軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ブライヒベルグ訪問

ギガースの本体をヴォルザードのギルドに納めた翌日、ブライヒベルグのギルドを訪れました。

こちらにはギガースの魔石をオークションに出品する予定なので、事前の打ち合わせをするためです。

これまでは、ブライヒベルグのギルドを訪れて、カウンターで領主であるナシオスさんとの面会を申し込んでいましたが、今は新コボルト隊の連絡網が使えます。

昨日のうちにブラルト経由でナシオスさんに用件を伝えるメッセージを送ったところ、今日の面会の予定を立ててくれました。

クラウスさんの話では、ブライヒベルグも好景気が続いているようですし、ギガースの魔石がオークションに出されるとなれば、間違いなく盛り上がるでしょう。

約束の時間の少し前にブライヒベルグのギルドを訪れると、ナシオスさんは執務室ではなく私室でブラルトをモフっていました。

ナシオスさんは、どこか他の領地から届けられたらしい手紙を読みながら、ブラルトの頭から背中を優しく撫でています。

撫でられているブラルトも、目を細めて尻尾をゆるゆると気持ち良さそうに振っています。

新コボルト隊の連絡網は大いに活用されていると聞いていましたが、ここブライヒベルグでは大事に扱ってもらえているようですね。

一度廊下に回って、影の空間から表に出て、ナシオスさんの私室のドアをノックしました。

「誰だね?」

「おはようございます、ケントです」

「おぉ、入ってくれたまえ」

「失礼します……」

ドアを開けて中へ入ると、ブラルトが駆け寄ってきたので、ワシワシと撫でまくってあげました。

「お忙しいところ、時間を作っていただき、ありがとうございます」

「いやいや、礼を言うのは私の方だよ。ギガースの魔石を出品してくれるんだって?」

「はい、キリアで討伐してきました。体はヴォルザードに持ち込みましたので、魔石はこちらにお願いしようと思っています」

僕がナシオスさんと話を始めたところで、ブラルトが影に潜って姿を消したと思ったら、ベテラン受付嬢であるブランシェさんがお茶の支度をして現れました。

事前に打ち合わせていたのでしょうが、見事な連携プレーです。

ブライヒベルグのオークションは、毎週光の曜日に開催され、出品の申し込みは前日闇の曜日の午前中までとなっています。

なので、今すぐ申し込めば明日のオークションに出品可能なんですが、ギガースの魔石ともなれば超目玉商品ですから、事前の告知をしてから出品という形になります。

「ギガースの魔石は来週のオークションに出品してもらうので、来週の今ぐらいまでに持ち込んでくれるかい?」

「はい、持ち込みはコボルト達に頼めば何時でも可能ですから、都合の良い時間にブラルトを使いに出してもらえれば、折り返しで持ち込むようにします」

「分かった、その手順でお願いするとしよう」

まぁ、ブライヒベルグのオークションに巨大な魔石を出品するのは今回が初めてではないので、正直この打ち合わせだけならば手紙でも事足ります。

「ケント君、その魔石の持ち主だったギガースだが、どんな感じで討伐したのか教えてもらえるかな?」

「はい、構いませんよ」

恐らく、ギガース討伐についてはクラウスさん経由で連絡が来ているはずだが、又聞きではなく僕から直接討伐の様子を聞きたいようです。

ブライヒベルグがギガースに襲われる確率はヴォルザードよりも低いと思うが、それでも領主としては情報収集を怠る訳にはいかないのでしょう。

ナシオスさんから質問されながら、キリアでのギガース討伐の様子を語って聞かせました。

「なるほど、爆剤やバリスタ、破城槌などで大きなダメージを与えたのか」

「ギガースの大きさは、個人の能力でどうこうできるレベルじゃないですからね」

「そうした兵器を使っても、隷属の魔道具無しではダメージを与えられないんだな?」

「そうです。隷属の魔道具を使って、属性魔法を封じなければ近付くことすら難しいと思います」

破城槌どころか、ラインハルトやバステンの一撃でも軽傷程度のダメージしか通らないのですから、一般兵士や冒険者では歯が立たないでしょう。

「ケント君もギガースを討伐した時には、隷属の魔道具を使ったのかい?」

「はい、使いました」

「ちょっと見せてもらえるかな?」

「構いませんよ」

影の空間から隷属の魔道具を取り出すと、ナシオスさんは食い入るように眺めていました。

「ケント君、これは絡ませるのではなく輪になっているね。この形では、ギガースに嵌めるのは難しいのではないかい?」

「一般の人が使うには向いていません。これは僕専用です」

「どうやってギガースに嵌めたんだい?」

「送還術を使いました。投げて絡み付けるタイプだと、僕の腕力では上手く扱えないので、最初から輪にして、送還術で装着するようにしました」

キリアの冒険者が戦ったギガースも、一頭目は上手く討伐できましたが、二頭目は隷属の魔道具が外れて窮地に追い込まれていました。

上手く絡み付かなかったり、途中で解けて落ちてしまうなど、ボーラの形には欠点があります。

最初から輪っかならば、そうした欠点は補えますが、送還術が使える僕でないと扱えません。

「ブライヒベルグで準備しておくならば、ボーラの形にして、複数準備しておいた方が良さそうです」

「そうだな、準備だけはしておくつもりだが、実際に使用する機会はあって欲しくないな」

ブライヒベルグには、ヴォルザードやキリア民国の街のような高い城壁がありません。

それだけに、もしギガースが現れたら街に大きな被害が出てしまうでしょう。

「ケント君、この隷属の魔道具は、ギガース以外の魔物にも効果はあるのかな?」

「はい。そもそも隷属の魔道具はグリフォンへの対策に考え付いた物です」

「グリフォンとギガースに利くなら、他の魔物にも効きそうだね」

「実験してませんが、恐らく効くと思います」

効果はあると思いますが、問題は絡み付けられるかでしょう。

サラマンダーならば、物陰に隠れて近付けば当てられるかもしれません。

でも、ストームキャットだと動きが早すぎて当てられないでしょう。

「あっ、そうか……」

「どうしたんだい、ケント君」

「ボーラだけでなく網にするとか、別の形でも隷属の効果が出せないか検証してみても良いかもしれませんね」

「そうだね……ただ、あまり使い勝手が良くなると対人用の武器として広まる可能性があるな」

「確かにそうですね。山賊とかが悪用すると困るので、余り情報として広めない方が良さそうですね」

ギガース関連の話が終わったので、気になっていた事をナシオスさんに尋ねました。

「アウグストさんとカロリーナさんの結婚式は、まだなんですか?」

アウグストさんはクラウスさんの長男、カロリーナさんはナシオスさんの娘です。

「結婚式は来春の予定だ」

「結婚後もアウグストさんはブライヒベルグに留まるんですかね?」

「いいや、ヴォルザードに戻る予定だ」

「では、カロリーナさんが嫁入りするんですね?」

「そうなるな……」

さすがのナシオスさんも、娘を嫁に出すのは寂しいようですね。

「あれっ、アウグストさんがヴォルザードに戻るとなると、ブライヒベルグには誰か代わりの人が来るんですかね?」

アウグストさんがブライヒベルグに滞在している理由は、イロスーン大森林が魔物の大量発生で通れなくなった時に作った、闇の盾を利用した輸送システムを管理するためです。

管理といっても運用はコボルト隊が行っていますし、アウグストさんはヴォルザードではお目に掛かれない野菜や穀物、布地などを仕入れて送る役割を担っています。

「アウグストの代わりは弟を寄越すみたいだぞ」

「そう言えば、弟が居たんですよね」

「何だか含みのある言い方だな」

「うっ……まぁ、ちょっと折り合いが悪いのは確かですね」

クラウスさんの次男、バルディーニとは反目し合う間柄です。

ベアトリーチェを嫁に迎えたから義理の兄になるのですが、何かにつけて突っ掛かってくるので鬱陶しいです。

能力的にもアウグストよりも大きく劣っていそうですし、これは一悶着ありそうですね。