作品タイトル不明
合コン(前編)
「ほ、ほら、僕は客寄せパンダみたいなものでさ、リカルダが女の子を誘う口実に使われるだけだよ」
「ホントにぃ? 可愛い女の子がいたら、仲良くなっちゃおうとか思ってるんじゃないの?」
「い、嫌だなぁ、そ、そ、そんな事を考える訳ないじゃん。こんなに可愛いお嫁さんが五人もいるのに、浮気なんてしないよ」
「ホントかなぁ……はぁ、まあいいわ、でも今回だけだからね」
新旧コンビの間に溝ができたとジョーに愚痴られて、結局合コンという手段で解決することで落ちついたのですが、僕の所にも参加要請が来ました。
リカルダが、他の女の子の視線がジョーに向くのが嫌なんだそうで、それならもっと目が向きやすい僕を連れて行けば良いという話になったらしいのです。
嫁が五人もいる僕は、参加すること自体おかしいと思うのですが、ジョーに頼まれると断りづらいんですよねぇ。
ていうか、合コンなるものに興味が無いと言えば嘘になります。
まぁ、実際に浮気するつもりなんて毛頭無いんですけど、なんて言うか、女の子とキャッキャウフフな時間を過ごしてみたいと思うじゃないですか、一人の男としては。
という訳で、渋々という感じを装いつつ、お嫁さんたちには事前に参加の許可をもらいました。
ちなみに着ていく服も、変に気合いが入っているとか思われると困るので、唯香たちに相談しましたよ。
ていうか、改めて服を選んでもらうと、普段の僕の格好がダサいと気付かされてしまいますね。
「うん、健人は普段から着るものに、もうちょっと気を使った方がいいよ」
「はい、気を付けます……」
待ち合わせの時間に遅れないように、ジョーたちが暮らすシェアハウスを訪れると、めかしこんだ新旧コンビの姿がありました。
「へぇ、馬子にも衣装?」
「うっさいな、ちゃんとした格好をすれば俺たちだって見れるようになるんだよ、なぁ和樹」
「その通りだ、達也……てか、なんで国分までオシャレしてやがるんだよ!」
「えー……いくら客寄せパンダといっても、あんまりみすぼらしい格好はできないでしょ。だって僕は、史上最年少のSランク冒険者だしぃ」
左腕を体に巻き付けながら体を逸らし、大きく開いた右の手の平で顔を覆う、中二病全開のポーズを決めると、新田が食って掛かってきました。
「手前ぇ、まさか自分の役目を放棄して、総取りする気じゃねぇだろうな!」
「五人も嫁がいるんだから自重しろよな!」
「はぁ……本気を出す訳ないだろう。浮気なんてしようものなら、家に居場所が無くなっちゃうよ」
参加するために事前に許可をもらい、疑われないように服も選んでもらったのだと溜息まじりに話すと、ようやく新旧コンビも納得したようです。
「てかよ、国分。浅川さんって、そんなヤンデレ体質なのか?」
「失礼だな、和樹は……ちょっとだけだよ」
「お、おぅ、大変だな」
「大変ではないよ。一緒に寝る日は、なかなか寝させてくれないけど……」
「やっぱり、お前は帰れ!」
「そうだそうだ、ハーレム野郎は巣に帰れ!」
「はっはっはっ、嫌だなぁ、僕のどこがハーレム野郎だっていうんだい?」
「ぐぎぎぎ……達也、こいつ殺っちまっていいか?」
「耐えろ、和樹。大事の前の小事だ」
次々と中二病なポーズを披露して新旧コンビをからかっていると、支度を終えたジョーが降りてきました。
「遊んでないで、そろそろ出掛けるぞ」
「よーし、行くぞ、達也」
「おうよ、気合い入れろよ、和樹」
新旧コンビの服は、相良さんにコーディネートしてもらったそうです。
気合い入れろというよりも、空回りしないように気を付けた方が良い気がするけど、まぁ言っても難しいでしょうね。
ジョーたちと一緒に待ち合わせの場所へと向かうと、そこにはリカルダと三人の女の子が待っていました。
二人はリカルダを挟んで、こちらの様子を窺っていますが、もう一人の女の子は退屈そうな表情を浮かべています。
「すまない、待たせちゃったか?」
「ううん、ちょっと早く待ち合わせてたから……」
声を掛けながら歩み寄ったジョーに、リカルダがすっと体を寄せる仕草だけで、二人の親密さが伝わってきます。
「あっ、紹介しますね。こっちから、アイナ、ヤンヌ、マルグレットです」
「俺はジョー、こっちから達也、和樹、健人だ」
アイナは、茶色い髪を肩まで伸ばし、ちょい垂れ目のおっとりした感じの女の子だ。
ヤンヌは、薄緑色の髪のスレンダーな体形、僕らの中で一番背が高い和樹と同じぐらいの長身だ。
マルグレットは、ワインレッドの髪をショートボブに切り揃え、三人の中では一番スタイルが良いのだが、釣り目で勝気そうな印象がある。
「とりあえず、店に移動しよう」
ジョーに促されて移動を始めると、僕はアイナとヤンヌに挟まれ、新旧コンビがマルグレットを挟む形になりました。
うん、予想はしていたけど、それじゃあ進展する確率は低いんじゃないかい。
「ケントさんは、Sランクの冒険者なんですよね?」
「今まで、どんな依頼をなさってきたんですか?」
「えーっと……ごめんね。色々と守秘義務があって、依頼の内容は話せないことが多いんだ」
「あたし、サラマンダーを討伐した時の話が聞きたいです」
「あと、でっかいサソリの話も聞きたいです」
「えっと……お店に着いてからね」
新旧コンビの様子が気になるのですが、両側を固められてしまっているので振り返ることすら困難です。
ジョーたちが予約しておいてくれた店では、片側四人の八人が座れるテーブル席に案内されました。
「じゃあ、適当に座って……」
「待った、待った、ジョー、とりあえず男女で分かれて向かい合わせに座ろう」
このままの流れで座ると、ボクがアイナとヤンヌを独占する形になりそうです。
女子がリカルダ、アイナ、ヤンヌ、マルグレットの順で座った後、こちらは僕とジョーが端に座り、中央に新旧コンビという並びにしたのですが、席に着く前に達也が耳打ちしてきました。
「国分、お前までマルグレットちゃんを狙ってるんじゃないだろうな?」
「はぁ……もう今日の目的を忘れちゃったの? 綿貫さんから、何を言われたか思い出しなよ」
「うっ、そうだった、次の約束を取り付けるんだな」
「和樹にも念押ししておきなよ」
「分かった」
といった感じで、バタバタしながらも合コンがスタートいたしました。
料理が運ばれてきて、飲み物はリーブル酒です。
「では、今日の出会いを祝して……乾杯!」
ジョーの音頭で乾杯した後、ぐいっとリーブル酒を喉へと流し込みました。
うーん……これこれ、この芳醇な味わいがたまりませんよね。
飲み食いを始めてしまえば、アイナとヤンヌは新旧コンビとも会話を楽しみ始めました。
「じゃあ、お二人はリカルダの彼氏さんと同じパーティーなんですね?」
「そうそう、俺とジョーと和樹と、もう一人シューイチって奴と四人で組んでる」
「ケントさんは同じパーティーじゃないんですか?」
「あぁ、国分は俺らとはレベルが違い過ぎるからな」
「どんな風に違うんですか?」
「国分が『魔物使い』って呼ばれてるのは知ってる?」
「知ってます、知ってます」
「強力な眷属が居るから、一人でも俺らよりも規模の大きな仕事を請け負えるし、一緒に仕事しようにも、俺らは必要なくなっちまうんだよなぁ……」
まぁ正直な話、戦力としてはコボルト隊の方が強力ですし、経験としてはラインハルトたちの方が豊富ですからね。
一緒に仕事すると、ジョーや新旧コンビの出番が無くなっちゃうのは確かです。
自分たちの話をしたり、アイナたちの話を聞いたり、新旧コンビも徐々に打ち解けて話ができるようになってきたのですが、マルグレットだけが退屈そうに黙って酒を飲んでいます。
「マルグレット、冒険者の話は退屈?」
思い切って話し掛けてみると、マルグレットはジロっと睨み付けるような視線を向けてきました。
「あぁ、別に気ぃ使わなくていいから、あたしは数合わせだし……冒険者嫌いだから」
そう言うと、マルグレットは視線を逸らしてカップの酒を呷りました。