軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

死霊術士とスケルトンナイツ

『魔眼の水晶』ではハズレ判定されたけど、僕にも魔力が宿っていると分かって、気分は急上昇中でございます。

一度にスケルトン十一体を呼び出し、内臓が飛び出ちゃう傷さえも治しちゃう、これってかなりのハイスペックだよね?

このまま勢いに乗って、スケルトンの護衛で森を踏破してやろうとしたんだけど、スケルトンの皆さんは、なんだか乗り気じゃないんだよね。

「もしかして、地縛霊的な感じで土地から離れられないとか?」

『いいえ、ケント様に憑いて行くのは問題無いのですが、ワシらの強さがちょっと……』

いやいや、『ついていく』の字面も変だった気がするよ。

「強さって、どういう意味?」

『この先に進むとオーガや、サーベルタイガーなどが出ます、その場合、今のワシらではケント様を守り切れないでしょうな』

「う~ん……何か方法は無いかな?」

『ワシらを強化してもらえば、問題無いと思われますぞ』

「なるほど、強化か、良いね、どうすればいいの?」

『モンスターの強化は、基本的に他の魔物の魔石を取り込むことですな』

「魔石を取り込む?」

『いかにも、なので、ワシらの中から三体を選んでもらって、残りの者とゴブリンの魔石を取り込んで強化すれば良いでしょう』

「えっ? それって問題無いの?」

『問題ありませぬ』

「魔石を取られちゃった人は、どうなるの?」

『ワシらは、既に人では無いので、消滅するだけですな』

「いやいやいやいや、それって問題でしょう、大問題だよ」

『問題ありませぬ』

何かを決意したように、キッパリと言い切るラインハルトさんに、かえって反発心が湧いて来たよ。

「せっかく出会えたのに、共食いみたいな形で消滅なんて、僕は許さないよ!」

胸の中の憤りを言葉に乗せて言い放つと、ラインハルトさんは、分かっていますとばかりにカクンと頷いてみせた。

『ケント様、共食いではありませんぞ』

「じゃ、じゃあどういう事さ……」

『ワシらは、既に人の常とは離れて、この世を彷徨い歩く身です、それが消えるという事は、本来有るべき姿に戻って、天に昇るということですぞ』

「それは、悪い事ではないの?」

『無論です、ケント様の手で、皆を送ってくれませぬか?』

「でも、それなら、全員一緒に送った方が良くない?」

『残るワシらは、逝く者の意思を継いで御身を守ります、それもまた光栄なことなのですぞ』

言われてみれば、確かにスケルトンとは、この世を彷徨う亡霊のようなものだよね。

スケルトンを倒すという事は、成仏させる事でもあるんだよね。

僕は、分団長だったラインハルトさん、部隊長だったバステンさんと、フレッドさんの三名を遺して、他のみんなを天に送ることにしました。

整列した八体のスケルトンの前に立ちました。

よく見てみると、みんな、あちこちの骨が欠けていたり、腕が無かったりするんだよね。

昨夜の戦いでなのか、あるいは遠い昔の戦いでなのかは分かりません。

分からないけど、そんな満身創痍の状態で、僕の呼びかけに応え、僕を守るために戦ってくれた事だけは確かだよね。

「皆さん、ありがとうございました、皆さんが助けに来てくれたから、僕は、僕は……」

本来、恐ろしい魔物であるはずのスケルトンの皆さんが、暖かく僕を見守ってくれているように感じて、涙が溢れて言葉が続かなくなりました。

『ケント様、どうか泣かないで下さい、我々はケント様のお陰で逝けるのです』

『そうですよ、ケント様が呼んでくれなきゃ、きっとまだ彷徨ってたんだから』

『そうそう、きっと向こうでは家族や友人が待ちわびてるはずだから』

『だから、笑って送って下さいな』

涙に曇った僕の目には、無骨で優しい男達の笑顔が映っていました。

「はい……皆さん、本当に、ありがとうございました、どうか、ゆっくり休んで下さい」

きっと涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃの酷い顔だと思うけど、それでも僕は精一杯の笑顔を浮かべて、みんなを見送りました。

『そんじゃー分団長、お先に逝きます、お世話になりました』

『部隊長もお元気で、って、もう死んでるんですよね』

『お前ら、向こうに逝ったら、うちの家族に言っといてくれ、ケント様の生涯を守り終えたら逝くからって』

『俺らの分まで、ケント様のこと頼みましたよ』

『おう、任せておけ!』

『それじゃ、また向こうで』

『あぁ、またな』

まだ死霊術の使い方は良く分からないけど、どうか彼らが家族や友人のところへ逝けますようにと、心からの祈りを捧げると、八体のスケルトンは、暖かな光に包まれ、キラキラとした粒子となって消え去っていきました。

彼らが去った後には、透き通った魔石が八個遺されています。

スケルトンのみんなが遺してくれた魔石と、ゴブリンの死体から回収した魔石を集めて、早速ラインハルトさん、バステンさん、フレッドさんを強化します。

魔石は全部で十五個あるから、一人あたり五個ずつだね。

「ところで、魔石の取り込みってどうやるの? まさかガリガリ齧るとか?」

『魔物によっては食べる奴もおりますが、ワシらの場合は胸元に押し当て吸収する感じですな』

確かにスケルトンだと食道も無いし、ガリガリ齧られたら絵面的に恐すぎるよね。

「それで、僕は何をすれば良いのかな?」

『ケント様には、死霊術での補助をお願いします』

「補助って言われても、死霊術も意識して使ってる訳じゃないから、どうすれば良いのやら……」

『そうですな、強くなった後のワシらをイメージして貰う感じで良いでしょう』

なるほど、強化したスケルトンと言うと、骨格の素材を強化がメインで、後は、動きや武器のパワーアップって感じかな。

それならば、三人の生前の戦闘スタイルとかも聞いておいた方が良いよね。

と言う訳で、三人から聞き取りをして、イメージを固め、強化を実行しますよ。

「それじゃあ、イメージを具体的に固めたいから、一人ずつ強化していこうか」

『畏まりました』

「最初は、ラインハルトさんから」

『おう、よろしく頼みますぞ』

ラインハルトさんは、生前『豪腕』の二つ名を持つパワータイプだったそうです。

そこで、重くて硬いタングステンの鏡面加工でいってみます。

なぜタングステンが重たいと知ってるのかって? そりゃ~中二の常識ですよ。

「ではイメージの補助をするから、魔石の取り込みを始めてみて」

『では、始めますぞ』

魔石の取り込みを始めて、僕が体の中の魔力とイメージを送ると、ラインハルトさんの体を黒い靄が覆い始めました。

最初、薄っすらだった靄は、段々と濃さを増していき、最終的には周囲の光すら飲み込みそうな闇色になり、内部には紫電すら走り始めましたよ、ちょ……大丈夫かな?

あまりの迫力にビビったけど、ここは召喚主として情けない姿を晒すわけにはいかないから頑張りましたよ、ちょっとだけチビったけどね。

やがて、闇色の靄が凝縮するように集まり、一際派手な雷光が視界を焼いたその後には、漆黒の大剣を背負ったメタリックなスケルトンが仁王立ちしていました。

『こ、これは……』

『生前の……三倍ぐらい凶悪……』

「うん、夜道で出会ったら、間違いなく失禁する自信があるよ」

武術や魔術の心得えが無くても、オーラのような物が見えそうな、一目でヤバいと感じる雰囲気を纏ってますよ。

付き合いの長いバステンさんが、絶句するほどの迫力です。

ラインハルトさんは、両手を握ったり開いたり、肩を回してみたりして、新しい身体の調子を確かめているようです。

そして、おもむろに背負っていた大剣を手にすると……

『ずぅおりゃ~!』

裂帛の気合いと共に、近くの大樹に向けて、身体がブレて見える程の速度で踏み込むと、右肩に担いだ大剣を一気に振り抜きました。

どがぁぁぁぁぁ……

斬るというよりも爆砕する感じで、大人三人ぐらいでやっと抱えられる程の太さの幹が消失しちゃったよ。

「うわぁぁぁ……何すか、あれ?」

『いやいや、ケント様が補助したんでしょう』

『文字通り……化け物……』

ラインハルトさんに見せ付けられた、ど派手な破壊っぷりに、僕ら三人どん引きですよ。

『ぶははははは、素晴らしい、この身体は素晴らしいですぞ!』

あれ? 何だかラインハルトさん、キャラ変わってません?

バステンさんとフレッドさんに視線を向けると、二人揃って肩をすくめて、お手上げのポーズです。

お手上げポーズのスケルトン、良い味出してますよね。

あぁ、分かりました、あれが地なんですね、むしろ今まで猫かぶってたんですね。

生まれ変わった? ラインハルトさんに関しては、色々とやり過ぎちゃいました、てへぺろ。

でもこの先、異世界で生きていかなければならない、か弱い僕の護衛をしてもらうのですから、このまま思い切ってやり過ぎちゃいますよ。

と言う訳で、残りの二人も続けて強化しちゃいました。

バステンさんは、生前『烈火』の二つ名を持つ槍の名手だったそうです。

連続した刺突が得意という事なので、軽くて固いチタンをイメージしたら出来ちゃいました。

サンドブラスト仕上げの艶消しチタンカラーのスケルトンが、これまた漆黒の槍を構えて闇色の靄から爆誕です。

『しゃぁぁぁ!』

漆黒の槍の一突きは、大樹に1mぐらいの大穴を開け、更に、後に立っていた木々すらも貫きました。

もうあまりにも速過ぎて、全く目で追えてないんだけど、槍が伸びたの? それとも衝撃波的な何かなの?

槍で遠距離攻撃とか、意味が分からないんですけど……まぁ、味方だからいいか。

フレッドさんは、生前『瞬斬』の二つ名を持つ双剣の使い手だったそうなので、軽くてしなやかな複合炭素繊維をイメージしたら出来ちゃいました。

カーボンブラックの樹脂光沢を持つスケルトンが、漆黒の双剣を携えて、闇色の靄が去った後に、最初からそこに存在していたような自然さで佇んでいました。

魔法はイメージする力が重要だって聞いたけど、それにしても、死霊術、闇属性魔法、凄すぎでしょ。

『しっ!』

静かな気合いと共に振りぬかれた双剣は、近くにあった巨岩を豆腐みたいに切り裂いちゃいましたよ。

てかさ、その剣とか槍とか何で出来てるの? 未知の物質? ダークマター?

三人揃って、剣とか槍とか楽しそうに見せ合いしているスケルトン、恐すぎなんですけどぉ、絶対敵に回したくないんですけどぉ。

そんな事を思っていたら、三人横並びで足並み揃えて、僕の方へと向かって来たよ。

そして、僕の前まで来ると揃って膝を折り、臣下の礼を示してみせました。

あまりの迫力で、思わず半歩引いちゃったの気付かれなかったかな?

『素晴らしい身体と武器、感謝の念に絶えませんぞ』

『我ら三名、ケント様に付き従って、御身を御守りいたします』

『我らの剣と槍に掛けて……』

「頼り無い主ですが、よろしくお願いします」

『はっ!』

てかさ、三人の強化をやったら、滅茶苦茶お腹がへったんですけど、何か食べさせてくれませんかね。

僕が空腹を訴えると、何かに気付いたラインハルトが空を見上げました。

『バステン、丁度良い、鳥だ、仕留めろ!』

『了解! しゃぁぁぁ!』

タイミング良く飛来した鳥に向かって、バステンが漆黒の槍を突き上げます。

てか、あんな高くまで届くのか? って、羽毛を撒き散らして爆散しちゃったよ。

「す、凄ぇぇぇ、あんな高くまで届くなんて……でも、爆散しちゃったら食べられないよね」

『はっ……も、申し訳ございません』

威力はアップしたけど、調節が甘すぎるようで、この先、魔物と戦闘になった時、ボヤボヤしてたら、巻き込まれてアッサリ死んじゃいそうで怖いんですけど。

この人達、ちゃんと僕の事まで頭に入れて戦ってくれるのでしょうかね。

結局、鳥は諦めて、また果物でお腹を満たす事になりましたよ。

あぁ、美味いんですけど、何だかベジタリアンな異世界っすね。

この後、三人におねだりされて、武器に名前を付ける事になりました。

おぅ、やっぱ相棒には名前が必要だもんね。

とは言え、中二の頭に浮かぶ名前なんて、大体決まってますよね。

「ラインハルトの剣は、グラム」

『はっ』

「バステンの槍は、ゲイボルグ」

『はっ』

「フレッドの双剣は、レーヴァティンとダーインスレイヴ」

『ははっ』

僕が武器に名前を付けてあげると、三人は、それぞれの武器を手に、ニヤリと凶悪な笑いを浮かべました。

てか、三人の表情まで分かるようになってきたんですけど、それって慣れで片付けちゃっても良いのでしょうかね。