軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暴走ギガース

魔の森の通行規制が解除されて二日目、今日あたりジョーたちも帰って来るんじゃないですかね。

突然の飛来で驚いたドラゴンですが、どうやら影響は限定的で済みそうです。

それでは、マールブルグに出現した魔剣のダンジョンでも探索しに行こうかと思っていたら、ドラゴンの監視をしていたはずのレビンが飛び出して来ました。

「ご主人様、大変みゃぁ!」

「なに、ない、そんなに慌てて、どうしたの?」

「ドラゴンに追われたギガースが暴走してるみゃぁ」

「はぁ? どういう事?」

レビンが言うには、餌を狩りに出かけたドラゴンを見つけたギガースが、自分の縄張りを荒らされると思ったのか、攻撃を仕掛けたそうです。

「それで、怒ったドラゴンが反撃して、ブレスの威力に怯えたギガースがパニックになって暴走を始めたみゃぁ」

ギガースは身長が十メートル以上ある巨人で、ゴリラのように長い腕を地面に付いて、ナックルウォークで移動をします。

あれが暴走しているとなると、相当な迫力でしょうね。

「それで、ギガースはどうしたの?」

「ご主人様、ノンビリしている場合じゃないみゃぁ。ギガースは北に向かって暴走を続けているみゃぁ」

「えっ、それって、こっちに向かって来てるってこと?」

「そうみゃぁ、あの勢いだと飛び越えて来るみゃぁ」

「ヤバい! レビン、案内して!」

「こっちみゃぁ!」

レビンの案内で影の空間に潜り、南の大陸へと移動しました。

「あれみゃぁ!」

レビンに誘導されて影の空間から出ると、ギガースの咆哮が聞こえてきました。

「ボオォォォォォ……」

ギガースは、木を薙ぎ倒しながら爆走を続けています。

薙ぎ倒された木が宙を舞い、土埃が舞い上がっています。

そして何よりも、ギガースの爆走に驚いた魔物たちがパニックになって逃げ惑っています。

「レビン、ドラゴンは?」

「もう居ないみゃぁ」

「えっ、居ないの?」

「ドラゴンは、とっくに飽きて居なくなったみゃぁ」

「追われていないのにギガースは走り続けているの?」

「そうみゃぁ、あいつら馬鹿だから、体力が途切れるまで走り続けるみゃぁ」

「てか、もう僕が切り離した海峡部分だよ」

そこへ、先回りして状況確認をしてきたラインハルトが合流しました。

『ケント様、ギガースに追われた魔物の一部が海峡を飛び越えて、ヴォルザード側にも影響が出始めておりますぞ』

「それって、魔物の大量発生! 急いで知らせないと」

『ケント様、それよりもギガースを止めてくだされ』

「そっか、そっちが優先か」

そう言っている間にもギガースは走り続け、僕が切り出した海峡に気付かず、勢いよく転落しました。

「ボオォォォ……ウバォォォォ……」

「ちょっ、何してんだよ!」

海峡に落ち込んだギガースは、今度は急に海に落ちた状況に驚き、北側の断崖を目茶苦茶に殴りつけて壊し始めました。

『ケント様、ギガースは土の魔術を使います。このままだと、這い上がってきますぞ!』

「まったく、何なんだよ、もう! 断罪の槍、送還!」

ドラゴンが飛来して、不測の事態が起こった時に備えて、断罪の槍を大量生産しておきました。

魔石を組み込み、土をガッチガチに硬化させて作った槍ゴーレムは、上空一万メートルに送還された後、自由落下によって加速していきます。

「ボオォォ、ボォォォォォ……」

「喧しい、断罪の槍、召喚!」

自由落下によって加速した槍を、暴れ回るギガースの頭上に召喚しました。

槍には着弾と同時に分裂するように溝を刻んであります。

ズドーン……という大音響と共に、ギガースの巨体はバラバラになって吹き飛びました。

『ケント様、あれでは魔石も粉々ですぞ』

「うん、まぁ、今はギガースを止めるのが最優先だったからね」

ギガースの巨大な魔石を取り出せば、一般的な家族が数年楽に暮らせるぐらいのお金が入ってくるので少し勿体無い気もしますが、今は安全第一です。

「ラインハルト、コボルト隊を指揮して、魔物の動向を探って」

『もう探ってる……』

「フレッド、状況は?」

『良くない、既にパニックになった魔物の移動が始まってる……』

「ギガースを倒したけど駄目か」

『ギガースの声に怯えて動き出していた……』

パニックになったギガースの叫び声が近付いてきて、他の魔物もパニックになって逃げ始めたようです。

「ラインハルト、フレッド、パニックになった魔物の群れの先頭を捕捉、追跡して。僕はクラウスさんに知らせくる」

『了解ですぞ』

『りょ……』

ラインハルトたちと別れて、急いでヴォルザードのギルドに向かいました。

クラウスさんは、どこかの商会主と思われる人たちと面談中でしたが、闇の盾を出して踏み込みました。

「ケントです、入ります!」

「どうした?」

「魔物の大量発生が起こりつつあります」

ギガースの暴走に端を発した魔物の大量発生が起こり、ヴォルザードやラストックなどに向かって移動を始めている現状を伝えた。

「ちっ、やっと街道が元通りになったと思ってたのに……」

「何とか止めてみますけど、念のために警報を出して下さい」

「分かった、そっちは頼むぞ」

「全力を尽くします」

マルトたちを呼び出して、ラストックと魔の森を抜ける街道の野営地に警告を出しました。

『ケント様、想定よりも魔物の移動が速いですぞ』

「どういう事?」

『魔物の群れに追われた魔物の悲鳴に驚いて、群れが来る前に走り出す一団が移動を速めているようですな』

つまり、大量発生の本体が到達する以前に、悲鳴や気配などを察知して、新たな先頭部分が発生しているようです。

「それじゃあ、本体を止めても止まらないんじゃない?」

『その可能性はありますが、それでも魔物の絶対数は減らせますぞ』

「そうか、十万到達するのが、半分になれば、それだけ被害は減らせるか……」

『どうされました、ケント様』

「いや、街道側から迎え撃とう」

『迎え撃つ? どうやるのですか?』

「ギガウルフのゼータたち、ウェアウルフのイチロウたち、ロックオーガのイッキたち、それにコボルト隊を並べて、街道側から南の大陸側に向かって一斉に吠えさせて、押し込んでやろう」

『なるほど、こちらから大量発生を起こしてやるのですな』

「うん、ぶつかった所で、更に後押しをすれば、止められるんじゃない?」

『やってみる価値はありますな』

魔物の大量発生は、水面に落ちた波紋のように広がっていきます。

それなら、こちら側からも波を起こしてぶつけてやれば、止められなくとも勢いは削げるはずです。

「ラインハルト、迎撃の指揮をお願い」

『了解ですぞ』

「僕は南の大陸側からくる群れの先頭に、槍を降らせて勢いを削ぐよ」

ラインハルトに迎撃の指揮を頼んだ後、僕は自宅へと戻りました。

「セラ、魔物の大量発生が来るかもしれないから、家に立て籠もる支度をして」

「分かりました。ケント様は?」

「僕は影の空間から攻撃するから心配しないで」

「はい、ご武運を」

自宅のことは、セラとカミラ、それとネロに任せて影の空間へと潜りました。

「マルト」

「わふぅ、呼んだ? ご主人様」

「ちょっと僕の体を見ておいてね」

「わぅ、任せて」

「ミルト、ムルトは、アマンダさんのお店とメイサちゃんたちを見ておいて、たぶん大丈夫だと思うけど、なるべく一か所に集めておいて」

「わふぅ、任せておいて」

「わぅ、ばっちり守るよ」

これでヴォルザードは大丈夫でしょう。

ではでは、僕も迎撃に向かいますかね。