軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

取り戻した日常

飛来したドラゴンは、予想していたよりも大人しい性格のようで、引っ越し先と決めた南の大陸の最高峰で、穏やかに暮らしています。

突然現れた、桁違いに強い存在に動揺していた魔物たちも、どうやら落ち着きを取り戻してきているようです。

一番大きな被害を受けたグリフォンたちも、ドラゴンには敵わないと諦めたのか、住み分けと言う道を選んだようです。

でも、そのうちに血気盛んな若い個体が、ドラゴンに戦いを挑んで返り討ちにされる……みたいな事が起こるようになるんでしょうね。

ちなみに僕は戦いませんよ。

ヴォルザードに攻め込んでくるなら話は別ですが、南の大陸で大人しくしているならば、こちらからちょっかいを出すつもりはありません。

ドラゴン騒動が小康状態となったので、気になっている場所へ向かいます。

本日のお昼は、アマンダさんのお店です。

地震のせいで食堂が火事になり、アマンダさんも全身に火傷を負ってしまいましたが、コボルト隊が消火にあたり、僕が治療を終えています。

消火が早かったおかげで、既にお店も営業を再開しています。

「アマンダさーん、何か食べさせてくださーい!」

「はいよ、丁度昼の営業が終わったところだ、座って待っておいで」

いつものように裏口から声を掛けると、いつものようにアマンダさんの元気な声が返ってきました。

炊事場の脇を抜けてお店に入ると、綿貫さんがテーブルを片付けているところでした。

「おっす、国分、ドラゴン関係で忙しそうだな」

「まぁね、でも、思っていたよりも大人しいから助かってるよ」

「そうなのか? ドラゴンていうと狂暴なイメージあるけどな」

「何て言うの、強者の風格? みたいな感じで、無益な争いはしないみたいだね」

「そうなんだ、でも、その方が助かるな」

「そうそう、ヴォルザードまで狩りにでも来られたら、それこそ大騒ぎだもの」

「サチコ、そっち終わったら、こっちのを運んでおくれ!」

「はーい! じゃ、続きは食べながらな」

綿貫さんは、まとめた食器を両手一杯に持って、炊事場へと戻って行きました。

下宿時代に座っていた、いつもの席で待っていると、テーブルにドン、ドン、ドドーンっと料理が並べられました。

分厚い豚のソテー、クリームシチュー、ミートパスタに山盛りサラダ。

これって、まかないのメニューじゃないよね。

「アマンダさん、豪華すぎじゃないですか?」

「何言ってんだい、あたしも店も燃えずに済んだんだい、この程度じゃ安すぎるよ」

「そんな……助けるなんて、家族なんだから当たり前ですよ」

「だったら、たまに帰って来てくれる家族をもてなすのも当たり前だろう」

もう、そんな事を言われたら、ウルウルしちゃうじゃないですか。

「じゃあ、遠慮なくいただきます! うん、このソテー美味しい!」

「国分、野菜から食べないと太るぞ」

「ちっちっちっ、綿貫さん、それはもう古いんだよ。今はタンパク質から先に食べる方が痩せるって言われてるんだよ」

「えっ、マジ?」

「マジマジ、胃液の分泌がどうとか……ネットに載ってたよ」

「良く知ってるな、国分」

「まぁね……というか、唯香の受け売りなんだけどね」

「あぁ、なるほど……妊娠中の太り過ぎは良くないからな」

「うん、まぁ唯香は常にダイエットの情報にはアンテナを張ってるみたいだけどね」

「じゃあ、今は産後のリカバリーとか調べてそうだな」

「やってる、やってる、というか、綿貫さんって、元に戻るの速かったよね?」

「あぁ、仕事に復帰するのも早かったからだろうな」

今日も綿貫さんは、娘の未来ちゃんをシーリアさんに預けて仕事に来ているそうです。

シェアハウスが、そのまま保育園みたいになっているのは便利だよね。

「アマンダさん、あの時、急いで治療しちゃいましたけど、その後で気になる事は無かったですか?」

「あぁ、あったよ」

「えぇ、何ですか? 具合が悪かったら、すぐ治療しますよ」

「違う、違う、そうじゃないよ、逆だよ」

「逆?」

「全身を治療してもらったからだろうね、肌が若返った気がするよ」

「あぁ、言われてみれば……」

そう言われてからアマンダさんを見てみると、以前よりも若返っているように見えます。

目元とか、頬とかの張りがアップして、血色も良く見えますね。

「だろう? これからは、五年に一回ぐらい治療してもらおうかね」

「いいですよ、そのうちに、ヴォルザードの美魔女って呼ばれるようになりますよ」

「いいね、どうせなら、メイサと姉妹に見られるぐらいに若返らせてもらおうかね」

「あははは……それは、いくらなんでもやり過ぎですよ」

みんなで楽しく喋りながら食事をしていたら、綿貫さんが思い出したように聞いてきました。

「そうだ、国分。鷹山たちは、まだ帰って来られないのか?」

「えっ、鷹山がどうかしたの?」

「いや、ラストックに行ったきりで戻って来ないから、シーリアが心配してるんだよ」

「あぁ、そうか! 鷹山たちじゃ戻って来られないのか」

ヴォルザードとラストックの間の通行は、条件付きで再開されていますが、その条件はBランク以上の護衛が付くことです。

鷹山やジョーは、確かまだCランクなので、護衛に行ったまま戻って来られないのでしょう。

「なるほど、ランクが足りないのか。でも、現地でBランクを雇えば良いんじゃないのか?」

「そうなんだろうけど、護衛の依頼って基本的に往復で受けるものだし、今の状況だとBランクの冒険者を確保するのが難しいんじゃない?」

「なるほど……でも、オーランド商店とか儲かってるんだし、金積んで戻してやれば良さそうだけどな」

「ラストックは、街の規模としてはヴォルザードよりも小さいし、当然所属している冒険者の数も少ないんじゃない?」

「そうなんだ。あたしは国分に助け出してもらってから一度も行ってないし、あの頃は駐屯地の外に出られなかったからな」

「途中の野営地に宿泊所とかも作ったから、これからは商売以外に観光とかで行き来する人も増えるんじゃないかなぁ……って、思っている矢先にドラゴンが来たからね」

「タイミング悪いな」

「それは、ジョー達が一番痛感してるんじゃない?」

「だろうね」

そうか、ジョー達が依頼でラストックへ行っているとは思っていませんでした。

ジョー達以外でも、ヴォルザードから行ったきりになってる人が居そうですね。

「食べ終わったら、クラウスさんに相談しに行ってくるよ。何か例外措置みたいなのを出来ないか」

「悪いね、シーリアが口では大丈夫って言ってるけど、あんまり大丈夫じゃなさそうだからさ」

「そうだね。あんまりパパの出張が長引いて、リリサちゃんに忘れられたらダメージ大きそうだしね」

「あははは……それは笑い事じゃないけど、ありそうだなぁ。鷹山は忘れて、ジョーだけ覚えていたら悲劇だからな」

「ふははは……それは大変だよ。でも、なんでリリサちゃんはジョーがお気に入りなんだろうね」

「さぁな、なんでかは分からないが、ジョー大好きなのは間違いないな」

まぁ、赤ちゃん時代の話だし、これから大きくなっていけば変わっていくんでしょうけど、年頃になってもジョー大好きだったら鷹山と揉めそうですね。

そうならないように、ジョー達が戻って来れるように動きましょうかね。

「アマンダさん、ごちそうさまでした。今日も美味しかったです」

「あぁ、いつでも食べにおいで」

「はい、じゃあ、友達が困っているみたいなんで、ちょっと行ってきます」

「あいよ、気を付けて行っておいで」

「綿貫さんも、またね!」

「悪いな、頼むね!」

「オッケー!」

二人に見送られながら闇の盾を潜り、ギルドの執務室へと移動しました。