軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一件落着?

クラウスさんと一緒に、元冒険者のDV親父を成敗しに行った帰り道、二十年前に起こったロックオーガによる襲撃事件の様子を聞きました。

以前に一度、僕が城壁工事に初めて参加した時にも聞いたのですが、あの時は大きな被害が出たとしか聞かなかったので、そんなに悲惨な状況が起きていたとは知りませんでした。

「お前がヴォルザードに来て少し経った頃、ロックオーガの群れが襲ってきた事があったよな?」

「はい、ラインハルト達が撃退した奴ですよね」

「あの後、二十年前にケントが居てくれたら……なんて何度思ったことか」

「すみません、まだ僕は生まれてもいませんよ」

「分かってる。それでも、兄貴が生きていたら、ヴォルザードはもっと良い街になってたんじゃないかって思うことがあるんだよ」

「そんな、クラウスさんは立派に領主の勤めを果たしていますよ。普段はチャランポランに見えますけど……痛っ」

つい本音を漏らしてしまったら、頭を平手で叩かれました。

「褒めるか貶すか、はっきりしろ」

「じゃあ貶す方向で……痛っ!」

「そこは褒めておけよ。今の俺からは想像できないだろうが、五年ぐらいは必死に領主やってたんだぞ」

「今だって、締めるところは、ちゃんと締めてるじゃないですか」

「そのつもりだがな、エディラみたいに虐げられている女がいるようじゃ領主失格だ」

クラウスさんの話によれば、エディラさんは二十年前の襲撃でオーガに殺されたリベリオの仲間の恋人だったそうです。

「自分のヘマでエグモントが死んで、その責任を取るためにリベリオは、何度も頭を下げにエディラの所に行ったそうだ」

「でも、リベリオのヘマで恋人が死んだんじゃ、エディラさんは恨んだんじゃないんですか?」

「最初は泣き喚きながら、平手で滅多打ちにしたらしいぞ」

「それが、どうして結婚することになったんですか?」

「さぁな、詳しい話は俺も聞いていないが、結婚当時はデレデレのカップルだったから、こいつらなら大丈夫だと思ってたんだよ」

結婚式にはクラウスさんも参加して、二人の門出を祝ったそうです。

「だから、ケントに映像を見せられた時には、正直にいって信じられないという思いの方が強かった。だが、映像は嘘はつかないんだから、起こっていることは現実だと分かって、今度は怒りが込み上げてきて抑えきれなかった」

二十年前の悲劇と、それを乗り越えてゴールインした二人だからこそ、クラウスさんは腹が立ったのかもしれません。

「でも、リベリオみたいなケースは他にも起こっているんじゃないですか?」

「だろうな、ちょっと前までギリクの野郎も甘ったれた生活してたみたいだしな」

そう言えば、ギリクの恋人であるヴェリンダが流産した後、立ち直りの兆しが見られた……なんて話を小耳に挟みましたが、どこまで本気なのか分かりません。

「本来、冒険者なんてものは、死ぬも生きるも自分次第、腕の一本、足の一本無くそうが、残りの人生をどう生きるかなんか俺らが世話を焼く必要は無いんだが……考えないと駄目だろうな」

「僕の眷属たちが魔の森の状況をコントロールしてますが、それでも例年よりも死傷者の数が増えているって聞きました」

「あぁ、ケントに憧れて、背伸びしすぎた馬鹿野郎どもだな」

「若くして体にハンディキャップを抱えた人達には、何らかの公的支援が必要じゃないですか」

「そうだな、リベリオみたいに嫁に依存し、虐げてる奴らの根性は叩き直さないとだな」

「二十年前は、どうだったんですか?」

「街の防衛にあたっていて怪我をしたり、命を落とした冒険者には見舞金を出したが、その後の生活がどうなっているかまで面倒みてられなかったな」

襲撃からの復興も進めなきゃいけないし、本来の領主としての仕事も分からない事ばかりで、悪戦苦闘の毎日だったそうですから、そこまでの余裕は無かったのでしょう。

「手足を失った冒険者が……いや、冒険者だけでなく、街で働く連中で体が不自由になった者を支援する仕組みを作る。作るが、そんなにすぐには作れやしない。とりあえず、エディラと娘については俺が様子を見る」

「じゃあ、僕の出る幕は無さそうですね」

「まぁな、Sランクに指名依頼なんて出したら、リーチェにいくら吹っ掛けられるか分かったもんじゃないからな」

クラウスさんは、ニヤっと笑ってみせますが、何か忘れちゃいませんかね。

「そうですね……コボルト隊の貸し出しは、頑張って値切ってください」

「ちょ、ちょっと待て、あれも金取るのか?」

「まぁ、僕はサービスしても良いんですけど、ちゃんと対価は取らないと駄目だとクラウスさんからも教わりましたから」

「ちっ、余計な事ばかり覚えてやがって」

「そう言えば、マリアンヌさんとの馴れ初めを聞いてないんですけど……」

「んなもん、誰が話すか」

「教えてくれたら、リーチェにはコボルトの件は黙ってますけど……」

「こいつ……上等だよ、値切ってやろうじゃねぇか!」

「毎度ありがとうございまーす!」

愛娘との対戦成績は惨憺たるものなのに、それでも男として戦わなきゃいけないんですかね。

とりあえず、慌ただしくはありましたが、マルグレットと父親の件は、これにて一件落着と考えて良さそうです。

ギルドに戻って、クラウスさんがベアトリーチェに惨敗するようすを見物させてもらった後、我が家へと引き上げました。

この件についてはすっかり頭の中から抜け落ちていたのですが、それから三日後、我が家を訪ねて来た人物が居ました。

「わぅ、ご主人様、モテないコンビが来てるよ」

リビングでくつろいでいると、ひょっこり顔を出したマルトが新旧コンビの来訪を知らせてくれました。

「ありがとう、一階の応接室で会うよ」

「わふぅ、案内するね」

一階の応接室に移動して待っていると、乱暴にドアを開けて二人が勢いよく入ってきました。

「裏切りやがったな、国分!」

「嫁が五人もいるのに総取りとか、どんだけ鬼畜なんだよ!」

「はぁ? 何の話?」

「とぼけるな!」

「マルグレットちゃんのことに決まってんだろう!」

血涙でも流しそうな二人の様子を見て、ようやく合コンの件を思い出しました。

「てか、合コンの後、一度も会ってないけど」

「嘘をつくな! 元冒険者の親父をとっちめて、解決したんだろう?」

「昨日会った時、マルグレットちゃんも、アイナちゃんも、ヤンヌちゃんも、お前の話しかしねぇじゃねぇか!」

てか、ちゃっかり再会してるなら、僕の責任とか関係無くない?

「えー……解決したのは僕じゃなくてクラウスさんだよ」

「そのクラウスさんを動かしたのは、お前だろうが!」

「それは誤解だよ、達也。あれは状況を見せたら、クラウスさんが勝手に動いたんだよ」

フレッドが隠し撮りしたDVの様子を見せたら、クラウスさんが血相を変えて飛び出していった所から、どういう経緯で解決したのか細かく説明しました。

「そんじゃあ、マルグレットちゃんの親父もお袋さんもクラウスさんと顔見知りだったのか?」

「そうみたいだよ。僕は家まで案内して、タブレットで隠し撮りの映像を再生したのと、コボルト隊を使って引っ越しの荷物を運んだ程度で、マルグレットには会ってないからね」

どうやら、マルグレットはエディラさんから僕がクラウスさんに知らせた……みたいな話を聞かされたようで、間違いではないけど誤解しているようです。

「てかさ、リベリオとエディラさんの件は片付いたけど、まだ守備隊の宿舎で仮住まいだし、シェアハウスの話で盛り上げれば良かったのに」

「そうか、その手があったか!」

「失敗した……」

「って、達也も、和樹も、どんな話題を振ったの?」

「い、いや別に……普通だよな、和樹」

「そ、そうそう、普通だよ、普通……なっ、達也」

明らかに新旧コンビの目が泳いでいます。

「僕の悪口でも言ったんじゃないの?」

「そ、そ、そんな事は無いぞ、なぁ和樹」

「そ、そ、そうだよ、達也の言う通りだよ」

あぁ、これは間違いなく僕を貶めるような発言をしたんでしょうね。

「まぁ、いいよ。無理に聞こうとも思わないから」

「お、おぅ、そうか」

「詳しく聞かなくても、二人が致命的な失敗をやらかした事だけは分かるからさ」

「ぐふぅ……そ、そんな事は……」

「うぐぅ……そうだ、まだ可能性は残されているはずだ」

新旧コンビは、胸に手を当てて俯きました。

てか、本当に何をやらかしたんだ?