軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交渉の準備

「賠償金だと? 何故そんな物を払わねばならんのだ」

「そ、そ、それはですね……ぼ、僕らを勝手に召喚して、迷惑を掛けたのですから……」

「ふん、最初に言ったはずだ、服従か死か好きな方を選べと、貴様らは服従を選んだのだろうが」

「い、いや……だって、あの状況じゃ逆らえないというか……」

頭の毛穴から噴き出した汗が、こめかみを伝って顎へと落ちていきます。

何とか言葉を繋いで相手を説得しなければと、気持ちばかりが焦って上手く頭が回らないし、言葉が出て来ません。

「ふん、手柄を立てれば褒美も出すと言ったはずだ。役目を放棄しておいて金を寄越せとは、厚かましいにも程がある」

「い、いや……だって……その……」

「はい、そこまで……これは前途多難ね……」

ストップを掛けた佐藤先生も、カミラ役を務めてくれた小田先生も頭を抱えています。

「す、すみません……」

「何の準備もしていないとは言え、うーん……酷いな」

「ぐぅ……」

朝一番に守備隊の臨時宿舎を訪れて、先生達に交渉の相談をしています。

これまでにフレッドやバステンが調べてくれたリーゼンブルグの状況や、ランズヘルト共和国との関係、僕らの置かれている状況なども一通り説明しました。

その上で、交渉の要求はこれまで通りに元の世界への帰還を最優先し、その次が謝罪と賠償を要求することを確認しました。

そして、交渉の練習となった結果がこの様と言う訳です。

「国分君……」

「はい、何でしょう」

「この交渉ですが、私達に任せてもらえませんか?」

「先生達にですか?」

「そう、私や小田先生、他の先生方もだけど、こちらの世界に来てから全くと言って良いほどに役に立っていないわ」

佐藤先生が視線を向けると、小田先生も同意を示すように頷いてみせます。

「佐藤先生が仰る通り、このままでは我々は本当に役立たずのままだ。無論、この街で過ごす間の生徒達の行動には目を光らせるつもりだが、正直それだけでは教師としての面子が保てんのだよ」

「はぁ……なるほど」

確かにラストックから脱出してくる間に、先生達が働いたのは生徒のリストチェックぐらいですからね。

「勿論、ヴォルザードに逃げてこられたのは国分君のおかげだし、交渉に臨みたいという意欲は認めるわ。ただ……現状を見ると、あの王女と交渉できるようになるには時間が掛かると思うの」

「確かに……先生の言う通りだと思います」

いや、正直に言うと、交渉に臨みたいという意欲は、そんなには高くないんですよ。

それに、実際に交渉する姿を想像してみれば、僕と小田先生のどちらが向いているかなんて言うまでもないですよね。

「国分に不足しているのは経験、我々に不足しているのは情報、どちらを補うのが楽かは……分かるな?」

「はい、そうですね、僕も交渉は先生にお願いした方が良いと思います。ただ、交渉する為には、またラストックまで行かないと駄目だし、当然危険が伴うかと思いますが……」

ラストックで交渉するには、魔の森を抜けて行く必要があるし、敵地に足を踏み入れるのだから安全とは言い難いよね。

「それも充分承知しているつもりよ。それにね、私達を救出するのに国分君が血みどろになっているのに、安全なところでジッとしているだけなんて、教師として大人として許されることではないと思うの」

「無論、我々だけでは安全の確保は侭ならんから、情けない話だが、そこは国分に頼るしかないな」

そう言いながらも、先生達は笑ってみせました。

『どうかな? ラインハルト』

『ここは協力していただいた方が宜しいでしょうな』

「分かりました、カミラとの交渉は先生方にお願いして、僕は護衛に徹する事にします」

ぶっちゃけ凄いホッとしてます。

僕が交渉に臨んでいたら、さっきの練習より酷い事になっていたかもしれないもんね。

「ところで国分、交渉を行うとしても、その交渉が纏まるまではヴォルザードに留まる必要がある。出来れば街の責任者に挨拶をしておきたいのだが、連絡は取れるか?」

「はい、クラウスさんの予定を聞く事は可能ですが、今は騒動の後始末に追われていると思うので、いつ面会出来るかは……ちょっと分からないです」

「そうか、しかし、あの魔物の数には驚いたな。まるで映画のワンシーンを見ているようだったぞ」

「本当に街に辿り着くまでは、心臓に悪かったわ」

確かに先生達の言う通り、あんな数のゴブリンの大群は、日本では映画の特撮シーンでしか見られないですし、実際に自分達を狙って押し寄せて来る光景は、あまり見たいものじゃないですよね。

それに、映画やVRのゲームとは違って、吐き気を催すような濃密な血の臭いまでしていましたから、恐ろしさ倍増でしたよね。

「とにかく、ここは日本でも無いし地球ですら無い。交渉を進めるにしても我々の常識が通用しない事もあるだろう。そこで必要になるのは情報だ。国分、より詳細な情報が欲しい。少し資料をまとめてくれないか?」

「分かりました、リーゼンブルグに付いて調べた事を纏めておきます」

「それと、肝心の召喚と送還に関する情報をもっと知りたい」

「はい、それなんですが……」

当然、召喚と送還に関する情報は、何より優先的に集めないといけないのですが、王家においても秘事にあたるらしく、詳細な情報が見つけられていません。

ラストックの駐屯地はフレッドが、王城にはバステンが潜り込んで探しているのですが、未だに欠片も見つけられていないという状態です。

カミラの執務室や私室の資料も調べてもらったのですが、一般的な魔法陣に関する記述はあるものの、召喚術に関する資料は全く見つからないのです。

「そうか……もしかすると処分された可能性があるな……」

「僕らもそう思ったのですが、すでに終わっている召喚術に関する資料はともかく、これから行うはずの送還術の資料が無いのは変ですよね?」

「ふむ……その先は、あまり考えたくないな……」

資料が存在しない理由が僕らの想像した通りだとすると……目指す道の先に、暗い影が差した気がしました。

「分かった、そちらは引き続き探ってもらうとして、国分と眷属が、どの程度の働きが出来るのかも知りたい」

「僕らの働き……ですか?」

「そうだ、実力と言った方が良いかな。我々の最大の戦力は間違いなく国分達だし、それはリーゼンブルグ側に提示するメリット・デメリットに直結するものだからな」

「それは、僕らを敵に回すと……って感じで脅すって事ですか?」

「状況によってはだな。それに、奴らは武力によって我々を制圧してきた。今度我々に手を出せば、どんな結果を招くかを知らせておかないと、最悪この街に攻め込んで来るなんて事も無いとは言い切れんぞ」

「そうですね……僕らが単独で戦力を持っていないと思われたら、ヴォルザードの立場とかも悪くなりそうですもんね」

「そういう事だ。交渉の内容を考えれば、単純に武力で脅して済むものじゃないが、無力だと思われては対等な立場で交渉が行えない可能性もあるからな」

「分かりました、それも資料にして届けるようにします」

と言ったものの、リーゼンブルグに関する資料は、僕が作るよりもフレッドとバステンに任せた方が良いよね。

眷属の実力は……うん、ラインハルトに頼もう。

そう、自分一人で頑張るんじゃなくて、周りの人にも助けてもらう、これぞワークシェアってやつだよね? あれっ違ったっけ?

交渉に関する話も一段落ついて丁度お昼時になったので、先生達と一緒に食堂へ向かいました。

「国分、第二ラウンドの開始か?」

「へっ……うっ!」

食堂へと向かう道の先に居たのは、委員長とマノンです。

二人とも僕に気付いて笑顔で手を振ってくれているのですが、手を振り返す僕の顔、引き攣ってますよね。

と言うか、何で二人が一緒にいるのでしょう。

「先生こんにちは、健人をお借りして行っても良いですか?」

「ええ、構わないわよ、もう私達の用事は済んでますから」

「行こう、ケント!」

あれ? 食事をしながら……って話はどうなって……まぁ殆ど話は済んでますけどね。

昨日と同じく、左腕を委員長に抱えられ、右腕をマノンに抱えられて連行されて行きます。

二人の表情からして、血の雨が降るような事にはならなそうですが……

「どうして二人が一緒に居たの?」

「なぁに? 私とマノンが一緒に居たら拙い事でもあるのかな?」

「そ、そんな事は無いけど、どうしてかなぁ……って思って」

「あのね、僕、ユイカに治癒魔術を習おうかと思ってるんだ」

「えっ、治癒魔術って……そうか、水属性にも治癒魔術があるんだっけか」

そう言えば、委員長が居た診察室にも水属性の治癒魔術のための浴槽みたいなのがあったよね、使ってなかったけど。

「そうだ、マノン、健人に治癒魔術を掛けてもらいなよ。私よりもずっと強力な治癒魔術を使えるから」

「そう言えば、ケント骨折も自分で治しちゃってたよね」

「えっ、うん……まぁ、そうなんだけど、自分では良く分かってないんだよね、何で治るんだか」

「でも、健人に治癒魔術を掛けてもらうと、何となく魔力の流し方というか使い方みたいなのが分かるから、それを真似するといいよ。私もそうしたらコツみたいなのが掴めたから」

「そうなんだ、じゃあケント、後でお願いしてもいいかな?」

「うん、勿論だよ」

二人の話では、昨日買い物をしている間に色々な話をして、治癒魔術の事も話題に上がったそうです。

そこでマノンも治癒魔術を使えるようになれば、活躍出来る場所が増えると考えたみたいです。

外傷とか骨折とかの治療では光属性の魔術の方が効果が高いけど、水属性の治癒魔術は飲み薬のベースになったり、ジブーラを熟成させる水に使ったり、利用の幅が広いらしいです。

「でも、治癒魔術の方に進むとなると、ダンジョン探索とは離れちゃうような気がするけど、いいの?」

「うーん……お父さんみたいにダンジョン探索をしたいって夢はあるんだけど、属性も違うし同じような事が出来ないのも確かなんだよね」

マノンのお父さんは土属性を上手く使って、ダンジョンでの鉱物採取の仕事で稼いでいたそうなんだよね。

「ダンジョンに潜るだけなら僕にも出来そうだけど、そこで鉱物を効率良く探すには、やっぱり土属性の魔術が使えないと難しそうだよね」

「そうか、ケントは影を伝って移動出来るんだもんね。ダンジョンに潜るのも簡単そうだよね」

「うん、潜るだけなら手ブラで行って来られそうだよ」

お昼ごはんを一緒に食べながら話を聞いたんだけど、委員長は極大発生の時に手伝った経験を買われて、守備隊の医務室で治癒士としての経験を積む事にしたらしいです。

守備隊の医務室は、ラストックの診察室と同じように街の人達の治療も行っているそうです。

マノンは、救出してきた同級生達が仕事をするフォローをしながら、二日に一度のペースで守備隊の医務室に行って、委員長と同じく経験を積ませてもらう事になったそうです。

「それじゃあ、二日に一度は、今日みたいに二人一緒に居るんだね」

「そうだよ、だって、その方が抜け駆けの心配が少なくて済むし……」

「えっ、抜け駆けって……」

「だから、マノンとギルドで会ってもイチャイチャしちゃ駄目なんだからね」

「ぐぅ……」

「ユイカの部屋に忍び込むのも無しだからね」

「ぐふぅ……分かりました」

委員長とマノンで、互いに抜け駆けしない約束をしたそうです。

暫くの間は、ハグもキスもお預けって事だよね。

ちょっと寂しいけれど我慢しますよ。

二人から医務室の話を聞いたり、僕から極大発生や今後の交渉の話をしながら食事を済ませました。

交渉の話には、近くに来た同級生達も興味津々で、色々と質問されたんだけど、まだ準備段階だから答えられる事の方が少ないのが現状です。

食事を済ませた後は、約束通りにマノンに治癒魔術を掛ける事になりました。

マノンの背中に手を当てて、治癒魔術を流そうとしたら委員長に止められました。

「待って健人、そうじゃなくて、ギュってした状態で掛けて」

「えぇぇ……こ、ここで?」

「勿論、抜け駆け禁止だから……私の見てる前じゃないと駄目だからね」

いや、同級生のみんなが見てるんですけど……まぁ、委員長公認だったら良いよね。

ちょっとギクシャクしちゃったけど、マノンをハグして治癒魔術を流しました。

「あっ……」

マノンは小さく声を上げると、自分からギュっと抱き付いて来ました。

うん、健康なマノンだから、治癒魔術もスムーズに全身に巡っていく感じです。

てか、男子の怨嗟の眼差しが凄い怖いんですけど……

「どうマノン、分かった?」

「うん、ちょっとだけど、こう身体の中を巡っていく感じがして……」

「うんうん、それそれ、それを自分で再現するように意識して魔法を使うと良いと思う」

掛けてる僕が今いち分かっていないんですけど、何かの参考になるのなら文句はありませんけどね。

その後、委員長とマノンは医務室へ、僕はギルドにクラウスさんとの面会予定を聞きに行く事にしました。

「あ、あのね、ケント、さっきの話なんだけど……」

「さっきの話って……?」

「マノンと抜け駆けしないって約束したって話」

「あぁ、うん、それがどうかしたの?」

「僕らが抜け駆けしない約束をしても……」

「もう一人居るんだよね?」

「うっ……はい」

そうだよね、委員長とマノンがお互いに抜け駆けしない約束をしても、ベアトリーチェとは約束が成立してないもんね。

「だ、だからね……」

「マノン?」

「僕らが一緒の時にね」

「私とマノンが居る時なら……」

「唯香? んっ……」

えへへへ……二人に両側から、ほっぺにチュってされちゃいましたよ。

これって、もしかしてハーレム展開ってやつですか?

「えへっ、もう一回……痛っ」

「ケント……」

「調子に乗らないの……」

「はい、ごめんなさい……」

何も、二人揃って脇腹抓ることはないよねぇ……ぐっすん。

何だか楽しそうに話しながら去って行く二人を見送って、僕は一人寂しくギルドに行って用事を済ませてきましょうかね。

うん、でもニヤニヤが止められないですね。

ギルドに向かって歩いていると、何やら人の列がゾロゾロとギルドに入っていくのが見えます。

何の行列だろうかと近付いて行くと、僕よりも年下の子供達のようです。

「あっ! ケント!」

「へっ……メイサちゃん?」

ギルドに向かう行列から飛び出して来たのは、メイサちゃんでした。

「ケント、どこに行くの?」

「ギルドだけど……メイサちゃんは?」

「私もギルド、サラマンダー見学!」

「えっ、ちょっと……メイサちゃん?」

メイサちゃんは、僕の手を引っ張って一緒に行列に戻ろうとしています。

先生なのでしょうか、行列を引率していた女性が近付いて来ました。

二十代の前半ぐらいでしょうか、ふくよかで子供好きって感じがします。

「メイサちゃん、勝手に列を離れちゃ駄目でしょう」

「先生、このケントがサラマンダーを倒したんだよ」

「えっ……本当ですか?」

うん、全然信じてないって顔してますけど、無理も無いですよね。

自分よりも年下の頼り無さそうな僕じゃ、サラマンダーを倒せるなんて思いませんよね。

「えっと……はい、一応僕が倒しました」

まぁ、実際に倒したのは僕なんで、そう答えるしかないですけど、子供達が疑問の声をあげました。

「えぇぇ……うっそだぁ、全然強そうに見えないぞ」

「そうだよ、俺とたいして変わんないじゃん」

「メイサちゃん、嘘ついちゃ駄目なんだよ」

「嘘じゃないもん、ケントが倒したんだもん」

「嘘、嘘、絶対、嘘っ!」

「やーい、嘘つき、嘘つきメイサ!」

「嘘じゃない! ケントはスケベで、ドジで、泣き虫で、スケベだけど嘘なんかつかないし、すっごい強い眷族が付いてるんだからね」

うーん……何だか困った事態になっちゃいましたね。

メイサちゃんも僕も嘘なんかついてませんけど、証明しろって言われちゃうと困ります。

ここに眷属のみんなを出す訳にもいきませんもんね。

てか、やっぱりスケベは二回言われちゃうんですね。

先生が取り成して、何とか騒ぎは収まったんですが、メイサちゃんは僕の手をギュっと握って、唇を尖らして涙を堪えているようです。

せめて僕にギリクぐらいの体格があれば、信じてもらえるんでしょうけど、急に大きくなれませんからね。

何か良い方法は無いものかと思いながら一緒にギルドに入りました。

この時間のギルドは、冒険者などは仕事や依頼に出ている時間で、中に居るのは仕事の依頼をしに来た人が殆どなはずですが、まだ極大発生の影響があるのか何だか騒然としていますね。

「き、君、止めたまえ……」

「はぁ? チョロチョロ、チョロチョロしやがって、ここはガキの遊び場じゃねぇんだぞ!」

「ぐぅ……く、苦しい……」

引率の先生らしき男性が冒険者に吊るし上げを食らってるみたいですけど、あれって昨日の雑魚っぽいのですよね。

真昼間っから仕事もしないで、何をやってるんだか……碌なもんじゃないですね。

でも丁度良いので、ちょっと使わせてもらいましょう。

「ほらメイサちゃん、この前みたいにチンピラをとっちめてやって」

「えっ? う、うん……」

メイサちゃんの手を引いて、行列から離れました。

一瞬何の事だか分からなかったみたいですが、すぐにメイサちゃんは雑魚っぽい冒険者をロックオンしました。

「こらーっ! 先生から手を放せ、チンピラ!」

うん、声の張りと言い、台詞と言い、素晴らしい、メイサちゃん100点!

「何だと、このガキ! ひぃ……ま、魔物使い……」

勢い良く振り向いた雑魚っぽい冒険者は、僕の顔を見た途端小さく悲鳴まで洩らしましたね。

「えっと……何かトラブルですか?」

「やっ、ち、違う……これは、そうちょっとした行き違い?」

「そうですか、でしたら放して差し上げてもらえませんかね……」

「わ、分かった……ほら、放したぞ、トラブルなんかじゃないからな……」

雑魚っぽい冒険者は、引率の先生から手を放すと、ジリジリと後退りをして、壁にへばり付くようにして僕とメイサちゃんの横を通り過ぎると、脱兎の如くギルドの外へと逃げて行きました。

「ケント……ホントに強かったんだね……」

「えぇぇ……メイサちゃんも信じてなかったの?」

「えっ、だってサラマンダーを倒したのって、ラインハルトのおじちゃん達じゃなかったの?」

「ふふん、さぁ、どうなのかねぇ……」

「えっ? えっ? ホントにケントが倒したの? ねぇ、ケント!」

メイサちゃんの質問には答えずに、ニマニマ笑いながら訓練場に出ました。

訓練場にはメイサちゃん達と同じように、けっこうな数の人がサラマンダーを見物に来ていました。

メイサちゃん達の背丈だと、良く見えないと思えるほどの人垣が出来ていますね。

「おい、魔物使いだぜ……」

「魔王が来た……」

「あんなのただのチビじゃ……」

「しっ、馬鹿野郎、すげぇ術士だぞ……」

一人が僕を見つけて囁き始めると、すぐにそれが伝染して行って、周囲の視線が集まって来ました。

メイサちゃんの手を引いて一歩踏み出すと、ざぁっと人垣が割れて道が出来ました。

「さぁ、メイサちゃん、見に行こうか、みんなも付いておいで」

「ケント……すごい……」

「ふふん、見直した?」

「うん、ただのスケベじゃなかった!」

「ぐはっ……」

サラマンダーの近くまで連れて行って、倒した時の様子や極大発生の様子を話してあげて、ザーエ達も紹介すると、メイサちゃんの同級生達は目をキラキラ輝かせていました。

うん、これでメイサちゃんが嘘つき呼ばわりされる事もないよね。

ついでに、僕の評価も少しは上がると良いのですけどね。