

「一番うるさいのは、あの方だ。私はそれが面倒で自分の訓練場を作ったぐらいだからな」

ああ、屋敷にあった広い訓練場ですか。確かに一番うるさいのはクソジジイです。

許可が出るのであれば、もっと訓練を充実することができますわ。

だって、休みの日ぐらいしか家の訓練場で満足にできないのですから。

「あの? 意味がわからないのですが、団長の許可では駄目なのですか?」

「そうだな。それが通るなら、先日の盗賊狩りに私が出ることはなかっただろうな」

あれは、クソジジイから暴れるのであれば、外で暴れてこいと追い出されたようなものですからね。

訓練場を荒らした罰です。

老害も甚だしいです。

「納得できないようなら、この話はなかったことにする」

そう言って食べ終わったレクスは席を立ちました。

この後の予定が詰まっていますからね。

私もさっさと食べ終わったので、席を立ち食器が乗ったトレイを持とうとしたところで、勝手にトレイが浮き上がりました。

レクス! 何故に団長であるレクスが従騎士の食器を下げようとしているのですか!

これは何度も止めてくださいと言いましたわよね。

私は困惑している女性騎士たちを背にしてその場を立ち去りました。

あ、お昼休憩の時間は各隊で決まっているので、ゆっくりしていいのですよ。

「訓練。私もつけて欲しいです」

魔導師団の建物がある場所に向かっているところで、レクスの言葉が上から降ってきました。

レクス。私が訓練をつけることがないほど、強くなっていますよ。

「団長は、部下の訓練につきあってあげてくださいね」

私はニコリと笑みを浮かべて、答えます。

私が参加しなくていいと言われた訓練にです。

「ああ、そうです。もし、許可が下りたら、あの甥っ子さんも参加するように言ってみてください」

「何故に私は駄目で、デュークアルベルトはいいのです」

「団長はもう十分お強いですから。それにファングランの力の特性がないと拗ねている甥っ子さん。私からすれば、そうではないと思うのですよ」

「どういうことですか」

「まぁ、それは私より今から訪ねる変態のほうが詳しいです」

そう、騎士団の敷地と隣接する場所に魔導師団の建物がそびえ立っています。

建物というより、塔ですわね。

はぁ、その昔はあの塔の上から色んな実験物が投下されていましたが、今は静かなようで……

ドンっという爆発音と共に窓から煙が上がっていますわ。

中は相変わらずの魔境のようですわね。

「団長。私はこちらでお待ちしておりますので、行って来てくださいね」

私はレクスの背中を押して送り出したので……。

「隊長。私では説明できないことがあるので一緒に来てくれると言ってくださいましたよね」

送り出したにも関わらず、その手を掴まれて私は魔境に連行されたのでした。