軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

距離近すぎ

部屋に戻り、ようやくアルカインと二人になれたので、アリーヤは思い切って自分から切り出した。

「アルカイン殿下、知らなかったとはいえ、今まで申し訳ありませんでした。それから私のお側付きですが、誰かに代わってもらった方がよいですよね」

アルカインは困った顔をして首を横に振った。

「あなたが謝罪する必要はありません。私こそ、今まで身分を偽っていて申し訳ありません」

「ちょ、やめてください!私に謝罪とかいらないですから!」

「アリーヤ様、いつもどおり接していただけませんか?」

「いやいや無理ですよ!王子様って聞いて今までどおりなんて!不敬罪で投獄されます!」

アリーヤが両手で大きくバツを作ると、アルカインはクスクス笑った。

「そんなことにはなりませんよ。私は確かにこの国の第二王子ですが、あまり意識したことはありません。王族として扱われてこなかったのも大きいでしょう。それに私はあなたのお側付きをやめるつもりはありません」

「で、ですがいくらなんでも!」

「神殿で私の身分を知っていたのはアナスタシア様と上層部だけです。ですが皆様ただのカインとして私を見てくれていました。……できればあなたにも今までどおりでいて欲しいと願うのは、私の我儘でしょうか」

悲しそうな顔で寂しそうに言われてしまえば、アリーヤも絆されてしまう。

「いずれ身分を明かすつもりでした。アリーヤ様には先にお伝えしたかったのですが、なかなかタイミングが合わなかったのです。今日はディーンが何かしそうだと聞いて、急遽私が抑える役目になりました」

第三王子が喚いているのだ。それを抑えるのは同じ王族、中でも神殿内部に精通しているアルカインが適任だと、アリーヤにだってわかる。

「私はアリーヤ様と一緒に過ごす時間を楽しく思っています。もう六年の付き合いになりますが、私はこの先もあなたのそばであなたを見守り続けたい。アリーヤ様はいかがですか?」

「そ、それは。私もアルカイン殿下を信頼していますし」

「敬語はおやめください。正直違和感しかないです。それから今までどおり、カインとお呼びください」

なかなか無茶を言ってくれる。

「アルカイン殿下だって敬語じゃないですか!」

「私は幼少期から誰に対してもずっと敬語です。これを変えるのは容易ではありません。ですがあなたは違いますよね?」

「そう、だけど」

「でしたら私も敬称をとりましょう。あなたのことはアリーヤ、と呼ばせていただきます。これでよろしいですね?アリーヤ」

いきなり呼び捨てにされて、これはこれで恥ずかしいというかなんというか。背中がもぞもぞして落ち着かない。

それに先程から二人の距離が徐々に近くなっている気がする。と思ったら、アルカインがいきなり片膝を突き、アリーヤの手を取った。

「アリーヤ、私はあなたと共にいることを望んでいます。私の心は変わりません。この先も私を、あなたのそばに」

これではまるで口説かれているようではないか。

自意識過剰と思いつつも、色気駄々漏れで距離を詰められ、跪いて手を取られ、しかも今日のアルカインは正装姿でいつにも増してカッコイイ。

アリーヤだって本当はアルカインと離れたくなかった。だからこれまでどおりと望んでくれるのは嬉しい。嬉しいが、こんなプロポーズのような状況は想定外だ。

ドキドキして顔が赤くなりそうになり、それを隠すようにやたら大きな声を出した。

「わ、わかったわカイン!わかったからちょっと離れてくれない?!」

「ありがとうございます。ではこの先も、私達は共に過ごしましょう」

アルカインは嬉しそうに微笑み、アリーヤの手を取ったまま立ち上がった。そしてなぜかその手にキスを落としてきたのだ。

そんなことをされたのは生まれて初めてのアリーヤはわたわたした。手の甲に柔らかい感触が残っている。思わず手を引っ込めようとしたが、逆にぎゅっと握られ離してくれない。それどころかアルカインはアリーヤの顔を覗きこんで微笑んでくる。

長い付き合いだがこんな距離は初めてで、アリーヤの顔がカーッと赤くなった。

「あ、あ、あの、カイン!な、なんで手に、キキキキスしたの?!」

「親愛の証ですよ。私にとってあなたがどれほど大切かわかっていただきたくて」

「そ、そ、そう!わかったわ!私もあなたが大切だと思っているから!だから手を離して!」

なぜこんなことになったのか、とにかくこの距離感はおかしい。全然落ち着かない。背中にびっしょり汗をかいている。

涙目で睨み付けるとアルカインは嬉しそうに、だが名残り惜しそうにようやく手を離した。

そんな顔を見せられてどうしてよいかわからず、アリーヤは無性に祈りたくなった。

「じゃ、じゃあまた明日ね!おやすみなさい!」

アルカインの背中をぐいぐい押して部屋から追い出す。扉を閉めて窓際まで駆け寄り膝を突いた。

「セイレーン様、聞いてください!カインが!カインがぁぁ!手にぃぃぃ!!」

そこまで大騒ぎせんでも。

セイレーンは思ったに違いない。