軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第103話 似合っているから機嫌を直しなさい

「マルトレディル様。この部屋はもう使用できませんので、隣の部屋に移動をお願いいたします」

黒いドレスを着せられた私はエリアーナさんから隣の部屋に行くように言われてしまいました。

どうみても十代前半の令嬢が着るドレスです。黒色でまとめられているからか、ヒラヒラは少なく落ち着いたデザインですが、膝下に裾があります。

誰かの古着だというのはわかりますし、別のドレスを用意してくれたので、文句はいいませんが、鏡に映った私はどう見ても十代前半の令嬢にしか見えません。

この童顔のマルトレディル家の血の強さが憎いですわ。

「はぁ〜」

私は大きくため息をつきました。

警備の面で私一人に人員を割くのは非効率なので、隣の部屋に行くのはいいです。

しかしクソジジイがいるところで殴らないという選択ができるかどうかです。

「マルトレディル様、こちらをどうぞ」

エリアーナさんが、私にタバコの箱を差し出してきました。

これでどうにか落ち着くようにですか。

まぁいいでしょう。

私はタバコを咥え、火をつけます。

頭が真っ白になるほど吸い、白煙を吐きました。

いざ、まいらん。

伯父様が私にかけてきた上着を手に持って、扉を開けて隣の部屋に一歩踏み込みます。

今まで、話し声がしていましたが、それがピタリと止みました。

ああ、邪魔をしたわけではありませんので、どうぞ続きを……その前に。

私は伯父様の下に向って、白い隊服の上着を差し出しました。

「伯父様。ありがとうございました」

「ああ……機嫌が悪い理由はわかるが、似合っているから機嫌を直しなさい」

上着を受け取った伯父様は、私の頭をポンポンしてきました。

私は別にドレスが子供っぽいとか思っていません。絶対に思っていませんから!

「この状況でわがままを言うことはありませんわ」

私はふぅ〜と白煙を吐いて言います。

それで、私はどこに居座ればいいのかと視線を巡らせました。すると、いつの間にか側に来ていたレクスに手を引っ張られ、席がないからとレクスの膝の上に座らされたのでした。

……ありえませんわ。

そして私が入室したことで話を止めてしまったので、続きを促したのでした。

「お嬢様のご意見をお聞きしてもよろしいかのぅ」

はぅ! レクスの斜め後ろに立っているベルラディル閣下から、声をかけられてしまいました!

フェリランのときなんて、一度も閣下から声を掛けられたことなどありませんでしたのに!

「はい! 何でも聞いてくださいませ!」

「シエラメリーナの嬢ちゃんの参謀閣下好きは相変わらずなのか」

ラドベルト。何、残念な感じで呟いているのですか。

「会場にて何故、暗闇の中で敵の位置がわかったのか」

「声がしたからに決まっていますわ」

「何故、警備の者に任せようとしなかった?」

「私のほうが近かったからですわ」

「ふむ。言い方を変えるかのぅ。武器を持たずに敵に突っ込むとは愚かな者ではないのか?」

「閣下は戦場で武器がないからと引き下がるのですか?」

私は質問の意図が掴めず首を傾げてしまいました。

「ふっ。わしはただの使用人のジジイなので、そのような呼び名は不要じゃ。さて、どちらが正論かのぅ?」

ん? 何の話なのでしょう?

私は途中からなので、さっぱりわかりません。

レクスの隣にいるラドベルトのほうに視線を向けました。

「今の議論は何故侵入者に対して、何故剣を抜かなかったのかというやつだ」

「ん?」

私はこの場にいる騎士団所属の人たちを見渡します。

レクスの背後にいるベルラディル閣下は退役しているので数にいれないとして、閣下を挟んで副団長がおり、その隣がクソジジイです。

リヴァイデル。アシュメディラ。セレグアーゼ。ディレニール。ラドベルトぐらいは知っている顔ですわね。

ラドベルト以外が白い隊服を身に着けているので、幹部の地位にいるのがわかります。

その者たちは実働部隊には通常組み込まれませんので、閣下が言っているのはそれ以外の者たちのことでしょう。

うつむいてしまって顔がよく見えませんが、騎士の称号を持っているだろうと思われる人が十五人ほどこの場にいらっしゃいます。

しかし、ファングラン公爵家から招待されたということは高位貴族の方々だと思われます。

歳も二十代と思われますので、平和な時代を生きた騎士には厳しい質問かもしれません。

「それで子爵も責められているということですか?」

「いや、俺は動いたからな」

まぁ、ラドベルトの義足は、私の凶器と同等の威力を発揮すると予想ができますね。

「陛下の御前で騎士として動けなかった者には厳罰に処する。詳細は後日伝えるゆえ、退席しろ」

レクスがうつむいている騎士たちに向かって言いました。

……あれ? もしかして一時間ほど、こんなことに時間を使っていたのですか?

しかし、騎士でありながら、役目を果たさないと言う者たちの意見を聞く必要があるのでしょうか?

無いと思うのですけど?

これも時代なのでしょうか?

「騎士でもない令嬢に言われてしまえば、ぐうの音もあるまい」

クソジジイの言葉にイラッとして、新しいタバコを一本取り出しました。

タバコの消費率が上がりそうです。