軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

苦労人ジョーへの忠告

※ 今回は綿貫さん視点の話です。

夕方の仕込みを終えてシェアハウスへ帰ってきたら、新旧コンビに相談を持ち掛けられた。

その前に、可愛い可愛い愛娘の未来にオッパイをあげてからだと断ると、後でも良いから頼むと言われた。

何だか、新旧コンビにしては深刻そうな顔をしていたので、またモテない話なのかと茶化すのはやめておいた。

未来への授乳を終え、オムツも替え終わった所で新旧コンビが待つリビングへと降りた。

「お待たせ」

「おっ、未来ちゃんは、お眠みたいだな」

新田がうとうとしている未来の顔を覗き込んできたが、覗き込むだけで手を出すことはない。

一度、新旧コンビにも抱いてみるかと聞いてみたが、二人とも首を振って断った。

あまりにも華奢で壊れてしまいそうで怖いらしい。

自分らだって、いずれは親になるんだぞ……と言ってみたら、俺らは全く予定が無いから大丈夫だと、そんな時だけモテない事を言い訳に使っていた。

いや、二人とも、そういうところだぞ。

「それで、私に何を相談したいの?」

「あぁ、ジョーに何て言って釘を刺せば効果的かと思ってよ」

新田の口から出たのは予想外の相談だった。

「ジョーに釘を刺す? なんで?」

「何でって、決まってるだろう」

相談という割には、新田も古田もはっきり理由を言おうとしない。しない。

「決まってる? 何が?」

「夜の騒音問題だよ」

新田がうんざりした様子で答えたので、そこまで言われれば私にも相談の理由が理解できたのだが……。

「あぁ、結構激しいんだ」

「えっ、聞こえねぇの?」

「上では気にならないよ」

「マジか、床は丈夫なのか?」

ジョーや新田の部屋は一階だが、私の部屋は二階にある。

シェアハウスの部屋割りをした時に、一階は防犯の意味で男子の方が良いとなったのだ。

最近、同棲を始めたジョーとリカルダの睦事は、隣室に暮らす新田にとっては刺激が強すぎるらしい。

「別に娼館通いをしてたんだし、ネット使ってアダルトな動画とかも見てるんでしょ? 別に神経質になるほどじゃないんじゃない?」

「いやいや、娼館やエロ動画は知らない人じゃんか、それに、こっちは普通に寝ようとしている時に聞こえてくるのはキツいんだよ」

なんと、新田は自室に防音室まで作ったそうだ。

面白そうなので見せてもらったが、想像していたよりも本格的で驚いた。

「これなら、少々声が大きくなっても大丈夫じゃないの?」

「それだよ、それ、それ! なっ、達也」

「そうなんだよ、それが心配なんだよ」

「あぁ、防音室があるなら大丈夫だって、ジョーたちが油断するのが心配なのか」

「そう! 和樹の部屋の防音室でも止まらないレベルになったら、俺も防音室を作らないと駄目になっちまうよ」

別に平気と言えば平気だけど、ふとした時にリカルダをそういう目で見るのは嫌だと主張する新旧コンビは、ある意味成長している気がする。

かつての新旧コンビだったら、むしろ積極的に聞き耳を立てて、無遠慮にリカルダをそういう目でみていたかもしれない。

「なるほどねぇ……俺がここまで対処してるんだから、ちっとは遠慮しろってことね?」

「そう、それ!」

「うーん……でも、現時点でもジョーもリカルダも気は使ってると思うよ」

「それは分かってる。でもよ、気を使っているレベルでも駄目なんだぜ、開き直られたら手の打ちようが無いじゃん」

「別にジョーは開き直ったりしないでしょ」

「そう思うけどな、でも俺らが下手に釘を刺すと逆効果になるんじゃないかと思って、それで綿貫に相談してんだよ」

「なるほど、話は理解できた。理解できたけど、何でもかんでも私の言い方が正しいとは限らないでしょ」

「でも、俺らが迂闊なことを話すよりはマシだろう」

「なんで、そういう所だけ自己評価が低いかなぁ……」

新旧コンビが私を頼りにしているというよりも、自分達の責任を放棄しているようにも感じられる。

「てかさ、私が考えてもジョーに防音室の件を伝えて、穏便に自粛を求めるしかないと思うよ」

「だよなぁ……」

ちょっと前に、そのジョーとリカルダに合コンをお膳立てしてもらったのに、新旧コンビ自ら不用意な発言が原因で上手くいかなかったと聞いている。

それもあってか、新旧コンビは自分の言葉に自信が持てなくなっているようだ。

「もしかして、また合コンをセッティングしてもらおうとか考えてる?」

「いや、それは無い、なっ、達也」

「さすがに無いな」

「とか言って、セッティングしてくれたら行くんじゃないの?」

「そりゃ行くよ、行かいでか! なっ、達也」

「当然だぜ! マンナン〇イフで行くぜ」

古田が何を言いたかったのかは分かったが、それ全然違うからね。

「まぁ、あんまり盛り上がって二階にも聞こえてくるようだと考えものだから、ジョー達に釘を刺す時には援護してあげるよ」

「頼む」

「マジ頼む」

新旧コンビとの話が終わった所で、ジョーが外出から戻って来た。

リカルダは、まだ店が終わらないから、帰って来るのはもう少し遅い時間だ。

「ジョー、新旧コンビが待ちわびてたわよ」

「はぁ? 何やらかしたんだ?」

「おいおい、随分な言い方じゃねぇかよ、くそリア充野郎が!」

「そうだそうだ、やらかしてんのは手前の方だろうが!」

穏便に話を進めるはずが、ジョーの一言が癪に障ったらしく、新旧コンビの目が吊り上がった。

「まぁまぁ、そう最初からエキサイトしないで、とりあえず新田の部屋を見てもらいなよ」

「だな……ちょっと来い、ジョー」

「はぁ……何なんだよ」

ジョーも出先で何かあったのだろうか、普段の冷静さが影を潜めている。

これは、変な対立を生まないと良いが……。

「見ろ」

「ん? 何だこれ?」

「防音室だよ、防音室」

「防音室? 動画配信でもやるつもりか?」

「ちっげぇよ! 騒音対策に決まってんだろう! 毎晩毎晩、盛りやがって!」

「えっ……俺っ?」

「八木のところが落ち着いてるんだ、他にいねぇだろうが!」

夜の騒音を指摘されたところで、ジョーの顔が茹でダコみたいに真っ赤になった。

「わ、悪い……気を付ける……」

「マジで頼むぞ、限度超えたら八木扱いするからな」

「あそこまでは酷くないだろう……」

ジョーの問い掛けに、新旧コンビは無言を貫いた。

「えっ……マジ?」

「頼んだからなっ!」

「なっ!」

今回に限っては、非はジョーの方にあるのだし、リカルダが居ないタイミングで話を切り出したのも良かった。

別に私が手を貸すほどのことでは無かったが、ジョーが新旧コンビに凹まされるという珍しい構図が見れたから良しとしよう。

そう言えば、ここのところ新田が酷く眠たそうにしていたのは、これが原因だったのか。

この晩、ジョーが自粛したからか、防音室の効果があったからなのか分からないが、翌朝新田は晴れ晴れとした表情で起きてきた。