軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対立(中編)

ジョーの話を聞くと、危険性を考えて、嫁と子供のいる鷹山はダンジョン行きに反対しているようです。

鷹山曰く、周囲を囲まれていない場所ならば、魔力ゴリ押しの戦術で殆どの危機からは脱出する自信があるそうですが、閉鎖空間では話が違ってきます。

ダンジョンのような閉鎖空間で鷹山が火の魔術を連発すれば、かえって酸欠状態に陥る可能性が高まってしまいます。

魔術属性とダンジョンの相性、それに家族がいる事を考えれば、鷹山の決断は当然でしょう。

「てか、冗談だって俺は分かっているけど、仮に鷹山が死んでもシーリアさんは美人だからすぐに貰い手が見つかるとか、リリサは俺が育てて嫁にするとか、新旧コンビが余計な事を言うから態度を硬化させてるんだよ」

「はぁ……それは二人が悪いね。でも、その話ぶりだと、ジョーは鷹山ほど反対している訳ではないのかな?」

「まぁ、ダンジョンに行きたい気持ちは分からなくもないからな、ただ……」

そこまで言って、ジョーは続きを話すべきか迷っているように見えました。

これは、あれでしょうね。

「リカルダと一緒になる決心をしたんだ」

「うっ……ま、まぁな」

既にリカルダの両親とも会って、結婚の許しを得たそうです。

ジョーの両親からも許可を得ているそうで、一緒に暮らし始める時期を検討しているそうです。

「流れから、俺とリカルダの事も話題に上って、今度は新旧コンビが態度を硬化させちまったんだ」

「でも、新旧コンビって金銭的に裕福だって話が知れたんじゃないの?」

「あー……その件については、ドノバンさんがブチ切れたらしくて、受付嬢の側からアプローチしたり、情報を洩らしたりするのは厳禁になったみたいだ」

つまり、新旧コンビが金持ちという話は受付嬢以外には伝わっていないようで、一般女性からの評価は変わっていないそうです。

「まぁ、金目当てで迫ってくる女の恐ろしさは理解したようで、達也も和樹も警戒しているみたいだ。それと、金の使い道に困ってるみたいだな」

「あぁ、日本みたいな娯楽は無いもんね」

日本に暮らしているのなら、お金を浪費するつもりならば、使い道なんていくらでもあります。

ブランド品の服や靴、時計、高級な飲食店、スポーツや芸能のプラチナチケット、豪華な旅行、免許を取って車やバイクなど、使い道に困ることなんて無いでしょう。

ですが、ヴォルザードでは、服を買うにも限度がありますし、飲食についても同様です。

時計やバッグのブランドもありませんし、宝飾品をジャラジャラなんていうのも恰好良いとは思えません。

「結局、行きつく先は娼館みたいで、娼館には行きたいが、行けば素人女性から白い目で見られるから行きづらい。他に楽しみが無いなら、ダンジョンぐらい行かせろ……みたいな感じらしい」

「なるほど……稼ぎたいというよりも、娯楽としてダンジョンに潜りたいのか」

「気持ちは分からないでもないんだ。でもよ、娯楽って考えているんじゃ、余計に危険な気がするんだよなぁ……」

ダンジョンでの活動を生業とするならば、生きて帰る事に真剣になるけど、娯楽だとスリルを追求しそうで、ジョーとしては賛成しづらいようです。

「仮に俺が賛成に回っても、鷹山は絶対に参加しないと思う。となると、三人だけでやっていけるのか不安が残るんだよなぁ……」

「そっか……でも、ダンジョンについては僕も良く知らないからなぁ……」

正直、僕の力を使えばダンジョンの深層にだって行って来られるはずですが、闇属性魔法とダンジョンの相性がチートすぎて、潜る気にならないんですよね。

本気出せば、お宝を根こそぎゲットできちゃうと思うんで、それは命懸けでダンジョンアタックしている冒険者に対して失礼な気がするんです。

「なるほどなぁ……ヴォルザードや魔の森関連の状況を大きく変えただけでなく、ダンジョンまで独り占めみたいな感じだと、さすがに反感買い過ぎるか」

「うん、そういう事。てかさ、魔の森の街道を安全にして、野営地まで設営したのに、僕への評価が低すぎる気がするんだよねぇ……」

「それこそ、娼館にでも行けば実感出来るんじゃねぇの?」

「僕が行けると本気で思ってる?」

「まぁ、無理だな」

正直に言うと、娼館のサービスについて興味が無い訳ではありません。

ていうか、興味だったらメチャメチャありますけど、行ったらどうなるか考えただけで背筋が凍りそうです。

「それじゃあ、オーランド商店の仕事はどうするの?」

「達也と和樹が承諾しないなら受けられないよ」

デルリッツさんからは次の護衛を打診されたそうですが、事情を話して断ったそうです。

「一応、二人がやる気になったら知らせてくれって言われたけど、最悪切られるんじゃねぇかと思ってる……って、それは無いのか」

「うーん……でも、切るようなポーズで危機感を煽って来るぐらいの事はやってくるかもね」

「あぁ、デルリッツさんならやりかねないな」

デルリッツさんとの交渉を想像してか、ジョーは渋い表情を浮かべています。

「ジョー、たまにはオーランド商店以外の仕事も受けてみたら?」

「えっ、どうして?」

「オーランド商店の仕事は慣れているからやり易いと思うけど、考え方によっては応用が利かなくなるんじゃない?」

「応用か……そう言われると、そうかもしれないな」

ジョーの話によれば、オーランド商店の依頼では、馬車を動かす御者も毎回同じで、ルートも行程もパターン化されているそうです。

オーランド商店としては、決まったパターンで運用した方が楽なのでしょうが、新旧コンビにとっては変化が無くて退屈に感じるのでしょう。

「そうか、違う商会の護衛仕事ならば、当然御者も変わるし、勝手も違ってくるな」

「新旧コンビも退屈しなくて済むし、護衛の仕事なら鷹山も納得するんじゃない?」

「確かに、うん、いいかもしれないな」

「あの二人が、どうしてもダンジョンじゃなきゃ嫌だって言うなら、また考えなきゃいけないだろうけど、まずは別の道を探してみたら?」

「そうだな、鷹山をソロにする訳にもいかないしな」

飲み始めた時には、どこまでジョーが暴走するのか心配でしたが、いつものペースに戻ったようなので大丈夫でしょう。

「てかさ、リカルダに頼んで合コンやれば一発で解決するんじゃないの?」

「まぁ、そうなんだろうけど……リカルダが嫌みたいでさ……」

「えぇぇ……新旧コンビの娼館通いは、そこまで毛嫌いされてるのか」

「いや、そうじゃないんだ」

「えっ、娼館通いが問題じゃないの?」

「うん、まぁ……」

「あの二人、他にも何かやらかしてるの?」

「いや、二人が問題じゃなくて……」

なんだかジョーが、何時になく歯切れが悪いですね。

「ジョー、何か隠してる?」

「いや、隠すってほどじゃないんだけど……」

「こうやって相談に乗ってるんだから、隠し事は無しにしようよ」

「あぁ、隠し事ってほどの話じゃないんだけど……紹介したら友達が俺に惚れてしまうから、リカルダが紹介したくないらしい……」

「うわっ、甘っ! 激甘っ! 口の中、砂糖でジャリジャリする!」

「だから言いたくなかったんだよ」

「なに、惚気? そんなに惚気たいの?」

「うっさいな、五人も嫁がいる奴に言われたくないよ」

「はぁ……そりゃあ、新旧コンビがダンジョンに行きたがるのも分かるよ」

ジョーが真っ赤になっているのは、酒の酔いのせいだけではないでしょう。

「てかさ、そんな激甘な話をされてもジョーに手を出そうなんて考える女の子がいるなら、逆に見てみたいよ」

「俺は、リカルダがいれば十分だから興味ないな」

「うわっ、甘っ! 口の中、ハチミツでベタベタする!」

「言ってろ……」

普段は冷静沈着なジョーが、耳を赤くして照れてる姿は貴重ですね。

もう少しイジってやりたい所ですが、新旧コンビとの対立に悪影響が出たりしたら困るので、この辺にしておきましょう。