軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

藤井太一の回想

あの日以来、食堂に行く他は宿舎から殆ど出なくなっていた。

東京のように、視界を遮る高い建物が無いヴォルザードの空は広すぎる。

何処からか、突然グリフォンが襲い掛って来るのでは……そんな思いが頭を掠めて、屋外にいるとパニックを起こしそうになるのだ。

俺は、木沢が羨ましかった。

同じように召喚されたのに、さっさと日本に帰り、ボロ儲けしている。

日本と通信できるようになった直後から、ヴォルザードの動画を投稿したが、思ったようにアクセス数は稼げなかった。

その上、田山がネット配信中にオークに殺されてから、動画の人気はガタ落ちした。

それならばと木沢を真似て手記を書き、小説投稿サイトにアップしてみたが、酷評されて腹が立ったから消した。

そんな時に、グリフォンが現れた。

人間を鷲掴みにして攫っていく伝説の魔物。

食堂を抜け出して撮影しようという三田の誘いに乗った。

グリフォンなら、数字を稼げると思ったのだ。

三田は、部屋の窓にへばり付いて撮影を試みたが、建物の影に入られてしまった。

飛び去ろうとするグリフォンを、窓枠から身を乗り出して撮影し始めた。

俺も一目見ようと、窓枠に近付いた時だった。

突然天井を突き破って、鋭く巨大な鉤爪が降ってきた。

鉤爪は、腰を抜かした俺の目の前で、ガッチリと三田を捕まえた。

三田は断末魔の絶叫を上げ、鉤爪に突き破られた胸からは血飛沫が降り注いできた。

バサっという羽音とともに突風が吹き荒れ、思わず閉じた目を開いた時には三田の姿は消えていた。

どこからともなく国分が現れ、直後に加藤先生が駆け付けてきたが、俺は座り込んだままで何も出来なかった。

聞かれるままに事件の経緯に付いては正直に答えた。

実際には相当気が動転していて、支離滅裂な受け答えに終始していた気もするが、落ち着いて話すなんて無理に決まっている。

断末魔の叫びを上げた三田が、俺に向かって必死に手を伸ばしていたなんて、言えるはずがない。

あの時の三田が何度も夢に出て来て、自分の叫び声で目を覚ました。

他の奴らの安眠を妨害しないように、夢を見なくなるまで昼夜逆転の生活もした。

俺には……ヴォルザードでの生活は無理だ。

だが日本へ帰国するには、大きな障害が立ち塞がっていた。

国分が作る影の世界を通れば日本に帰れるそうだが、闇属性以外の属性を持つ者は通れないのだ。

唯一、通行を可能にする方法は、国分による属性の奪取なのだが、その方法は粘膜接触、つまりはキスするしかないらしい。

日本には帰りたいが、国分なんかとキスするのは御免被る。

世の中が不公平なのは分かっているが、それにしても国分は恵まれすぎだろう。

ちょっと苦労したらしいが、三人も可愛い女の子を侍らせ、ハーレム生活を送ると公言するとか、ふざけるなと言いたくなる。

ギルドで仕事を見つけて働いている奴の話では、黒髪と見るだけでヴォルザード在住の女の子から話し掛けられて、国分を紹介してくれとか言われるらしい。

Sランクの冒険者というだけで、金にも女にも不自由しないそうだ。

日本への帰宅も半ば諦め、宿舎に引きこもっていると気が狂いそうだった。

このまま、この宿舎に引きこもって一生を終えるのかと考えると、焦る気持ちと諦めが交互に訪れて、気分がネガティブになるばかりだった。

そんな時に、急に日本に帰れると聞かされた。

国分が召喚術と送還術を会得したらしく、属性の奪取は必要なくなったそうだ。

精神的に病んでいたおかげで、男子の中からは最初に帰国させてもらえることになった。

また国分の世話になるのは癪だったが、背に腹は代えられない。

送還術の詳細は、使う国分自身が良く分かっていないらしい。

そんなもので人間を送って大丈夫なのかと不安になるが、実験は繰り返しているらしい。

何よりも、俺はヴォルザードには居たくない。

そのためならば、少々のヤバい状況にでも乗っかるつもりだ。

送還術には危険が伴うと国分が言っていた。

思えば、こちらの召喚された時も、校舎の三階部分ごとスッパリと切り取られて送られてきた。

それと同様に、国分が指定する範囲が切り取られて送られるらしく、境界を跨いでいる物はスッパリと切断されるそうだ。

実際に、俺の腕よりも太い木の棒が切断されるのを見せられれば、わざわざ自分の身体で試そうなんて気にはなるはずもない。

俺と一緒に帰国するメンバーは、オークに殺された田山と一緒にネット配信をしていた渡瀬と、ラストックの駐屯地で騎士にボコられて精神的に病んだ他のクラスの男子、それと自殺した関口と仲の良かった女子二人だ。

さっさと日本に送って欲しかったのだが、英語教師の中川が国分に絡んで度々作業が中断していた。

誰かが言った『すだれハゲ』の一言には吹いた。

すだれ中川は、加藤先生に引き摺られ連れて行かれた。

国分が日本と最終確認を行い、日本に戻れると思った時にあのアクシデントが起きた。

送還の範囲に、すだれ中川が駆け込んで来たのだ。

駆け込むだけならば、送還される人数が増えただけで済んだが、女子の一人が押し出されそうになったのだ。

その結果、片足が送還範囲からはみ出し、ヴォルザードに取り残されてしまった。

昼間の屋外から、突然見知らぬ倉庫のような場所に移動して驚いたのも束の間、女子の絶叫が響き渡った。

「いやぁぁぁぁ……足が、足がぁぁぁ……」

輪切りにされた太腿からは血が噴出している。

女子の絶叫を切っ掛けにしてフリーズしていた時間が一気に動きだした。

「ふざけんな! 手前、先公のくせして何やってんだよ!」

「いや、私は……ぐはぁ!」

渡瀬が、すだれ中川を殴り飛ばしたのを見て、俺の中でも何かがプチーンと切れた。

すだれ中川の腹に思いっきり蹴りをぶち込む。

異世界召喚なんて理不尽な事に巻き込まれて以来、溜まりに溜まった鬱憤をぶつける対象が見つかったんだ、加減する気はサラサラなかった。

すだれ中川を男子三人でボコっていたら、国分に呼び掛けられた。

「藤井! この子達をヴォルザードに戻して治療するから、このゴーレムの範囲から離れて、誰も近付かせないで!」

見れば両手を血塗れにしながら女子の足をロープで縛り、必死に止血を試みているようだ。

チートに恵まれたハーレム野郎だと思っていたが、咄嗟にこれだけの動きが出来るのは、やっぱり大したものだ。

「分かった、任せろ!」

大声で返事をすると国分は影に潜り、直後に女子二人はヴォルザードへと逆戻りしていった。

これは後で知ったことだが、女子の脚は国分が治癒魔術で接合したらしい。

投稿サイトで同級生の誰かがアップした動画も見たが、切断した脚が見ている間に跡も残さずにくっつき、直後に立ち上がる様子はマジで手品のようだ。

あんな芸当が出来るならば、金や女が集まってくるのも納得だ。

それにしても、足を切断した女子を引き戻したもう一人の女子は、マジでスーパープレイだった。

あれがなかったら身体が真っ二つになっていただろうし、さすがの国分でも助けられなかっただろう。

すだれ中川は、顔の形が変わるぐらいボコってやった。

倉庫に飛び込んで来た自衛官に止められ、後で警察の人間にめちゃくちゃ説教されたが、謝る気は全く無い。

いずれ処分を受けることになるかもしれないが、それでも全く後悔はしていない。

警察の事情聴取、健康状態のチェックなどが行われた後で、帰宅が許された。

約四ヶ月ぶりに戻って来た日本の風景に涙が出た。

道路を走る自動車、信号機、電柱、建ち並ぶビルやマンション。

ここはファンタジーの世界じゃない、ここにはグリフォンはいない。

寿司食って、スナック菓子を食って、炭酸飲料をガブ飲みする。

召喚される前には、珍しくも何ともなかった普通の生活の有り難味を噛み締めた。

だけど、良いことばかりが待っていた訳ではなかった。

たぶん、同級生の誰かから聞いたのだろう、三田の家族が訪ねて来たのだ。

目的なんて聞くまでもない、三田が死んだ時の話を俺にさせるためだ。

勿論、面会は断わった。

それなのに、三田の母親は、毎日家に押し掛けて来た。

ようやく抑え込めるようになってきていた記憶が蘇り、また悪夢にうなされる日々が戻ってきた。

政府の研究機関の人間が尋ねて来たのは、そんな時だった。

魔術に関する調査への協力を依頼された。

調査は、研究機関に泊り込みで行われ、報酬も支払われると言われた。

三田の母親の訪問に辟易としていた俺は、一も二もなく承諾した。

カウンセリングも受けられると聞いて、俺の家族も賛成した。

調査の内容は、そのものズバリ魔術についてだ。

日本でも魔術が使えるようになれば、それは人間の新たな可能性の開花に他ならない。

この研究所では、国分が持ち帰った魔道具についての研究も行われているそうだが、これからは人間についての調査も行われるそうだ。

これまで日本に帰還した同級生は、国分によって属性の奪取が行われていたので、戻って来た時点で魔術が使えなくなっていた。

だが、送還術で帰還した俺達は、属性の奪取が行われていない。

つまり、国分以外で魔術が使える状態で帰国した初めての人間なのだ。

しかも、同時に帰国した渡瀬ともう一人は、魔術を使うことを拒否しているそうだ。

ようやく、ようやく俺にもチャンスが巡って来たらしい。

生憎俺は術士タイプだが、それでも身体強化の魔術を使えば、百メートル走の世界記録の更新だってできるはずだ。

ところが、うろ覚えだった詠唱を行って攻撃魔術を発動すると、二発撃ったところで発動出来なくなってしまった。

折角掴み掛けたチャンスが逃げてしまうかと焦ったが、研究者達は落胆していていなかった。

日本には魔素が存在していないので、魔術が使えなくなるのは想定の範囲内らしい。

実際に、魔石が置かれ、魔素で満たされた部屋で休息すると、また魔術が使えるようになった。

俺のツキは失われていなかった。

この日から、魔術に関する計測に追われる日々が始まった。

攻撃魔術だけでなく、身体強化の魔術も使うように要請された。

身体強化の詠唱は覚えていなかったが、同級生がヴォルザードからアップした詠唱の動画を見て覚えさせられた。

俺は、身体強化の割合が低い。

頑張っても二倍に届かず、騎士タイプのクラスメイトからは馬鹿にされたが、ここでは賞賛の嵐だった。

五十メートルを四秒台で走り抜ければ、それも当然だろう。

騎士タイプの連中が帰国してしまえば、俺の天下も終わるかもしれないが、それまでは俺のターンだ。

計測自体は退屈極まりなかったが、賞賛の連続だったので余り苦にはならなかった。

計測値が落ちた時でさえも、新しいパターンのデータが取れてよかったと言われるのだ。

その何割かは社交辞令だと分かっていても、悪い気分はしない。

しかも、一番近くで実験のサポートをしてくれるのは、若いリケジョの研究員なのだ。

計測機器を付ける時など、身体に接触されるし、時々その、当たるのだ……胸が。

国分がニヤけているのを見て腹を立てた事もあったが、今はそれが理解できる。

リケジョの高松さんとは、計測以外の時間にも一緒に過ごすことが増えていった。

食事や休憩などの時間に、計測以外の話もしたのだが、日本の話題ばかりでヴォルザードの話は殆ど聞かれなかった。

異世界について興味無いはずがないだろうが、たぶん三田の一件を考慮してくれているのだろう。

研究機関に泊まり込むようになってから、悪夢にうなされる事はなくなった。

魔術に関する計測が行われると同時に、魔力を回復する方法についても色々な試みが始められた。

最初は、魔石が置かれ、密閉された部屋に籠もって回復を待った。

部屋には、宇宙船と同等の二酸化炭素除去装置が取り付けられているそうだ。

小部屋の次は、ボンベとマスクという形に変わった。

その次は、ボトルだった。

魔石は水にも溶ける性質があるらしく、粉砕して水に溶かしたものを飲んで魔力を回復させた。

ラストックで飲まされていた回復薬と同じようなものなのだろうが、スポーツドリンクに混ぜて吸収を良くしているせいか、こちらの方が速効性があるように感じる。

方式を変える度に、魔力の回復は早くなったのだが、計測の頻度が増えたせいでストレスを感じるようになった。

高松さんが近くに居ても、国分のようにイチャイチャできる訳ではない。

お預けを食らった犬にでもなった気がして、イライラが募っていった。

そんな時に、一時帰宅の話が持ちかけられたのだ。

近頃では、帰国者に対する世間の関心は薄れていっているそうだ。

今回は、女子が足を切断する事故があったので、すだれ中川に対するバッシングは巻き起こっているが、一緒に帰国した俺達が話題に上る事は殆ど無かった。

俺の家にもマスコミが押し掛けるような事態にはなっていないし、三田の母親も諦めたらしく家を訪ねて来なくなったそうだ。

それでも、身の安全を確保する為に、GPSの発信機を持たされ、家から出る際には行き先を連絡するように言われた。

ボディーガードが二十四時間体制で、警護をするらしい。

安心感を覚える一方で、行動を監視されているようで息苦しさも感じる。

帰宅に際して、錠剤が手渡された。

魔石を微粒子にしてから固め、水溶性の糖質でコーティングした物らしい。

これを五百ミリリットルのペットボトルに放り込めば、魔力の回復薬になるそうだ。

ただし、研究所以外での魔術の使用は、誘拐などの危機に瀕した場合に限定された。

と言うか、誘拐って……まぁ、俺のレア度を考えれば無い話ではないか。

マスコミに凸られる心配が無いのは、有り難い話なのだろう。

自宅に戻っても至って普通で、何の変哲も無い団地の一室だ。

だが、心のどこかに、木沢のように世間からチヤホヤされたいという思いがあった。

かと言って、本当にマスコミに囲まれるのもウザそうだ。

そんな時に、ふと思い付いたのだ、外で魔術を使ってみようと。

そのためには、一つ障害がある、ボディーガードだ。

俺が表で魔術を使っているのを見たら、間違いなく止めにくるだろう。

そこで俺は、ボディーガードを撒く作戦を考えた。

失敗したところで文句を言われる程度だろうし、文句があるなら調査への協力は拒否すると言ってやるつもりだ。

ショッピングセンターに買い物に行くと伝え、まんまとボディーガードを撒いて大江戸線に乗り込んだ。

代々木駅で下りて、明治神宮の中を抜けて原宿へと向かう。

GPSの発信機は、電車の中に置き去りにした。

ボディーガードを撒いてしまって、最初は不安だったが、明治神宮の中で尾行されていない事を確認すると、ようやく一般人に戻れた気がした。

注目されたいのに、監視はされたくない、矛盾しているようだが偽らざる気持ちだ。

これで心置きなく魔術が使えると思ったが、どう使うかが問題だった。

身体強化を使ってアクロバティックな動きを披露できるほど、俺の運動神経は良くない。

かと言って、攻撃魔術で人を切り裂く訳にはいかないし、木を切り倒したところで非難されるだけだ。

改めて考えてみると、魔術なんて現代の日本では大して使い道が無いような気がする。

それならいっそ、思いっきり下らない事に使ってみたらどうだ。

俺は一つのアイデアを思い付いた。

明治神宮の参道を歩きながら、俺は魔術の練習を始めた。

「マナよ、マナよ、世を司りしマナよ、集え、集え、我が手に集いて風となれ、踊れ、踊れ、風よ舞い踊れ」

手の中で起こした風を、刃にしないで放出する。

放出する方向、向きが思い通りになるように何度も練習する。

持たされた錠剤は全部持って来たので、魔力切れの心配は無用だ。

飲み物に溶かすのは面倒になったので、錠剤を口に入れて噛み砕いて飲み込んだ。

砂っぽい感じがするかと思ったが、そんな事はなく、効果も劇的だ。

これを日本で大量生産して、ヴォルザードで売ったら儲かるんじゃないかなんて考えが頭に浮かんだ。

三十分ほどの練習で、俺のオリジナル魔術は完成した。

意外にも俺には魔術の才能があったようだ。

ラストックでは、お決まりの魔術しか使わなかったから気付かなかった。

残っていた方が良かったのかと思いかけたが、やっぱりあの街には居たくない。

明治神宮を抜けて、足を向けた先は原宿表参道だ。

適当な場所を探して移動し、表参道ヒルズ前の歩道の柵に座った。

待ち合わせをしているように装いつつ、囁くように詠唱した。

「マナよ、マナよ、世を司りしマナよ、集え、集え、我が手に集いて風となれ、踊れ、踊れ、風よ舞い踊れ」

俺の手を離れた小さな風の渦は、歩道を滑るように移動すると、上空に向かって舞い上がった。

「きゃぁぁぁ! 何、今の風……」

俺の魔術は、五人ほど女子高生のスカートを逆さになるほど捲り上げた。

チェックに、白に、紐って……俺のオリジナル風属性魔術『スカート捲り』の効果は絶大だった。

この下らない遊びに俺は熱中した。

同じ場所で風を起こせば警戒される。

だから、渦を滑らせていく方向、距離、角度を変えて、スカートを捲くりまくった。

だけど、すぐに飽きてしまった。

こんなもの、小学生のガキが走って行って捲るのと何にも変わらない。

もっと魔術にしか出来ないことをするべきだ。

それも思いっきり下らない事が良い。

錠剤をまた一粒口に入れて噛み砕く。

胃の中に落ちていくうちに、膨れ上がるように力が沸いてくる。

これは、ラストックで飲まされた薬の比じゃない高揚感だ。

今なら、何だって出来そうな気がする。

今なら、あの国分や鷹山だって、俺の足元に平伏するはずだ。

表参道から竹下通りへと移動する。

さて何をやってやろうかと考えると、自然と笑いがこぼれた。

すれ違う人々が怪訝そうな顔で俺を見ている。偉大なオーラに気付いてしまうのだろう。

五メートルほど前を、ゴスロリに身を包んだ女が歩いていた。

そうだ、あの女にしよう。

スカートが捲れるだけでなく、引き千切れるぐらい強い風で捲ってやろう。

「マナよ、マナよ、世を司りしマナよ、集え、集え、我が手に集いて風となれ、踊れ、踊れ、風よ舞い踊れ!」

俺の手を離れた渦は、道路を滑っていくとゴスロリ女の足元へと吸い込まれるように移動した。

「行け!」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

ゴスロリのスカートは捲れ上がったが、引き千切れる事はなかった。

「ちっ、面白くねぇ……」

他のターゲットを探して竹下通りを駅の方向へと歩く。

もっと強くしないと駄目なのだろうな。

いっそスカートだけでなく下着も全部引き千切って、全裸に剥いてやるか。

あぁ、そうか、風に刃を混ぜればスカートも下着もバラバラに切り裂けるな。

くふふふ……そうしよう。

おっと錠剤、錠剤、もう面倒だな、まとめて食っちまうか。

錠剤をボリボリと噛み砕いて飲み込む。

次は、クレープを食べている三人組の女子高生をターゲットに選んだ。

さぁ、人混みの真ん中で真っ裸にしてやるよ。

「マナよ、マナよ、世を司りしマナよ、集え、集え、我が手に集いて風となれ、踊れ、踊れ、風よ舞い踊り、風刃となれ! うらぁぁぁ!」

さっきよりも大きく、剃刀のような刃を混ぜ込んだイメージの渦は、狙い通りに三人の真ん中に滑り込んだ。

「おらっ、行けぇ!」

俺様の放った魔術は、想像以上の威力を発揮した。

スカートや下着どころか、女子高生の皮膚や肉をズタズタに切り裂いて、内臓も骨もバラバラにして周囲に巻き散らした。

「あはははは、何だこれ、ぜんっぜんエロくねぇ、グロいだけじゃん。あーっ……めんどい、そうだよ、こんなん手で剥けばいいんじゃん」

「えっ、何っ? いやぁぁぁぁぁ!」

近くいた別の女子高生の制服を引っ張ると、紙みたいに簡単に破けた。

身体の底から力が沸き上がってくるみたいだ。

あぁ、喚いて煩せぇなぁ、あれっ、ビンタしたら首折れちった。

「手前、俺の女に何やってんだよ!」

何この野郎、何それ殴ってるつもり、全然痛くねぇ、あっ腕取れちゃったよ。

脚蹴ったら、折れちゃった、モロいなぁ……はは、ははははは、たーのしぃ!

んなことより、女だ女!

ばーか、今の俺から逃げられる訳ねぇだろう、おら脱げ、脱げ。

くっそ、警官、邪魔!

あれっ、腹パンしたら背中に抜けちゃったよ。

あぐぅ、何撃ってんだ、手前、ぐぅ……あっ……