軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対立(後編)

「嫌だね、俺達はダンジョンに行くんだ、なぁ、達也」

「おうよ、和樹。だいたい、酔っぱらった状態でくる話じゃねぇだろう」

ジョーとの話がまとまった後、二人でシェアハウスに向かうと、新旧コンビは出掛けていなかったので話を進めようとしたのですが、確かに酔っぱらっていたのは良くなかったかもしれませんね。

「それじゃあ、二人は別の商会の護衛をするのは嫌なんだね」

「だから、そう言ってんだろ、なぁ和樹」

「あぁ、やりたくねぇな」

「そっか、ジョーがリカルダの友達を誘って合コンを企画するって言ってるんだけど……」

「話を聞こうじゃないか、なぁ達也」

「国分がそこまで頼むなら、聞かない訳にはいかないな」

見事なまでの手の平返しを披露してくれた新旧コンビに、僕もジョーも呆れるばかりです。

「いやぁ……別に僕は二人がダンジョンに行きたいと言うなら、無理に止める必要は無いと……」

「いやいや、ダンジョン? それは何の話だい?」

「そうそう、俺も和樹も護衛大好き、護衛のために生まれてきたような男だぜ」

「そうなんだ……だってさ、ジョー」

「はぁ、悩んでいたのが馬鹿みたいだ……」

僕を飲みに誘った時のジョーは、いかにも切羽詰まった感じでしたからねぇ。

まぁ、視野狭窄に陥っていたのも確かなのでしょう。

一応、これで一件落着なのでしょうが、問題の合コンが上手くいかなかった場合には、新たな問題が発生しそうな気がします。

「ねぇ、ちょっと聞いておきたいんだけど、仮に合コンが上手くいかなかった場合、二人はどうする?」

「国分、例え仮の話だとしても、そんな縁起の悪い話をしないでくれよ。なぁ、和樹」

「達也の言う通りだ。俺達には常に希望が必要なんだ」

「でもさ、二人とも駄目な場合もあるし、もしかしたら一人しか上手くいかないかも……」

「うぎゃぁぁぁぁぁ! 聞きたくない、聞きたくない、聞きたくなーい!」

「お前は悪魔なのか、国分。俺は心臓が止まるかと思ったぞ、なぁ達也」

「でも、覚悟は決めておいた方が……」

「嫌だぁぁぁぁ! 聞きたくない、聞きたくない、聞きたくなーい!」

シェアハウスのリビングで、新旧コンビは揃って耳を塞いで頭を抱えました。

「何を面白そうなことをやってんだ?」

「あっ、綿貫さん、おかえり、お疲れ様」

「おぅ、国分もジョーも昼間からご機嫌みたいだな」

「いや、ご機嫌というか……」

アマンダさんの店の仕事を終えて帰宅した綿貫さんに、これまでの事情を話すとお腹を抱えて笑い転げました。

「笑い事じゃねぇんだぞ、なぁ達也」

「当たり前だ、真剣そのものだよな、和樹」

「悪い悪い、まぁ頑張ってくれよ。あたしは未来にオッパイあげないといけないから……覗きに来るんじゃないよ」

「の、覗いたりなんかしねぇよ、なぁ和樹」

「あ、当たり前じゃんか、なぁ達也」

まぁ、いくら新旧コンビでも、そこまではしない……と思いたいけど、二人の目が泳ぎがちなのが気になりますね。

まさか、シーリアさんの授乳シーンを覗き見して……それは鷹山がいる限り大丈夫か。

「でもさ、真面目な話、合コンの対策はしておかないと駄目でしょ」

「対策って言われても、何すりゃ良いんだよ」

「それが出来たら苦労しねぇよな」

まぁ、確かに新旧コンビの言う通り、合コン対策が出来るようなら、娼館通いもしていなかったでしょうし、今の状況にも陥っていなかったでしょう。

「で、どうするの? ジョー」

「お、俺に聞くなよ」

「そうだね、ジョーは食われちゃうタイプだもんね」

「おいっ、言い方!」

ジョーはマールブルグの女冒険者に童貞を奪われてしまったみたいだし、リカルダと付き合う切っ掛けも受け身だったと聞いています。

仕事は役に立つけれど、合コン対策については当てになりそうもないですね。

「国分、ここは綿貫に頭を下げるしかないだろう」

「うん、ジョーの言う通りだね」

「えぇぇぇ……綿貫ぃ?」

「綿貫はなぁ……」

僕としては最良のアドバイザーだと思うのですが、新旧コンビの二人は気が進まない様子です。

「綿貫さんじゃ駄目なの?」

「駄目……ではないけど、なぁ、和樹」

「そうだな、駄目ではないけどなぁ……」

駄目ではないけど乗り気でないのは、きっと綿貫さんの駄目出しが手厳しいからでしょう。

とは言え、他に頼れる人材も居ないので、さっさと駄目出ししてもらいましょう。

「おっ、どうしたんだい、静かじゃん」

オッパイを飲み終えた娘の未来ちゃんを抱えて綿貫さんがリビングに戻ってきました。

「おぉ、随分しっかりしてきたんじゃない?」

「まぁね、今のところ病気もしないで元気でいてくれているから助かってるよ」

「それでさ、綿貫さん、合コン対策として新旧コンビに駄目出ししてあげてよ」

「まずは身だしなみだろう。一時期良くなったかと思ってたけど、また小汚くなってきてるじゃん」

「そ、そんな事は……あるか」

「そこは認めようぜ、達也」

確かに、ジョーの真似をしだした頃には、身綺麗になった印象でしたが、目の前にいる新旧コンビは少々清潔感に欠けています。

「髪はボッサボサだし、不精ヒゲも伸びてるし、モテたいなら努力しないと駄目じゃね?」

「ぐふぅ……だってよ、和樹」

「お前もだよ、達也」

髪を梳かす、ヒゲを剃る、眉を整える、爪を綺麗に切る、ちゃんとした服を着る。

綿貫さんからの指摘は、どれも基本的なものばかりです。

「綿貫、身綺麗にするのは分かったから、その先を頼む」

「その先ねぇ……でも、新田と古田にガツガツするなって言っても無理じゃないの?」

「そ、そんな事はないよな、和樹」

「そ、そうだぜ、俺達は紳士だからな」

かつてギルドの受付嬢フルールさんに、オッパイ揉ませてくださいと土下座した二人が、どの口で紳士などとぬかすのかと突っ込んでやりたいですね。

「てか、合コンだったら期待するのが当たり前だろう」

「そうだぜ、参加するって事は、あっちだってその気なんんだろう?」

「新田さぁ、合コンに来る女の子だったら、どんな女の子だってオッケーって訳じゃないんでしょ?」

「そりゃあ、俺にだって好みってものは……あぁ、そうか」

「そうだよ。新田にだって選ぶ権利はあるけど、向こうにだって選ぶ権利はあるんだよ」

「そう言われても、どうすりゃいいんだよ」

新田はガシガシと頭を掻きむしり、本当にお手上げといった様子です。

「そんじゃあ、どうすれば良いか教えてあげようか?」

「マ、マジで?」

「マジマジ」

「どうすりゃいいんだ?」

今にも食いつきそうな勢いの新旧コンビに対して、綿貫さんはまぁまぁ落ち着けとジェスチャーしてみせました。

「とりあえず、断られちゃったらアウトだろう? だから、また一緒に食事に行く約束を取り付けてきなよ」

「次の約束か……どう思うよ、和樹」

「でも、それって進展するのか?」

「何を言ってるのさ、次の約束を取り付けただけでも一歩前進じゃん。友達にならなかったら、彼女になんかならないよ。いきなり結婚出来るなんて思ってないだろうね?」

「俺達だって、そこまで馬鹿じゃねぇよ」

「でも、一歩前進ていうのは確かだな」

「次の約束が出来たら、また次の約束、そのまた次の約束って感じで会う機会を増やしていけば、相手の良いところも悪いところも見えてくるんじゃない?」

「なるほどなぁ……」

綿貫さんが上手いと思うのは、選ばれる事だけにフォーカスすると新旧コンビのやる気が失せるので、こちらも選ぶのだから相手が選り好みするのは当然だと思わせたところでしょう。

新旧コンビも、次の約束を取り付ける事に専念するようで、ちょっとは成功の目が出てきたんじゃないですかね。