軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【最終話】 輝く四聖の光

園遊会で罪を犯した四人が裁かれた。

ガスペルに乗せられた形のディーンだが、カトリーナの取り成しもあり、廃嫡にはなったが牢に収監されずに済んだ。

自分の行いを悔いたディーンはカトリーナへの想いを断ち切り、心身を鍛え直したいと騎士団の一般兵士に志願したそうだ。慣れないことも多いだろうが腐らず頑張っているらしい。

アリーヤとカトリーナにはそれぞれ謝罪の手紙が一度だけ送られてきた。

あの場に出てこなかった魔術師は、キールが失敗した時点で会場から逃げ去っていた。魔力が高く捕まえるのに苦労するかと思われたが、魔術王国ルガッタの強力な援軍によって無事捕らえることができた。ローズマリーの失態を取り返そうとルガッタが必死に頑張ってくれたおかげとも言える。

その魔術師とガスペル、キールの三人は喉を潰され魔封じの首輪を付けられて重犯罪者が収監される炭鉱に送られた。そこは貴族男性ではまず半年持たないと言われるほど劣悪な環境らしい。ガスペルと魔術師はわからないが、軟弱なキールではひとたまりもないだろう。

なんとなくアリーヤは、もうキールはこの世にいない気がした。聖女となったアリーヤの、あくまで勘の話だ。

当主が大罪を犯したアラナイル家は取り潰しになった。この先四聖を狙わんとする者への見せしめ、他国への申し開きなど政治的側面もあるが、カトリーナがいつまでも実家の罪を背負わなくてもよいようにとの配慮もある。

カトリーナはルイーズの実家の侯爵家の養子となった。

園遊会から半年後、アリーヤ達は湖のほとりで固唾を飲んでカトリーナを見守っていた。

今日のためにカトリーナは必死に修行を積んできている。カトリーナの力は候補者時代の最下位とも言えるほど落ちてしまっており、底上げするのに本当に頑張ってきた。もちろんアリーヤ達も一緒だ。そのおかげで今ではもう友人と呼べるほどの関係になっている。

緊張した面持ちで湖に入っていったカトリーナは、ふうっと息を吐いてから誓いの言葉を口にした。すると湖が青色に変わっていく。その瞬間、拍手と歓声に包まれた。

「おめでとうございます!カトリーナ様!続けて治癒の祈りを捧げてください!」

神官長に言われたとおりカトリーナが祈りを捧げると、青い光が辺り一面にキラキラと舞い散りやがて空へと上っていく。凛と輝くその青い光はまさにカトリーナに相応しく、高貴で華やかで洗練されている。

その光を見ていると、園遊会で助けてくれたときのカトリーナの美しい笑みが思い出されて、アリーヤの心が震えた。

「カトリーナ!」

アリーヤが叫ぶとぼうっと空を眺めていたカトリーナがゆっくりとアリーヤを見る。

「アリーヤ。わたくし、巫女に、本物の治癒の巫女に、なれましたのね……?」

「そうよ!そのとおりよカトリーナ!おめでとう!」

「おめでとうカトリーナ!」

「おめでとうございます!カトリーナ様!」

シシリーもアロマも叫んで、三人でバシャバシャと湖に入りカトリーナを抱き締める。実感が湧かず突っ立っているカトリーナにしがみ付いたと言った方が正しいだろう。

空を見上げてぼんやりしていたカトリーナがふと目線を動かして呟いた。

「リオン……」

「カトリーナ様、おめでとうございます。とても、とても綺麗な、心が洗われるような光でした」

リオンはこの半年、カトリーナのお側付きを離れていた。

神殿に残ると決めたリオンだがあまりに神力が低すぎて、何かあったときカトリーナを守れないと下級神官に交ざり一から修行をしていたのだ。

同じ神殿内なので時々顔を合わせていたようだが、まずは力を取り戻すことが先決と二人ともずっと修行を優先してきた。何年も一緒にいた存在がいなくなるのはどれほど寂しかっただろう。しかもお互い愛を確かめ合った直後から。

カトリーナにしがみ付いていたアリーヤ達はさっと離れ背中を押す。

「ほら、カトリーナ」

「そうそう。せっかくのお出迎えだ」

涙を溜めていたカトリーナの顔がくしゃっと歪み、湖の中を駆けて岸に立つリオンの胸に飛び込んだ。

「リオン!わたくし!とうとう巫女になれましたわ!本物の四聖に!」

「ええ、ええ。おめでとうございます。私も昨日、ようやく上級神官に戻れました。これでもう一度、あなたのお側付きに」

「リオン!」

カトリーナが大粒の涙を溢しながらリオンの胸にすがり付く。それを大切そうに抱き締めるリオン。

そんな二人にアリーヤ達の胸が熱くなる。こちらが貰い泣きしてしまいそうだ。

「カトリーナって意外に泣き虫なんだから」

「そうだな。この前も恋愛小説を読んで」

「ちょっとアリーヤ!シシリー!わたくしのどこが泣き虫なのです?!いい加減なこと言わないでくださいな!」

グズグズ鼻を鳴らしながら怒ってくるカトリーナ。たぶん貴族令嬢はそんな簡単に涙を見せないとか思っていそうだ。

アロマが首を傾げる。

「え?でもカトリーナ様、涙でお顔がベタベタですよ?」

「くっ!違いますわアロマ!これは!これは!鼻水ですわっ!」

意味不明な言い訳をするカトリーナにその場にいた全員が大爆笑した。

その日の夜、アリーヤはアルカインの膝の上にいた。なんやかんやとアルカインに言いくるめられて気付けばこれが定位置になりつつある。慣れてしまっている自分が怖い。

「アリーヤ、よく頑張りましたね。あなたは間違いなく史上最強の聖女ですよ」

「そうかな?」

「半年間もの間、一人で結界と治癒、両方の祈りを大陸中に届けていたのですから。セイレーン様もお喜びでしょう」

「ふふふ。だと嬉しいな」

カトリーナが巫女になることに大多数は賛成していたが、ごく一部では大罪人の娘ではという批判もあった。そんな声を黙らせるために聖女であるアリーヤがカトリーナを巫女に指名し、その穴埋めをアリーヤがこなすことで外野を一切黙らせた。底無しパワーを持つアリーヤだからこそ為せる業だ。正直言うと時々ふらつくこともあったが、そんなものは気力で乗り切った。もちろんアリーヤの体調不良はアルカイン以外誰も知らない。

「でもこれで半年ぐらいなら代わりを務められるってわかったわ」

「そんな機会はこの先ないでしょう」

「わかんないわよ。例えばシシリーに子供ができたときとか」

来年、アリーヤとアルカイン、シシリーとグレインの合同結婚式が行われる予定だ。同時期に挙げるなら思い切って一緒にやってしまおうと決定した。ちなみに取り仕切っているのはルイーズで、ほとんど決めてくれるので楽をさせてもらっている。

「子供ですか。それならアリーヤとシシリー様が同じ時期にお子ができないようにしないといけませんね」

アルカインが急に色気を振り撒き始めた。余計なことを言ったのかもしれない。

「カ、カイン。子供の話はまたに」

「アリーヤから言い出したのに?」

「そ、そうだけど」

「挙式まではまだ半年以上ありますが、今から少しずつ予行練習をしてもいいかもしれませんね」

「へ…?な、なんの?」

「もちろん子作りのですよ」

フフッと笑ってアルカインがキスをしてきた。それを必死に受け止めながらアリーヤは思う。

ーー“ああいうすましたタイプが一番危ないのよ”って誰の言葉だったっけ……

次の日の朝。

「アリーヤ、寝不足か?」

「そうですね。なんだかくまもあるみたいですよ」

欠伸ばかりしているアリーヤにシシリーとアロマが心配してくる。

「そ、そう?そんなことないけど」

ギクリとしたアリーヤだったが平静を装った。すると目が笑っていないカトリーナがツカツカと歩いてきてアリーヤの耳元で囁く。

「貞操は守りなさい、アリーヤ」

「は、はははい!」

思わず必死に頭を振った。恐るべしカトリーナ、昨夜のアレコレを見抜いているではないか。

そこへ神官長がやってきた。

「さあ、四聖の皆様、今日から四人揃いましたね。皆様で祈りをお願いします」

「「「「はい」」」」

カトリーナが揃って初めての祈りだ。わくわくしながら四人一斉に祈りを捧げる。アリーヤからは金の光が、シシリーからは銀の光が、アロマからは緑の光が、そしてカトリーナからは青い光が放たれる。その四つの光りが混ざり合って辺りを眩いばかりに輝かせ、やがて天に向かっていく。

「やったわね!」

「やったな!」

「やりました!」

「…………きれいね」

ぼそりと呟いたカトリーナを見るとまた涙ぐんでいる。昨日と同じように空を見上げてぼんやり突っ立っているカトリーナに、三人で笑いながらしがみ付いた。

カトリーナの目線の先にある光を追いながら、アリーヤは心の中で呟く。

ーーセイレーン様、ようやく四聖が揃いました。この先も私はシシリーとアロマとカトリーナと共に頑張ります。だからセイレーン様、これからも見守ってくださいね

まるでセイレーンが笑顔で応えてくれたかのように、天がキラリと光った。

END