軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新年初仕事

年明け六日、ヴォルザードの街は本格的に新年の仕事が始まります。

年末の五日、年明けの五日を殆どの人が休み、今日から本格始動なので、急激に街が賑やかになった感じがします。

我が家はヴォルザードの南西、リーゼンブルグ王国へと向かう門のすぐ近くなので、夜明け前から開門を待つ人のざわめきが聞こえていました。

ちなみに、僕も今日から新年の仕事を始めるので、ちょっとワクワクして早起きしちゃったんですよね。

夜明け前の城壁の上から見下ろすと、たくさんの馬車が門が開くのを待っています。

そして、その馬車の間を守備隊の隊員さんとか、護衛を務める冒険者とか、パンやお茶を担い売りする人とかが行き交って、もうゴッチャゴチャになってますね。

「いやぁ、初荷とあって大賑わいだねぇ」

『ケント様、この様子では野営地の拡張が必要になりそうですぞ』

「そうだね、ヴォルザードみたいに古い城壁を抱え込む形で拡張させていこうか」

『そうですな、既存の野営地が使えないと、商人たちが難儀しますからな』

開門前の賑わいを僕と一緒に眺めて、ラインハルトも楽しそうにしています。

ラインハルトが生きていた頃は、ランズヘルト共和国とリーゼンブルグ王国は一つの国だったそうですから、国は分かれても栄えている様子を見るのは嬉しいのでしょう。

『ケント様の本日のご予定は?』

「ぼくは、みんなと朝食を食べたら、魔の森の奥に行ってゴブリン四頭、オークを二頭生け捕りにして実戦訓練場に納品する予定だよ」

『訓練場も今日からでしたか』

「うん、オークは守備隊が使うみたいだね」

ヴォルザードの南側に作った実戦訓練場は、守備隊とギルドが共同で使用しています。

極大発生の危険性は無くなりつつありますが、それでも何が起こるか分かりません。

例えば、大きな地震や地殻変動が起こって、再び南の大陸と陸続きになれば、大量の魔物が一度に移動してくる事だって考えられるのです。

魔の森に関しては、僕の眷属たちが夜の散歩を兼ねてパトロールを行っていますが、それとても全ての地域に目が届いているとは限りません。

東西の幅が馬車で二日、南北はその四、五倍の広さがあるので、いくら僕の眷属たちが優秀だとしても、見回りには限界があるのです。

特に、最近は街道沿いの安全確保に重点を置いているので、その他の場所が疎か……と言ったら言いすぎでしょうが、手薄になっているのは事実です。

この辺りの話はクラウスさんとも共有しているのですが、あんまり魔物が減っても冒険者の仕事が減るし、魔石という資源が入手しにくくなるから、その程度の管理で構わないと言われています。

というか、元々は僕の眷属による管理なんか無かった訳ですし、問題ないでしょう。

夜明けと共に門が開き、多くの馬車がラストックを目指して出立していく様子を見守った後、朝風呂を浴びてから食堂へと向かいました。

我が家で暮らす全員の健康状態を確認しながら、賑やかに朝食を食べ、お嫁さんたちとムチューってしてから魔物の捕獲、納品へと出掛けます。

お嫁さんたちの列の最後に、フィーデリアが混じっていましたが、頭ポンポンで済ませました。

うん、ちょっと不満そうに頬を膨らませるフィーデリアは可愛いけど、まだ恋愛対象としては見られないんだよねぇ。

魔の森へと出掛ける前に、実戦訓練場へ顔を出しました。

捕獲したオークやゴブリンを送還する檻の番号を管理担当と確認し、ちゃんと扉が閉まっているか、施錠はされているか確かめました。

なにせ、僕が捕まえるのは厳選した活きの良い魔物たちなので、逃げ出したりしたら困りますからね。

チェックを終えたところで、影移動で魔の森の奥地へと移動します。

移動した場所は、例のヒュドラを断罪の槍でぶっ飛ばした後にできた池で、今日もたくさんの魔物が集まっています。

ここはバラバラになったヒュドラが肥料のような役割を果たして、ミミズとか虫とかが大型化し、それを狙ってゴブリンなどの小型の魔物が集まり、それを狙った大型の魔物も集まっています。

栄養状態が良いせいか、活きの良い個体が多いので、実戦訓練用の捕獲には持ってこいの場所なんですよね。

「まずは、ゴブから始めるか」

「始めるかぁ」

「始めよぅ」

「始めるぞぉ」

影の空間から物色していると、マルトたちもやって来て、一緒にゴブリンの品定めを始めます。

「ご主人様、あれあれ!」

「うん、あれがいい!」

「あっちもいいぞ!」

「そうだね、あれとあっちにするか」

年末年始の休みの間、実戦訓練場も休みだったので、魔物の捕獲も久しぶりです。

まぁ、十日やそこらで大きく育つわけじゃありませんが、それでも今日は活きの良いゴブリンが多いように見えますね。

「ではでは、送還! こっちも送還!」

群れのボスクラスだったのでしょう、水辺に集まったゴブリンどもに睨みを利かせていましたが、僕の送還術でパっと姿が消えました。

残されたゴブリンたちは、急に強面の仲間が消えたのに驚いて、目を見開いて固まっていますね。

「ご主人様、ちゃんと送還された」

「されてた!」

「二頭ともされてた!」

二頭のゴブリンを送還すると、すかさずマルトたちがちゃんと送還されたか確かめてきてくれました。

マルトたちをワシャワシャと撫でてやった後で、次なるゴブリンの品定めを始めます。

池を挟んだ対岸に居た別の群れから、またボスクラスの二頭を選んで送還しました。

これでゴブリンの納品は完了です。

「じゃあ、次はオークを探しに行こう!」

「行こう!」

「行くか!」

「行くぞぉ!」

新年最初の仕事だからでしょうか、マルトも、ミルトも、ムルトも、やる気まんまんですね。

オークを探しに行くと言っても、同じ池の周りに居るんです。

ゴブリンほど大きな群れではありませんが、五、六頭の群れの中から、準ボスと思われる個体を選びました。

「あれがいいかな?」

「いいかなぁ?」

「いいぞぉ」

「いいんじゃね?」

「じゃあ、送還!」

オークがパッと姿を消すと、マルトたちも姿を消して、すぐに戻ってきました。

「ご主人様、ちゃんと送還された」

「されてたね」

「されてたぞぉ」

「じゃあ、次を探そう!」

マルトたちをワシャワシャしてから、次なるオークの群れを探し、同じように準ボスクラスの個体を選びました。

「あれだな」

「あれだぞぉ!」

「あれかぁ!」

「あれだぁ!」

「よし、送還!」

今度はオークを送還した後、僕も一緒に実戦訓練場へ戻りました。

ゴブリン四頭、オーク二頭、ちゃんと別々の檻に送還できています。

活きの良い個体を選んでいるんですが、送還直後はオークでさえも自分の置かれた状況が分からず、檻の奥にうずくまってキョロキョロと周りを見回しています。

これが、あと十分ぐらいして、自分が囚われの身だと分かってくると、徐々に暴れだしたりします。

まぁ、捕まってしまった時点で、君たちの命運は尽きているので、せいぜい冒険者たちや守備隊員たちが成長するための糧となってくれたまえ。

訓練場の担当者に納品終了のサインをもらい、僕の新年初仕事は完了しました。