軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見つけた

僕と眷属のみんなとの間には、精神的な繋がりが存在しています。

僕が嬉しい時や悲しい時、眷属のみんなが楽しい時や腹を立てている時、お互いの感情が共有され、お互いを思いやり支えあってきました。

考えていることが顔や態度に出やすい僕は、正しいことから悪いこと、邪なこと、嫌らしいことまで眷属に筒抜けになり、何度も赤面する羽目になりました。

コボルト隊のみんながイタズラ好きなのは、間違いなく僕のせいでしょう。

ある日の昼下がり、ネロと一緒に自宅警備に励んでいると、突然頭の中が歓喜で満たされました。

詳しい理由までは分かりませんでしたが、それは眷属のみんなが喜んでいるサインでした。

「わふぅ! ご主人様、見つけました!」

目を覚ました僕の前に、影の中から飛び出して来たのは、コボルト隊の隊長アルトです。

いつもは冷静沈着なアルトですが、今日は千切れんばかりに尻尾を振っています。

「見つけたの?」

「はい、こちらです!」

アルトが僕に差し出したのは、二つの石です。

一つは木の箱に入っていて、もう一つはそのまま剥き出しの状態ですが、どちらも緑がかった同じような石に見えます。

「おぉ、そっくり!」

「わふっ、きっと同じ石です」

「どこで見つけたの?」

「南大陸の崩れた崖にありました」

「おぉ、凄い、凄い、よく見つけたねぇ」

「わふっ、わふっ!」

わしゃわしゃと撫でてあげると、アルトは千切れんばかりに尻尾を振って興奮状態です。

「よし、測ってみよう」

「わふっ!」

僕が影の空間から取り出したのは、樹脂製の耐衝撃性のトランクです。

トランクを開けて取り出したのは、ピストル型の非接触温度計をゴツくしたような測定器です。

これは、小惑星が地球に衝突しそうになった時、ISSの乗組員を送迎した報酬を貰った後、有り余る資金を使って買った、ハンドヘルト蛍光X線測定計です。

正直なところ、詳細な使い方とか全部把握している訳ではありませんが、これを使えば鉱物の成分分析が可能です。

バッテリーを確認して、まずは木箱に入っている石を測定します。

これは、鉱物標本として購入した石で、これに含まれている成分が目的です。

続いて、アルトが持って来た石を測定して、結果を見比べると、目的の成分はこちらの方が含有量が高いようです。

「アルト、ばっちりだよ!」

「わっふぅぅぅぅぅ! わぅわぅわぅぅぅぅぅ!」

アルトが歓喜の遠吠えを始めると、マルトやミルト、メルト、その他居合わせたコボルト隊に、ゼータたちまでが一緒に遠吠えを始めました。

『何事ですか、ケント様』

騒ぎを聞きつけてラインハルトたちも姿を見せましたが、僕の眷属ですから悪い出来事ではないのは分かっているようです。

「アルトたちに探してもらっていた鉱石が見つかったんだ」

『おぉ、確かコボルトに関係がある希少な鉱石でしたか?』

「そうそう、なかなか良いものが見つかったみたい」

アルトが見つけてきた鉱石に含まれている成分は、コボルトならぬコバルトで、同じ鉱石には高い割合で銅も含まれています。

小惑星の衝突騒ぎの後、日本政府との交渉は途絶えている状態ですが、その間に僕の方でも何か有利になる状況が作れないかと準備していた試みの一つです。

鉱物資源の少ない日本は、多くを輸入に頼っています。

中でもコバルトは世界の産出量の七割以上をコンゴ共和国が担っていて、近年は中国資本が進出しているそうです。

コバルトは、耐熱性、耐摩耗性、耐食性などを高めるための合金材料や、リチウムイオン電池の電極の材料としても使われ、世界的に需要が高まっていると聞いています。

コバルトの語源がコボルトであるという説もあるそうで、それならコボルト隊が見つけられるのではないか……なんて半分冗談の気持ちで始めたのですが、瓢箪から駒が出たようです。

「アルト、この石はいっぱいあった?」

「わふぅ、いっぱい転がってる」

「よし、どのぐらいの範囲にあるのか調べに行こうか」

「わぅ、ご主人様、石はいっぱい転がっているけど、魔物もいっぱいいるよ」

「あぁ、南の大陸だもんね」

「わふっ、気を付けないと危ないかも」

アルトが石を見つけたのは、南の大陸の中心部よりも南に行った山の斜面で、近くには森が広がっていて多くの魔物が生息しているようです。

「そっか、危ない魔物がいっぱいいるかぁ……」

『ケント様、片付けますか?』

ラインハルトは今すぐにでも飛び出していきそうですけど、討伐する予定はありません。

「いやいや、やらないよ。調査だけなら影の空間からでも出来るからね」

『そうですか、それは残念ですな』

コバルト鉱石の埋蔵範囲は調査するつもりですが、実際に採掘作業を行う予定もありません。

まぁ、鉱石を掘り出すだけなら、送還術を使えば出来ちゃいますけど、こちらの世界では今すぐ利用できる物ではありませんからね。

アルトに案内してもらって、南の大陸の石を見つけた場所へ行ってみると、剥き出しの地層にコバルト鉱石らしき層が見えていました。

「おぉ、これは……相当続いていそうだねぇ」

途中、地殻変動によって断裂が起きている場所もありますが、その先にまでコバルト鉱石の層は続いているようです。

少なくとも、見える範囲では層が続いています。

これは、見る人が見れば大興奮ものじゃないですかね。

「よし、撮影しよう」

影の空間から移動しながら地層を辿る動画を撮影し、地層の横に僕が立って大きさを比較する場面も入れました。

「どうせなら、ここで測定した動画も作るか」

地層に直接分析計をあてて、表示される計測結果の画面も撮影しておきました。

「てか、こっちは更に含有量高いじゃん。ちょっとヤバいかも」

『それで、石の純度が分かるのですか?』

「そうみたい、ぼくも詳しい仕組みまでは分からないけど、見本に買った鉱石は商業化可能レベルの含有量だって聞いているから、ここは良質の鉱石が取れるんじゃないかな」

『確か、ニホンでは産出されない鉱石なんですよね』

「いや、海底深くからは取れるみたいだから、交渉材料になるかは微妙だね」

でも、露天掘りが出来る条件と、深海からの採掘では相当コストが違いそうですよね。

ていうか、ここなら僕が魔法を使ってちょちょいと採掘できちゃうから、採掘コストは激安ですけどね。

『ケント様、この鉱石を条件にして例の報酬を引き出すおつもりですか?』

「うーん……それは分からないけど、交渉の材料は多い方が良いよね」

『確かに、おっしゃる通りですな。交渉を進める上では、武器が多い方が有利です』

「まぁ、どんな反応があるか、ちょっと梶川さんにメールしてみるよ」

ずっと放置しておいて、こんなメールを送りつけられたら、また梶川さん胃が痛い日が続いちゃいますかね。