軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

弟子

※今回は近藤目線の話になります。

「お願いします、弟子にしてください!」

オーランド商店のデルリッツさんから、近々魔の森を抜ける街道の護衛をできる冒険者ランクが引き下げになると聞き、真偽のほどを確かめにギルドに来たら、いきなり弟子入りを懇願された。

膝にぶつけるのではないかと思うような勢いで頭を下げたのは、確かギリクが指導をしていたオスカーとかいう若手冒険者だ。

「弟子入りって、俺はまだCランクに上がったばかりだぞ」

「ペデルさんが、ジョーさんなら間違いなくAランクになるって……」

「あのオッサン、調子のいいこと言いやがって」

「お願いします。分け前は要りませんから、依頼に同行させて下さい」

「お前、ギリクさんと組んでたんじゃないのか?」

ギリクに指導を受けていたことを指摘すると、オスカーは表情を曇らせながら袂を分かった理由を口にした。

「ギリクさんは、護衛とかやりたがらないんで、このまま一緒にいても成長できないかと思って……」

確かにオスカーの言う通り、ギリクは討伐以外の依頼をやりたがらない。

特に護衛の依頼を受けた時の態度の悪さには、俺たちも辟易としていたからオスカーの気持ちは理解できる。

「他の連中は? お前、パーティー組んでたよな?」

「ヴェリンダはギリクさんと付き合っているんで……」

若手冒険者の指導をすることで、中堅冒険者としての自覚ができてきたのかと思いきや、ギリクはヴェリンダという女に溺れているらしい。

俺も性欲に関しては他人をとやかく言えた義理ではないと自覚しているが、それでも依頼に影響が出るほど溺れたことはないはずだ。

「残りの連中は?」

「ルイーゴは……オークに殺されました」

「はぁ? 殺された?」

「もう弱っていたから大丈夫だと思って止めを刺そうとしたら、急に襲いかかってきて首筋を食い千切られて……」

オスカーが言うには、ギリクと袂を分かった後、今度はペデルから魔物の追跡の仕方や討伐、素材の剥ぎ取りなどを教わっていたらしい。

ペデルのおっさんは金に汚いところはあるが、冒険者としては叩き上げでBランクまで上がっただけあって慎重だし仕事の手際は良い。

ペデルさんが一緒にいたのに、なんでそんなヘマをやらかしたのかと思ったら、他のパーティーと合同で四頭のオークを相手にしたために、目が届かなかったようだ。

それと、ペデルさんに教えを乞う前は、オークと戦う機会はあっても止めは全てギリクがやっていたらしい。

そういえば、オーランド商店の護衛依頼でラストックに行った後、国分と一緒にギルドに報告に来た時にドノバンさんに呼び出された。

用件は訓練場の設置に関する聞き取りだったが、その時に駆け出しの冒険者がオークに止めを刺し損ねて命を落としたと聞いた。

あれはルイーゴのことだったのかもしれない。

ヴェリンダ、ルイーゴがいなくなっても、確か四人パーティーだったからメンバーは残っているはずだ。

「もう一人いたよな?」

「ブルネラは、ルイーゴが殺されるのを見て怖くなっちまったそうで……」

「それじゃあ、パーティーは解散してソロで活動してるのか?」

「はい……」

肩を落として頷いたオスカーが、急に哀れに思えてしまった。

俺たちは国分の鬼畜な訓練のおかげで、安全が確保された状況で魔物を討伐する経験を積めたが、少し状況が変わっていたらオスカーのようになっていてもおかしくない。

「はぁ……俺はペデルさんみたいに経験豊富じゃないし、教えられるようなことは無いと思うぞ」

「いえ、ペデルさんがケント・コクブさんを除けば、若手のナンバーワンはジョーさんだって言ってました。ジョーさんを手本にすれば、これからの時代に冒険者として成功する方法が分かるって言われたんです」

「はぁぁ……あのオッサン、適当なこと言いやがって……」

たぶんペデルは、自分が世話するのが面倒で俺に押し付けたんだろう。

「俺はペデルさんから教わった方が良いと思うぞ……」

「ペデルさんは、ギルドからの指名依頼で訓練場の講師をするそうで、現場からは離れるみたいです」

「そうか……」

確かに、国分と一緒にドノバンさんに呼び出された時、訓練場の講師はペデルにやらせる……みたいな話はしていた。

素材の剥ぎ取り、魔石の取り出しとかを教えるならば、確かにペデルは打って付けだ。

「お願いします。本当に分け前とか要りませんし、依頼の様子を見せてもらえるだけで構いませんから……お願いします!」

昼間の空いてる時間とはいえ、これだけ何度も頭を下げられると周囲の注目を集めてしまう。

それに、自分は散々国分に世話になっておきながら、後進の指導をしないのはズルい気がする。

「はぁぁ……お前の気持ちは分かった」

「じゃあ弟子にしてもらえるんですね?」

「ただし、俺もパーティーを組んで活動しているから、他の連中が駄目だと言うなら同行は認められない」

「他の皆さんの承諾が得られれば良いんですね?」

「いや、依頼には当然依頼主がいる。依頼主が駄目と言えば許可できない」

「分かりました。パーティーの皆さんと、依頼主さんに許可をもらえば同行を認めてもらえるんですね」

「依頼主には俺から話す、勝手に訪ねて行ったりするなよ」

「分かりました。パーティーの皆さんには自分から頼んでもよろしいですか?」

「まぁ……構わないけど、金品を使ったり、女の子を紹介するとか条件を提示するのは無しだからな」

「分かりました。堂々と、正面からお願いしてみます」

鷹山も新旧コンビも金で釣られることは無いとは思うが、女を紹介するの一言で釣られる人間が約二名いる。

別に新旧コンビに春が訪れるのを邪魔するつもりは無いが、依頼に関わることで女に現をぬかされるのは困る。

それこそギリクみたいになられたら困るし、一人の女を巡って新旧コンビが対立するのも困るのだ。

そんな状況になれば、間違いなく俺も巻き込まれることになるはずだ。

「そういえば、お前、魔法の属性は?」

「自分は土属性です」

「土か……」

「やっぱり冒険者には向いてませんかね?」

「いや、野営する時なんかは土属性が居た方が、地均ししたり、竈を作ったり、トイレ用の穴を掘ったり重宝するぞ」

「でも、攻撃には向いてませんよね」

「まぁ、その辺りは工夫次第なんだろうが、俺は風属性だから土属性の魔法については教えられないからな」

「はい、魔法以外も見て学ばせてもらいます」

条件付きだが弟子入りを認めると、オスカーは早速俺の後を付いてきた。

「ジョーさん、今日は依頼の受注ですか?」

「いや、ちょっと情報収集に……」

受注ランクの変更について、誰に聞けば良いかと考えていたら、ドノバンさんが階段を下りてくるのが見えた。

「ドノバンさん」

「何か用か?」

「はい、魔の森を抜ける護衛依頼のランクが下がるような話を聞いたんですが、いつぐらいからですか?」

「デルリッツから聞いたのか?」

「そうですが……まだ先の話なんですか?」

「いや、陳情を受け付けたところだが、クラウスさんが承認したから遠からずランクの引き下げは行われる」

「大丈夫なんですか? ロックオーガとかサラマンダーみたいな魔物が出たりしないんですか?」

「リバレー峠にだってロックオーガが出ないとは限らないぞ。魔の森以外の場所にもサラマンダーは姿を見せたりするからな」

「それでもランクを下げるってことは、何らかの対策はするんですよね? 国分絡みですか?」

「まぁ、そんなところだ。詳しい話は、ケントに聞いても喋らんぞ」

「まぁ、ダメ元で聞いてみますよ」

国分の場合、言葉にしなくても態度に表れるので推察をしやすい、ドノバンさんも分かっているから渋い表情を浮かべてみせた。

「ちっ……あんまり話を広めるなよ」

「了解です」

この後シェアハウスに連れて行くと、オスカーは俺の時と同様に頭を下げまくり、鷹山と新旧コンビから同行オッケーを取り付けた。