軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

準備開始

「それじゃあ、ちょっと行って来るから、僕の体をよろしくね」

「ネロに任せるにゃ」

「わふぅ! うちも見張ってるよ」

「うちも、うちも!」

バルシャニアの皇帝コンスタンさんと話し合った結果、キリア民国には情報提供も支援も行わないと決めたのですが、正確な情報が不足しています。

キリア民国からフェルシアーヌ皇国を通ってきた行商人の噂話を聞き、バルシャニアも独自の調査部隊を派遣したようですが、まだ報告が届いていないそうです。

僕もギガースが十頭以上という話は気になるので、それならば見に行った方が早いと思ったのです。

キリア民国には行ったことがありませんが、星属性魔術を使って意識だけを飛ばせば、あっと言う間に行って来られます。

意識を飛ばしている間、僕の体は眷属のみんなに見守ってもらいます。

ネロのお腹に寄り掛かり、マルトを抱えて、ミルトとムルトに挟まり、ゼータ、エータ、シータに見守られていれば、何の心配も要りません。

て言うか、ここは影の空間だから敵とか入って来られないんですけどね。

さて、体から意識だけを引き離して、バルシャニアの帝都グリャーエフから一路西へと向かいます。

東西を結ぶ交易路の上空を飛び、バルシャニアからフェルシアーヌ皇国を通り、キリア民国との国境に辿り着きました。

キリア民国崩壊……なんて話を聞いて心配しましたが、フェルシアーヌ皇国に入れないでいる難民の数は思っていたほど多くはありませんでした。

命からがら逃げて来た……という切羽詰まった感じは見受けられませんでした。

やっぱり、噂話は尾鰭が付いているものなのでしょうか。

フェルシアーヌ皇国からキリア民国へと入り、更に西を目指して進んでいくと、最初に辿り着いたのは、まだ襲われていない街でした。

ギガースの姿は見当たりませんが、街の外には多くの難民の姿があります。

どうやら、この先の街か村が襲われて、ここまで逃げて来た人たちなのでしょう。

フェルシアーヌ皇国との国境線にいた難民は、この街も危ういと感じてキリア民国に見切りを付けた人達だったのでしょう。

「うわぁ……衛生状態が悪いな」

街の外にいる難民たちは、着の身着のままといった様子で、地球のニュースで目にする紛争地域の難民キャンプのようです。

こちらの世界では魔術が使えるのだから、水の確保は地球の難民キャンプよりは遥かに楽なはずです。

それでも難民たちが埃っぽくみえるのには、何か理由があるのでしょうか。

難民の集まっている街を離れて、更に西へと向かいます。

小さな村を通り抜け、更に西へ進んでいると巨大な生き物がいました。

身長は十メートル近く、皮膚は茶色い岩のようで、カエルのようなのっぺりとした顔をしています。

ギガースは食事の真っ最中で、周囲に転がっている土のドームを崩して、内部に閉じ込めていた遺体を取り出して貪っていました。

バルシャニアに現れたギガースも、土属性の魔術を使って住民を土のドームに閉じ込め、後で崩して食糧としていました。

たぶん、これがギガースの習性で、この辺りにある土のドームが全て無くなると、また食糧を求めて移動を始めるのでしょう。

放置しておけば、次は途中で通ってきた村、その次は街、そしてフェルシアーヌ皇国へと向かうはずです。

フェルシアーヌ皇国が討伐できなければ、更に被害が広がり、バルシャニアにも影響が出るかもしれません。

とりあえず、ギガースの居場所は分かったので、体に戻って出直してきましょう。

体に意識を戻すと、ラインハルトが待ち構えていました。

『いかがでしたか、ケント様』

「うん、間違いなくギガースだったけど、バルシャニアに現れた個体よりは少し小さかった気がする」

星属性の魔術を使って見て来た状況を伝えると、ラインハルトは首を傾げてみせました。

『騎士団が居ないというのは変ですな』

「うん、冒険者っぽい人が遠くから監視していたけど、騎士らしい姿は見えなかったね」

『やはり国としての機能が失われつつあるのでしょうな』

「ということは、ギガースは野放しって考えていいんだよね? まぁ、直接見てもらった方が良いかな」

口で説明するよりも、現場を見てもらった方が早いので、ギガースのところまで影移動しました。

『なるほど、確かに冒険者がいるだけですな。この様子だと、国の中心部を守るのに人員を集中させているのでしょう』

「つまり、地方の街や村は切り捨てられたってこと?」

『人員にも限りがありますから、やむを得ない処置なのでしょうが、実質的に切り捨てられたのも事実ですな』

「それじゃあ、僕らで討伐しちゃおうか」

『コンスタン殿との話し合いで、キリア民国へは支援を行わないと決めたのではありませぬか?』

「うん、でもこのまま放置して、フェルシアーヌ皇国まで踏み込んでいくようなことになれば、バルシャニアも影響が出る可能性があるし、なにより倒して魔石を手に入れれば儲かるでしょ」

『ふはははは、倒すのは当然、その後の利益を考えるなど、ケント様でなければ無理ですぞ』

「まぁ、確かに倒すのは大変だけど、ちょっと考えていることもあるからね」

ヴォルザードがラストックの復興特需で盛り上がったのと同様に、ランズヘルト共和国ではリーベンシュタインの水害、疫病被害からの復興特需が起こっています。

リーベンシュタインの領主アロイジアが、財産を大規模に切り崩して物品購入を進めているそうで、ブライヒベルグ、エーデリッヒ、フェアリンゲンなどの地域は好景気が続いているらしいです。

「景気が良い時に、ギガースの魔石をオークションに出品すれば……」

『なるほど、更に高値が付くという訳ですな』

「そういうことだから、魔道具屋のノットさんに隷属のボーラと同じ機能を持つ魔道具を頼みに行こうと思うんだ」

『同じ機能というと、改良を施すのですな』

「うん、改良というよりも簡素化かな」

ギガースを討伐するには、体を覆っている属性魔術の守りを無効化させる必要があります。

槍ゴーレムでも討伐は出来ますが、威力を上げすぎると魔石を傷付けてしまう可能性が高まります。

「隷属のボーラは、ラインハルトたちに投げてもらわないといけないけど、良く考えたら大きな輪にしたものを送還術で嵌めちゃえば良いんだよね」

『なるほど、ボーラでは解かれる心配がありますが、輪にしてあれば確実ですな』

影の空間からギガースに接近して、手足の太さを目測してからヴォルザードに戻りました。

魔道具屋のノットさんの店に行き、事情を話して製作を依頼、完成したら討伐に向かいましょう。

『ケント様、今回はバルシャニアの騎士団に気を使う必要はありませぬ。我らにお任せいただけませんか』

「そうだね、魔石を傷付けずに回収するのが一番の目的だから、そこを確実にクリアーしてもらえるなら問題ないよ」

『隷属の腕輪で属性魔術さえ防いでしまえば、ギガースなど動きの鈍い木偶の坊にすぎませぬ。我が愛剣グラムで斬って捨ててやりましょう』

最近、討伐などの機会が減ってたから、ラインハルトもストレスが溜まっていそうです。

ギガースに恨みは無いけれど、ラインハルト達のストレス発散の役割を担ってもらいましょうかね。

あとは魔道具が出来上がるのを待つばかりですが、それまでにギガースが移動を始めても良いように、コボルト隊を監視に付けておきましょう。