作品タイトル不明
第104話 誰だこんな物を書かせようとしているのは
この場に残ったのは白い隊服を身に着けた幹部たちと、何故かラドベルトです。
「それでは本題にまいろうか」
どうやらこの会議の進行役はベルラディル閣下のようです。
「事前にグレンバーレル魔導師長より情報がもたらされておったが、戦場の死神の復活を帝国が目論んでいたということが証明された。 彩糸(さいし) のラグレリアの存在を確認できたからのぅ」
ん? ベルメールのことはいいのですか?
「さて、これらに対抗できる人材がどれほどいるかということになるのじゃが……」
「ベルラディル。そう睨みつけるな。あれほどの者たちが生まれて出た理由は、わざわざ言わなくてもわかっているだろう」
ジジイ同士で会話を完結しないで欲しいです。
やはり、 彩糸(さいし) のラグレリアから出た名を聞いたのは私だけですか。
それにベルメールは常に闇を纏っていたので、容姿の詳細は不明な点があげられるので、名と特殊魔法しかわからなかった者の一人です。
「ベルメールという者もあの場におりました。ファングラン団長様が討ち取りましたが」
私の言葉にざわめきが沸き起こりました。
「 冥刻(めいこく) のベルメールであるか」
「あの暗闇はやっぱり魔法か」
「確かに 彩糸(さいし) と 冥刻(めいこく) であれば、相性はいいだろう」
「今回、国王陛下の提案がなければ、ファングラン公爵家は落ちていたのではないのか?」
「一般人がいる中で死神二人の相手は流石に無理だ」
「ということは、国王陛下の提案は漏れていなかったということですよね」
「やはり、情報を漏らしている者がいると」
……レクス。何故私を抱える力が強くなっているのですか?
少し緩めて欲しいです。
あと、席が空いたので私は移動してもいいと思うのです。
私はレクスを見上げました。
「あの? 空いている席に移動していいですか?」
「駄目です」
何故に駄目なのですか?
そのレクスの視線はセレグアーゼのほうに向けられています。
「将校セレグアーゼ。頼んでいたことの進捗状況の報告を」
「はっ。まず、現段階でグレンバーレル魔導師長が施した魔法陣に反応した者は約五百人です」
百人に一人ですか。
情報収集として多いのか少ないのかわからない数字ですが、確実に敵は情報を得ていたということでしょう。
「そして幹部の中からは今のところ出てきていません」
これは実働部隊から情報を得ればいいということでしょうかね。
それに戦場を経験した幹部と接触するのは己の身を危険に晒すことですからね。
「その者たちは即座に魔導師団のほうに引き渡しています」
洗脳の解除ですね。
しかし、これをしたからと言っても、洗脳をした者を潰さなければ意味がありません。
「わかった。騎士団からの情報が漏れることはなくなったといいたいが、それを仕掛けた者の居場所はどうだ?」
「それにはまだ時間がかかります。誤って接触すれば、こちらが取り込まれます」
「早急に居場所を探れ」
「はっ!」
この件はアリアさんが裏で動いているので、あの勢いなら明後日ぐらいに何か情報を持ってきそうですが。
そして私はレクスが話している中、隣にいるラドベルトにペンと一緒に一枚の紙を渡します。
書き込んでいますが、空欄が目立つものです。
「……俺に渡されても、同じぐらいしかわからん」
それぐらい知っています。同じ部隊にいてラドベルトの方が情報を持っているのに出してなかったのなら、グジグジ文句を言ってやります。
私は、他の者たちに回すように視線で示します。
「いや、普通は逆周り……わかりましたよ」
それはクソジジイが一番情報を持っているぐらいわかっています。しかし、なんだかムカつくではないですか。
はい、ただの私情です。
「室長。わかる分でいいので書いてもらえませんか?」
ラドベルトは隣の席に座っているディレニールにまわしてくれました。
そして、何故か私のことをチラリと見て、書き込んでいっています。
あの? 今の視線はどういう意味ですか?
恐らく、ディレニールが死ぬほどの大怪我を負わされた相手のことを、書いてくれているのでしょう。
なんですか? ラドベルト。
ディレニールの機嫌が悪かろうが、そんなのは二の次ですわ。
「何を渡したのです?」
突然苛立ちを見せ始めたディレニールのことが気になったのでしょう。レクスが聞いてきました。
「最後に戻ってきますよ」
その用紙がセレグアーゼのほうに回され、一通り目をとおしたところで、書き込まずに次に回っていきます。
工作部隊だったセレグアーゼは、直接戦った死神がいないので、そのまま横に渡したのでしょう。
「おい。誰だこんな物を書かせようとしているのは」
アシュメディラ中隊長。今は将校ですか。
黙って、腹に穴を空けられた相手のことでも書いてください。
「団長。これは嫌がらせですか? わざわざ人のトラウマを引き起こさせようと?」
「何が書いてあるのです? ……これは……ディレニールよく書きましたね」
「こんな物、必要あるのか……」
私が書いた紙を破ろうとしているアシュメディラに向って殺気を放ちます。
今、必要なのは情報共有です。
「書いてください」
「お嬢ちゃんか。部外者なのだから騎士ごっこなら他でやればいい」
「それなら、進行役をしていらっしゃるベルラディル閣下にもおっしゃってください」
「馬鹿か! そんなこと言えるはずないだろう」
そのベルラディル閣下がいつの間にか、アシュメディラの背後に立っていました。
あれ? 先程までレクスの斜め後ろにいらっしゃいましたよね?
「ふむ。それが不要か決めるのは、団長なのではないのかのぅ」
「はっ! すぐに記入いたします!」
退役してもベルラディル閣下の存在は騎士たちにとって凄いということですわね。
ベルラディル閣下の言葉に、アシュメディラはペンを取ったのでした。