軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第110話 私のこの三日間は…

「団長。おはようございます」

翌朝、私はとても心が折れかけていました。

別にいつも以上に積み上がった書類のせいではありません。

昨日から副団長が寝込んで、人手が足りなくなっているせいでもありません。

なんだかものすごく、ご機嫌なレクスのせいでもありません。

「隊長。おはようございます。どこか身体の調子が悪いのですか? 顔色が……」

「大したことはないので、気にしないでください」

はい、他人からすれば大したことはないのです。

一番と言っていい時間帯に食堂に行き、朝食をとっていると、一人の女性騎士の方が目の前に座ってきたのです。

「マルトレディル君。おはよう」

「おはようございます。騎士リエグリス様」

「かたっ苦しい、エリスでいいよ」

「リエグリスさん、このような時間にどうされたのですか?」

レクスの部隊にいる女性騎士の方です。

これは昨日メリッサさんと話をしていた訓練のことなのでしょうか?

「聞いたよ! マルトレディル君、団長といっしょに寝たんだって!」

「ぶふっ!」

思わず飲んでいたスープを吹き出してしまいました。なんて、はしたないことを!

「ちょっと待ってください! そんなことはありません!」

慌てて否定します。

どういうことですか! 謹慎前より団長と従騎士のBとL説が濃厚になっているではないですか!

あれですよ。侵入してきたレクスを落として、放置していたら、アリアにおかしな気を回されたというだけですわ。

それに、そのBとL説を払拭するために、私はシエラメリーナとしてパーティーに参加をしましたのに、その話が何故にいきわたって……はっ! 賊の襲撃事件のほうが大体的に取り上げられています。

私の頑張りは無駄だったということなのですか……。

「そうなの? だってメリッサ様がそうおっしゃっていましたし」

「メリッサさんには、そのようなことは一言も言っていません」

もしかして、言葉をつまらせてしまったので、おかしな風に解釈をされてしまったのでしょうか?

「でも昨日の団長は、流石におかしかったのよね」

……昨日、私がいない騎士団に何があったというのですか!

「団長の機嫌が良いのは別件です。一昨日あったパーティーで何かあったようでしたので、私は詳しくは知りません」

婚約の件は、まだ発表しないようにレクスに念をおしたので、漏れることはないでしょう。原因はこれなので嘘ではありません。

父に全部押し付けるので、私の口からはいいませんよ。

あと、ジークフリート陛下を後ろから刺したい衝動にかられていますが、我慢します。

王太子の時代もそうですが、あのジークフリート陛下に関わるとろくなことがありません。

「そうなの? ファングラン団長って、本家にはほとんど近づかないって聞いていたけど、そんなにいいことがあったの?」

私は食べ終わったので、トレーを持って立ち上がります。

それには返答しません。

「マルトレディル君」

「はい」

「私は基礎訓練より、自分にあった訓練がしたいの」

ああ、これが本題でしたか。

基礎訓練なら今日から行えるという件ですね。

「訓練は強制ではありません。基礎訓練したい方だけ、参加していただければいいのです」

そう言って、私はリエグリスさんに背を向けました。

「むぅ~、その言い方気に入らないなぁ」

「気を悪くしてしまったのであればすみません。業務外の訓練なので、やる気のある方のみ参加をして欲しいだけです」

「私はやる気がないわけじゃなくて、もっと個人的な能力を上げたいと言っているの」

そういう方もいらっしゃるでしょうね。

たぶんこの方は、鷹の目の能力をお持ちの方ですよね。

私が外周を走っているときに、グレンバーレルの容姿を目にしたとおっしゃっていた方。

「敵にとって邪魔な存在は『目』です」

私はリエグリスさんに向けて中指と親指を合わせたまま左手を前にだします。そして軽く指を弾きました。

「ドンッ! やられてしまいましたね」

私は魔力の塊をリエグリスさんの胸に当てたのです。ちょっとした衝撃です。

少し細工をしたので、数分ほど手足にしびれが残ります。

「え?」

ガチャンとリエグリスさんが持っていたフォークがトレーの上に落ちました。

それに気を取られている間に、背後に回って耳元で囁きます。

「動けない貴女は、敵にいいようにされる存在でしかなくなります。だって、貴女は『目』しか鍛えていなかったのですから」

それだけを言って、食器の返却する場所に向っていきます。

ちょっと、イライラしてやりすぎてしまったかもしれません。

まぁ、私の思い通りにならないことなど、いくらでもあります。

アルバートと団長の噂を払拭させるどころか、酷くなってしまいました。

そして色々我慢してパーティーに参加したにも関わらず、賊のせいで団長と姉のシエラメリーナの噂は広まらず、婚約を国王陛下によって確定されてしまったという事実のみが残ってしまいました。

私のこの三日間は何だったのでしょうか?