軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

目指せ、脱ブラック

小惑星の欠片が地球に到達するまで、あと三日。

ようやく床払いができました。

起きられたのは良いですが、はっきり言ってフラフラです。

体重を測ってみたら、小惑星の軌道変更を始める前よりも七キロ体重が落ちていました。

お風呂にゆっくり浸かって、しっかり食事をとったら、幾分体調が上向いてきました。

あんまり待たせると、ISSの皆さんがヤキモキするでしょうから、そろそろ出掛けましょうかね。

「じゃあ、唯香、行ってくるね」

「ちゃんと、無理せず早く帰ってきてね」

「うん、そのつもりだけど、緊急性が高い事態が起こっていたら、またブースターを……」

「駄目! 絶対に駄目! もうケントは十分働いたよ、もうブースターは絶対に使わないで!」

ブースターの使用を口にした途端、唯香に烈火のごとく怒られました。

まぁ、確かに二日も三日も前後不覚に陥って、その後も体が動かないなんて副作用が出る代物は、確実に寿命を削っているでしょうね。

「分かった。もうブースターは使わないし、倒れる前にちゃんと帰ってくるよ」

「絶対だよ、絶対、絶対、早く帰ってきてよ」

「うん、約束する」

指切りした後で、ギューってして、チューってしてから練馬駐屯地へと向かいました。

「こんにちは? それとも、こんばんわでしょうか?」

「国分君……大丈夫なのかい?」

梶川さんは僕の顔を見て、一瞬言葉を失っていました。

これだけゲッソリ痩せて、しかも顔色悪いから、心配になるのも当然でしょうね。

「まぁ、本調子ではないですけど、なんとか……」

「すまないね、国分君ばかりに無理をさせてしまって」

「これからISSの皆さんを避難させようと思ってるんですが、向こうへの連絡は済んでるんですか?」

「勿論、国分君が魔力を分け与えて、影の空間経由でここまで連れてくると説明してあるし、手順についても打ち合わせ済みだよ」

ISSの宇宙飛行士の中には、宇宙空間に長期滞在している人もいるそうなので、僕が魔力を分け与えたら車椅子に座ってもらい、そのままコボルト隊が押して運びます。

これならば、真っ暗な影の空間で迷子になる心配もいりませんし、到着後はそのまま移動が出来るという訳です。

「そう言えば、僕、英語が駄目なんですけど」

「あぁ、それも心配は要らないよ。今は日本人宇宙飛行士も滞在しているから、彼が通訳を務めてくれるよ」

「そうですか、では、ちゃっちゃと終わらせて、その後、ISSを闇の盾でカバーしちゃいましょう」

「ごめん、国分君。その闇の盾での防御なんだけど、直前まで待ってもらえないかな?」

「えっ、今やったら駄目なんですか?」

「その闇の盾を展開すると、太陽光も遮られちゃうよね?」

「そうですね、それが何か?」

「太陽光が遮られてしまうと、ソーラーパネルでの発電が途絶えた状態が長く続くことになり、バッテリーの残量が危うくなるかもしれないらしい」

ISSは地球の軌道上を飛行していて、一日に昼と夜が約十六回切り替わるそうです。

太陽光が当たっている時に発電、当たっていない時はバッテリーに溜めた電力を使用する訳ですが、闇の盾の影に入るとずっと夜の状態になってしまいます。

「なるほど、そんなに夜が長時間続くとは想定されていないんですね?」

「一日程度ならば、大丈夫だとは思うけど、あまり長時間の停電は避けたいそうだ」

「それって、他の人工衛星も同様ですよね?」

「そうだね、気象衛星とか、その他の観測衛星も電力は太陽光に頼っているからね」

「じゃあ、そっちの衛星をカバーするのも、ギリギリのタイミングにした方が良いんですね」

「可能かい?」

「先に闇属性のゴーレムを設置しておけば、それを目印にして移動が出来るので、可能と言えば可能です」

「では、到達半日前に設置してもらって、安全が確認できたら解除という形にしてもらえるかな?」

「分かりました。ただ、タイミングが僕の方では分からないので、半日前と解除しても大丈夫な時点で連絡を下さい」

「分かった、色々と要求してしまって申し訳ないね」

「でも、その分の報酬は弾んでもらえるんですよね?」

「勿論、これだけの事をやってもらっているんだ、国分君一人では一生掛かっても使いきれない金額になると思うよ」

「じゃあ、これが終わったら、もう僕は働かなくても良いですかね?」

「いやぁ……国分君にしかできない仕事は山のようにあるから……」

「はぁ……なんかお金貰っても使っている暇が無いような気がします」

「とりあえず、小惑星の欠片が通過してしまえば一段落するから、ゆっくり休んでよ」

「分かりました。では、もう一仕事してきます」

ISSの宇宙飛行士を連れてくる医務室へと移動して、闇の盾を開いて維持はゼータに任せました。

「じゃあ、ゼータ、お願いね」

「お任せ下さい」

車椅子を受け取って影の空間に潜ってISSまで移動、日本人宇宙飛行士の若林さんを探して声を掛けました。

「こんにちは、若林さん、国分です」

「おぉ、本当に乗り込んで来られるんだね。いや、びっくりだ。どうも、はじめまして、若林浩二です」

「はじめまして、国分健人です」

僕と若林さんが挨拶を交わしていると、他の国のスタッフも寄って来て挨拶してくれました。

「ドウモ、アリガト……ヨロシク、オネガシシヤス……」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

既に、若林さんから説明は終わっていて、ISSから一時退去する準備も終えているそうです。

宇宙飛行士の皆さんが避難している間、ISSのコントロールは地上から行われるそうです。

ぶっちゃけ、難しい説明をされても理解できないので、ちゃっちゃと避難してもらいましょう。

指先をちょいっと切った傷口を合わせて魔力を譲渡したら、治癒魔法を掛けて、車椅子に座ってもらって、はい終わりです。

最後の若林さんを避難させるまで、十分も掛かりませんでした。

中には、本当に地球に戻れるのか半信半疑の人もいたようですが、体にかかる重力が嫌でも地球だと証明しています。

「いや、凄いよ、凄すぎるよ、国分君! 宇宙服も着ないで、狭い帰還船に乗る必要もなく、あっと言う間に地上に戻って来られるなんて……これからはISSへの往復は、全部国分君にお願いしたいね」

「正式な依頼があれば検討させていただきますよ」

「国分君、これから忙しくなると思うよ」

「いやぁ、もう忙しいの御免です。今回の騒動が終わったら、暫く休みます」

「そうはいかないと思うよ」

若林さんと握手を交わしていると、他の宇宙飛行士さん達からも握手攻めにされてしまいました。

英語は殆ど出来ませんけど、言われている内容は若林さんと同じみたいです。

やっぱり、打ち上げも帰還も過酷なようで、それを省略できるのは本当にありがたいようです。

でも、僕としては一度ぐらい、ロケットで大気圏外へ向かう経験もしてみたいんですけどねぇ……。

宇宙飛行士の皆さんの握手攻めから脱出して、次は魔の森の訓練場へと向かいました。

闇の盾を維持してもらう闇属性のゴーレムを使い切ってしまっているので、せっせと補充作業を行いました。

続きまして、体を影の空間に残して、星属性魔術で意識を地球上空へと飛ばしました。

これから始めるのは、人工衛星の捕捉作業です。

まず探したのは、ずばり気象衛星ひまわりです。

いつの間にやら代替わりして、現在は九号が運用中です。

天気が分からなくなると、台風などの接近や、集中豪雨への備えが難しくなりますからね。

無事に生き残ってもらいたいです。

ひまわり九号を確認したら、観測の邪魔にならなそうな所を選んで、闇属性ゴーレムを送還しておきました。

これで、ゴーレムが目印になってくれるので、次は簡単に見つけられますよ。

続いて、ひまわりと同様に静止軌道上にいる放送衛星や通信衛星を捕捉、闇属性ゴーレムを設置しました。

梶川さんから情報をもらった通信衛星の捕捉が終わったら、次はGPS用の衛星を探しました。

こちらは静止衛星ではないので、なかなか捕まえるのが大変です。

カーナビとか、スマホの位置情報が使えなくなったら大変ですからね、可能な限り捕まえてやりましょう。

勿論、日本のみちびき用の衛星も探しましたよ。

本日は、みちびき用の衛星四基を捕捉したところでタイムアップ。

これ以上作業を続けていると、唯香の雷が落ちちゃいますからね。

作業の進捗状況を梶川さんに連絡して、ヴォルザードへと戻りました。