軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話 嫌です

「野盗ですか?」

翌日、朝の会議から戻ってきた団長から話があると言われたのです。

「野盗ごときで、騎士団長が出ると言っていますか?」

今朝の会議で野盗討伐が議題に上がり、団長直属の隊が出撃することが決められたそうです。

「あのクソジジィなんて、小物討伐になど一度も出撃しなかったのにですか?」

「誰に聞かれているかわかりませんので、そういう言い方は……」

「あのクソジジィが、団長だった頃を知っている騎士などその辺りにウロウロしていません」

老害の元団長など、一番の勝ち戦ぐらいにしか顔を見せなかったではないですか。

そう、王家のぼっちゃんの初陣とか、王家のぼっちゃんの箔付けの戦だとか、それからそれから……。

「従騎士マルトレディル。我々が出撃するという意味を勘違いしてはいけない」

突然、団長の顔をしたレクスに言われましたが、それぐらいわかっています。

これは戦勝二十周年記念に向けて、各方面に威圧をしているということです。

二カ月後には領地から貴族たちが街道を通って王都に向かいます。それまでに無粋な輩の掃除と、騎士団団長自ら動いているということを、野盗の裏側にいる者たちへの威圧です。

「ではそのような従騎士では、御役に立てそうにありませんので、王都で留守番をしておきます。溜まったお仕事はできるだけ処理をしておきましょう。お任せください」

私は胸を張って言いました。

ドンと任せてもらっていいですわ。

「あ、……いいえ。そういうことではなくてですね……」

先程の団長としての威厳はどこに消えてしまったのか。オドオドとしだすレクス。

私は王都で留守番をしておりますので、野盗討伐でもなんでも行ってきてください。

「隊長も一緒に行って欲しいと……私の従騎士なのですから来てくださいますよね?」

「嫌です。あと隊長ではありません」

「ぐふっ!」

私がきっぱりと断ると、レクスは床に沈み込むように倒れていきました。

え? だって野盗討伐となりますと一日では済みませんよね。

何日も野盗がいそうなところを巡ることになります。それから、言われた場所は王都から馬車で一日かかる、王家直轄地とファレスト伯爵領の境にある森林地帯です。

かなり広いので、騎獣移動して問題の野盗を討伐するのに何日かかるのか、考えるだけでも嫌ですわ。

それに野営をすることになるので、私が本物のアルバートではないとバレるリスクが高まります。だから絶対に行きたくありません。

「どうしてでしょうか?」

どうしてと言われても、本当の理由は言えませんわ。

そうですわね。

「私専用の武具の支給は、早くて二ヶ月後だと聞いています。それでは戦いとなると困ります」

今回入団してきた者たちの武具は、二か月後にある戦勝記念のパレードに間に合うように支給されるのです。

ですから、私が騎士団として身につけられるのは普段着の紺色の隊服しかないのです。

だから、レクスに隊服で戦えと言っているのかと問いかけるのです。

「隊長であれば、鎧がなくても野盗など楽勝だと……」

「ちっ!」

言われたことに思わず、舌打ちをしてしまいました。その音に肩を揺らすレクス。

「その怠慢が命取りになるのだよ。レクス。私は教えたはずだ。使わなくても鎧の手入れは怠らないことだと。何故だ?」

「はっ! 一つのサビに動きを阻害されて、敵に無防備な姿を晒すことになるからです」

「だったら、防具を持たない部下を戦地に立たす上官はなんだ?」

「はっ! 申し訳ございません。私が無能でありました」

「わかればよろしい。私は王都で待機だ」

私はそう言って、私の執務机に戻ります。

確かに野盗ごときに遅れをとるとは思っていません。しかし、私個人としては絶対にどんな理由をつけてでも、断らなければならない仕事なのです。

そして一枚目の書類に、目を落とした時に影が落ちてきました。

レクス。そこは邪魔ですわ。

「しかし大将校閣下から『力が余っておるなら、外で暴れて来い』と命じられたのです」

「クソジジィ!」

私は思わず手に持っていたペンを折ってしまいました。

これは昨日、訓練場で暴れた罰ということですか。

レクスと私に訓練場を破壊するほどの力があるなら、対外的に騎士団の力を見せつけて来いという罰。

ということは、私が行かないという選択肢がなくなるのです。

はぁ、野盗の裏側に帝国がいるのではないのか、という話が持ち上がっているのは知っています。

何度か野盗を捕縛するも、何処から湧いて出てくるのか王都周辺に再び現れるという話です。そして、その野盗が手にしている武器は、帝国産のかなり質がいい武器だとか。

裏側にいる帝国を黙らせるほどの鉄槌を下せというのが、今回の本当の命令というところでしょうか。

教会側の威厳もあるでしょうが、あまり時間をかけると、王家の私兵が出てくることになるでしょう。

あのランドルフ殿下の警邏隊とか、ウザいだけですからね。

はぁ、これは困りましたわ。